高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その3)

2014年10月8日|

感覚機能の加齢変化と適応について、「要介護状態になる以前から高齢者の心理に影響を及ぼす加齢変化は始まっています」と話始めた田代先生。しかし「それに補償・適応しているために、結果として以前と変わらない生活を送っています。それが”サイン”とは違う”心理”。高齢者の心理を理解するためには、まずこのことを理解しなければなりません」と強調しました。

001IMG_8488.jpg

五感である視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のそれぞれが加齢に伴い衰えていく中で、特に視覚障害の頻度は65歳から79歳で30パーセントから徐々に増え、100歳では100パーセントになることを示しながら、「高齢者の日常生活に関する情報の減少に直結し、転倒や骨折をはじめ、社会的孤立、うつ・認知症などさまざまな問題につながる」と説明しました。

また聴覚障害やその他の感覚障害についても、それぞれの特徴や問題点を述べた上で、「感覚機能の加齢変化、特に視聴覚機能の低下にはわずらわしさと生活への影響が大きく、多くの高齢者は以前の生活の維持を求めて、おそらく無意識に補償し、それぞれに適応していますが、認知機能に問題がある人の場合は、周囲の人が見守りや介護が必要なサインを見落とさないことが大事です」と指摘しました。

 身体機能の加齢変化と適応については、「運動機能の中でも移動・歩行能力が低下すると生活空間が狭まり、外界からの刺激や対人刺激が少なくなり、精神的な活性化の機会が失われやすくなります。対人交流の頻度の減少は高齢者の閉じこもりの主な原因であり、閉じこもりは要介護状態や寝たきりの危険因子の一つとなります」と述べた上で、「杖やシルバーカーを使うことで低下した能力を補償しながら移動することは、『自分で歩きたい』という気持ち以上に、『以前の交流を保ちたい』という願望の表れです」と、高齢者が従来通りの交流や交際などの「活動と参加」を続けることの重要性を説きました。

 また感覚機能や身体機能と同じく、記憶機能についても加齢に伴い衰退するものの、これらは機能的にも心理的にもその低下を最低限にする補償(適応)がはたらくことによって以前と遜色のない日常生活を送ることができるそうですが、「それにも限度がある」とのこと。ただし意識的・無意識的に補償が行うということは、「以前通りの活動や参加を続けたいという意思であり、心理です」との説明を聞いた参加者は、介助する側がそのことを理解することが重要だとうなずきながら聞き入っていました。

002IMG_8520.jpg

(つづく)

« 前のページに戻る

TOPへ