協会活動報告

「生産性向上の取り組み」学びました(看護介護部会:その5)

看護・介護研究部会が11月9日(土)JAアズム別館3階302研修室で開いた第2回の研修会「生産性向上の取組み」。同部会の坂下和代委員長による先進地視察報告も終盤になりました。同部会が10月17日、委員等10名で視察に行った社会福祉法人さわら福祉会特別養護老人ホームマナハウス(福岡市)のICT、介護ロボットの将来を見据えた素晴らしい取り組みの数々に感銘を受けた受講者を前に「施設職員から皆様へ」と銘打ったスライドが掲げられました。それをもとに、

①見守り介護ロボットを導入し、巡視をなくしたことで、負担が軽減している

②音声入力システムを導入し、記録のためにパソコンに並んで待つことがなくなり、時間外勤務が少なくなった

③排泄ケアの見直しにより、利用者とのコミュニケーションの時間を増やすことができた

④導入機器の使用は強制せず、できる職員から始め、成功している職員を見て他の職員が取り組み始めた

・・・という説明を加えられ、受講者は自施設で導入した場合に得られる効果や、導入する際のポイントなどについて考えを巡らせていました。

報告のまとめとして坂下委員長は「今回の成功事例を視察して、特養での業務改善や施設運営方針、そして職員の労働環境など、施設ごとで環境はことなるものの、とても参考になりました。これから皆さんの施設で介護ロボット等を選定、運用するにあたっては、『利用者の離床検知を早く知り、転倒や転落を防ぎたい』、『睡眠状態を把握したい』、『看取りや急変に活用するため、身体レベルを知りたい』、『職員間の業務運用をスムーズに行いたい』そして『人材不足を補いたい』など、何に力を入れたいのか、どの業務に人と時間を取られているのか、そして人じゃないとできないことなのか、人じゃなくてもできることなのかなど、自施設の問題点を考察し、見極めることが大事だと思います。そしてそのためにも介護職員が関連知識を深める事はもちろん、上層部の熱意も重要で、他の施設や業者からの情報収集が導入成功の鍵となります」と強調し、報告を締めくくりました。

(つづく)

「生産性向上の取り組み」学びました(看護介護部会:その4)

このような生産性向上の取り組みを通じ、マナハウスで上がった効果について、坂下委員長は次のように説明しました。

【生み出された時間で人員不足が解消された】

◯1日あたり610分、約10時間、常勤換算で1.25人分の時間が生み出された

◯浮いた人件費を介護ロボットの導入およびランニング費用に充当できた

【採用費用を削減できた】

◯離職を防止することができ、1人採用する際に人材紹介会社に支払う手数料(約100万円)を削減できた

◯専門学校ではメーカーや業者による介護ロボットの授業があるが、マナハウスでは介護ロボット導入施設であることを、SNSを通じてアピール。それにより「選ばれる施設」となり人材が集まり、求人活動費や紹介手数料が削減できた

マナハウスがこのような取り組みを推進する背景となった要因の一つに、介護業界介護業界全体が抱える課題があったそうです。

つまり介護人材の不足に加え、今後生産年齢人口が減少することから、その予測値をマナハウスの1フロアあたりの介護職員数(正職員)に当てはめると、2020年の8人が2030年には7.44人に減少し業務量は1.07倍に増加、さらに2040年には同6.44人、1.23倍になると試算。

「これでは続けられるわけがない。だったら今から働き方を変えるしかない」と、将来を見据えた生産性向上を推し進めたマナハウスの取り組みを聞きながら、受講者は各自の施設に当てはめながら耳を傾けていました。

(つづく)

「生産性向上の取り組み」学びました(看護介護部会:その3)

特別養護老人ホームマナハウス(福岡市)ではこれらのICTツールに加え、介護ロボットや自動体位交換エアマット、高機能オムツなどを積極的に導入、これらを組み合わせて生産性向上をはかっているそうです。

そのうち介護ロボってについて、マナハウスは走行式リフト、移乗サポートロボット、電動リフトチェア(入浴支援機器)を導入し、ノーリフティングケアを実践。6ヶ月後に行った腰痛調査では、腰痛者が減少したという結果が出たとのこと。

また自動交換エアマットは、15分ごとに小さな体位変換を自動的に繰り返す機能がついているもので、利用者の快眠を守り、介護者の負担を軽減するもの。これを導入することで職員が介助する体位変換は、6~8時間に1回のみという説明に、受講者は興味津々の表情で聞き入っていました。

そんな受講者を見渡しながら、坂下委員長はこれらを導入することで向上した生産性について、具体的な数値を用いながら次のように説明しました。

【介護ロボットを活用して生み出された時間】

①見守り介護ロボット、見守り支援システムの活用により、安否確認のための定期巡回が減り、所要時間が導入前の133分から80分に削減できた

②体位交換エアマットの活用により、体位交換回数が減り、所要時間が導入前の200分から40分に削減できた

③排泄ケアに関し、高機能オムツ選定と技術向上を通じ、1人1日あたりの平均交換回数が導入前の4.99回から3.24回に削減できた

(つづく)

「生産性向上の取り組み」学びました(看護介護部会:その2)

そんなマナハウスですが、10年前には30%もの離職があり、中でも「多くのスタッフで、ゆっくり介護をしたい人」が辞めていったそうです。

しかし現在は当時より1割少ない人数である一方、昨年度の離職率は0%。これは介護業務を切り出し、運転手や介護助手、そして清掃員に振り分けるなどしてスリム化を推進したことによるもので、その結果、人件費も当時の60%に抑えることができているとのこと。

介護記録については、2004年10月の開設時から記録システムを導入したものの、パソコン台数が少なく記録の順番待ちをしなければならないという問題が発生。そのようなことからシステムや端末の入れ替え、導入を繰り返し現在に至っているそうで、この日の研修会では現在稼働中のICTツールが紹介されました。その概要は次の通り。

《(1)記録システム》

①申し送り機能を活用し、情報収集。申し送りの内容は赤文字で表示

②各種帳票のカスタマイズができる

③アセスメント様式などダウンロード可

④サポートセンターに問い合わせ可

《(2)記録機器(端末)》

①タブレット:直接記録できる、一斉入力も可能、帳票閲覧もできる

②スマートフォン:直接記録できる、写真撮影し、記録取り込みに活用

《(3)音声入力システム》

①スマートフォンをポケットに入れたまま話すとAIが記録に関連する言葉だけを読み取り記録(ハンズフリー、インカム使用もできる)

②記録システムと連携し、情報共有を一気通貫でできる

③現場で作業しながらリアルタイムに記録できる(PCに戻らなくていい

③職員の声:「慣れるまでに時間がかかったが、繰り返すことで慣れてきた」「記録時間が短くなった

④職員の負担が軽減し、ケアの質向上につながった

⑤記録以外にインカムとして連絡機能がある

《(4)見守り介護ロボット》

①全ベッドに設置、マットレス下に敷く非接触型のセンサー

②離れたところでもWi-Fi環境があればパソコンやスマートフォンで、利用者心拍・呼吸・体動・離着床の状態をみることができる

③呼吸、脈拍が1時間に1回、自動で記録システムに記録される

④2時間ごとの巡視はしない(職員がするより性格)

⑤0.5秒ごとにモニタリングができ、正確に呼吸・脈拍を検知。看取りに活用

《(5)スマートフォン ナースコール》

①スマートフォンで受信、応答できる

②コールの履歴を自動記録

③連打の記録も残る

(つづく)

「生産性向上の取り組み」学びました(看護介護部会:その1)

看護・介護研究部会は11月9日(土)JAアズム別館3階302研修室で第2回の研修会「生産性向上の取組み」を開きました。33人が参加し、視察報告や事例発表などを通じ、生産性向上について学びを深めました。

研修会の司会は、視察に同行した介護老人保健施設ひむか苑の黒木慎一さん。開会にあたり「今回の研修で学んだことをそれぞれの施設に持ち帰り、今後の生産性向上に役立ててください」と呼びかけました。

まず、先進地施設視察報告として同部会の坂下和代委員長がマイクを握りました。この視察は同部会が会員老健施設を対象にしたアンケートの結果を踏まえて実施されたもの。視察先は福岡市西区にある社会福祉法人さわら福祉会特別養護老人ホームマナハウス。2004年10月に開設したマナハウスは全室個室ユニット型、特養60床、ショートステイ11床の施設で、介護付有料老人ホームが隣接しています。同部会では10月17日、委員等10名で視察を実施。施設概要や介護ロボット・介護ICT導入経過の説明を受けた後、2つのグループに分かれ、各フロアで導入後の活用常用について説明を受けました。

「医療に強い特養」、「誤嚥性肺炎になりにくい特養」、「地域に根ざした特養」という3つの特色に加え、「介護ロボットを使いこなす介護職」、「胃ろう、喀痰吸引を行う介護職」を全面に出し、「福岡で一番の特養」を目指しているマナハウス、過去8年間の介護職員の離職率は4.2%。これは2023年度における全国の介護職員離職率13.1%、および2022年の全産業離職率15.0%と比べて非常に低い数値となっています。また新卒者の人材も毎年複数名獲得できているなど、魅力ある職場となっているとのことです。

(つづく)

『老健』表紙写真募集中(全老健)

公益社団法人全国老人保健施設協会(全老健)では、機関誌『老健』(2025年4月号~2026年3月号)の表紙写真を募集中です

写真のテーマは「『老健施設』の日常」。全老健の役職員であればどなたでも応募可能です。

応募締切は令和6年12月13日(月)まで。応募条件や応募方法など、詳しくはこちらの全老健会員専用サイトをご参照の上、奮ってご応募下さい。なお閲覧には「ユーザー名」および「パスワード」が必要ですので申し添えます。

「外から見た老健」学びました(リハ部会研修:その19)

同様に「『足』は第2の心臓」について、「血流を回す一番の主役は心臓ですが、筋肉の中に無数に走っている血管を、筋肉が収縮することによって血液の送り出しをアシストしていますが、全身の筋肉も偏りがあります。約6割から7割は下半身に集中しています。だから『足は第2の心臓と言われるわけですし、足を使うと良いです』と説明します。また江戸時代の人の一日の平均歩数は3万と言われていますが、現在推奨されている高齢者の1日の歩数は、諸説ありますが男性が7千、女性が6千5百と言われています」と話したのに続き、「1日の『歩数』・『中等度の歩行』と病気予防の関係」についても、研究データをもとにイラストを用いてわかりやすく解説すると紹介しました。

さらに「歩くことだけが歩数のカウントではないです。料理を20分すれば1400歩に相当する、などといった『歩数換算表』を使い、これを渡して朝起きてから夜寝るまでの自分の行動を足し算し、男性なら7千歩行っているか、女性なら6千5百歩に達しているか、もし足りていなければ換算表から選んだものが目標になります。このようにしてセルフマネジメントすることが非常に重要です」といった実践方法を説き、加えて身体活動の強さを示す「メッツ」にも言及。「自宅での活動も十分運動に置き換わります。そうするとIADLが目標化しやすくなります」と応用法を紹介し、講義を締めくくりました。

その後、会場からの質問にも、わかりやすく丁寧に答えて下さった三浦先生に、感謝の拍手が送られました。

自らの経験と実践に基づき、また豊富なスライドを用いて進められた研修会は、明日からの各施設での取り組みに役立つ、大変有意義な研修会となりました。

(おわり)

「外から見た老健」学びました(リハ部会研修:その18)

研修もいよいよ終わりに近づきました。株式会社リエンズ看護小規模多機能型居宅介護リエンズおよび住宅型老人ホームリエンズの管理者で、作業療法士そして介護支援専門員の三浦晃先生の講義は「セルフマネジメントに繋げるための学習」に進みました。「利用者へのアプローチも大事ですが、老健は地域貢献活動も大切ですし、加算にも関わってきます。解釈は幅広いのですが、例えば住民教育をする場合もそれに該当します。みなさんがもしそういう立場になったときに一役買えればと思い、私がいつも使っているものをいくつかピックアップしてきました。元気高齢者のフレイル予防は国の大きなテーマです。高齢者の方は自分の健康に興味、関心があります。そういう時にかぎ括弧の中に空欄を設け、『かっこの中に何が入るでしょう』と問いかけるやりかたをするといいです」と言いながら「『  』は第2の脳!」「『 』は第2の心臓!」というスラドを示し、さらに続けました。「『手』は第2の脳、『足』は第2の心臓、ですね。シンプルにインパクトがあるキャッチーなスライドを作っておくと良いです」として「なぜ『手』は第2の脳なのか?」という解説として脳の機能局在の図や、脳の部位と身体の機能の対応関係をまとめた図として知られる「ホムンクルスの図」を示し、前頭葉は使わないと退化することや、脳の中で頭、顔、そして手を司る部分の割合が非常に大きいことから頭と手を同時に使う運動が認知機能に効果があるという話をするとのことでした。

(つづく)

「外から見た老健」学びました(リハ部会研修:その16)

「ケース分類と課題分類」に関して「今日、相談員の方も来られていたら参考になるかと思って準備して来ました」と言いながら「ケースのカテゴリー化」というスライドを示しました。これは縦軸に実態について「やっている」と「やっていない」を、そして横軸に能力の「ある」と「なし」に設けたマトリクス図を描いたもの。「新規の利用者の場合はこのマトリクス図を使います。これから入る利用者はどのカテゴリーに入るか?という大雑把な状態を示します。たとえば脳梗塞後遺症が重度で寝たきりの方で能力としてやっていない、実態としてもやっていない、という場合、目標とプログラムは悪化防止と介助方法になります。次に能力がなくてやっている、という場合、目標がリスク管理になります。認知症の方が大腿骨頸部骨折で入院、本当はまだ歩けないけれど歩こうとする場合がこれに該当し、リスク管理重視となります。能力があるけれどやっていない、これは不活発由来の方、フレイルの方がそうですが、目標とプログラムは『引き出して活用する』ということ。残る『能力があって実態としてもやっている』という方の目標とプログラムは『維持・向上に努めること』になります。このように、どこにカテゴライズされるかを最初に打ち出して、具体的な情報を伝えた方が、聞く側としてはわかりやすいです。能力がない方のカテゴリーは重厚なマネジメントが必要です。支援者が手厚く関わることが大事です。これに対して能力がある方のカテゴリーでは、支援者は黒子です。後方的または側方的な立ち位置で、本人は前に立つわけです。このように最初にどのカテゴリーになるかを伝えた方がわかりやすいです」と図解。参加者は納得しながら聞いていました。

次に「課題の優先性」では、縦軸に緊急度、横軸に必要度を取った図を示し、「緊急度も必要度も共に高いところにある課題こそ、先に取り扱うべきで、そこをアピールするはケアマネージャーの役目だと思います。そうすると目標の順番付けも変わってきます」と具体例も交えながら、新規の利用者へのアプローチがわかりやすく説かれました。

(つづく)

「外から見た老健」学びました(リハ部会研修:その15)

リハビリテーション研究部会がJAアズムで10月12日に開いた2024年度の研修会。講師には株式会社リエンズ看護小規模多機能型居宅介護リエンズおよび住宅型老人ホームリエンズの管理者で、作業療法士そして介護支援専門員の三浦晃先生を仙台市からお招きしました。

「テーマ1:外部から見えた老健の見え方とは?~居宅CMを中心とした老健の見え方・活用の仕方~」に続き「テーマ2:通所リハの利用者獲得に有効な手段とは~地域で生じている課題からニーズを読み解く~」に入りました。「大きく言うと施設であっても居宅であってもケアマネジャーのやるべきことの基本は同じです。ただし施設はひとつ屋根の下、勝手を知った仲間なので手続きをひとつふたつ飛ばしても問題ありません。居宅は厳しいです。ですから今日は居宅のケアマネジャーを軸にして話します」と話し始めました。

その最初の内容は「自立支援・介護予防の考え方」。「要介護認定を受けている人のうち、要介護2以下の軽度者が約7割を占めます。このうち半分以上にフレイルの要素があると言われています。フレイルは可逆性です。『ちゃんと適切適時に介入しれば治る』というのがフレイルの定義です。ですので軽度者の半分以上はしっかりとアセスメントして適時適切に短期集中介入すると基本は良くなります。中重度者の方は目の前に現れると片麻痺、歩き方異常など、見ればわかります。しかし軽度者は見ただけではわかりにくいです。ですからしっかりと家に行ってヒヤリングすることが大事です。例えばIADLに関して『私は掃除ができなくなった』という女性がいましたが、家に行ってみるととても綺麗にしている。それで尋ねると『換気扇の上が掃除できなくなった』ということでした。これは唯一無二の個人の価値観です。自宅に行ってヒヤリングしないとわかりません。ここをちゃんとケアプランに乗せてあげることが大事です。通所リハ生活行為向上リハビリテーション加算に代表されるように、迎え入れるだけではなく、アセスメント訪問もできるようになっています。ここを積極的に使うことが重要です。厚労省も平成27年に、能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく、生活環境の調整や、地域の中に生きがい・役割をもって生活できるような居場所と出番づくり等、高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチが重要であると説きました。ADLが良くなった、ではなく社会的な地位、価値観を高めることを目標に据えていきましょう、と軽度者の目標を掲げました」と実例を交えて説明。社会的な地位、価値観にアプローチし、しっかり自立支援しながら活動・参加を促すことの必要性を強調するとともに、それらの取り組みの様子を、許可を得た上で動画や画像で記録し、改善した実例を1枚のポンチ絵にしておくことと、それが広告材料としても有効であるとのことでした。

(つづく)

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