ターミナルケア学びました(看護介護部会:その9)

2014年3月14日|

【スピリチュアルコミュニケーション】

 「スピリチュアルコミュニケーションはそんなに難しいことではありません」と林先生。そのポイントを次のように示しました。

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(1)愛し愛されること

・・・思いやりをもつ。自ら手伝う。

(2)赦(ゆる)し、赦されること

・・・ありのままに受け容れる。罪、恥、後悔の思いに応える。

(3)意味や目的・価値を感じられるようにする

・・・自立、自律を手伝う。

(4)誇りを感じられるようにすること

・・・その人の誇りを大事にする。

(5)希望

・・・希望を叶える。希望を支える。

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 この中で、(5)の「希望」について、「希望をかなえることができれば一番ですが。かなえることができなくても”希望を支えること”はできるかもしれません。例えばある人が『こういうことがしたい』と思っていて、それが無理かもしれないという場合、『それは無理よね』とすぐに希望を打ち砕くのではなく、『できるといいね』と思うことはできます。そして実際にできなくても、一緒にちゃんと考えてやるということは希望を支えることになります。このように『希望を与えようとする対応』は非常に大事です」と言い添えました。

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【スピリチュアルケアにおける大切な態度】

 スピリチュアルペインを感じ、生きる意味や目的を感じにくくなっている時に関わっていくことを「『スピリチュアルケア』と言います」と説明した林先生は、スピリチュアルケアにおける大切な態度として「傾聴(listening)」、「存在(staying)」、「誠実(honesty)」、「率直(openness)」、「柔軟(flexibility)」、「受容(acceptance)」、「立証(witnessing)」の7つを上げました。この中で「立証」とは、「『自分はこう思います。こう感じます』というように、自分自身の話をすること、自分自身の証(あかし)を立てること」だそうです。

 しかし、「そうは言うものの、なかなか難しいです。『早くいきたい、早くお迎えが来ればいい』と言っている人に関わって『力になれた』と思えることは少ないですよね」と切り出した林先生、「私自身、この仕事を始めた頃、『難しいなあ』と思いました。このような人達に関わってもなすすべがなく、その人達が希望を持って生きていってくれるというわけでもなかったのです。そんな時スピリチュアルケアの研修会に参加しました。そしてそこでロールプレイがありました」と、次のような体験談を紹介しました。

 林先生は「80歳後半の膵がんの女性。寝たきりで自分では何もできず、予後は一週間で『もう早くいきたい』と思っている」という設定でその役柄になりきったそうです。そしてもう一人の研修会参加者分する「傾聴役」と話をしていくわけですが、気持ちは全然変わらず、「早くいきたい。早くお迎えが来ればいいのに」とむしろ落ち込んだとのこと。ところが「”変な感覚”も同時に覚えた」というのです。それは「落ち込んでいても妙に安心して落ち込んでいけた」という感覚。それはつまり、それだけ落ち込んでいったり、不安になったりしても、目の前に聞いてくれて、気遣っている人がいたからだそうです。

「一人で考え込んで、落ち込んでいったらいたたまれない気持ちになっていたはず」と思った林先生は、このロールプレイの振り返りの際、傾聴役の相手が「全然力になれなかったね」と話したのに対し、「落ち込んだけど安心して落ち込んでいったよ」と答えたとの事ですが、「これは大きな気づきでした」と私達の前で語気を強めました。

 「私はこれまで『全然力になれなかった』、『相手が希望を持てたとは思えない』と感じていましたが、実は支えになれていたかもしれません。力になれていたかもしれません。この体験を通じて、『たとえ見た目は落ち込んだままでも関わっていこう。耳を傾けよう』という気になりました。これはとても大事なことです。みなさんも人と関わる中で『力になれない』と思うかもしれませんが、それは力になれています。是非続けて下さい」と力説しました。

(つづく)

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