バタヤン逝く

2013年5月2日|

  425日のニュース。「バタヤン」こと歌手の田端義夫さんの訃報を知って愕然としました。それは私だけではなかったはずです。老健の利用をされている皆様にとってもショックだったのではないでしょうか。

 ギターを高い位置に、水平に構えて歌う独特のスタイル。そして「オース!」という挨拶。大好きでした。学校の掃除時間にほうきをギターがわりにして「なみーのぉー、せのせぇにぃー、ゆらーれーてゆぅーれーてぇー」と真似したものでした。

 「大利根月夜」、「ふるさとの灯台」、「梅と兵隊」・・・。上げればきりがない名曲の数々。特に奄美大島で歌われていた「島育ち」は、レコード会社が反対したのを押し切ってギターと太鼓と三線のみで録音して発売して大ヒットしたものだそうです。その逸話を耳にしたとき、バタヤンの歌手魂を見たような気がしました。ビブラートのきいた、あのやさしい高音がもう聴けなくなるとは・・・。

 子どもの時、親に「あれはエレキギターなの?」と尋ねたら、「違う、あれは電気ギターじゃが」と言われ、ずっと「バタヤンが弾いているのは”電気ギター”なんだ」と信じ込んでいました。エレキと電気、どこがどう違うのかはともかく、あれはアメリカのナショナル・ギター社製の「Solid Body Electric Spanish(No.1124)」というエレキギターだと知ったのはつい最近のことでした。個人的には国宝にして欲しいくらいの気持ちです。

 94歳の生涯を閉じたバタヤンですが、90歳まで現役歌手で活動されて、私たちに歌の素晴らしさ、歌うことの素晴らしさを教えてくれました。悲しい気持ちの一方では、「ありがとう」という感謝の気持ちが後から後から湧いてきました。426日午前3時過ぎからのNHKラジオ深夜便「にっぽんの歌、心の歌」の冒頭では、予定されていた?橋菊太郎特集に先立ち、「かえり船」がしんみりと流されました。

 大利根月夜で「今じゃ浮き世を三度笠」と歌ったバタヤン。今頃「かえり船」に乗って、あの世へ旅立っているところなのでしょうか?ひょっとすると、先に逝去された岡本敦夫さんが「高原列車」の窓からハンケチを振って歓迎しているかもしれません。田端義夫さん、数々の素晴らしい歌、そして感動をありがとうございました。どうぞ安らかにお眠り下さい。

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