開催しました!「九州大会inみやざき」(その18)
このように「『入院時に人工呼吸器をつけるかつけないかを聞いておけばACPになる』というのは間違いである」ということを重ねて説明してきた三浦靖彦先生、「『医療行為についての希望などは状況によって変化します。だから本人のものがたり、ナラティブが大事です。人生観、死生観が大事です』という話をしてきましたが、そう考えると、『みなさん今からアドバンス・ケア・プランニングを考えましょう』、というよりも『アドバンス・ライフ・プランニング(ALP)』をいまからやっておくと、それがアドバンス・ケア・プランニングにつながります」とスライドを進めました。
アドバンス・ケア・プランニングにより本人の意思が尊重されることはもとより、「本人の意思を尊重できたという満足感は、家族と関係者の心の負担を軽くできる可能性があり、グリーフケアにもつながる、ということが言われています。自分にあてはめてみるとわかるのではないかと思います」とし、そのためにも医療やケアのことだけでなく、人生観や死生観についても折に触れて関係者と話し合っておくことが大切だと言い添えました。そして元気なときにアドバンス・ライフ・プランニングがあると、病気になったときに、アドバンス・ケア・プランニングに書き換えて、つながっていくことができることにも言及し、その有用性を説きました。
そのうえで「誰がACPのお手伝いをしますか」ということに関し、アドバンス・ケア・プランニングの土台、基本骨格となるべき「自分は何を大切に思い、人生を過ごしていきたいのか」という部分に「ここにまだ医療やケアがアプローチできていません。医者の場合、病気になったときようやく関わりますし、ケアスタッフもケアが必要になるころから登場するようになります。基礎の部分は自分や家族や地域社会で作っていくのですが、そこに私たち医療やケアスタッフがお手伝いをするのが大事ではないかと思います」とし、三浦先生は自らも「もしバナマイスター」として取り組まれている「もしバナゲーム」を通じたアドバンス・ライフ・プランニングへの関わりを作っていった事例を紹介。
さらに三浦先生が副代表をされている「自分らしい生き死にを考える会」で作った「私の生き方連絡ノート」が紹介されました。チェックボックスではなく「自筆で書く」ことを主眼に作られたこのノートは、自分の人生を振り返りながら、「今の自分が望む、これからの生き方」について、自分が健康でなくなったときも含めて考え、書き込むもの。わかりやすい説明も添えてあり、初めての人にも書きやすいものとなっています。
そして三浦先生が発案した「患者自己紹介シート」も紹介し、その普及活用へ思いを寄せました。
(「私の生き方連絡ノート」は大手通販サイトでも販売しています)
講演の最後になり、千葉県印西市にある「吉高の大桜」をスライドに映し出した三浦先生、、樹齢400年を超える見事な一本桜を見せながら、「しっかりした幹はありますが、枝は色々な所に伸びているので、倒れないよう色々な所に杭が打ってあります。(アドバンス・ケア・プランニングについても)幹がしっかりしていれば、枝葉の部分はその時の状況に合わせて家族や医療、介護スタッフが最善の策を考えて支えてくれるはずです。幹をしっかりとしておくことが必要だと思います。皆さんも是非自分のアドバンス・ライフ・プランニングをしっかり持っていただくのが一番いいと思います。したがって、『どのように死ぬか?』ではなく、『これからの人生をどのように過ごしたいのか?』を中心に考えましょう。あなたの『人生ものがたり』が、ご家族、医療、介護従事者に伝わっていれば、その時の医学的状況に合わせて、あなたにとって最善の策を考えてくれるはずです。医療行為だけを決めておけば良いというものではないということを、今日は胸に刻んで帰って下さい」と呼びかけると、会場には感謝の拍手が鳴り響きました。
(つづく)