これらの特別講演に加え、特別企画として「生活を支えるスキンケア」、「ノーリフト講座」など「多分野のスペシャリストによるセミナー」も同時開催されました。そのひとつとして開かれた「耳からはじめる認知症予防への取り組み~老年期の聴覚機能の活用とヒアリングフレイル予防~」では、「ヒアリングフレイル」の提唱者で聴脳科学総合研究所の中石真一路所長が、満席の会場の壇上に立ちました。
「約1,430万人、全人口の約11.3%にあたる方が難聴です」と切り出した中石所長、その要因として老人性難聴者の増加が要因にあるとし、難聴によるリスクとして①社会との関わりを減らす、②認知機能の低下、③聴力低下はじわじわと進行し自分でも気づきにくい・・・、⑥話者の必要以上の大きな声により心理的圧迫を感じ「聞こえたふり」を生み出す・・・などを掲げた上で、「高齢者の聞こえに関する知識がないことで、本人も周囲も対策がないとあきらめてしまいます」と強調すると、受講者は一気に話に引き込まれました。
ヒアリングフレイルとは「聴覚機能の衰え」、すなわち難聴を意味するとともに、周囲の関わりが大きく変化し、フレイルに陥ることを含む新しい概念とのこと。この状態を放置することで他のフレイル同様、心身の活力の衰えが進み、認知症がうつ病が高まることが懸念されていると警鐘を鳴らした中石所長。その評価や予防の方法に触れながら、認知症ケアにおける難聴の認知症患者との意思疎通のポイントとして、話を伝える側が対話支援機器を活用してアプローチすることや、専門職だけでなく多職種連携による「地域包括ヒヤリングシステム」を構築し、「難聴の早期発見」の仕組みづくりなどを、スライドを用いて訴えました。
まとめとして①声量の設定、耳までの距離の確認、③話すスピードは相手のお話しされる速度の75%~80%程度、④マスクと口元に空間を作り動きやすくする・・・を上げ、「今日から、明日から実践してください」と締めくくった中石所長に、会場からは感謝の拍手がおくられました。 (つづく)