経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その2)

2013年10月1日|

 「摂食・嚥下障害の悪循環」というスライドを示しますが、脳血管疾患の人たちと肺炎を起こすという関係というのはまさにこの悪循環と言えます。嚥下障害が起こる前にまず脳血管障害が起こって倒れて入院する。すると球麻痺や仮性球麻痺によって嚥下障害を起こす。そうなると栄養も水分も摂れないので脱水、低栄養になります。脱水によって血管の中に流れていた水が少なくなると、血管の中がべたべたして血栓ができやすくなります。つまり脱水が起これば脳血管疾患は再発します。すると多発性の脳梗塞になって重篤な摂食嚥下障害になります。これが悪循環なのです。

 更なる問題点は、胃の内容物が逆流することです。胃の中からもどしてきて、それが口から外に出てくれる力があればいいのですが、それができずにそのまま飲み込んで、それが気管に入り、更に肺に入る、これも誤嚥の一つです。運の悪い事に胃の中は非常に酸性度が高いので、肺に入っても酸性の状態になっています。それだけだったら抗生剤で治せばいいのですが、困るのはそれがのどで詰まってしまった場合です。食道を逆流したものが気管の中に入ってくれば肺炎で済みますが、気管をふさいでしまったら窒息です。抗生剤うんぬんの問題ではなく、死ぬんです。私は歯科医師で口腔外科に入った理由は摂食嚥下の患者さんが診られるからだったのですが、上の先生から「摂食嚥下リハビリテーションを甘く考えてもらったら困るのよ。死ぬの。人の命をとるの。安易に”食事がうんぬん”、”飲み込みが悪いですね”などで済む問題じゃないの」と言われたことがあります。人の命を簡単に取り上げてしまう分野ですから。

 誤嚥性肺炎になるには、「誤嚥」、「免疫力低下」そして「口腔内細菌」の3つが全部揃うことが条件となります。実は私たちも誤嚥しています。今も誤嚥しています。でもなんともないし、誤嚥したときにむせる力があります。また口腔内細菌があっても私たちが肺炎にならないのは免疫力が低下してないからです。さらに仮に免疫力が低下しても、誤嚥しても、口腔内細菌を持っていなければ、誤嚥性肺炎にはなりません。したがって、誤嚥をしないように指導するのも一つ、免疫力が下がらないように食事を考えたりすることも一つ、そしてもう一つは口の中を綺麗にすればいいのではないか、という話になって、ここが着目されるようになってきています。そうすれば誤嚥性肺炎は起きないわけです。

 余談ですが、今は「誤嚥性肺炎」と言わず「嚥下性肺炎」と言います。「嚥下」は「食べるあるいは飲むことができるものが、胃まで運ばれてくること」、一方「誤嚥」は「食べるあるいは飲むべきものが、誤って『肺』に入ってしまうこと」を言います。なお、「誤飲」とは「本来食べる、あるいは飲むべきものではないものが、誤って胃や肺に入ってしまうこと」ですから間違えないでください。代表的なのはボタン電池。子供が飲んで胃に入ってしまうことがありますが、これは「誤飲」です。高齢者が入れ歯を誤飲することもあります。

IMG_4469.JPG

(つづく)

« 前のページに戻る

TOPへ