Masaさん(菊地雅洋氏)第2弾講演会開きました(事務長会&看護・介護部会:その8) 

2015年10月19日|

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 このように利用者に対する丁寧な言葉遣いの大切さについて説明してきた特別養護老人ホーム緑風園の菊地雅洋総合施設長。講演も中盤にさしかかり、「親が特養で暮らしている家族の声」について話し始めました。「大切な家族を預けている身としては『たまたまできない職員だった』ではなく、全員が一定レベルに達して欲しいと思っている」、「『ちゃん付け』はやめてほしい。『さん』と呼んで欲しい」、「『おいで、おいで』はない、犬ではないのだから」などといった菊地先生のフェイスブックに寄せられた家族の声を紹介したのに続き、「赤本225頁『長い爪』より 苦情を言えない家族の気持ち」というスライドを示しました。この「赤本」とは菊地先生の著書「人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるためにヒューマンヘルスケアステム税抜き価格1,800」のことです(表紙が赤色になっています)。

 この「長い爪」というのは、菊地先生が一般市民を対象に行ったある講演会の際、講演後に受講者の一人から聞いた話だそうです。その方(仮にBさんとしておきます)が自分の親を預けるにあたり、色々な施設を見て回り、「ここが一番いい施設だ」と思って利用を決めた、ある高齢者施設での話。親の爪が伸びていることに気付いたBさんは、最初自分で爪切りを借りて切ろうかと思ったそうですが、「何かの間違いだろう。職員が気付いて切ってくれるだろう。切るのをやめて様子を見よう」と考え、毎日通っては携帯電話で爪の状態を撮り続け、「次に来たときには切っておいてくれるはずだ」と思い込みたくて一週間通い続けたのですが、一向に切ってくれる様子はなかったとのこと。

「根負けしました」と当時の気持ちを菊地先生に伝えたBさん。職員が「ごめんなさい」と謝ってくれるかと思いつつ、「親の爪を切りたいので、爪切りを貸して下さい」と言ったところ、なんと職員は喜んで爪切りを貸し出したそうです。そのことを寂しそうに話されたBさん、本当は自分で親の面倒をみたかったものの、自身の病気のためやむなく施設入所を決めたのだそうですが、その職員の姿を見て「『私は何か間違っていたのではないか?』と悲しくなりました」と菊地先生の前で涙ながらに話していたとのことでした。

 このように説明しながら菊地先生は、「この方はクレーマーじゃありません。その後も施設には文句を言っていません。クレームを言えないのです。『もしここでクレームを言って、その時謝っていただき、対応をきちんとしてもらったとしても、職員の機嫌を損ねたら夜勤の誰も見ていないときに何をされるかわからないから言えないでしょ、菊地さん』と言われるわけです。家族のその気持ちはもっともだと思いますが、そういう気持ちにさせてはいけません。我々はやはり介護のプロとしてそういう家族さえも幸せにするようなケアを、施設の中でみんなで築き上げて、幸せそうな家族の姿を見て我々自身も気持ち良くなって、それが我々のモチベーションになるのではないでしょうか。誰かが悲しんでいる姿を見て、それが我々の労働のモチベーションは高まるでしょうか。高まらないと思います。事実、うちの施設のモチベーションは看取り介護の中で、最期の瞬間を看取った結果を利用者さんの家族と一緒にデス・カンファレンスで話し合った時に、色々な思い出話をしながら『本当に良かった』と言っていただけることが職員のモチベーションになっていっているような気がします。その時に一番考えていかなければならないのは、『普通の生活とは何か?』ということです」と、苦情を告げたくとも告げられない家族の気持ちがあることを念頭に置くとともに、介護のプロとして家族の幸せをも支援することが仕事のやり甲斐につながると述べ、その際に最重要視すべきことである「普通の生活とは何か」ということについて話し始めました。

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←「その7」に戻る)             (つづく

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