「高齢者施設での看取り」学びました(看・介部会:その7)

2015年5月26日|

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 「それでは『どうやって普通に暮らすのか?』というのを見ていただきたいと思います」と、認定特定非営利活動法人ホームホスピス宮崎(HHM)の市原美穂理事長は、一旦話しを区切り、スクリーンにビデオを流しました。

 これはNHKの福祉情報番組「ハートネットTV」で201366日に放送された「最期の日まで宮崎・ホームホスピスの日々」。「かあさんの家」で暮らす入居者とその家族、そして穏やかな最期を過ごしてもらおうと昼夜を問わず奮闘する市原理事長やスタッフに密着した番組。「人はどんな最期を迎えることが幸せなのか?」という視点から看取りのあり方やその意味を見つめ直した内容で、市原理事長や「かあさんの家」の実際の取り組みの様子がよくわかる、大変素晴らしい番組です。

 この番組の概要はNHK福祉ポータルネットhttp://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2013-06/06.html)に取り上げられており、さらに詳しい内容は「番組まるごとテキスト」(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2013-06/06.html)で紹介されていますので、是非ご覧下さい。

 また、ホームホスピス宮崎のブログ「ぱりおん」http://blog.canpan.info/hhmiyazaki/)では、ホームホスピス宮崎の日々の取り組みの様子が逐次紹介されていますので、併せてご参照下さい。

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 続いて市原理事長は「尊厳とは」というスライドを用い、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限の尊重を必要とする」とうたった日本国憲法第十三条を示して、「尊厳死の問題、子供の貧困の問題などの問題が世界中で起きていて、『個人を尊重される』ということは努力していかないとむずかしい時代になっていると思います。私は『その人がその人らしくあること』が尊厳だと思います。それは普通の生活を送る中で、平凡だけど、共に暮らす人がお互いに喜びや辛さもみんなで分かち合って、気遣い合って暮らすことだと思います」と言い添えました。

 このような考えに基づき、「かあさんの家」で普通の、そして尊厳を保たれた暮らしをしながら、最後を看取った入居者3人の事例が紹介されました。最初は脳死と判定され、「死んでいるのと同じです」と言われたものの、「母はわかっています。月の砂漠を聴かせると涙が出ます」という娘の気持ちをくんで「何も分からないのではない。一人の人としてかかわること」という共通認識のもとでケアに当たった事例。次に、「人工透析をしなければ、あと数ヶ月だろう」と説明を受けたものの、本人も家族も透析を受けず、延命治療も希望しないことを確認し、「病気(腎不全)は治らず、障害はあるけど、普通に暮らしたい、自分でトイレに行きたい」という要望に応じ、排泄の援助や食事の工夫、感染症予防の徹底を行いながら、22ヶ月の間普通の暮らしを送り、穏やかに息を引き取った方の事例。そして最後は県南から入居された末期の肝臓がんの方。強い帰宅願望を訴えられた際に、「一期一会、この時を逃してはいけない。『計画をしましょうね』などとやっていては、この人は間に合わない」とすぐに家族に連絡をし、看護師同伴で帰宅を実行、最後は家族に見守られながら息を引き取った事例でした。

 これらの事例の中で市原理事長は、介護の力、介護の工夫が重要であることを強調。それぞれの人の人生に物語があり、どんな事があって、どんなふうに輝いていたのかを聞き、それを踏まえた介護をしていくことが大事であるという市原理事長の話すひとことひとことを、参加者は真剣な表情で聞いていました。

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(つづく)

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