夜食過ぎてのぼた餅

2011年10月7日|

 「夜食過ぎてのぼた餅」とは、「時機が過ぎて価値がないことのたとえ」だそうです(集英社『暮らしの中のことわざ辞典』より)。晩ご飯をしこたま食べて、おまけに小腹が空いたと夜食まで食べて、「はぁーっ、食った食った、腹一杯だ」というときにぼた餅をもらっても、もう食べられない。嬉しくもなんともない、ということから来ていることわざだそうです。しかし、本当にそうなんでしょうか?

 「甘い物は別腹」と言うように、料理をしこたま食べても、その後に甘いものが出てくると、ついつい欲しくなったりするのではないでしょうか。時あたかも食欲の秋。熊は今の時期に一杯食べ込んで、冬眠に備えると聞きますが、人間も来るべき冬に備え、皮下脂肪を蓄えようという本能でも働くのでしょうか。いずれにせよ、食後のデザートは、満腹中枢をリセットするような、甘い、あまーい誘いかけをしてくるものです。

 しかし、その誘惑がくせ者。ぼた餅は一つで215.2キロカロリーもあるのです(もち米20グラム71kcal、小豆20グラム67.8kcal、砂糖20グラム76.4kcalとして計算)。これを夜食も食べたそのまた後に食べるとなると、「天高く馬肥ゆる秋」ならぬ、「天高く人肥ゆる秋」になってしまいそうです。たいていの人間は冬眠はしないはず。腹八分目で抑えておきたいものです。ちなみに、最近のノートパソコンのバッテリーには、100%完全に充電するのではなく、80%までの充電でとどめておくことにより、バッテリーの寿命を長持ちさせる、という機能がついたものもあります。この点においては、人間も見習うべきところがあるようです。

 それはそうと、ぼた餅がらみのことわざと言えば、やはり「棚からぼた餅」。「棚からぼた餅が落ちてくるように、思いがけない幸運がころがりこむこと」という意味は周知の通りです(出典:同上)。しかし、どうにも解せなくないですか?このことわざ。思いがけず、棚から落ちてきたぼた餅って、一体いつから棚にあったのでしょうか?もし自分で置いていて、すっかり忘れていたのだとすれば、ずーっと前のものかもしれません。傷んでいて、おなかをこわしはしないでしょうか?そんな古いぼた餅が思いもかけずに落ちてきて幸運だ!と喜べますか?あるいは自分以外の人が置いていたぼた餅だったとしても、いつ、誰が置いていったかわからないものを何の疑問も持たずに食べて良いものでしょうか?良くないですよねー。思いもかけずにタンスから忘れていたへそくりが出てくるのと、得体の知れないぼた餅が棚から落ちてくるのとでは、本質的に異なります。とりわけ老健に勤める人間であれば、食品衛生管理には細心の注意を払いたいものです。あと、夜食過ぎてのぼた餅にも。

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