九州大会開きました(その4)

2013年11月22日|

【現在歯数と全身疾患・口腔内細菌との関連】

 宇都先生は平成229月から258月までの外来患者の中で細菌検査をした974人(うち16歳以上914人)について、高血圧や脳卒中、糖尿病などの全身疾患の既往歴、そして年齢、現在歯数、ポケットの深さ、汚染度、歯周病の進行度(CPI)、細菌のレベル、そして感染の有無などをデータベースに記録、統計処理し解析を行ったそうです。

 その結果、全身疾患のある人は、ない人に比較して、加齢と共に現在歯数が少ないことが明らかになったことや、細菌のレベルとCPIとポケットの深さには有意な差が出たことなどを説明すると、参加者はメモをとるなどして聞き入っていました。

 また、「40歳以上で歯を喪失する主原因は歯周病、歯槽骨の破壊です。それより前は虫歯で歯を失うのですが、40歳以上の歯の喪失で怖いのは自覚がないということです。『歯周病で歯がなくなるとは知らなかった』という人は多いです。40歳以上の人は近くの歯医者の門をたたいて欲しいと思います」と強調しました。

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【高齢者の低栄養】

 

高齢者の低栄養について「やせた患者さんが多いのです。運動不足なのに脂肪が少ないのです。そのことで弊害が出てくるのを私は目の当たりにしています」と話し始めた宇都先生は往診もされており、「往診するとまっ先に体重を聞きます。病院だと血液検査をしますが、在宅では体重を聞き、下肢の周囲の長さを測ります」と言い添えました。

高齢者の栄養障害に伴う病態として、免疫異常(感染症)や創傷治癒の遅延(手術後の回復遅延)に加え、薬剤代謝の変動・貧血や骨粗しょう症、そして筋萎縮などの老年症候群などを挙げ、また、低栄養(たんぱく質・エネルギー低栄養状態:PEM)では病気にかかりやすく合併症を起こしやすい上に、回復が遅れ、死亡率も高まることなどを、スライドを用いて示しました。

このことを踏まえ、宇都先生も参加した、国立長寿医療センターの「在宅療養患者の摂食状況・栄養状態の把握に関する調査研究」(20133月、調査責任者:木田秀樹)の結果が報告されました。それによると、65歳以上の在宅療養者の30パーセント以上が低栄養であるとのことでした。それだけでなく、低栄養者ほど(1)固い食品が噛めず、(2)誤嚥しやくすく、(3)誤嚥性肺炎を起こしやすく、(4)食事が楽しみでなくなる、などといった傾向があることが説明され、摂食嚥下障害が引き起こす問題がいかに多く、そして深刻であるかを参加者に訴えました。

(つづく)

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