目標変えず、方法変える

2013年10月29日|

 「私の課長時代」は、日本経済新聞が毎週火曜日に連載している記事で、色々な企業や団体のトップで活躍中の人が、かつて課長クラスで働いていた頃を振り返り、その時に得た体験や教訓を語っているものです。現在はそれぞれの経営者として辣腕(らつわん)を

ふるっている人が、若かりし頃に色々な失敗や葛藤を繰り返しながらも、それらを乗り越えて成功した事例が紹介されていて、毎回楽しみに読み、そして学んでいる記事です。

 1022日の「私の課長時代」は、横川電機の社長、西島剛志さんの後編(下)。技術部の課長だった西島さんが米国企業との共同開発の窓口となり、仕事をする中で、部下から「納期に間に合わないかもしれない」と相談を受けた時「諦めるな」と叱ったそうです。「諦めれば、積み重ねてきたことが一瞬でゼロになってしまう」と。それに続いて西島さんは「『なんとかなる』という根拠を見つけ、根拠が間違っていないと思えばあきらめない。方法を変えることは構いませんが、目標や目的を変えてはいけません」と述べておられました。

 これを読んだとき、「業種が違っても、これは私たちの仕事でも同じことが言える」と思いました。介護保険サービスを利用される方はその利用にあたってもれなくケアプランが作成されます。そこにはご本人やご家族の意向を汲むとともに、心身の状態等を勘案し、各専門職がそれぞれの立場から出し合った意見や情報を踏まえた「目標(短期・長期)」が明記されます。そしてその目標達成のための具体策を盛り込んだサービス計画書を作り、そのプランに基づいたケアを行っていくことで、目標を達成していきます。

 したがって、その目標達成が困難だという事態に直面したとき、まずは「『なんとかなる』という根拠」を見つけることが重要だと思います。そしてその根拠が間違っていなければ、方法を変えることで目標達成を目指すべきだと。そうではなく、「この目標は達成できそうにないから、違う目標に変えましょう」と、安易に目標を変えて方法は変えない、というのでは本末転倒なのではないでしょうか。

 もちろん、モニタリングや担当者会議を行い、利用者や家族、そして関係スタッフと十分な話し合いを重ねた上で、「『なんとかなる』という根拠」が見つからなければ、目標を修正していくことはありますし、逆に見事目標が達成できた場合は、次なる目標を立てていくこととなります。

 西島さんはこうも言われています「どんな仕事にも価値があり、面白くない仕事はないということです。面白さは自分の取り組む姿勢によって変わります。内容で情熱を萎えさせるのはよくない」。老健施設に勤めている者にとって恵まれているのは、私たちがケアをする利用者様の数だけ目標があるということです。そして「利用者様の目標を達成することが私たちの目標」と言えます。その私たちの目標を変える事、すなわち「利用者様の目標を達成しないようにする」などということはできません。目標を変えることなく、方法を変えてみる、そして取り組む姿勢を変えてみる。そして目標を達成する・・・。かくありたいと思った記事でした。

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