リンカーンの生きがい

2011年11月15日|

 「僕もこうして人間に生まれてきたんだから、やはり、何か、生きがいが感じられるまで生きている義務がある」と述べたのは、アメリカ合衆国第16代大統領、A.リンカーンです(『生きる勇気がわく言葉』夏村波夫、雄鶏社)。

 奴隷解放を宣言し、「人民の人民による人民のための政治」という、民主主義の理念を唱えたリンカーン。不幸にも観劇中に凶弾に倒れたことを小学校の頃、図書室の児童書で読みました。やり遂げた功績は偉大ですが、リンカーン自身、彼の言うところの「生きがいが感じられるまで生きている義務」を果たしたのか?あまりにも唐突な、そして不本意な亡くなり方だったため、それを確かめるよしもありません。

 しかし、リンカーンが残したこの言葉は、私たちに老健に勤める者にとっても貴重な教訓だと言えるでしょう。広辞苑で調べると「生きるはりあい。生きていてよかったと思えるようなこと」とある「生きがい」。リンカーンの言葉に代入すれば、「”生きていてよかったと思えるまで”生きている義務がある」ということになります。「権利」ではなく「義務」だと言い表したところに、リンカーンのこの言葉の重さはあるように感じます。

 「生きがい」と簡単に言いはすれども、利用者に生きがいを持って暮らしてもらうために、そして生きている義務を果たしてもらうために、私たちのすべきことは簡単では無いのだ、と思い知らされる、そんな言葉だと思います。

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