ガスコンロと指パッチン

2011年7月4日|

「ガスコンロだけ逆だよね。なんで?」と聞かれて初めて、よくよく見ると、なるほど。ガスコンロというものは、点火の時に左回転、消火の時に右に回すようにできているものが多いようです(プッシュ式を除く)。

 水道の蛇口でも、ドアノブでも、はたまたパチンコ台でも。昔だったら電話のダイヤルにテレビのボリューム。ビンやボトルのキャップだって、使うときには右(時計回り)に回しますよね。使う時に、右です。だから、使わない時は左に回すことになります。ところが、ガスコンロは逆なのです。使う時に左、使わない時は右に回すのです。

 考えますに、それは「とっさの時にすぐに消せるように」ということではないでしょうか。いざという時、すぐに止めなければならないのは、水道でも電気でもテレビでもなく、「火の元」なのは言うまでもありません。しかも、確実に消さなければなりません。他のものは、使う時の方が大事ですが、ガスコンロについて言えば、「使わない時の方が大事」なのです。実際にやってみると、立っているのを左に倒すより、左に倒れているのをまっすぐに立てる方がうんと楽で、確実です。この動作、「指パッチン」に似ていると思いませんか?右手で、火を消す方向に前腕を回すと「パッチン」と鳴りますが、反対に回すとうまく「パッチン」できません。つまり、ガスコンロのつまみは、”パッチン”と鳴らせる方向に回して”パッチン”と消せるようにできているではないでしょうか。特に緊急時、それが有効に作用するように、と。

 さて、ガスコンロの話が長くなりましたが、利用者様の急変や、自然災害その他に備えて、老健にも色々な「緊急マニュアル」があるかと思います。「緊急」ですから、急がなければならないことはもちろんの事、それに加えて、確実に行えないといけないのだ、とガスコンロのつまみから考えさせられました。緊急の場合は、得てして慌てがち。慌てていると、失敗しがち。「人間は失敗する生き物だ」などと言いますが、それを見越して、緊急時に、慌てていても、失敗しない工夫を、緊急じゃないときに、落ち着いて考えておく必要がある、と思いました。

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