Masaさん(菊地雅洋氏)第2弾講演会開きました(事務長会&看護・介護部会:その9)

2015年10月20日|

  「普通の生活って何という視点」というスライドを示した菊地雅洋先生はまず入浴を例に取り上げ、次のように話し始めました。

 「例えば入浴は、清潔にするための行為ですが、じゃあ清潔にするためだけだったらシャワーだけでいいのか?という話になります。日本人の生活習慣は必ずしもそうではありません。清潔にするためだけだったら湯船に入る必要性はありませんが、湯船に入らなければ満足しないお年寄りはたくさんいるわけです。ところがそのように大事な『湯船に入る』という生活習慣を簡単に奪えるのも介護です。ある施設では車椅子になった瞬間から浴槽に入れてもらえません。その方々はシャワーチェアで週2回以上入っていますから清潔度は変わらないのかもしれませんが、その施設では恐怖ですよ。車椅子になったら湯船に入れないのですから。そんなことがあるでしょうか。車椅子に乗ったり、シャワーチェアに乗ったりする時に足に力を入れて動作協力しているのですよ。なぜその人達が『湯船に入る』という生活習慣を奪われなくてはいけないのでしょうか。そのようなことをする人たちに僕は『そういう習慣を奪うのであれば、あなた自身が一生湯船に入らないでください』と言いたいと思います。それが我慢できる人でない限り、そのような生活習慣を簡単に奪ってはいけないと思います。

 続いて食事に関しては「うちの施設(特別養護老人ホーム緑風園)は昭和58年にオープンし、僕は新卒で入りました。その時に一番びっくりしたのは”ごちゃ混ぜご飯”。刻みの副食が3品くらいあったのをある職員がおかゆの中に『ばーっ、ばーっ、ばーっ』と入れて混ぜご飯を作って食べさせていたのです。『これは餌だ、餌以下だ』と思いました。こんな食事はないですよ。栄養士さんには悪いと思いますが、食事というのは栄養は二の次だと僕は思っています。一番は楽しみだと思います。楽しみが奪われるような食事はだめだから、食事介助というのは大変な介護技術だと思いますが、うちの職員には『スプーンで介助している時に、そのスプーンの上のものを見て”これは自分の口に入れられるか?”と考える人になって欲しい』と言っています。『自分の口に突っ込みたくないものは、人の口に突っ込むなよ』と思います。それからこれもうちの施設の話ですが、おかゆの上に粉薬をかけて、最初にそれをそのまま食べさせるのです。『どうしておかゆに粉薬をかけるのですか?』と聞きに行ったら上司に言われたと言うわけですよ。当時僕は22歳だったのですが、その人の所に聞きに行きました。すると、『この人は認知症(※当時別名)なので、粉薬をそのまま飲ませたらペッペッと吐き出すでしょ。だからといってオブラートに包んで飲ませたら詰まってあぶないでしょ。だからおかゆにかけるの』と上から目線で言ったのです。これはおかしいと思いました。粉薬は苦いから吐き出すのは当たり前じゃないですか。『オブラートが危ない』というのはわかりますよ。じゃあなぜそのあといきなりおかゆの上にかけるのでしょうか。その間にいくらでも工夫ができるじゃありませんか。いまうちの施設でやっているのは、栄養士に言ってゼリーやプリン状ものの小さいやつで、その人の好む味の強いものを別に出してもらって、その中に薬を入れて食後にデザートのような形で『ツルン』と飲み込んでもらっていますが、それが一番いい方法ではないかと思います。このように工夫はいくらでもできます」と自施設での取り組み状況を紹介すると言葉を句切り、「『餌にしてはいけない』ということです」と厳しく指摘しました。

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 ←「その8」に戻る)             (つづく

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