「九月の空」は五月におすすめ

 五月なのですが、「九月の空」という本を紹介いたします。著者は高橋三千綱。河出書房新社から出されたのは昭和53年ですから、今から34年も前です。第70回芥川賞受賞作品です。

 剣道に打ち込む高校一年生、小林勇が主人公。その道を極めたい勇が、仲間や先輩、異性、そして姉や両親と接する中で、悩みながらも成長していく物語です。同年齢の石渡は他校の生徒。剣道一家に育つ石渡に、勇はどうしても勝てない。その一方で、同級生の松山との間に芽生える想い。「バー・ヨーコ」でのバイト。父は売れない画家、それを支える保険外交員の母。快活な姉。そんな中で苦悶する勇は果たしてどういう成長を遂げていくのでありましょうか・・・。

 とまあ、そんな内容なのですが、なぜゆえこの5月に「九月の空」を薦めるのか?というと、この作品は「五月の傾斜」、「九月の空」、「二月の行方」の三部構成からなる純然たる青春小説なのです。さわやかなのです。剣道に打ち込む高校一年生の勇の姿が、みずみずしい感動を与えるのです。五月の澄み渡った空、そして薫る風のように、青い、青い、どこまでも青い青春ストーリーなのです。そして本の表紙もこれまた青!青春のすばらしさを再認識させられる名作。これはもう、五月に読むっきゃない!です。

 これを読むと、自らが青春時代に戻ったような、みずみずしく、すがすがしく、そしてちょっぴり甘酸っぱい気持ちになりました。そして、青春に定年はないのではないか?とも思いました。すなわち、老健施設の利用者様に対しても、若々しい、生き生きとした気持ちを持ってもらいたい!過ぎ去った、あるいは謳歌できなかったそれぞれの青春を、今こそ満喫してもらいたい!!と、そんな気持ちになる一冊です。主人公の勇が現存していれば、当年とって50歳になるところですが、34年前であることを感じさせない、新鮮さすら覚える作品です。ぜひご一読あれ。

夢がもたらす幸福

 本日514日は、歌人斎藤茂吉の誕生日。今年は生誕130年になります。茂吉の息子がどくとるマンボウこと北杜夫であることは有名です。さらに杜夫の兄は斎藤茂太。これまたベストセラー作家です。3人とも医者であり文筆家。すごい父子だと、今さらながら感服してしまいます。残念ながら、皆故人となってしまいましたが、それでも3人がのこした作品は、これからも多くの人々に読まれ、生き続けることでしょう。

 このなかの一人、斎藤茂太は、著書「いい言葉は、いい人生をつくる」(成美文庫)の中で、次のように行っています。

 「お金がもたらしてくれる幸せは、はかりしれない。だが、夢がもたらしてくれる幸せのほうが、それよりもずっと大きいのだ」。

 著書のタイトル自体もすばらしいのですが、この名言、やはり父である斎藤茂吉の影響を少なからず受けていると思えてなりません。皆の命を救う医者として、そして皆に夢と希望を与える文筆家として2人の子供を育て上げた斎藤茂吉。きっと「夢をもてよ」と説いて育てたのでしょう。世が世ならばベストファーザー賞ものです。

 茂吉にあやかって、今日は一首吟じてみてはいかがでしょうか。

笑う門には

 「笑う門には福来たる」と言います。今さら解説するのもなんですが、広辞苑には「いつもにこにこしていて笑いが満ちている人の家には自然に福運がめぐって来る」とあります。そんな「笑い」を医療の現場にも取り入れようという動きが広がっているという記事が、421日の朝日新聞に載っていました。その見出しもしゃれていて、「処方せん 皆で『ガハハ』」。

 これによると、笑いはストレス解消や血糖値を抑える働きなど、健康への効果が期待できるという研究結果もあるとのこと。記事には「大阪発笑いのススメ」という大阪府発行の冊子の内容がイラスト付きで紹介されていて、笑いの効果としてそのほか「免疫が活性化して病原菌に強くなる」、「血流が増えて脳が活性化する」、「アレルギーの反応が軽減される」などの効果が紹介されていました。実際に愛知県での病院では、笑いに意識的に深い呼吸をするヨガをする手法を加えた「笑いヨガ」を取り入れて効果を上げているのだそうです。すごい!笑いごとでは済まされない「笑い」の話です。

 当協会がさきごろ発行しました「老健みやざき 25号」の中で、みどりの丘の木佐恵美さんが、「すきな言葉」として、次のように紹介されていました。

 

 ☆人は笑う時ハッハと笑う(8×8=64)

 ★人は泣く時シクシクと泣く(4×9=36)

  ***64+36=100***

 人生は笑うことの方が多い。

 

 さあ皆さん、笑いましょう。利用者様といっしょに笑って、心も身体も元気になろうではありませんか(^o^)

渡るかりがね

 「わたるかりがね 乱れて鳴いて 明日はいずこの ねぐらやら」(名月赤城山)。「のぼりはたはた 夕雲見れば わたるかりがね 故郷は遠い」(旅役者の唄)。このように「わたるかりがね」は股旅ものの懐メロにしばしば登場してきます。「かりがね」とは「雁が音」。「広辞苑」には「ガンの鳴き声。転じて、ガンのこと」とあります。秋の夕暮れ、編隊を組んで西空を渡っていくかりがね。これに遠くの方から鐘の音が響いてこようものなら、なんとも哀調があって泣けてきます。哀調が・・・・・、(>_<)!!

 間違えました。<(_ _)>「哀調」ではなく、「愛鳥」です。そして「かりがね」は秋の季語でありまして、「愛鳥」はまさしく今日でございます。本日510日からの1週間は愛鳥週間です。野鳥をかわいがる週間であります。ただし、ご存知の通り、宮崎県に限らず全国を震撼させた鳥インフルエンザの脅威はいまだ払拭されたわけではなく、無防備に野鳥を愛護するのもどうかと思われるところです。

 名目は「愛鳥週間」でも、野鳥に限らず、この宮崎の豊かな自然そのものを見つめ直し、愛する週間ということで考えると良いのではないでしょうか。しかもこの薫風たおやかなる五月という季節。郷土の空と緑と太陽のすばらしさ、そしてそこに息づく生きとし生けるものの魅力を感じながら愛鳥週間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

漢字のふりがな

 歌手の欧陽菲菲(オウヤンフイフイ)さんは、歌詞にふりがなをつけていたのだそうです。といっても、ひらがなではありません。漢字・平仮名・カタカナ・アルファベットなどが入り交じったいわゆる「日本語」の歌詞に漢字をふって、それを読んで歌っていたとか。「こーぬかー、あめふるー、みーどーおーすーじー」(雨の御堂筋)と迫力満点の歌声で聴く者のハートをしびれさせていましたが、その裏側ではこのような苦労もされていたと知ると、頭が下がる思いです。

 広辞苑をひもとくと、「漢字の傍にその読み方を示すためにつける仮名。傍訓」とあるのがふりがな(振り仮名)です。そうです。ふり「仮名」ですから、ひらがな、もしくはカタカナでつけるのがふりがなであって、「漢字のふりがな」というと、その表現は正しくはありません。

 それはそうとしても、最近思うのです。今の社会で用いられている言葉が、高齢者にとって理解し辛いのではないのか?と。特にIT化が進んだ現代、その関連用語は難解なのではないでしょうか。また、”TPP“などのようにアルファベット3文字前後で表す言葉もあまりにも多すぎると感じます。

 実際、先日NHKラジオに耳を傾けていたところ、「現代の流行語の意味がわかるよう、漢字をふって欲しい」旨の高齢の方による投書が紹介されていました。ユニバーサルデザイン(この言葉自体も理解困難?)が提唱されて久しい今日この頃ですが、外来語を含めた現代の日本語にも、ふりがな・・・じゃなくて「ふり漢字」をつけて、みんなが使い勝手よく日本語を使えるようにすることも、考えるべき時に来ているのではないでしょうか。

断簡零墨

 「断簡零墨」と書いて「だんかんれいぼく」と読みます。タレントの名前ではありません。「断簡」は「切れ切れになった書きもの」、「零墨」は「書いたものの切れはし。墨跡の断片」という意味です(『広辞苑』より)。つまり、メモです。走り書きです。

 多くの職種が共に働く老健施設。それぞれの専門性が必要とされる職場だけに、勤務中にいろいろな事があります。確かめるべきこと、連絡するべきこと、記録するべきこと、準備するべきこと、相談するべきこと、そして忘れてはいけないこと・・・。それは自分の専門の事に限らず、他職種の分野の事が少なからずあるわけです。

そんな色々なことを一つ残らず、しかも正確に記憶できる人がいれば、それはそれで素晴らしい事です。『記憶力を伸ばす技術 LEARN TO REMEMBER』(産調出版)という本を著したドミニク・オブライエンという方は、世界記憶力コンテストに8回も優勝(2002910日時点)した、コンピュータ並みの記憶力の持ち主です。012つの数字だけが無作為に2385個も延々と並べられた列を30分以内に記憶するというとんでもない世界記録(上記と同時点)を持つ彼のような方ばかりであれば、断簡零墨なんて必要ありません。しかし、そんな記憶力とは無縁の方は私だけではないはず・・・。

 「びぼう」のために、断簡零墨をとりましょう!「びぼう」って「美貌」のことかって?失礼(_ _)。「備忘」です。備忘録があると、「あれ?なんだったけ?」という事態に陥ることを防ぐことができます。もちろん、紙切れ一枚の走り書きでも構いません。失念を回避できるだけでなく、後々に重要な資料、情報、証拠になることだってあります。

55日の宮崎日日新聞には、ソフトバンクグループが社内業務で紙を一切使わない「紙ゼロ」の取り組みを始めたと報じていました。全社員(2万人!)に支給しているiPadを用いることで紙を不要にするそうですから、これが断簡零墨の代わりになるのでありましょう。しかし、いずれにせよ何かに記しておくことが肝要と言えます。チラシの裏面を活用しても構いません。走り書きは大事です。

 なお、「走り書き」に関して注意点を2つ。1つめ。実際に走りながら書くのは非常に困難で、後から見直しても解読不能に陥る恐れがあるばかりでなく、前方不注意になって転倒や衝突の危険性が非常に高いのでおやめ下さい。2つめ。「走り書き」にぎょうにんべんがついて「徒書」となると、これは「いたずらがき」。すなわち落書きとなります。場合によっては犯罪になる恐れもありますので、絶対におやめ下さい。

研修会を開きます(看護介護研究部会)

 (社)宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は68日(金)、宮崎市のニューウエルシティー宮崎で管理者研修会管理者研修会を開きます。時間は13時から1630分まで(12時半より受付)。

 講師に総合メディカル株式会社の小宮裕恵先生を招き、管理職に必要な「部下のやる気を引き出すコーチング」「管理職のリーダーシップとコミュニケーション」について学びます。

 なお、参加費として一人500円が必要です。参加申込み締め切りは521日。お申込みおよびお問い合わせは介護老人保健施設春草苑(担当:仮屋、TEL0985-39-8899)までお願いします。詳しくはこちらをご参照ください。

黄金週間に悲劇週間?

 世の中はゴールデンウィークも終盤となりましたが、老健施設に勤務されている皆様におかれましては、それとは関係なく日々業務に励んでおられるかと存じます。

 さて、私事でありますが、一昨年、すなわち平成22年の黄金週間の頃、「悲劇週間」という本を読んでおりました。別に休めないことへの当てつけでは決してありません。たまたまです。まったくの偶然です。ほんとですってば。

 著者は矢作俊彦(やはぎとしひこ)、文芸春秋から2005年の1215日に第1刷が出ていました。時代は明治から大正にかけて。メキシコに赴任したエリート外交官の息子が主人公でした。詩人を志す彼が、メキシコ革命後の内乱に巻き込まれていく様を描いたものでした。大統領の親戚にあたる美しい女性と恋に堕ちるのですが、果たしてその結末は・・・。  

著者がすごく力を入れているのが伝わる長編大作で、倒置的な表現が繰り返し用いられ、作品に一定のリズムを与えていました。また、夏草そよぐ中にたたずむ白い衣装の女性を描いた(?)表紙の絵にもひかれました(著名な画家が描いた作品だったのではないでしょうか)。

 タイトルとはうらはらに、黄金週間を「悲劇的」ではなく過ごすことができました。もしご興味がある方がおられましたら、ご一読を。

雑草とは何か?

 「雑草とは何か?その美点がまだ発見されていない植物である」と言ったのは、アメリカの思想家で、詩人でもあるR.W.エマーソン(「生きる勇気がわく言葉」、夏村波夫編、雄鶏社)。これは「人には必ずいい所がある。めげず、あきらめず、努力を続ければ、必ず能力は開花する」という事を言わんとしているようです。英語のことわざには、”Every dog has his day.“(誰にでも得意な時代があるものだ)というのもあります。自分の特技や、いいところがわかっている人もいれば、そうでない人もいるはず。お互いにいいとこを見つけ合っていくことで、雑草は名花へと変身していけるのではないでしょうか。

 所変わって日本には、「五月蕨(わらび)は嫁に食わせるな」ということわざがあります(「暮らしの中のことわざ辞典」、折井英治編、集英社)。これは、「5月のわらびはおいしいので、こんなうまいものは嫁に食わせるな」という意味だそうですが、それはないんじゃない<(^´)>。しかし、雑草にも見えなくもないワラビに美点を見いだし、最初に食べた人はすごいと思います。

 それはそうと、庭の雑草がどんどん生えてきている今日この頃です。草むしりをするべきか?はたまたそのまま伸ばして美点を見つけるべきか?悩める今日この頃です。えっ?「悩まずむしれ」って!?(-_-;)

天岩戸神社春季大祭

 52日と3日の両日、高千穂町の天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ)の春期大祭が行われます。ご存知、天照大神(アマテラスオオミカミ)が暴れん坊の素戔嗚尊(スサノオノミコト)に立腹、隠れ込んだのがこの天岩戸。そして世界は闇に閉ざされたのでした。

 さあ、これは困った!!何とか光を取り戻さねば、と八百万(やおよろず)の神が相談し、日向神話最大のダンスイベント(?)を開催。天鈿女命(アマノウズメノミコト)が天岩戸の前で踊ったのでした。しかも上半身裸で(*^_^*)

あまりの賑やかさに「おやっ!なんだろう?」と思った天照大神、そっと岩戸を開けたところ、ここぞとばかり登場したのが日向神話最強のアスリート、手力男命(タヂカラオノミコト)。しっかと岩戸をつかむと、自慢の怪力でこじ開け、えいやっ!と投げ飛ばしたその岩戸、なんとなんと!長野県は戸隠まで飛んで行ったのでした。そして世界に光が蘇ったのでした。めでたしめでたし。・・・ん?待てよ!

古事記編さん1300年を迎えた今年、つまり2012年の521日の朝。何とこれと同じ現象が起きるじゃあありませんか。そうです。金環食です。太陽が岩戸、じゃなくて月に覆われ、世界が闇に包まれてしまうのです(金冠なので、真っ暗闇ではありませんけど)。しかも、我らが宮崎県は串間市が絶好の観測スポットとのこと。歴史は繰り返すと言いますが、さすがは日本最古の歴史書、古事記。日向神話はノンフィクションであったことが、今改めて証明されようとしているわけです。やったあヽ(^o^)丿!・・・ん?もう一度、待てよ?

するってえとなんですか。月の裏側には天照大神が潜んでおられるってわけですかい?でもって、表側からは天鈿女命が半裸で踊りを捧げるとなると・・・こりゃあ大変だ(_😉。今の日本でそれをやっちゃまずいっスよ。あと、手力男命が月をつかんで、どっちに放り投げるのか?それも心配。間違っても地球に投げちゃあヤバイっスよ?(o)/!

それはともかく、古事記編さん1300年で盛り上がる宮崎県で、めったに見られない天体ショーが拝めるのは意義深いものを感じます。安全面に十分配慮して、利用者様と一緒に金環食を楽しめるといいですね。今から当日の好天を祈りたいと思います。

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