九州大会開きました(その6)

2013年11月26日|

【がんの患者さんの事例】

 

 アンケート調査結果の報告と問題提起に続き、宇都先生が実際に関わった事例の紹介がありました。まずは「口の中がひりひりして食事ができない」との訴えがあった男性のがん患者が口から食べる喜びを取り戻した事例。

 「『”口の中が痛くてたまらない”という患者さんがいるから診て欲しい』という訪問看護からの依頼を受け、休み返上で往診に行った宇都先生。「どうしても食べたい!水でもいいから口の中に入れたい!」という悲痛な訴えを聞いたそうです。口腔内はむし歯が多発し、歯周病もひどく、舌や口唇は乾燥して潰瘍と痂皮(かさぶた)ができて、触っただけでも激しい痛みがあったとのこと。

 「抗がん剤による副作用の口腔粘膜炎」と診断した宇都先生は、「口腔内に副作用が出ることはあまり知られていません。また宮崎ではがんの患者さんを見る歯医者さんもあまりいません」と前置きした上で処置した内容を紹介しました。口腔ケアを行い、その方法を家族に指導。また薬局に電話し、キシロカイン入り含嗽剤(この処方もあまり知られていないのだそうです)を処方してもらったり、脱水を防ぐためゼリー茶の作り方を教え、口から摂取してもらうなどした結果、その日の夜から「おかゆとバナナが食べられた」という報告が入ったそうです。

 各所にがんが転移していたその患者さんは、それから1週間後に亡くなられたのですが、「亡くなる前夜まで口から食べることができて本当に良かったです。ありがとうございました」と男性の妻から感謝されたことが紹介されると、参加者は宇都先生が開口一番に発した「『食事』と『食餌』は違う。『食事』は色々な意味合いを持っている」という言葉を思い出しながら、身を乗り出して聞き入っていました。

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↑抗がん剤による副作用の口腔粘膜炎の患者さんに宇都先生が処方された内容。宮崎県内ではあまり知られていないとのことで、宇都先生は薬局に丁寧に説明をされたそうです。

(つづく)

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