開催しました!「九州大会inみやざき」(その15)
「ACPは免罪符ではない」ということを理解してもらいたいとマイクを握った三浦先生。1990年頃登場した事前指示(Advance Directive)およびこれを文書にしたリビング・ウィルの経緯を踏まえつつ、事前指示に関する研究から「残念ながら、家族の主治医も、患者の希望を聞いていませんでした」という結論に至ったことを説明。「ただし、ここでくじけるだけではしょうがないので、『自分の望む形の終末期を過ごしたければ、事前に指示しておくしかない』と思ったので、『死生観を共有するための話し合いを大切にしましょう』と当時から言い始めました。これが後のアドバンス・ケア・プランニングにつながっていくわけです」と発表活動等を重ねるうち、まず透析分野で普及してきたそうです。その理由として「透析は週3回、4時間から5時間、長年同じクリニックに通院しているため、患者と医療従事者との関係性が構築されます。透析中の時間に色々と話をする中でその人となりがわかってきます。もうひとつ大事なことは、透析に通っている患者さんは、一般の人よりも終末期に対する実感がありますので、そのようなことから一般の患者より透析患者で普及したのかなと思います」とスライドを用いながら言葉を加えていきました。
そこで手応えを得た三浦先生は、一般人向けの事前指示書も作成。「フルコース」と表現しつつ、全部の項目について、様々な選択肢を設けた事前指示書ですが、「これを全部書き上げることができた患者さんをお目にかかったことはありませんでした。事前指示書は患者さん自身が作り上げるものと言われています。そんなに細かい事を自分だけで作り上げるのは難しく、細かく作れば作るほど、実際の場面で実情に合わず、医療行為に対する希望はその時々の状況に変わってくるので、あまり前の段階から最終段階の医療行為を決めるのは意味がないということです」とアメリカの研究でも同様の結果だったことを例示し、事前指示書が有効でなかった理由として推定されている要因として「将来の状況を予想すること事態が困難」という「患者の要因」、そして「家族等が事前指示書の作成に関与していなかったり、患者がなぜその選択をしたか、その理由や背景や価値がわからなかったりするから役に立たない」などといった「その他の要因」を挙げました。
(つづく)