Masaさん(菊地雅洋氏)第2弾講演会開きました(事務長会&看護・介護部会:その4)

2015年10月13日|

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 このように、自らが看取りケアにあたった経験を紹介した菊地雅洋先生。「皆さんの施設でも『看取り介護指針』を作っているかと思いますが、日本で最初に看取り介護指針を作った人はだれかわかりますか。実は僕が作りました。そのようなものが何もない時に看取り介護指針を僕が作りました。それが今、全国のグループホームや特養でたくさん参考にされ、使われています。その責任もありますから、うちの施設で看取り介護を行ったケースについては『こういう実践をした、こういう気づきがあり、こういう失敗があった』ということをインターネットで発信しています」と続けました(菊地先生が総合施設長を務める特別養護老人ホーム緑風園のホームページには看取り介護についてのコーナーが設けてあり、看取りケアに関する様々な情報が発信されています。ぜひご覧下さい)。

 「最期の1%が幸せだとしたら、その人の人生は幸せなものにかわる」と、全国に先駆けて看取りケアに取り組んできた菊地先生、「しかし我々の業界全体を見渡せば、必ずしもそういう最期を送っている方ばかりではないということが言えると思います」と、近年問題となっている高齢者施設における虐待の問題に切り込みました。

 「祖母が入居しているとある施設の高齢の女性入居者が絶飲食となり、医師も家族も『何もしなくていい』とのこと。口からは鼻出血のあとがみられ、皮膚の汚れも目立ち、部屋の消臭もされていない。彼女はただ死を待つだけなのか?職員は何もできないのか?何もしないでいるのか?『何もしなくていい』とはどのような意味なのか?」という内容の投稿が一般の方からあったことを紹介。その上で「看取り介護になったからといって、『何もしなくていい』ということはありえません」と語気を強め、「看取り介護になってからも、緩和の治療、看護、ケアは絶対必要になります。何もしなくていいものがあるとすれば、『不必要な延命治療』だけです。それ以外は必ず安心・安楽の治療やケアは必要なわけです。口に鼻出血のあとがあるということは、何らかの理由で鼻血が出たのが放置されて、顔も拭いてくれていません。皮膚汚れも目立っているということは清拭すらされていないのではないかという疑いがあります。室内の消臭もされていないということは『臭い』ということです。なぜ臭くなるのでしょうか、看取り介護期に毎日きちんと清拭して排泄ケアをすることで清潔は保たれ、臭いなんかはないです。それなのにこの方はおそらくおむつ交換もきちんとされていない疑いが強いし、そうであれば体位交換もしていない可能性が高いです。しかも口腔ケアがされていないと言いましたね。看取り介護の対象者は最終的に口からものを食べられなくなりますが、だからといって口腔ケアをしないというのは一番だめな対応です。逆に口からものを食べているうちは唾液の分泌がありますから、ある程度口腔内の色々なトラブルが避けられるので、口腔内のトラブルが起きない可能性があります。逆に口からものを食べられなくなったら唾液の分泌が極端に少なくなるので、感染症予防のほかに口の中のひび割れやかびなどを考えると、食べているときよりもしっかり口腔ケアをしないと安楽な介護につながりません。とくに口の中ががびがびに乾いて舌に割れが出て来て出血するとものすごい痛みです。安楽の看取りになりませんから、うちの施設では特に口から食べられなくなったときの口腔ケアはとても大事にしています。だけどここではそれさえもせずに放置しています。こんな状態で放置されていて、この方はどんな人生を送ってきたかはわかりませんが、ここで亡くなる間際は辛かっただろうな、痛かっただろうな、苦しかっただろうな、と思います。この方の人生はこの施設の最期の看取り方によって不幸なものに変わってしまったのではないでしょうか」と述べ、さらに「そしてこの投稿があった後、そのままの状態で永眠されたそうです。これはまさに『看取り』と言いませんこれは『見捨て死』です。『施設内見捨て死』です」と厳しく指摘しました。

その3戻る)             (つづく

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