「高齢者施設での看取り」学びました(看・介部会:その6)

2015年5月25日|

 このように、看取りを取り巻く現状や将来的な課題を説明した後、市原理事長は宮崎市内に4箇所あり、自ら管理者を務める「かあさんの」の事例を紹介しました。

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 「かあさんの家」は介護保険制度には該当しない「在宅」。「自宅で一人で暮らせなくなった」、「家で介護する人がいない」、「医療の依存度が高くて、病院でも施設でも看られない」など、どんな状況や条件の人でも、どんな病気の人でも断らず、短期でも泊まりだけでも、また食事だけでも利用できるよう、制度の枠を超えて対応できるようにするとともに、住み慣れた地域や家にできるだけ近い環境ですごしてもらいたいというもので、言わば「自宅ではないもう一つの家」。

 「一人で自立して暮らせなくなったら、できるだけ環境の変化がない所に住み替える」という「リロケーション(RELOCATION):住み替えること」によって住居環境の連続性を重視する「かあさんの家」。具体的な仕組みとしては、「ケア付きの下宿屋さん、ルームシェアして暮らす」、「『家』・・・在宅医療と在宅介護サービスを使う(外付けで他事業所とチームケア)」、「『気配で感じる空間』:ナースコールは無く、音や気配がするとスタッフが対応する」・・・などがあることがスライドに示されました。「”一人暮らし”から”とも暮らし”へ」という考えに基づき10年前に空いている民家を借りてスタート。共同利用者5人が「ちょうどいい気配を感じて」暮らしているそうです。

 入居者がその家の主人なので、市原理事長も玄関に入る際「ごめんください」と言って靴を脱ぎ、入居者は「いらっしゃい」と迎え、「気をつけてお帰り」と見送るとのこと。入居者やスタッフが疑似家族になり、「ちょっとした庭があり、日当たりがよく、人が住んでいた住宅」という「普通の家の環境」で「普通に暮らす」ことで、それまで問題行動があった方も入居して2週間もすると落ち着かれるとのことでした。

 そして、「どこで」、「どのように」、「誰に看取ってもらいたい」という3つのキーワードのもと、「かあさんの家」は「最後まで普通に暮らすこと」を支える「かあさんの家」で、「朝起きて顔を洗い、食事をする」、「気持ち良く排泄をして、ゆっくりお風呂に入り、安心して眠る」など、入居者(病気はあっても”病人”ではなく”生活する人”)が、普通の生活を送っている様子がスライドで紹介されました。

 「かあさんの家」の入居者の平均要介護度は4.6。「食べることは生きる意欲を引き出す」として「高齢者ソフト食」を導入。みんなで楽しく食卓を囲んでいる様子に、参加者は釘付けになりました。このほか「日常の生活を整えることが大事」として、口腔ケアを継続することで誤嚥性肺炎による熱発が減少し、居室のにおいがしなくなったり、それぞれの入居者に応じた排泄ケアを実施することでオムツの使用量が半分になった事が紹介されたほか、生活の中でリハビリに取り組むために寝たきりにせずに普通の椅子に座ってもらったり、なるべく眠剤を使わない睡眠のケアを行っている、などといった説明を、参加者はメモを取るなどして聞き入っていました。

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(つづく)

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