研修会開きました(栄養給食部会、その4)

2013年8月1日|

【味覚障害を起こす疾患〔2〕】

 味覚障害を起こす疾患には他に次のようなものがあります。

 

1)全身疾患:栄養欠乏(鉄欠乏性貧血、ビタミンAB2B12欠乏症など)、糖尿病、高血圧症、胃潰瘍、肝炎、肝硬変、腎炎、感冒、インフルエンザ、脳梗塞・脳出血に伴う中枢神経障害)

2)口腔疾患:舌炎、軟口蓋炎、舌癌、口腔内の火傷、過度な舌清掃、多量の舌苔付着、ジェーグレン症候群、唾液分泌の減少

3)突発性疾患:血清亜鉛値を含め、種々の臨床検査が正常であり、味覚障害の原因が特定できないもの。

4)心因性障害:下面性うつ病や不安神経症などの心因性ストレスが原因となることがある

5)風味障害:味覚は正常でも、嗅覚障害があると、味覚異常を訴えることがある

 

【薬剤と味覚障害】

 服薬している高齢者は、服薬なしの高齢者よりも味覚障害である率が高いとの報告があります。また、5種類以上の薬を服薬している服薬している人の4人に一人が薬剤性味覚障害との報告もあります。

 薬剤による味覚障害は、薬剤による亜鉛に対するキレート能(薬剤が亜鉛を取り込んでしまうこと)があり、尿中への排泄を促進するためと、亜鉛吸収障害によるとされています。

 

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【味覚障害を起こしやすい薬剤】

 味覚障害を起こしやすい薬剤には、亜鉛に関連するものだと心身安定薬、睡眠導入薬、抗うつ薬、降圧薬、利尿薬、抗高脂血症、抗胃炎・抗十二指腸潰瘍薬、解熱鎮痛薬、骨粗しょう症治療薬など、ごく普通の薬にあります。

 次に、唾液の分泌を低下させるものとしては、抗精神病薬、抗うつ薬・抗不安薬、制吐薬、消化性潰瘍薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン薬、ステロイド、筋弛緩薬、抗がん薬、抗てんかん薬、抗ヒ薬、解熱鎮痛薬、利尿薬、交感神経抑制薬、抗不整脈薬、抗ヒ薬、局所麻酔薬などにあります。唾液の分泌が減るということは、食べ物がひっかっかって飲み込めないし、味覚も変わります。

 

【唾液と味覚障害】

 唾液に溶けた物質は、分子やイオンの形となり、味蕾(みらい)の中にある味細胞に味物質が作用し、基本4味のそれぞれの受容体が刺激されると味覚神経が脳へと指令を送ります。この味物質は、唾液などで水溶液に溶解しなければ味覚は生じないため、唾液の分泌量は味覚の感受性に影響を与えるわけです。唾液の分泌量は、一般に加齢とともに減少するといわれますが、個人差があります。

 

【全身疾患と味覚障害】

 味覚障害を来す全身疾患には、次のようなものがあり、亜鉛の吸収を阻害し、排泄を促進する働きの両者、もしくはいずれかを持っています。

1)栄養欠乏(鉄欠乏性貧血、ビタミンAB2B12欠乏症など)

2)糖尿病、高血圧症、胃潰瘍など

3)肝炎、肝硬変、腎炎など

4)感冒、インフルエンザなど

 また、中枢神経障害として脳梗塞や脳出血後遺症などでは、舌で感じた刺激が頭の中に伝えられる途中が障害されて味覚障害を起こします。

 

【認知症高齢者における嗅覚障害】

 パーキンソン病では、まず延髄、嗅球、前嗅覚からレビー小体の形成が認められ、パーキンソン病の初期症状としての嗅覚障害に留意が必要です。また、レビー小体型認知症でもレビー小体の関与による嗅覚障害が生じます。アルツハイマー病では、早期に嗅覚低下を呈します。アルツハイマー病やパーキンソン病の多くは、その罹病初期から加齢以外の原因による嗅覚障害が高い確率でみられ、その低下に自覚がないのが特徴とされています。

 

【脳にはどのような病変が生じるか】

 アルツハイマー病では、海馬と嗅内野が脳内で最初に侵される部位です。臭いは鼻のすぐ上に嗅球があって、これから情報が伝わって嗅覚野に行きます。アルツハイマー病で最初にやられる場所と、臭いをかぐ場所がほとんど一致しています。老人斑ができているということは、においをかぐ力も落ちているということです。認知症が出る前に嗅覚障害が出ているのではないかとも言われています。

 片側の嗅覚野の障害では臭いはわかりますが、両方やられると嗅覚障害、そして味覚障害にまでなってしまいます。アルツハイマー病では両側やられるので味覚障害・嗅覚障害が出ていてもおかしくないと言えます。

 レビ?小体病にはパーキンソン病とレビ?小体型認知症の2つがあります。パーキンソン病の人が認知症になりやすいのは、レビー小体型認知症になるのではないかと最近では言われています。レビー小体病(パーキンソン病・レビー小体型認知症)、多発性脳梗塞の人は、とくに味覚を伝える神経の障害のために、発症早期から味覚障害を来す可能性は十分に考えられます。

(つづく)

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