認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その10)

2015年3月27日|

浜砂貴美子先生は認知症の症状として記憶障害や見当識障害、実行機能、そして理解力・判断力の障害などの「中核症状」と、不安・焦燥やうつ状態、幻覚・妄想、徘徊、興奮・暴力、不潔行為などの「行動・心理症状(BPSDBehavioral and
Psychological Symptoms of Dementia
)」があり、中核症状は「程度の差はあるものの認知症の人には誰にでも出現します」と説明。一方、行動・心理症状は「出現する人と、出現しない人がいます」述べ、その背景にはその人の性格や素質に加え、その人を取り巻く環境や心理状態があることを指摘しました。

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 そして、

(1)認知症の人に対するケアが不適切だと、行動・心理症状がひどくなる

(2)(1)が介護者の負担感や不安感、不快感、そしていらつきや不満、ストレスを増強させる

(3)(2)が引き金となって不適切なケアに拍車がかかる

(4)(3)によって認知症者の中核症状、行動・心理症状がさらにひどくなる

(5)再び(1)に戻り、(2)(3)(4)(1)(2)(3)(4)・・・と繰り返される

 という内容の「認知症の人と介護者間に起こる悪循環」というスライドを示しながら、認知症を正しく理解してケアにあたらなければ、認知症の人と介護者双方にとって悪影響が及び続けることを指摘。その上で「悪循環を断ち切るのは認知症の人ではなく介護者側です」と受講者に訴えかけました。

 そして「行動・心理症状は利用者本人のSOSのサインです。困っている人、辛い思いをしてる人は利用者本人です」として、その対応として(a)表面に出現している現象だけに気を取られ、そのことを封じ込めようとすると、ますます混乱状態に陥らせる、(b)行動・心理症状には必ず原因がある。その原因を探し、取り除くあるいは緩和させる関わり方が重要、(c)行動・心理症状の緩和の手がかりをさがし、ていねいに分析し、ケアに結びつける・・・という3つのポイントをあげました。また行動・心理症状の発生要因はひとりひとり異なることから、各々の症状について、発生の時間や頻度、状況、その場にいた人などを把握、分析したり、過去とどのようなつながりがあるか、一連の流れとしてみるとともに、それぞれの発生要因の目的や原因、理由などを、利用者ごとに考えていくことが大切だと指摘しました。

 最後に虐待をしない基本的考え方として、

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1.なぜそのような行動を起こすのか、理由や原因を徹底的に探り、その原因を取り除くケアを行う。必ず本人なりの理由がある

2.人間の基本的日常生活である「食べる」「排泄する」「起きる」「清潔にする」「活動をする」を、その人に合った方法でケアを徹底する

3.身(心)体拘束廃止が最終目的ではない。その人に適したより良いケアの始まり

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 の3つをスライドに示し、「虐待や身体拘束は『人権侵害』です。身(心)体拘束するのも『わたし』、そして身(心)体拘束ゼロをめざすのも『わたし』です」と、「虐待ゼロを目指すケア」を老健や特養、グループホームなどで生活する利用者に提供するためには、関わる者の価値観が問われることを強調して講演を締めくくった浜砂先生に、受講者からは感謝の拍手がおくられました。

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(終わり)

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