呵々大笑(かかたいしょう)
さて、この「水戸黄門」と言ったら、初代黄門様の「かーっかっかっかっ」という高らかな笑い声が何と言っても印象的でした。広辞苑によれば、この「大きな声をあげて、からから大笑いすること」を「呵々大笑(かかたいしょう)」と言うのだそうです。「笑いがいちばん」というテレビ番組もありますが、医学的にも笑うことで得られる身体的、精神的な効用はいろいろと研究・証明されています。そんな中で、この「かーっかっかっかっ」という笑い方、何かをする時の発声に似ていないでしょうか。
それは、お堅い言い方をすれば「喀痰(かくたん)」。汚い例えで誠に恐縮ですが、不心得者が道端にたんを吐き捨てるときに、「かーっ、ペッ」とやる、その最初の「かーっ」の発声です。なお、路上でたんを吐き捨てる行為はマナー違反ですし、法律でこれを禁じている国もありますのでくれぐれもご注意あれ。
しかし、この喀痰がうまくできないと、痰が肺にたまったり、のどに詰まらせたりする危険があります。また、食べ物や飲み物が食道ではなく、誤って気道に入ってしまい(誤嚥:ごえん、誤飲:ごいん)、肺炎を引き起こす恐れもあります。NHKの「ためしてガッテン」では、歳をとるにつれて、そのリスクが高くなると説明していました。老健に勤める者として、これは看過できない問題です。
利用者様の喀痰能力を維持、向上させるためにも、「かーっかっかっかっ」と笑う機会をより多く提供すること。これも老健に課せられた役割なのではないでしょうか。ましてや、「水戸黄門」が終わらんとしている今日において、その責務はますます重要になっているのではないでしょうか。
ところで、「呵々大笑」の「呵」を広辞苑で調べると、「(1)しかること。(2)わらうこと。」とあるから少々驚きです。利用者様をしかる事はもちろん、利用者様にしかられる事があってもなりません。「かーっかっかっかっ」と笑っていただいて、「今日も一日楽しかった」とおっしゃっていただけるよう、日々研鑽を積みたいと思います。