経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その6)

2013年10月7日|

【4.口腔ケアについて】

 スライドに示すのは「バージニア・ヘンダーソンの看護の基本」です。彼女は100年前に生まれた看護師なのですが、「看護の基本となるもの」という著書の中で「患者の口腔内の状態は看護ケアの質を最もよく表すものの一つである」と述べています。つまり、「介護のレベルは、要介護者の口を見ればわかる」ということです。実際、介護先進国では口腔ケアは本当に大切にされています。100年前にすでに看護師がこのように言っていたわけですが、現在は獣医師も「お口は健康ですか?」と言うようになりました。

 6月に口腔ケア学会に行って話したのですが、口の中の歯周病の指数とリウマチの患者達のリウマチの活動性を調べたところ、関連していたのです。口の中をきれいにしたら、リウマチが良くなっていたのです。リウマチだけでなく、脳梗塞もそうですし、むし歯があると脳出血のリスクが4倍上がるということが2年前新聞にも大きく載りました。口の中の状態は全身の状態を示唆していますし、口の中の状態が全身状態に大きく影響します。実際に脳梗塞、脳出血で倒れて運ばれた急性期の患者は口の中が非常にきたないです。歯医者に行かれている人達とははるかにレベルが違う人達です。単に磨けていないだけではなく、全部ゆらゆらです。そういう状態まで放っておくのでもしかしたらそれも原因で脳出血を起こしたのかもしれません。

 糖尿病の方は口の中がきたなくなり、毛細血管がたくさんある歯ぐきが破れ、ばい菌が入ってきてすぐ感染しますが、逆です。糖尿が治らない人は実は口の中をきれいにしたら糖尿の値が良くなったということを糖尿病学会が出しています。糖尿だから口の中が汚くなるのではなく、口の中が汚いから糖尿が治らないということです。当院には糖尿病内科があるので、今年その調査に入る予定です。

 虫歯ができるための要因は「甘いもの」、「歯そのもの」、「口腔内細菌」、そして「時間」の4です。歯そのものがなければ当然ながら虫歯にはなりません。昔は「時間」は入っていなかったのですが、今は「時間」が加わりました。同じ甘いものが口の中に1秒あるのと100秒あるのと100時間のでは違います。ですから「甘いものを食べたら虫歯になる」というわけではなく、甘いものは食べてもらって構いません。要は最後に磨いてもらって落とせばいいわけです。甘いものが虫歯になるわけではなく、甘いものを虫歯菌がせっせと食べた後に糖を分解した酸を出します。歯は塩基性を帯びているのでこれが酸と反応して溶けて虫歯になるのです。だから食べ終わった後に歯磨きをしてもらえばいいわけです。実際に甘いものを食べなければ虫歯にはなりません。これは昔、スエーデンの孤児院で、甘いものを一切食べさせなかったら、虫歯が全くできなかったという本当の話があります。口腔内細菌は赤ちゃんには一切ありません。歯が生えてきても菌がなければ虫歯にさらされることはありません。「かわいいわね」とほっぺに口をつけたり、唾液が飛んで入ったりすることで感染します。するとあっという間に口の中で菌は増えます。虫歯や歯周病は感染症です。 したがって、「甘いもの」、「歯そのもの」、「口腔内細菌」、そして「時間」の全部が揃ったときが危険です。

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(つづく)

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