ソフト食学びました(栄養給食部会:その3)

 このように、摂食・嚥下の各時期およびそれぞれの問題点を述べた船ケ山副委員長。参加者を見渡しながら、「だから『高齢者ソフト食』なんです」と断言しました。そしてこの「高齢者ソフト食」の特徴について、次の6点を列挙しました。

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《高齢者ソフト食の特徴》

〇しっかりとした形がありながら 

〇口にとりこみやすく

〇まとまりやすく

〇移送しやすく

〇飲み込みやすい

 参加者は配られた資料にラインを引いたり、メモを取るなどして真剣に聞き入っていました。

 講義はその後、「高齢者ソフト食」を調理する上での工夫に関する内容に移り、次の4点がスライドを用いて説明されました。

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【「高齢者ソフト食」調理の工夫点】

(1)食材そのものの選択

・・・軟らかいもの、脂肪の多いものを選択する。

〇脂肪の多い魚類:カラスガレイ、銀ダラ、銀ムツ、鮭、はんぺん、スズキ

〇脂肪の多い肉類:しゃぶ肉、ミンチ肉

〇野菜類:山芋、里芋、アボカド、なす、パプリカ、玉ねぎ、ゆり根、根菜類

(2)つなぎに食材そのものを利用

・・・素材のテクスチャーを変化させたり、もとの形に整形したりするときに利用。

→卵白、卵の素(卵黄と油を同量)、くず粉、片栗粉、コーンスターチ、たまねぎ、上新粉、山芋、ポテト

(3)油脂の利用

・・・油脂は加えて口腔内でのすべりをよくする

〇動物性油脂:卵黄、生クリーム、サワークリーム、クリームチーズ、ラード

〇植物性油脂:サラダ油、オリーブ油、ゴマ油、練りごま、ピーナッツバター

(4)調理器具の選択

・・・軟らかく調理できるものが基本

→スチームコンベクション、圧力鍋、蒸し器、真空調理器、湯煎器、裏ごし器、電子レンジ、ブラストチラ?

 

 また、このようにして安全でおいしい「高齢者ソフト食」に取り組むことで何が変わるか?ということについて、船ケ山副委員長は「まず食欲が増して食事摂取量が増える、つまり経口摂取できる範囲が拡大します。このことは同時に残食量が減少することによる食材費の削減にもつながります。また、水分摂取量が増えるので水分補給剤の購入量も減らすことができます。さらにアルブミン値などの栄養指標が向上するなど、『高齢者ソフト食』に取り組む事は様々な面で大きなメリットがあります」と、参加者に「高齢者ソフト食」への取り組みを勧めました。

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(つづく)

ソフト食学びました(栄養給食部会:その2)

【摂食・嚥下の流れ】

 食に関して食べる人、作る人の尊厳、そしてそこから生まれた「高齢者ソフト食」について説明してきた栄養・給食研究部会の船ケ山
塁副委員長。「まずは安全に食べられることが大事です」と前置きし、摂食・嚥下(えんげ=飲み込むこと)機能について説明を行いました。

 この摂食・嚥下機能には(1)先行期、(2)準備期、(3)口腔期、(4)咽頭期、(5)食道期・・・の5つがあるとし、それぞれの問題と観察ポイントを、スライドを用いて次のように示しました。

(1)先行期】

・・・食物を見て認識し、どんな食べ物を、どのくらいの量を食べるのかを判断する時期。

《問題と観察ポイント》

〇食物を認識できない

〇ウトウトしている

〇ぼーっとしている

〇注意散漫

〇感情をコントロールできない

〇食べ物に無反応=口を開けない、スプーンが触れても口を開けない、など。

 

(2)準備期】

・・・食物を口の中に入れ、嚥下ができるように咀嚼(そしゃく=かみ砕くこと)し、食塊を形成する時期。

《問題点と観察ポイント》

〇口が開かない、開けてくれない

〇口が完全に閉じない

〇舌がうまく動くか

〇よだれが多いか、少ないか

〇唇が閉じられるか、左右差

〇咀嚼できない

〇歯や義歯の問題、筋肉が動かない

〇感情をコントロールできない

 

(3)口腔期】

・・・口腔内で食塊にされた食べ物を咽頭に移送する時期

《問題と観察ポイント》

〇舌の運動機能の障害

〇頬筋(きょうきん)の麻痺

〇口腔の感覚障害

〇飲み込む時に上を向く

〇飲み込みに時間がかかる

〇舌で口の天井を押しつけられるか

〇顎が噛みしめられるか

〇食物残渣が残るか

 

(4)咽頭期】

・・・食塊とされた食べ物が咽頭から食道へと運ばれる時期

《問題と観察ポイント》

〇声門がきちんと閉じない

〇咽頭閉鎖不全

〇輪状咽頭筋の弛緩不全

〇せき込み、むせ

〇がらがら声

〇嚥下後に声が変わる

〇喉に食物の残留感がある

〇鼻から食べ物が出てくる

 

(5)食道期】

・・・食塊を食道から胃へと送り込む時期

《問題と観察ポイント》

〇腫瘍による通過障害

〇アカラシア(食道の機能障害により飲食物の通過が困難となる疾患)

〇食べ物が喉につかえる

〇飲み込んだものが逆流してこないか

〇流動食しか飲み込めないか

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(つづく)

ソフト食学びました(栄養給食部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は1212日(木)介護老人保健施設ひむか苑会議室で研修会を開きました。会員施設から20人が参加。講義や試食を通じ、「高齢者ソフト食」について学びました。

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 この「高齢者ソフト食」は、潤和リハビリテーション診療研究所の客員研究員で、農学博士でもある管理栄養士の黒田留美子先生が開発、普及をはかっているもので、全国から高い評価と関心を集めているものです。研修会はまず、ひむか苑の管理栄養士で同部会の船ケ山
塁副委員長がスライドを用いて高齢者ソフト食について講義を行いました。

 

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【「食」と「尊厳」との関係】

 「辞書をひもとくと、『尊厳』とは『尊く厳(おごそ)かなこと。気高く犯しがたいこと』とあります。例として『人間の尊厳を守る』というように用いられますが、私達は老健施設で働いていますので、”要介護高齢者の尊厳が守られている食事とは?”という観点で考えてみましょう」と切り出した船ケ山副委員長。この「尊厳が守られている食事」として(1)その人のために作られた食事、(2)その人の状態(摂食・嚥下能力)と嗜好(好み)を考慮して作られた食事・・・などを例示しました。

 一方、「尊厳が守られていない食事」として(a)嫌いなもの・苦手なものばかりで作られた食事、(b)薬が紛れ込ませてある食事、(c)あらかじめ刻まれたり、つぶされている、あるいは見た目に配慮のない食事・・・などを挙げた上で、「皆さんの施設で提供している食事はどちらでしょうか?」と、参加者一人一人に問いかけました。

 

【あなたたちの尊厳】

 その上で、「利用者の尊厳が守られた食事」を提供することは、「自らのプロフェッショナリズムを堅持する必須のこと」として、利用者の尊厳だけでなく、「私たち食事を提供する側の、プロとしての尊厳を守った食事」という考え方にも言及しました。このことに関して、「利用者の尊厳が守られない食事を提供することは、それを提供する専門職がプロでないということ。提供する側が食べたくないようなものを出していれば、プロとして失格です」と断言。

これらの事を踏まえ、「だから『高齢者ソフト食』なんです」と強調した船ケ山副委員長。心や体がが若いころのように自由に動かなくなって、自尊心が傷つけられ、以前のように自分らしいふるまいができなくなった高齢者に、「動物のエサ」のような食事を提供することは許されないという思いから、「高齢者ソフト食」ができ、現在に至った経緯を説明しました。

(つづく)

大会スナップアップします(第22、第24分科会)

  1114日と15日に開催した、「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」の分科会の写真をアップしてきましたが、本日で最期です。撮影できなかった分科会や発表者等があったり、画質が良くなかった写真があったことをお詫び申し上げます。

  最終日の本日は第22分科会と第24分科会です。


【第22分科会】
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【第24分科会】
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(おわり)

第11回大会開催します(重要)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会の第11回研究大会を、平成26419日(土)、宮崎市のサンホテルフェニックスで開催します。

 開催時間や内容、演題募集の詳細などにつきましては、追ってお知らせいたします。会員施設の皆様はもとより、広く宮崎県民の皆様の保健医療の向上および福祉の増進に寄与できるよう、充実した大会にして参りますので、皆様のご理解、ご協力方お願い申し上げます。

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