褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その5)

2014年6月20日|

 【2-1.創傷治癒に対する理解(2)

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 このように一過性の原因による急性のキズと、恒常的に続く慢性のキズという違いはあるものの、「そこに施す処置はみな同じです」と津守先生。その手当について次の4つをスライドに示しました。

 

(1)洗う(クリーン)

(2)適切な処置を施す(トリート)

(3)キズを覆う(プロテクト)

(4)経過観察(フォローアップ)

 

 さらに「キズの上手な治し方」として次の4項目を示しました。

 

(?)まずは洗ってきれいにしましょう

(?)水を怖がらなくてもよい。水道の水は充分きれい

(?)消毒剤による消毒は必要ない

(?)最近のばんそうこうや貼り薬(被覆材)は上手に使うとひっつかないため痛みが早くとれ、治りも早い(湿潤療法のじょうずな利用)

 

 この中で「(?)水をこわがらなくてもよい」、「(?)消毒剤による消毒は必要ない」に関して、「自分たちがケガをしたとき、みなさんどのように治療していますか?」と津守先生。「『水はだめ』、『お風呂に入ってはいけない』と思っている人はいますか?」と参加者に問いかけました。

 これに対し、会場から手は上がりませんでしたが、「皮膚科医として高齢者の治療に当たる事が多いわけですが、『キズを水につけては絶対だめ!』と思っている高齢者が非常に多いです。また、『消毒液で消毒しないといけない』、『キズにはクスリをつけて、ガーゼをつけるもの』と思っている高齢者も多いというのが現状です」と述べ、「消毒してキズが治らないわけではありませんが、消毒しなくてもばい菌はつきません。”より良く治す”と観点いうことで考えると、水で綺麗に洗い、汚いものを洗い落としてあげる事が大切だということを伝えていって欲しいと思います」と訴えました。

 「キズは洗いましょう!」というスライドを用い、その方法を具体的に次のように説明しました。

 

◎大量の水で充分に洗い流す事が基本。温浴、シャワー浴は効果的!(大量の食塩水、水道水でOK

◎壊死組織などを落としたいときは洗い落とす。せっけんも有効。きれいな肉芽組織面では傷つけないようやさしく扱う。洗いすぎない

◎画一的に考えず、創の状態に応じた洗い方を身につけましょう

 

 「”キズに水をつけるとばい菌が入る”と思っている人に『水道水は飲み水として飲んでいますよね。飲んでいるものにばい菌はないでしょう』と説明し、その時には納得されるのですが、家に帰ると絶対に洗わない人もいて、1週間後の再診時、術後のままだったという方もいます」と経験談を紹介する津守先生。参加者は正しいキズの理解、そして正しい治療法の習得にとどまらず、それを利用者に説明し、理解を得ていくことがいかに重要であるかを再確認しました。

 また研修会では、「創傷治癒の障害となるものを取り除き、治癒環境を整えること」として最近言われるようになった「ウンド・ベッド・プリパレーション(Wound bed preparation)」を学びました。これは「キズは必ず治っていく、治す力がある。それを邪魔するようなものがあると治りにくくなるから、その治りにくくなるものを取り除いて創傷治癒を邪魔しないようにしましょう」というもの。その具体的な障害となるものの臨床的な観察項目として、その頭文字をとった「TIME」というものがあることを学びました。

 

〈TIME:臨床的な観察項目〉

○組織─壊死または異常 (Tissue, non-viable or deficient

○感染または炎症    (Infection or inflammation

○水分のアンバランス  (Moisture imbalance

○創縁─上皮化の停滞  (Edge of 
wound-non-advancing or undermined

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(つづく)

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