離床センサーに思う

2012年1月26日|

  117日の宮崎日日新聞に、「離床センサーで高齢者徘徊防止」という記事が大きく取り上げられていました。宮崎市の会社が認知症高齢者の徘徊などを未然に防ぐセンサーを開発し、本格販売を始めたという内容です。

 このセンサーの特徴は、高齢者のベッド上での動きを赤外線センサーで検知するというところ。熱の移動を検知するセンサーと、距離を測定するセンサーの2種類で、寝返りなどの動きと、起き上がる動作を別々に検知し、従来の離床センサーに比べ、高齢者の起き上がりをより迅速に、なおかつに正確に把握できるのだそうです。すごいです。

すでに宮崎市内の介護施設でも導入されているというこのセンサー、1ヶ月の無料貸し出しも実施しているとありました。宮崎の技術力、あっぱれなり!と思いました。その一方で、これを使う側の介護技術の力も試されるのだ、とも思ったのでした。

つまり、センサーが離床の動きを正確に、いち早く介護者に知らせることができたとして、さあ、それから介護者はどのような行動を起こすか?ということです。今まさに離床せんとされている高齢者のもとに急行し、「〇〇さん、立ったらあぶないが。歩いてひっこけて骨どん折ったらおおごっちゃ。寝ちょかんね」とベッドに押さえつけてしまっては、無理矢理寝かされてしまった方にとってはたまったものではありません。そんな使い方は、身体を思いのままに動かす自由を拘束する行為に他なりません。

その方がベッドから起き上がって、何をしたいのか?歩いてどこへ行きたいのか?そのために必要な介助は何か?大事なのはそこだと思います。これを正しく理解して、適切な援助をすることにより、安全、安心、そして迅速に行きたいところへ行き、やりたいことをやれれば、得られる満足もひとしおなのではないでしょうか。そしてそのことにより、介助する人と介助される人との信頼関係が深まる・・・。このセンサーを用いる本質的な意味はそこにあると思います。

このセンサーを開発する過程では、様々な試行錯誤、創意工夫があったことと思います。ならば、それを使う者も、それ相応の介護技術をもって臨む義務があるのではないでしょうか。いかなる便利な道具も、人に正しく使われて真の役目を果たすもの。誤った使い方をしたり、はたまた人が道具に使われるようになっては本末転倒です。優れた道具を正しく用いることでケアの向上をめざし、介護を受ける方々の生命や生活、そして人生の質の向上をはかることの重要性を再認識したニュースでした。

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