ターミナルケア学びました(看護介護部会:その8)

2014年3月13日|

【大切にしたいこと、そしてスピリチュアルコミュニケーション】

 続いて林先生は「日本人が終末期に大切にしたいと考えていること」の調査結果として、次のような内容のスライドを示しました。

 初めは「多くの人に共通していること」として次の10項目があげられていました。

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 続いて「人によって重要さが異なること」として次の8項目があげられていました。

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 これらのうち赤文字で表示した内容を取り上げ「どちらについても、スピリチュアル(精神的)と感じられる内容が多いと言えます。これは霊能力者が交霊するといった特殊なものではなく、『人として根源的なもの』です」と言いながら、「マズローの欲求段階説(※)を基にした欲求の分類」のスライドを表示。これと照らし合わせながら、「『愛・所属の欲求』、『自我・自尊の欲求』、そして『自己実現の欲求』は人としての根源的欲求です。一方『生理的欲求』と『安全の欲求』は生物的欲求。この生物的欲求は人じゃなくて求めます。人が生物的なら悩むこともありませんが、人として生きて行きたいからこそ愛を求め、達成感を求め、自己実現を求めるわけです。したがって寝たきりの人達でもこういったものを求めていると思います」として、スピリチュアルコミュニケーションの重要性に言及し始めました。

(※:欲求の構造は、ピラミッドの底辺に”生理的欲求”があり、その上段に”安全の欲求”、さらに→”愛・所属の欲求”→”自我・自尊の欲求”、そして頂点に”自己実現の欲求”があるという構造をなし、下位の欲求が満足されて初めて上位の欲求が現れるという理論)

 「『人として生きてるな』と感じるために必要なものは、先に述べた『愛されているという』思いや、『評価されてるな、ほめられているな』という思い、そして『自分らしくありたいな、これは自分が作ったんだな、希望を持ちたいな』という思いです。皆さんは日々の活動の中で、それらのことを大事にされていると思います」と前置きした林先生。しかし、「こういったものは時間が限られてきたり、自分でできることが限られてきたりすると感じにくくなってきます」と述べ、「人として生きている」ということが感じられなくなったときに感じる痛みを「『スピリチュアルペイン』と言います」と紹介しました。

 「自分はもう大事にされていないな」、「もう自分なんか生きている価値もない」、「早くお迎えが来た方がいいんだ」などという言葉が出るのは、「生きる意味が見い出せていないから」とのこと。そういった時の心の痛み、つまり「スピリチュアルペイン」を、「感じるようになってから、それらを落ち着き戻していくことはとても難しいと思います。ですから、『人として生きている』ということが感じにくくなってから関わり始めるのではなく、その前から普段から大事にしている優しさや希望を意識しながら色々な方々と接していくことを私は『スピリチュアルコミュニケーション』と呼んで大事にしていきたいと思っています」と話すと、受講者は背筋を正して聞き入っていました。

(つづく)

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