研修会開きました(リハ部会)その3

 引き続き、「老健施設におけるリハビリ」と題し、菜花園(西都市)の理学療法士、濵砂好治さんが講演しました。かつて同一法人の病院に勤務していた濵砂さん。異動で老健に勤務するようになって間もない頃、介護スタッフから「リハビリで筋力や関節可動域が改善しても、生活場面での介助状況は何も変わっていない」と言われ、少なからぬショックを受けた体験談から切り出しました。

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しかし、それが老健のリハ専門職として、「生活が改善するリハビリとは?何をすればいいのか?」と自問し、利用者様の機能面から生活面へ見方を変えていくきっかけになったのだそうです。見方を変えていくポイントは、入所者様や他職種の相談に耳を傾け、なるべく迅速に(その日のうちに)答えていく事。自分の専門外の事だと考えず、生活の一部として受け取り、その中で専門性を活かして考察・分析し、生活改善の結果を出していくことだと力説しました。また、その際には問題となっている現場に行って、実際に確認することが大事で、それが利用者様の「生活を視る力」をつけることになり、「訓練室では利用者様の生活が見えにくいが、現場で生活を視る力がつけば、生活場面として使える実際的な訓練も提供していけることになる」と付け加えると、参加者達はうなずきながら聞き入っていました。

これを踏まえて乗り移り動作や食事、車椅子に座る姿勢へのアプローチ方法、またこれらを改善するための福祉用具の活用方法など、実例を示しながら説明がありました。生活状況の改善を考える場合、その人の機能面ばかりにとらわれるのではなく、総合的に機能を活かせる生活環境も考えることが重要とのことでした。そこで必要になってくるのが介護者への理解。「残存機能を活かしていない、過度な介助にならないためには、過度な介助を行わないような状況をリハスタッフが考え、他職種が理解し、統一して行ってもらえるような取り組みをしていかなければならない」と、生活リハビリを全職種が意識して展開するために、リハスタッフの役割が大切であることを強調しました。

また、会場のPT、OT、STに対し、「技術者(専門職)ほど危ないものはない。”なんでもわかっている”という体質や過信は変化を拒み、硬直化を招くし、様々な問題が生じても、原因を自分以外に求めがちになる」と注意を喚起しました。そして、「『協働』とは相手を知り、共有すること。他職種のことをよく知って、相手に協力してもらえるような提案をしていきましょう。老健の使命は在宅復帰。そのためにも自分たちから変わっていきましょう」と参加者に呼びかけました。

研修会には若手からベテランまで、幅広い年代のリハスタッフが参加し、熱心に聞き入っていました。それぞれの老健施設でのリハビリテーションのあり方を見直す、またとない機会となりました。(終わり)

研修会開きました(リハ部会)その2

 続いて講演は家庭復帰へのポイントについて移りました。これに関して中村さんは、

1.ご家族様の評価と意識づけ

2.退所前後訪問による具体的な課題の共有と連携

3.排泄手段の確立

3つを挙げ、それぞれについて以下の通り説明を加えました。

1.ご家族の評価と意識づけについて】

 入所前に介護者の就労の有無、健康状態、介護可能な時間帯や内容、介護に対する意欲などを多角的に評価したり、入所判定会議でおおよその入所期間を決定することなどを通じて利用者様やご家族に家庭復帰を意識付けし、意味の無い入所の長期化を防ぐことができる。

2.退所前後訪問による具体的な課題の共有と連携】 

 生活環境を評価することで利用者様の生活イメージを把握したり、生活上の課題を共有でき、また居宅ケアマネージャーや在宅サービス提供者と連携しやすい。さらに家庭復帰後も往復型利用へとつなげることができる。

3.排泄手段の確立】

 家庭復帰の条件として「排泄動作の自立もしくは軽介助でできること」を挙げるご家族が多いが、特に脳卒中片麻痺で、麻痺側上肢がほとんど機能していない方の場合、トイレ動作が困難であるなど、排泄問題が解決しないために入所が長期化するケースが多い。そのため、日中・昼夜に分けて排泄手段が確立することが重要。

 

 このうち、「3.排泄手段の確立」に関して、中村さんは「下衣の上げ下げの動作におけるバランス保持が困難になりやすい」と述べ、その一因が既存のトイレ用手すりにあると指摘しました。これは、材質が硬い上に壁離れ寸法も6~8?しかなく、寄りかかりにくく、手放しで立位を保持し、下衣の上げ下げができないとのこと。この問題を解消するため、中村さん自らが考案し、商品化した支持型手すり「手すりの立人(たつじん)」が、排泄動作の自立や介助量軽減に功を奏していることを紹介しました。この「手すり立人」は、既存の手すりと異なり、壁離れを20?に広げるとともに、手すりに軟らかい素材を巻くことで握りやすく、寄りかかりやすい構造となっているもので、既に実用新案登録および商標登録済みとのことです。

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 最後に近年のリハビリテーションの考え方について言及し、日々進歩するリハビリテーションの理論や技術を、文献を収集するなどして学んでいく必要があると訴えました。(つづく) 

研修会開きました(リハ部会)その1

 (社)宮崎県老人保健施設協会リハビリテーション研究部会は91日、宮崎市のKITENビル大会議室で全体研修会を開きました。県内会員施設のリハビリテーションスタッフ等61人が参加しました。

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 最初の講演は「在宅復帰率30%を目指すリハビリ」。講師は同委員会委員長であるこんにちわセンター(都城市)の理学療法士、中村豪志さん。今年度の介護報酬改正の概要を踏まえ、在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定する要件となる”在宅復帰率30%“を達成するためのリハビリスタッフの役割について説明がありました。

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 「在宅復帰率」とは、「全退所者数」のうち、「『在宅復帰』された人数」の占める割合(つまり、「在宅復帰」された人数/全退所者数)で、今回の改正で死亡退所者が除かれるとともに、当該入所者が要介護4または5の場合、在宅生活期間が14日でも在宅復帰とみなされるようになりました。この在宅復帰率を高めるために中村さんは、

(1)関節可動域、筋力、バランス能力、日常生活活動能力、歩行能力などの身体能力を向上する

(2)記憶力、高次脳機能、コミュニケーション能力など、認知機能を向上する

(3)住環境の整備など、物理的環境を整備する

(4)家族の介護力強化など、人的環境を整備する

(5)フォーマルサービス、インフォーマルサービスなどを適切に利用し、社会環境を整備する

5つのポイントを示しました。

 一方、「在宅」とはみなされない(医療機関などへの)退所を減らす対策として、

(a)誤嚥性肺炎などの予防に努め、急変による(「在宅」以外の)退所を防ぐ

(b)転倒事故や感染症などを防ぐため、適切なリスクマネジメントを行う

2つをあげ、これらはリハビリスタッフだけでなく、老健に勤める全ての職種が一緒になって取り組まなければならないことを強調しました。(つづく)

全体会開催します(支援相談部会)

 (社)宮崎県老人保健施設協会支援相談研究部会は928日(金)14時から、宮崎市の宮崎観光ホテルで部会の第1回全体会を開催します。講師に財団法人潤和リハビリテーション振興財団潤和会記念病院の医師、櫛橋弘喜先生を招き、『医療依存度の高い高齢者への対応』と題し、講演をしていただきます。

 この全体会はどなたでも参加できます。参加費として老健職員は1500円が必要ですが、その他の方は無料となっております。

 くわしくはこちらをご覧の上、920日(木)までにお申し込み下さい。多数のご来場をお待ちしております。

 この全体会へのお申込みおよびお問い合わせは、介護老人保健施設しあわせの里の支援相談員、笠原 章寛(TEL0987-55-4800FAX0987-55-4507)までお願いいたします。

人材育成セミナー開きました(事務長会)その3

 続いて、管理者のマネジメントの重要課題として片腕の育成について学びました。宮野社長は新たな時代における複視経営に必要なものとして、優秀な管理者(リーダー)を育成し、中間職員(片腕)の定着をあげ、特に中堅職員が定着しなければ、サービスの質は良くならないと強調しました。

 片腕育成のマネジメントの仕方として、(1)課題を発見し、(2)片腕と考え、(3)目標を設定、(4)期限を決定し、(5)解決していく、という一連のプロセスを説明があり、その際に使用する「課題解決シート」や、具体的な行動計画「ステップ表」などに触れながら、具体的な手法が紹介されると、参加者はメモを取るなどして、聞き入っていました。

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 これらを踏まえて宮野社長は、「孤軍奮闘ではだめ。人間一人でできることはたかが知れています。いろんな価値観を持った人が意見を出し合って計画を立てるから、良い計画ができるのです。皆で課題を共有し、役割を持って解決していくからこそ、良いチームケアができるんです。皆さん次第です。ただし、重荷に感じることはありません。片腕の人と話し合って、一緒にいろいろやっていけば、二人が三人、三人が四人と増えていきます。頑張ってやってみて下さい。やれば確実に違いが出てくると思っていただいていいです」と呼びかけました。

 限られた時間の中ではありましたが、人を育て、組織を育てていく上で、具体的で実践的な内容の濃い講演となりました。(終わり)

人材育成セミナー開きました(事務長会)その2

 講師には日本化薬メディカルケア株式会社の宮野
茂代表取締役社長を東京からお招きし「人材育成のマネジメント ?職員をどうやって育てるか??」と題し、講演をしていただきました。

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 宮野社長は他にも社会福祉法人うらら副理事長や、東京都福祉サービス評価推進機構認定評価者、一般社団法人ホスピタリティ機構特別顧問、帝京大学薬学部非常勤講師なども務められる一方で、全国をまたにかけての講演も数多くこなされています。

 講演ではまず、マネジメントの基礎知識に始まり、福祉事業の基礎づくり(マネジメント)、管理者のスキルチェック、マネジメントスキル、組織マネジメント(目標管理)、目標達成のプロセスなどについて説明がありました。

 この中で、マネジメントスキルには次の通り3つの力と10の要素があるとのことでした。

【課題解決力】

(1)課題発見力:現状を分析し、本質的な問題を明らかにする力。

(2)論理的思考力:課題を的確にとらえ、論理的に考える力。

(3)実行力:課題解決・目標達成に向けて確実に行動する力。

【リーダーシップ力】

(4)状況把握力:ものごとの状況や関係性を理解し、適切に対応する力。

(5)指導力:他者に働きかけ、やる気にさせ目標に向かわせる力。

(6)自己コントロール力:自分の感情や行動をコントロールできる力。

【コミュニケーション力】

(7)話す力:自分の意見をわかりやすく伝える力。

(8)書く力:正確な記録や読みやすい報告文などが書ける力。

(9)聴く力:他者の意見を丁寧かつ正確に聴くことができる力。

(10)話し合う力:他者の意見をふまえ建設的な議論ができる力。

 

 また、組織マネジメント(目標管理)については、介護現場の管理者に「到達すべき目標設定」「計画作成」「管理(モニタリング)」を委ねることで、事業サービスの成果の最大化を目指す組織マネジメントが必要であるとのことでした。その中で管理者の役割として、次のようなことを学びました。

○ビジョンを提示し、「課題」「目標」に向かってチームメンバーをまとめ、勇気づけ、実現に向かって「やま」を登る。

○「課題」「目標」を解決するプロセスの中で必要となるコミュニケーションスキル(部下を「ほめる」「叱る」方法)を学ぶ。

○片腕と課題を共有して、一緒になって解決する。そのために片腕の育成と成長が不可欠。

○自分がしなければならないことを知る(整理する)とともに、片腕に仕事を割り当て、片腕と仕事の手順、計画、成果を合意形成するなどしてチーム作りをしていく。

 これらを踏まえて、宮野社長は「管理者が常に目標・課題を意識して行動しているかが非常に大事!」と強調されました。(続く)

人材育成セミナー開きました(事務長会)その1

(社)宮崎県老人保健施設協会事務長会は826日、宮崎市の宮崎観光ホテルで人材育成のマネージメントセミナーを開きました。県内会員施設等から140名の受講がありました。

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 このセミナーは、中間管理職の人材管理および育成がテーマ。開会にあたり挨拶に立った、同事務長会の川?豊彦委員長(グリーンケア学園木花)は「私たち事務長会では色々な問題について検討していますが、その中で最重要でなおかつ急がなければならないのが本日のテーマである人材育成のマネージメントです。現在様々な高齢者の施設が急激に増えている一方で、そこで働く人材が一気に増えているかというとそうではない。施設間で人材を奪い合っている状態で、どこの施設も人材の問題を抱えている現状です。また、ご利用者やご家族の世代が変わって来ているが、当然新入職員の世代も変わってきています。世代が変わるということは、皆さん中間管理職が過ごされてきた時と環境が違うということであり、価値観も違ってくる。そうなると、指導する立場の私たちが変わらなくてはならないのではないでしょうか。そういったことを本日はご指導願いたいと思っています。今日のセミナーが、皆さんが明日からそれぞれの施設で中間管理職として働く上での何らかのヒントになればと思います」と呼びかけました。(続く)

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夏のクラクションが聞こえるかも?

 831日です。8月も終わりです。海沿いのカーブを白いクーペで曲がったら、夏も終わるのでしょうか・・・って、これは稲垣潤一の「夏のクラクション」ですね。これは優しすぎる女性に甘えすぎていたために別れてしまった事を反省しながら、もう一度彼女とやり直せないだろうか、と二年以上経っても想い続ける男性の悲哀を歌った名曲です。

この「夏のクラクション」、831日に車中で聴く曲ナンバーワンソングと言っても良いのではないか、と個人的に思うところであります。実際に歌の通りにやった人もいるのではないでしょうかって、かくいう私もその一人ですが(^_^;)

 ただし、傷口にジンを注いではいけません!痛いどこの騒ぎじゃ済みません。また、傷跡をナイフで触れてもいけません。傷口が開きます。そしてもちろん、クラクションは不必要に鳴らしてはいけません。周囲に迷惑がかかります。それどころか、道路交通法第54条(警音器の使用等)第2項の規定によりますと、クラクションは警笛区間や危険な場合以外には使用してはならないとのことで、これに違反した場合、2万円以下の罰金又は科料なんだそうです。

 それにしても、「夢をつかまえて」と泣きながら波間で手を振っていた彼女は今頃どうしているのでしょうか?別な誰かと幸せに暮らしているのでしょうか?そして失恋した男性の夢はかなったのでしょうか?今から29年前、1983年のヒットソングです。白いクーペはもう廃車でしょう。二人とも介護保険の保険料を支払う年齢になっていることは間違いないようですが・・・。でも、耳を澄ませば、今でも「誰かのクラクション」が聞こえるかも?って、これは尾崎豊の曲でした。

 とにかく831日です。「夏のクラクション」を聴きながら、ちょっとしんみりした気分になるのも悪くないかなあ、と思った次第です。ちなみに、宮崎県の海岸線は約400キロメートル。走って、みますか?

終わらない夏

 行く夏を惜しむかのように、若者達が寝る間も忘れて青春を語り合う姿を見かけます。若さっていいものですね。

 そんな光景を見ていると、「少年たちの終わらない夜」という小説を思い出しました。著者は鷺沢
萠(さぎさわ めぐむ)さん。河出書房新社から初版が1989929日、そして1992220日には23版が出ていますから、読まれた方も多いかもしれません。ドラマ化もされたんじゃなかったでしょうか。

 この本は、表題作の他、「誰かアイダを探して」「ユーロビートじゃ踊れない」「ティーンエイジ・サマー」の4作品からなります。高校生から高卒、大学生(19歳)までのエネルギッシュだけれど、やり場が無い、煮え切らない、多感で微妙な年頃を描いています。タイトルからして、若さムンムンです。

 ただし、内容そのものは、そんなに重たいものではありません。軽く読み進めていくことができます。ところがそうは問屋が卸さない。読んでいくにつれて自らの若かりし頃の思い出が蘇って来るのです。別に小説の内容が自らの体験と重なるわけではないのですが、作品のストーリーと自らの思い出が、頭の中で同時に進行し、展開していくような、そんな不思議な感覚になってしまうのがこの本の魅力じゃないかと思います。

 読み終わったらちょっとセンチメンタルな気持ちになってしまいます。何だか著者の思うつぼにはまったかな?と思いますが、別に悔しくもありませんし、むしろ「あの頃を思い出させてくれてありがとう」という感謝の気持ちが湧いてきました。夏の終わりのこの時期にしんみりできる一冊です。

 なお、作品中で未成年者が飲酒したり、喫煙したりするシーンが出てきますが、当然ながら当協会は未成年者のそれらの行為を薦めるものではありません。作品は薦めますが、未成年者の飲酒、喫煙は法律で固く禁じられていますので申し添えます。

認知症高齢者300万人

 新聞各紙やテレビ、ネットなどでも報じられている通り、介護が必要な認知症高齢者が、2012年に300万人を突破したと厚生労働省の推計で分かったそうです。825日付けの宮崎日日新聞によると、これは10年間で倍増したとのこと。高齢化の進行や認知症が周知され、受診が進んだことが背景にあり、その数は今後も増加し、2025年には470万人、65歳以上人口に占める割合は12.8%になるとも書いてありました。

 さらに記事は続き、「2010年時点での在宅介護は認知症高齢者の5割にとどまり、病院や施設の入所から、地域介護への移行が進んでいない実態も浮き彫りになった」と書かれていました。これは要介護高齢者の在宅復帰を使命とする老健施設に勤める者の一人としては読み過ごせない一文です。

来年度から実施予定の認知症施策の中で、「看護師や作業療法士でつくる専門家チームが認知症と思われる高齢者宅を家庭訪問し、早期の医療支援に当たる」とのことですが、老健施設としても、このような情勢に鑑み、全職種が一体となって取り組んでいかなければならないと痛感した記事でした。

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