「高齢者施設での看取り」学びました(看・介部会:その8)

2015年5月27日|

 つづいて市原理事長は「死は敗北ではなく、物語られるいのちを充実できないことが敗北なのではないか」というスライドを示しました。2012225日、著書『超高齢社会の医療のかたち、国のかたち』(出版:グリーン・プレス)などで知られる国立長寿医療研究センター名誉総長の大島伸一先生を招いて開いた講演会の中での大島先生の言葉とのこと。市原理事長は次のように説明しました。

 「今までの医学モデル、病院は、治る病気に対応してやっています。特定の治療技術を持った専門医師が病院にはいます。だから原因を見つけて、そして治療して治るところなのですが、たぶん高齢者の施設の方は慢性疾患でもう治らないですよね。それ以上良くなって元気になり、家に帰って自由に生活ができるという方はいらっしゃらないと思います。だったら病気や障害を持っていても、その人らしい尊厳を保ちながら生活者として普通に暮らすことを支える医療と介護がこれからは必要ですよ、と大島先生はおっしゃっています。大島先生は生体肝移植大家で、最先端の医療をやってきた方が、『高齢者にはそれはいらない』とおっしゃっています。そういう意味で”暮らしの中で支える医療”ですよね」。

 さらに、全国に先駆けて24時間365日対応で「人生の終焉までを支える」在宅医療をスタートさせた医師の太田秀樹先生が『かあさんの家10周年記念誌』に寄せたメッセージを引用し、「自然科学としての医学は病気を治す技術を高めて長寿社会に貢献してきました。でも加齢に基づく不都合を抱え、だれかのお世話にならないと生活がままならない人たちが増えています。その人達の健康課題は、病院を中心とした従来の地域ケアシステムのなかでの解決がむずかしく、むしろ病院に頼りすぎた結果、病気の治療には成功しても、生活者として社会的機能を失うことになりかねないのが現状です。人生の仕上げともいえる最期のステージを、医療に支配されたまま暮らすことが幸せでしょうか。もちろん療養生活に医療の力は必要です。しかし、あくまでもその人らしい生活を優先して、そこに適切な医療を過不足なく提供し、日々の生活を支える医療と介護が一体となった支援が必要です」と続け、医療と介護が連携してその人の尊厳ある暮らしを支えていくことが重要だと訴えました。

 このことを踏まえ、講演は「それではどのように医療と介護を連携していくか?」という話に入りました。

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(つづく)

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