経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その7)

2013年10月8日|

  そしてポイントです。「歯垢がどこにたまりやすいか?そこをどのように磨けばとれるか?」をわかって欲しいと思います。たまりやすい所は3カ所ですので覚えて下さい。まず「歯と歯の間」、次に「歯と歯ぐきの境目」、そして「歯の溝」です。そこを一本ずつ正しくしっかり磨いて下さい。道具も使い分けをして下さい。口腔ケアに使う道具には、歯肉や歯肉頬移行部、口腔底、頬粘膜、舌といった粘膜などのケアに使うものや、頬のマッサージに使うものなど色々あります。歯ブラシも誤嚥しないように吸引器のついたブラシや、入れ歯用のブラシなど色々あります。一本ブラシは、普通の歯ブラシだと必ず磨き残してしまう舌側の内側の奥歯の歯と歯ぐきの間を磨くのに適しています。

 磨き方ですが、パターンとしては誤嚥をした事がある人とそうじゃない人はやり方を変えて下さい。誤嚥をした事がある人は絶対に水を使わないで下さい。飲み込めないから誤嚥するわけです。肺炎をしないために口腔ケアをしているのに、水に溶けたばい菌が大量に肺に入ってしまい、肺炎を起こすために口腔ケアをしているということになってしまいます。当院では(1)口唇の保湿を行って口唇の動きをよくする、(2)保湿剤を歯列、歯肉に塗布する(以前に塗ったものを拭き取ってから改めて保湿していく)、(3)歯垢などの汚れを歯磨きしながら保湿剤に溶かし込む、(4)吸引しながら保湿剤ごと回収する・・・というやりかたをしています。

 本当は清潔なコップと不潔なコップの2つを準備するといいのですが、なかなか大変なので、食事用のコップではない手持ちのコップ1個と、ガーゼ(又はキッチンペーパーやティッシュなど、身近なもので可)を清潔用と不潔用の2枚準備します。口の中を洗って汚くなったブラシを不潔用のガーゼで拭いて、それをコップの綺麗な水で洗い、清潔用のガーゼで拭き取ってまた口の中に入れる、そしてまた不潔用で拭いてコップの水で洗う、とやっていくといいです。

 入れ歯ですが、歯磨き粉は研磨剤が入っていて入れ歯を傷つけますので絶対に使わないで下さい。入れ歯専用のブラシを使い、水道水を出したままで洗って下さい。また落として割らないように、下に水を張った洗面器などを置いて下さい。なお、入れ歯洗浄剤の使用は週1回でいいと言われています。

 歯磨きをした後も口腔内をしっかり観察して下さい。喉の方まで長い痰がついていることがありますので、スポンジブラシを回しながら使うと綺麗に取れます。また、片麻痺がある人は、麻痺側の口腔内に食べ物が残留しやすいのでしっかり確認して下さい。

 最後になりますが、嚥下機能云々の前に、「虫歯が痛い(う蝕)」、「噛むと痛い(歯髄炎)」、「入れ歯が合わない(義歯不適合)」、「口が開かない(炎症)」、「口が渇く、唾が細かい泡状だ(口腔乾燥症)」、「口の中に何かできている、痛い(口腔腫瘍)」などがあれば「もういらない」、つまり摂食障害になります。ですから原点に帰って「この人、歯医者さんに行ったらうまく食べられるようになるんじゃないか?」という見方もして下さい。

 また、「口腔ケアフローチャート」というのがあり、簡単で的確な口腔ケアメニューが決定できます。「口臭」、「痰」、「舌苔」、「歯垢・歯石」、「乾燥」の5つの項目で判断できるもので、これも和光堂のホームページhttp://www.wakodo.co.jp/kaigo/kankeisha/keikoijikasan/にありますので参考にして下さい。

 口腔ケアにより誤嚥を防ぐことはできませんが、口腔内細菌を減少させることで誤嚥時の危険性が提言できます。

 ケアができない患者さんの口腔ケアは施設やご家族の役割です。見つけてあげて、きちんとケアしてあげてください。そして、美味しく、楽しく食事して、楽しく口腔ケアできて、気持ちいいと思っていただきたいと思います。

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(終わり)

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