「海になみだはいらない」は、灰谷健次郎の著書です(新潮社)。表題作をはじめ、「きみはダックス先生がきらいか」、「ひとりぼっちの動物園」の3つの作品が収められています。さらに「ひとりぼっちの・・・」は、5つの小作品からなっています。
この作品を読んいて「はっ!」としたのは、次のページにたどりついた時でした(以下、同作品より抜粋)。
あなたの知らないところに
いろいろな人生がある
あなたの人生が
かけがえのないように
あなたの知らない人生も
また かけがえがない
人を愛するということは
知らない人生を知るということだ
これは、上記「ひとりぼっちの動物園」の冒頭に載っています。
老健施設に勤める者として、利用者様の日常生活活動能力を把握することは当然です。しかしそれだけでいいのか?という問いに対する答えが、この言葉にあると思います。私たち職員は、自らの生活、かけがえのない人生のために老健施設で働いています。そして利用者様の人生もまたかけがえがないもの。利用者様がこれまで歩んできた人生の歴史を知り、そしてこれからの人生に思いを寄せること。「利用者様を愛すること」はそういうことではないでしょうか。愛情のこもったケアプランのもとで、愛情あふれるケアを提供していくために、利用者様の人生を知りたいと思った、そんな一文との出会いでした。