歓迎!?「ながら族」

2012年12月3日|

 マンガを見ながらご飯を食べたり、ラジオを聴きながら勉強したり、歯磨きしながら新聞を読んだり・・・。とかく「ながら族」は良くないイメージが付きまといます。それどころか、携帯やスマホを扱いながら自転車に乗る行為に至っては非常に危険であると、社会問題にもなっています。五木ひろしが鵜飼の宿での叶わぬ恋を切々と歌い上げる「ながらがわえんか」じゃなくて「長良川艶歌」は名曲中の名曲ですが、すべからく「ながら族」はよろしからずべきことなり・・・と、そう思い続けていましたが、決してそうとばかりは言えないようだということが、927日の日本経済新聞に載っていました。

 「学ぶ 磨く
育てる」のコーナー。「脳科学で介護予防探る」という見出しの記事は、高齢者の転倒を、脳科学の知見から予防する方法を、京都大学大学院人間健康科学系専攻の山田実助教のチームが考案したという内容でした。その名も「ステッププラス・エクササイズ」。その名の通り、足踏みしながら体に手をあてるなど、別の動作を加える運動とのことだそうです。単純に身体を動かすだけでなく、同時に頭も働かせて行うもののようです。

 これによってなぜ転倒が防げるか?それは、「加齢に伴う二重課題をこなす能力の低下」の維持・向上が期待できるからだそうです。人の日常生活は、何かをしながら別なことをするという、二重課題をこなす連続ですが、高齢者はその能力が低下するとのこと。元気な高齢者でも家の中で転倒するのは、「高齢者は何かに意識が集中すると他に意識が向かなくなる」と考えた山田助教が考案した「ステッププラス・エクササイズ」、従来の筋力トレーニングやウォーキングと一線を画すもののようです。老健施設に勤める者として、興味津々です。

 たしかに日常生活の中で、「ただ単に歩く」、あるいは「歩くために歩く」といった「単純課題」とでも言うような動作はあまりありません。取り込んだ洗濯物を抱えながら家に運び入れたり、スーパーで献立を考えながら、財布の中身も考えながら店内を回ったり、はたまた必死に我慢をしながらトイレに急いだり・・・。二重、三重の課題の課題をこなしながら人は動いています。その遂行能力が加齢とともに低下し、転倒につながるとあれば、それを鍛える必要大ありです。

 ということは、高齢者のエクササイズはいかに「ながら族」としてのパフォーマンスを向上させるか?ということが重要になってくると言えそうです。そう考えると、従来はマイナスイメージが強かった「ながら族」、よろしきものとして見直さなければならない側面もある、と思った記事でした。

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