協会活動報告

苦情処理セミナー開きました(事務長会:その5)

【対応時の禁止行為・対応例】

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研修会も終盤になり、長谷 真秀美(ながたに まほみ)先生による講義は、苦情への対応方法に移りました。対応時の禁止行為として長谷先生は次の7項目をあげました。

《対応時の禁止行為》

(1)相手の主張をさえぎらない

(2)議論をしない

(3)責任転嫁をしない

(4)挑発にのらない、挑発しない

(5)頭から否定しない

(6)相手のプライドを傷つけない

(7)暴言をはかれたら、毅然とした態度で対応する

 この中で、「(4)挑発にのらない、挑発しない」については、『気に入らないのなら他の病院(老健)へ行ってくれ』とか、『あなたのような患者(利用者)はうちではみられない』などといった発言は、『診療拒否(サービス提供拒否)をした』と相手方に主張させる材料を与えることになりますので厳禁です」と釘を刺しました。

 その後、「通報するぞ」、「訴えてやる」などの”脅し文句”や、「誠意を見せろ」、「どう責任をとってくれるんだ」などの「曖昧な要求」などといった苦情内容への対応方法について、具体例を示しながら説明すると、受講者は自らの業務上の経験と照らし合わせながら学び取っていきました。

 

【患者(利用者)への対応:接遇とマナー】

研修会の最後に、長谷先生は患者(利用者)とどのような態度やマナーで接するべきかについて言及しました。

その中で患者(利用者)との接遇の心得として「誠意を持って公平に接する」、「迅速に適切な対応をする」、「明るい笑顔で親切に」の3つをあげました。また、マナーの五大要素には、(1)身だしなみ(髪型、服装など)、(2)挨拶(お辞儀、「オアシス」運動)、(3)態度(立ち振る舞い、姿勢、生活態度)、(4)言葉づかい(敬語の使い方、電話対応、対面応対)、(5)表情(明るさ、笑顔、視線)・・・の5つがあることを説明しました。

また「第一印象が重要です」とした上で、「メラビアンの法則」を紹介しました。これは、「人物の第一印象は、初めて会った時の3ないし5秒で決まり、またその情報のほとんどを視覚情報から得ている」というもので、それによると初対面の人物を認識する割合は、「視覚情報(服装・外見・表情)」が55パーセント、「聴覚刺激(話し方・声の大きさ・抑揚)」が38パーセント、そして「言語情報(話の内容)」はわずか7パーセントのみとのことでした。

これを踏まえて長谷先生は「患者(利用者)と向き合う際の自己チェックポイント」として「笑顔:相手を緊張させる表情になっていませんか?」、「まなざし:上からの『みてやっている』になっていませんか?」、「ことば:『ひとことが足りない。無意識、無自覚の『ひとこと』が胸をグサリ!』の3つを呈示しました。

そして最後に「これらを日頃から注意することで、苦情は減っていきます。患者(利用者)や家族とのコミュニケーションで心がけたいことは、『安心と信頼の関係』をつくることです。患者(利用者)や家族と”ウインウイン(Win-Win)の関係を構築していって下さい)と締めくくると、具体的でわかりやすく、実践的な内容が盛りだくさんの講義をして下さった長谷先生に、受講者から感謝の拍手が送られました。

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(おわり)

苦情処理セミナー開きました(事務長会:その4)


 続いて長谷先生は苦情対応をするにあたり、「こういう言い方はするべからず!」という禁止事項を、スライドを用いて次のように解説しました。

《苦情対応における「べからず」》

(1)「私に言われてもわかりません」

・・・患者(利用者)は医療機関(老健施設)という組織全体を一つの対象としてみている。

(2)「たぶん」、「とりあえず」、「・・・のはずだと思います」

・・・相手に「無責任だ」という印象を与える。

(3)「ですから・・・」、「何度もご説明しているのですが」

・・・言われた相手は馬鹿にされたと感じ、怒らせてしまう可能性がある。

(4)「普通は、・・・」、「他の患者さんは、・・・」

・・・相手は、異常者扱いされたと感じ、怒らせてしまう可能性がある。

 

これを踏まえ、電話対応の注意点として、「電話は声のみのコミュニケーションです。表情や身振り手振りが見えないため、声だけで意思疎通しなければなりません」と述べ、具体的には「丁寧な言葉づかいを心がける」、「外部の人に対して、身内への尊敬語は使わない」、「電話を切る際には、『失礼します』の一言を」、「保留のリミットは『30秒』」等の項目をあげて受講者に注意を促しました。

その後、具体的な電話対応の流れについて説明があり、電話に出て名乗るところから、相手の用件を把握し、その内容に応じた適切な対応をした上で終わりの挨拶を述べて電話を切るまでにおけるまでにおけるポイントを学びました。その中で長谷先生は「メモを取りながら用件を聞いて下さい。人間の記憶はあいまいですから、必ずメモをとる習慣をつけてください」、「受話器を取れば、誰しもが会社(施設)を代表して電話をかけている(受けている)ということを忘れないで下さい」など、電話対応における実際的な手法や心構えなどを詳しく解説していきました。

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(つづく)

苦情処理セミナー開きました(事務長会:その3)

【電話対応のケーススタディ】

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 苦情対応のポイントに続き、電話対応のケーススタディに移りました。DVDで「悪い例」と「良い例」をドラマ仕立てで制作された教材を観ながら、学びました。

悪い例では、処方された子供の薬の中にネジが入っていた事について、母親が問い合わせの電話を入れたところ、電話を取った女性職員が主治医につなぐため母親を長時間待たせたあげく、待たせたことへの謝罪もないまま「先生は診察をされていて電話に出られません」と身内に尊敬語を使って説明。それでまず気分を害した母親は、「それじゃあ薬剤部につないで下さい」と言うと、女性職員は要件も伝えず薬剤部に電話をつないだため、「何も聞いてないんですか!?」と母親はあきれながらも、再び同じ事情を薬剤部のスタッフに説明します。「ねじが入っていた?そんなばかな!本当ですか?まさかそんなことはあり得ないんですが・・・」と謝罪の言葉も無いどころか、相手を疑う言葉を連発。とどめにとばかり、通りがかった事情を知らぬ薬剤部長に「患者からのクレームなんですが」と受話器を押しつけます。「薬剤部長ですが、どうしましたか?」とまたまた要領を得ない切り出し、しかも「クレームなんですが」の声が母親に筒抜けだったため、怒りが頂点に達した母親は、「もういいです!!!誠意が感じられないので役所に連絡して指導してもらいますから!!!」と電話を切ったのでした。

 あまりにもひどい例に、受講者は半ばあきれながらも、これまでの自らの応対に反省点はなかったか、ふり返りながら見入っていました。

 続いて観た「良い例」では、「粉薬の1回分の量が多いのではないか?」と電話してきた母親に、女性職員は訴えを傾聴した上でまず謝罪。そして「いつ気付かれましたか?」と尋ね、健康被害の可能性を考慮し、先手を打ちます。まだ服用する前に気付いた事を確認すると「それはよかったです」と、事故が無かったことに対して共感の意を表しました。そして相手を落ち着かせながら、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを巧みに使い分けて状況を把握、主治医への確認に時間を要すると判断した彼女は、「1時間以内には連絡できると思いますので一旦電話を切らせていただきます」と断って受話器を置きました。また氏名や電話番号などの個人情報を尋ねる際には(処方内容を確認するため、折り返し電話をかけるためなど)その目的を伝え、了承を得る配慮も見せていました。その後、薬の量が多いことが確認され、彼女は母親に電話をかけ、「大変お待たせいただきました」、「やはり倍の量を出していました。大変申し訳ございませんでした」、「今後このようなことが無いように充分注意いたします」と謝罪すると、母親の表情は和らぎ、安堵の笑みが浮かびました。それで終わり、ではなく、他に言いそびれたことがないか?という最終確認を行うと、母親のわだかまりは雲散霧消。病院、そして彼女にすこぶる良い印象を残して受話器を置いたのでした。

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 思わず拍手を送りたくなるような内容のDVDでした。受講者は長谷先生の解説を聞きながら、さらに理解を深めていました。「1例目と2例目を観ていただいてわかった通り、対応のしかた一つで苦情がクレームになるか、ウィンウィンになるかが違ってきます」という説明に、大きくうなずく受講者の姿も多数見られました。

(つづく)

苦情処理セミナー開きました(事務長会:その2)

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【苦情とクレームの違い】

「苦情とクレームはちょっと違います」と話し始めた長谷先生の言葉に、受講者は耳を傾けました。その違いとは次のようなものでした。

「苦情(coplaint):医療機関、老健施設への不平・不満の表明。「訪問介護事業所のヘルパーさんの言葉遣いが良くない」、「デイサービスの送迎車の運転手の運転が下手で怖い」というのが苦情。

苦情に対しては正確かつ迅速な対応が必要。不誠実な対応をするとクレームに発展する可能性がある。

「クレーム(claim):医療機関、老健施設に対する何らかの要求行為。例えば「デイサービスでトイレ介助中に介護職員の介護技術が未熟だったため転倒させてしまい、骨折」し、クレームに。

 クレームに対しては、根拠とその妥当性の判断が必要。悪質・過度な要求に対しては特別な対応をとる。

 

【苦情対応のポイント】

 これを踏まえ、苦情対応のポイントとして、長谷先生は次の5つをあげました。

(1)何かしらの不平・不満やクレームであれば、まず謝罪する

・・・施設に非があるなら当然、状況が詳しくわからない場合でもまず謝る。施設に非がなくても、利用者に不快・不安な思いをさせたことに対するお詫びの意味で謝罪は大事。

(2)傾聴する

・・・相手を落ち着かせるためとにかく話を聞く。言いたいことを言い終えるまで反論弁解をせず、時折共感のフレーズ(「ご心配をおかけしましたね」、「ご不安だったでしょうね」など)を交える。※「聞いていますよ」という態度を示すこと!

(3)状況把握に努める

・・・一通り話を聞き、相手が落ち着いたら、状況把握のため質問形式で情報収集。

(4)事情の説明、または解決策の提案

・・・ささいな行き違いがあり、その場の説明で済むと思われる場合には施設の事情やその理由などを自ら説明して了解を得る。何らかの確認や具体的な対応が必要な場合、次にとるべくアクションを忘れない。

(5)最後の一言を忘れない

・・・陳謝の言葉、感謝の言葉を忘れないこと。また再発防止の姿勢を表明する。

 

 この説明の中で、長谷先生は「”傾聴”の体験をしていただきたいと思います」と、受講者に21組になってもらいました。これは、一方が「最近起こった楽しいこと」を2回、それぞれ3分間ひたすら話し、他方がそれを

 ○1回目:「そんな話聞きたくない」という態度を示して聞く

 ○2回目:「話を聞かせて下さい」という態度で一生懸命聞く

という方法で行われました。

 

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(↑1回目の様子。片肘ついた態度に「なんか話しにくいなあ」)

 

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(↑2回目の様子。話す相手を見つめて聞き入る態度に思わず身振り手振りが)

 

受講者からは「1回目ではとても悲しくなりました。せっかく楽しい話をしているのに、なんでそんな態度をとるのだろう、と涙が出そうになりました」などの感想が聞かれました。これを受けて長谷先生は、「話を聞かない態度には色々なやり方があります。そっぽを向いたり、足や手を組んだり、何かをしながら聞いたりすると『あなたの話を聞いていませんよ』という態度になります。『傾聴する』には、相手の目を見て、『一生懸命聞いてますよ』と伝えて聞いていくことがとても大事になってきます」と説明。利用者やご家族、あるいは職員同士で話をする上で、傾聴することの大切さを学ぶ貴重な体験となりました。

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(つづく)

苦情処理セミナー開きました(事務長会:その1)

  (公社)宮崎県老人保健施設協会事務長会は215日、宮崎市の(財)潤和リハビリテーション財団本部で「苦情初期処理セミナー」を開きました。会員老健施設職員や特養およびグループホーム関係者など100人が受講しました。

 この研修会は、同事務長会が会員施設を対象に行ったアンケートの中で、「各施設において苦情が入ってきたとき、それを拡大させないために第一報に対する対応処理が聞きたい」という要望が多かったことを受けて開催したもの。予定していた80名を大幅に超えるこの

日の受講者数は、その関心の高さを伺い知ることができるものでしたが、スタッフは総出で座席数を増すなど、会場設営や受付に追われました。

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(予想を超えた受講者で満員の会場。後ろの皆さんには机が準備できない事態となってしまい申し訳ありませんでした)

開会にあたり同事務長会の川崎豊彦委員長は「介護保険サービスになって13年経ちました。その中でご利用者やご家族の世代も下がってきています。これに伴い、私どもに向けられるご批判などの苦情は多種多様化しており、どの施設でも苦慮しているところではないでしょうか。これに対する最初の対応が曖昧で不適切だと、更なるお怒りを買うこととなり、苦情処理をする際にその対応の悪さからお詫びしなければならず、本題に入れないということにもなりかねません。本日学んだことは自分だけのものにせず、帰ってそれぞれの施設の人に伝えていただけるようなセミナーにして欲しいと思います」と挨拶しました。

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(予想を超える多数の受講者に感謝の意を表した川崎委員長)

講師にお招きしたのは、潤和リハビリテーション振興財団潤和会気記念病院医療安全管理室で医療安全管理者を務められている長谷 真秀美(ながたに まほみ)先生。看護師である長谷先生は日本看護倫理学会、そして医療の質・安全学会の会員であるとともに、日本医療メディエーター協会の認定する医療メディエーターでもあり、「患者やその家族との間で意見の食い違いなどが起こった場合、仲介役を担う医療対話推進者」として平成224月より同病院安全管理室で活躍されています。

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(第一声から会場の空気をなごやかにした長谷先生)

言わば「苦情処理のプロフェッショナル」から、実際的で実践的な話しを聞こうと会場を埋め尽くした受講者を見渡しながら、長谷先生は「今日は『苦情初期処理セミナー 患者さんとのコミュニケーション』というタイトルで、病院での対応を中心に話をさせていただきますが、『病院』を皆様方の『施設』に置き換えて聞いてくださるといいと思いますのでよろしくお願いいたします」と笑顔で話し始めました。その好印象を与える身振りと、わかりやすい柔らかな語り口調から、日常の業務の中で、患者様やご家族といかに良好な人間関係を構築されようと努められているか、その片鱗が早くも垣間見られた瞬間でした。

(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会:その3)

  この日(213日)の栄養・給食研究部会の研修会では、講演に先立ち平成26年度における同部会の活動計画が検討されました。事前に会員施設に対して行ったアンケートでは、来年度聞いてみたい講演や、施設間で交換したい情報(献立、行事食の工夫、個別対応など)の内容、調理スタッフの腰痛予防法、そして高齢者ソフト食を導入する上での勉強会の方法等が上がっていることが、同部会の船ケ山 塁副委員長から報告されました。

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(船ケ山副委員長による事業計画の説明)

 さらに、来年度はこれまでの講演形式による研修会だけではなく、新たに栄養・給食に関する施設等の見学や現場実習等も検討されていることが報告されると、参加者からは高い期待と関心が寄せられていました。

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 同部会は会員施設の栄養・給食スタッフに限らず、広く県民の保健、医療および福祉の増進に寄与することを目的に、様々な人を対象にした事業を展開していく方針とのことです。その詳細は今後ホームページ上で紹介・告知・参加募集をしていく予定ですのでお楽しみに。

(おわり)

研修会開きました(栄養給食部会:その2)

 栄養・給食研究部会の研修会(213日、於:ウェルシティー宮崎)、午後からは同部会の委員長である介護老人保健施設慶穣塾理事長の瀧井 修先生による講演「高齢者への薬の使い方」がありました。

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 講演ではまず、薬物療法における高齢者の特徴として、「多病多医多薬」、つまり多臓器にさまざまな疾患が発生し、多くの病院にかかり、多くの薬を種類・量ともに使うことから、重複投与や併用禁忌投与が生じやすい事を学びました。

 次に臓器の機能低下と薬物の吸収・排泄の変化について、「薬物動態を決定する重要因子は吸収と排泄」と前置きした瀧井先生は、高齢者の特徴として、(1)消化管からの吸収は、加齢による影響は比較的少ない、(2)腎臓の機能低下は大きい(腎臓の薬物排泄の指標であるクレアチン、クレアランスは高齢者になると3分の1に落ちる)、(3)肝臓は年齢による影響は少ない、(4)薬物に対する反応の変化として、加齢により過敏になるものや、感受性が低下するものなどがある・・・をあげたのに続き、(5)服薬効率、つまり「きちんとのんでもらえるか?」という”コンプライアンス”の問題に言及しました。「薬の種類や量が多くなると、服薬法が複雑になります。一方高齢者は視力や聴力が低下し、指示が読めなかったり、聞こえなかったりする上に、記憶力や理解力も低下します。さらに指先が不器用となって薬をこぼしてしまうこともありますので、老健では看護師が薬のセットから服薬までを管理しなければなりません」と老健施設における高齢者への薬の使用の難しさを指摘しました。

 このことを踏まえ、高齢者へ薬物を投与する際のポイントとして、(1)薬物の種類と量を少なくする、(2)少量から投与する、(3)他医から投与されている薬剤もすべてチェックする、(4)服薬法は単純・明快なものとする、(5)扱いやすく飲みやすい剤形とし、説明は大きな字で書く、(6)期待される効果と出現する可能性のある副作用をわかりやすく説明する、(7)血中濃度測定可能なものは目安として利用する・・・などをスライドに示して説明し、「高齢者の薬物療法は気をつけてやっていかなければなりません」と言い添えました。

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 これに続き、高血圧および糖尿病の薬物療法について、それぞれの分類や特徴を踏まえた説明がわかりやすく行われました。まず高血圧については、その病因分類を示した上で、薬物療法の開始時期を説明。そしてライフスタイルの適正化に関して、「体重過多の場合には減量」、「週に3回から5回の運動を続ける」、「塩化ナトリウム摂取量を1日あたり6グラム未満に抑える」、「充分なカリウム、カルシウム、マグネシウムを摂取するような食事を工夫する」など、食事療法と運動療法のポイントを示しました。

 また、糖尿病については、診断基準を示したのに続き、食事療法のポイントとして「個人個人のライフスタイルを尊重すること」と、個別対応の食事療法の必要性を強調。そのために「食事の嗜好や時間(食習慣)、そして身体活動量をよく聴き取って下さい」と呼びかけました。さらに考慮すべき事項として、現在の血糖値や血圧、血清脂質などのコントロール状況や肥満歴の有無、エネルギー消費量などを列挙した瀧井先生は、「食事療法も運動療法も、充分な動機付けとやる気、そして長期の継続(柔軟性)が大事です」と、受講者一人一人を見渡しながら語りかけました。

 講演終了後はティータイム。なごやかな雰囲気の中で瀧井先生は、受講者からの質問に身振り手振りを交えながら気さくに応じていました。また今回が栄養・給食部会の今年度最後の研修会であることから、この一年間の部会の活動を皆で振り返りました。楽しい中にも明日からの業務につながる、充実した一日となりました。

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(つづく)

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(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会:その1)

(公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は213日(木)、宮崎市のニューウェルシティー宮崎で研修会を開きました。22人が受講し、口腔ケアや高齢者への薬の使い方などについて学びました。

午前中は来年度の事業計画の検討会に続き、一般財団潤和リハビリテーション振興財団潤和会記念病院リハビリテーション歯科の清山美恵先生による講演「歯科医による口腔ケア」がありました。 

清山先生は2005年に九州大学歯学部を卒業後、同学部顎口腔外科や宮崎歯科福祉センターを経た後、同病院に勤務し、現在に至っています。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の学会認定士であり、摂食・嚥下のスペシャリストとして活躍中です。また、記念病院歯科診療室で月曜から土曜まで診療を行っておられ(土曜日は12時まで)、この日も「白衣を着たまま駆けつけようかと思いました」と言われるほどのご多忙の中を縫って来て下さいました。

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「私は他とはかなり違った歯科医師であり、診療内容も変わっています」と切り出した清山先生。同病院リハビリテーション歯科のホームページ(http://www.junwakai.com/center_info/info_top/info_14)には、「院内に平成23年4月1日にリハビリテーションを主の目的とした歯科が新設されました。常勤歯科医師1名、常勤衛生士2名でスタートし、入院患者様の口腔ケア、摂食・嚥下リハビリテーションに関わっていきます」と紹介されています。うまく「食べたり飲み込んだりする」ための指導を行う”摂食・嚥下リハビリテーション”や、そのための嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査などを実施。さらに脳血管疾患においても、「早期にリハビリテーションで介入することで昨日回復が早くなる」との観点から、発症後すぐの意識のない時からICUに入っての口腔ケアも行っているそうです。

講演では摂食・嚥下のメカニズムに始まり、誤嚥性(嚥下性)肺炎や窒息の危険性、摂食嚥下障害の種類の説明がありました。その中で、好きなものなら食べられるものの、嫌いなものだと摂食困難になる事があるという「嗜好による摂食障害」がスライドを用いて説明されると、日頃それぞれの職場で利用者の栄養管理に携わっている受講者は、自らの仕事を振り返りながら聞き入っていました。

続いて、摂食時の観察のポイント、摂食訓練のしかた、歯科治療や嚥下訓練により栄養状態が改善した事例が紹介され、受講者は「口から食べる」事の重要性を再認識していました。

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さらに、介護保険における経口移行加算や経口維持加算等、また口腔機能維持管理体制加算や口腔機能維持管理加算などの内容と算定基準、必要書類について、誰にでもできる誤嚥リスクの検査法を交えながら説明がありました。その中で日本における死亡原因について、平成24年に肺炎が脳血管疾患を抜いて第3位に上がった事を踏まえつつ、口腔ケアを実施することで肺炎を予防する効果があることを、実際のデータを示しながら説明が行われると、受講者はメモをとるなどして口腔ケアの重要性を再認識していました。

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講演も終盤になり、清山先生は虫歯ができる条件について、「時間」、「甘いもの」、「口腔内細菌」、そして「歯そのもの」の「4つが全部揃ったときに虫歯ができます。だからどれか1つをなくすことで虫歯を防ぐことができます」と説明。引き続き口腔ケアの具体的な方法や使用する道具、義歯(入れ歯)の洗浄方法などについて、スライドを用いて具体的に説明しました。そして、「キーワードは他職種の連携です。多くの職員がその専門性を活かすことで、利用者に多くの効果をもたらすことになりますし、結果的に施設職員も楽になります。私も皆さんと協力して、やれることがあれば対応できるようにしたいと思いますので、相談して下さい」と呼びかけると、受講者からは感謝の拍手が送られました。

(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その4)

【ケアマネジメントを定着させるケアマネージャー】

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 明石先生による研修も終盤になりました。「ケアプランは利用者さんの要望をもとに、楽しく生きていただくために作っていることを意識して下さい。ADL(日常生活活動)ももちろん大事ですが、それだけではなく、自尊の欲求や自己実現の欲求もあり、そこがかなわないと生理的欲求が満たされないという人もいます。ケアマネージャーをやっていて、「あなたと出会えてよかった」と言われることもあるでしょうが、それは結果論であって、求めてはいけません。根拠のあるケアプランを作り、根拠に基づくチームを作り、ケアを実践し、それで生活の質が上がればそれが本当の喜びです。このように根拠に基づくものを浸透させていくのがケアマネージャーです」と前置きし、ケアマネジメントを定着させるケアマネージャーに求められるものとして、次の8項目を示しました。

 

(1)利用者お一人お一人の個別性の把握(アセスメントの活用・更新)

・・・「誕生日に好きな食べ物を提供する」などアセスメントを盛り込むこと。アセスメントがケアプランの根拠になるものであり、アセスメントをとったら満足、ではだめ。また家族関係などいろいろな事が変わっている場合もあり、更新をしていくこと。

(2)組織のケアの状態の把握(利用者本位はどこまで実践できているか)

・・・施設をただの箱にしてはいけない。「あなたを信じて入所したのに、現場は違う」ということのないように。

(3)職員へのケアプランの浸透(ケアマネジメントの実践→現場のケアマネを作らない)

・・・トップリーダーの方針を末端まで浸透させるのがマネージャーの役割。

(4)チーム・ワークによる個別ケアの統一化

・・・チームができるためには目標地点を明確にすることが条件。高校野球における「甲子園優勝」のように、目指すところをはっきりと示す。

(5)モニタリングとフィードバックの機能

・・・モニタリングを行い、かならずフィードバックをすること。現場に「やってみてどうだったか?」と聞きに行くことで現場もやっていけるし、フィードバックしないと「慣れているやり方、楽なやり方がやりやすい」とやらなくなってしまう。

(6)ケア会議の充実化

・・・生活の質の向上に重点を置いて行う。

(7)利用者の家族との話し合い、ケアプランの確認、モニタリングの報告

・・・ケアプランをちゃんと実践した結果がどうだったかを家族に示していないと、「おたくのケアではだめだ」と言われることもあり得る。家族に伝えるとともに、職員にも伝えることがケアマネの役割であり、そのことにより職員もやる気が出てくる。

(8)根拠に基づいたケアの実践の推進

・・・根拠に基づいたケアを実践することでケアワークの専門性も向上する。

 

【最後に】:『活き活きとした生活』を支える専門職として・・・

 講義あり、グループワークありと、内容盛りだくさんも終わりを迎えました。明石先生は受講者を見渡しながら「どうぞ皆さん、専門性を取り戻して下さい。発揮して下さい。そうすると利用者本位のケアは実現します。利用者本位を実現する条件は3つあります。1つめはこの専門性を発揮することです。2つめ、利用者本位はみなさんの根拠に基づく創意工夫によって実現します。3つめ、「利用者本位はどうやったら実現するか?」を考え続ければ実現します。できないこと探しはだめです。できること探しを続けて下さい。みなさんどうぞいいリーダーになりましょう」と呼びかけると、会場からは惜しみない拍手が贈られました。

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(おわり)

研修会開きました(ケアプラン部会:その3)

【ケアマネジメントとは】

 「ケアマネジメントとは、ケアを通して利用者さんが自らの生活・人生・生命を人間らしく、自分らしく生きることを実現するために行う、人事、サービス、コミュニケーション、リスク等における総合的、効果的なスキルです」と明石先生。車が坂道を上っている図を示しながら、「車を運転しているのは利用者さん、目標地点は人間の尊厳。しかし(上り坂なので)阻害され、自分の力で維持できなくなります。そこでケアマネジメントが必要になります。施設ケアマネージャーは『施設における利用者さんの、生活・人生・生活の質を高めるためにケアを運営・管理するプロフェッショナル(専門職)』です。みなさんがいないと成り立たないのです」と、ケアマネジメントを実践する上で施設ケアマネージャーの存在が不可欠であることを強調しました。

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 また、ケアマネジメントを行う中で、多くの施設ケアマネージャーが医療と福祉のはざまで悩みを抱えている事に触れ、「”看護と福祉とどちらが上か?”という話があるが、専門性が違うだけであって上とか下とかというものではありません。専門性が違うだけです。つまり、医療が支えるのは『生存』、そして福祉が支えるのは『生活』で、2つとも必要なのです」と、それぞれの専門性を活かした発想の転換を呼びかけました。そして「大好物のアンパンが食べたい」と訴える糖尿病のある利用者のケアマネジメントを例に挙げ、「『なんでアンパンなんか食べたの!』と叱られたのでは生活の質は高まりません。福祉の発想から『どうしたらアンパンを4分の1個食べられるだろうか?』と考え、そしてそれに基づくケアを行い、実際にアンパンが食べられたらその人の生活の質は上がります」と説明すると、受講者達は身を乗り出して聞き入っていました。

 

【ロールプレイで本来の施設ケア学ぶ】

 続いて受講者はあらかじめ分けられていた9つのグループごとにロールプレイを行いました。「脳梗塞による左片麻痺の入所利用者Aさん」という事例に基づき、Aさんとその子供、ケアマネージャー、そして施設職員の4人の役にそれぞれなりきった受講者達は、新たなケアプランを立てるための話し合いを行いました。ケアマネージャー役の受講者はAさん本人および子供の要望を聴き、施設職員とその要望を実現するためにはどのような事ができるかを協議。施設側としてAさんの要望を実現するためのケアプランを作成し、それをAさんらに伝え、Aさんらがその内容についてイエス・ノーの反応を示すという一連の流れを実践する中で、利用者が人間らしく、その人らしく生きることができるための聴き取りのポイントやプランの立て方、説明方法等について学んでいきました。

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「ケアプランは本来楽しいものです。利用者さんとわいわい話ながら、どうしたらその人が人間らしく、楽しく生きていけるか?それを考えながら作れば楽しいものなのです」との明石先生の言葉に、それまでの考えを改めるようにうなずく受講者の姿も見られました。

(つづく)

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