協会活動報告

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その15)

【活気ある職場の条件】

 活気ある職場の条件として、まず上司や先輩へ期待するものとして、次の8項目があります。

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 次に職場へ期待するものとして、次の8項目があります。

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【まとめ】

 医療・施設などは、人の命を預かっているため、企業など他の業種のパワハラと基準とは、少し異なるところがあります。しかし万が一、管理者がハラスメントと指導の違いへの認識が低かったり、ハラスメントを起こしていたりすると、その部署全体の雰囲気が悪くなったり、被害者がメンタル系の病気になったり、他の職員も「そのハラスメントの様子を見るのが辛い」と退職したり、皆のモチベーションが下がり、生産性が低くなることがあるかもしれません。

 また、現場は患者様・利用者様がいらっしゃり、万が一指導と思って発している職員の怒鳴り声などが、毎日毎日外来・病棟・施設などから聞こえていたならば、病状でしんどい思いをされている皆様に不快感やストレス・不信感を与えてしまうことになってしまいます。

 加えて、内部間のハラスメントだけでなく、患者様・利用者様へのセクハラの問題などにも気をつけましょう。職員側では治療・検査・看護・介護と認識している言動が、患者様・利用者様側には、セクハラと誤解を与えている場合もあるからです。それらの状況を、どのように事前に予防できるかの対策も必要です。

 同時に、職員から患者様・利用者様への暴言などが起こらないための教育・対策も大切です。「ハラスメントは絶対に起こさない」という姿勢をトップ・管理者自らが示して、模範的な行動をとり、職員ひとりひとりもハラスメントを予防しましょう。皆で事前に予防し、日々協力し合い、快適に過ごせる健全な事業所を作りましょう。

 すべての職員が家に帰れば、自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんです。そんな人達を職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり、苦しめたりしていいわけはありません。

(終わり)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その14)

【ストレス反応の現れ方】

 ストレス反応は(1)心理面、(2)身体面、(3)行動面・・・に現れます。具体的には次の通りです。

(1)心理面:活力の低下、イライラ感・不安感、抑うつ感

(2)身体面:だるい・疲れやすい、よく眠れない、食欲が低下、頭痛

(3)行動面:酒やタバコの摂取量が増える、食事の量が増えるまたは減る、仕事の能率が落ちる、遅刻や早退、有休が増える

 

 「見逃すな!いつもと違う!仲間の心のサイン」というスライドを示します。このようなサインがあれば、「何かあった、おかしい」と思って下さい。

 

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 ストレス反応からストレス反応へと陥らせないための社会的支援には、次の4つがあります。

(1)情緒的サポート:「やる気」を起こさせ、情緒的に安定させる・・・声掛け、励まし

(2)情報的サポート:問題解決に役立つ情報を与える

(3)道具的サポート:実際に手助けする

(4)評価的サポート:仕事ぶりや業績など適切に評価する

 

【こんなひと言がうれしかった!!】

 さて、これからモチベーションを上げていくことになります。「こんなひと言がうれしかった!!ヤル気がでた!!」というスライドを示します。まずは「仕事を頼まれた時」にかけるひと言です。

 

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 ただし、「頼りにしているよ」や、「期待しているよ」などは1回くらいならいいのですが、3回くらい言うと大きな圧力になってしまいますから注意して下さい。

 次に「仕事が終わった時」にかけるひと言です。

 

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 相手の目を見て声を掛けてあげて下さい。ただし、「よく考えたなー、君にしては」などと言うと逆効果になりますから注意して下さい。

 そして「仕事をしている時」にかけるひと言です。

 

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 特に「仕事には慣れてきた?」は新入社員や復職者などに言うと「受け入れてもらっている」という嬉しい気持ちにさせることができます。

 

【元気にさせる、がっかりさせる】

 ある会社で100人に対し「あなたはどんな言葉や態度でがんばろうと思いますか?また落胆しますか?」というアンケートをとったところ、次のような結果になりました。

《がんばろう:やる気にさせる言葉や態度》

・「ありがとう、頑張ったな」

・小さなことでもほめられた

・上司からのねぎらいのひと言

・「期待しています」

・長所をほめられた

・「一緒にやろうよ」

・気遣う言葉

《落胆、やる気を失わせる言葉や態度》

・無関心、無視、声かけ無し

・家族や仲間の悪口を聞く

・何でも当然、当たり前の態度

・命令口調

・見下した言い方、態度

・「女のくせに」

・身体のことを言われた

 

 最近、日本の科学者達が調べたところ、ほめられた時、脳にそれが刺激されて向上心が高まるということがわかったそうです。互いを尊重し合い、互いの人格を大切にし合って、より良い人間関係を築き上げましょう。

(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その13)

【職業生活におけるストレスの状況】

 労働者の約6割が強いストレスを感じているとの調査結果が、厚生労働省より出されています。そんな中、精神障害の労災補償は増加傾向にあります。その精神障害の請求件数の多い業種を見てみると、最も多いのが医療・福祉の「社会保険・社会福祉・介護事業」で111件、第2位が医療福祉の「医療業」で87件となっています(平成24年度)。そして、「上司とのトラブル」を利用とする請求が年々増加しています。ストレスの内容を見てみると、「職場の人間関係」をあげている人が4割以上と、最も多くなっています。また、仕事や職業生活に関して相談できる相手としては上司や同僚、そして家族や友人が圧倒的に多い結果となっています。ただし、上司とのトラブルがあるのに上司に相談はできませんし、家族や友人には相談できてもはたして解決になるかどうかというと難しいです。

自殺に関する周囲の気づきについてですが、労災業務上認定自殺1098事例を分析したところ、上司も家族も高い割合で「なんかおかしいな」と気づいてわかっているという結果が出ています。また自殺企図6ヶ月前からの症状として「精神状態の変化」、「身体状況の変化」、「不眠」などが高い割合で現れています。

 

【ストレスの要因:ストレッサー】

 ストレスの要因となるものを「ストレッサー」と言います。これには(1)物理的なもの(熱、暑さなど)、(2)化学的なもの(酒・タバコ・有機溶剤など)、(3)生物学的なもの(細菌・ウイルス・花粉など)、(4)心理社会的なもの・・・などがあります。

 職場においては人間関係のトラブル(上司や部下との対立、いじめ、セクハラ・パワハラ)、役割の変化(昇級・昇格・配置転換・出向などによるもの)、仕事の質・量の変化(長時間労働や人事異動、トラブルの発生などによるもの)、重い責任の発生(仕事上の事故や失敗によるもの)などが、そして仕事以外では自分の出来事(病気や家庭不和、人とのトラブル、事故や災害など)、自分以外の出来事(家族、親族、友人の死や病気・非行など)、住環境や生活の変化(単身赴任、転居、騒音など)、金銭問題(多額の借金・ローン、収入減など)などがストレスの要因となります。

 この職場のストレス要因に仕事外の要因、さらに個人的要因(年齢、性別、性格、身体的条件、能力、生活経験)が加わって、ストレス反応が身体面や心理面、そして行動面に現れ、そしてストレス関連疾患へと陥っていきます。しかし、そうなる前に上司や同僚、家族などによる社会的支援や、快適な職場環境を整えるなどといった緩衝要因があると大きな違いが出てきます。

 ですから、そのような様子を見かけたら、声を掛けてあげたり、配慮してあげる必要があります。また、相談できるところを紹介してあげたり、そのための休暇をとらせてあげるなどの援助をする事も大事ですが、その際、個人情報にも配慮する必要があります。

 ただし、ここで問題になるストレスは「過度のストレス」です。ストレスは「人生のスパイス」であり、いい仕事をするには「適度のストレス」は必要です。新しい課題に挑戦し、それを乗り越える経験は、人を成長させ、職場に活性化にもつながります。ストレスは少なくても多くてもいけません。「適正なストレス状況」が、最も生産性を高めるということは念頭に置いておいて下さい。

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  (つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その12)

【ハラスメントの対処方法:(2)ハラスメントの再発防止策・予防策】

ハラスメントに対処するための「事実関係の迅速かつ正確な確認」について説明しましたが、続いて「ハラスメントの再発防止策・予防策」について話します。

まずは「ハラスメントの防止について、どのような方針をとっているか」についての方針を明確にし、周知・啓発することです。「ハラスメントは絶対許さない!あってはならない行為だ!」という強い宣言を就業規則の中に明記することです。また、施設長や経営者がはっきりと「ハラスメントは犯罪だ」と明言する必要があります。

次に「ハラスメントを起こした場合、どのような処分を受ける可能性があるか」について、就業規則や服務規程、社内報、パンフレットにホームページなどで明確にしておくことです。

さらに、ハラスメントに関する窓口を設置し、担当者を任命するとともに、社内に周知することです。

 

【ハラスメントの予防:ベルギーでは・・・】

ハラスメント防止に関して先進的であるベルギーの「職場でのハラスメント防止立法の骨子」をスライドに示します。

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この中で特に「8.ハラスメントを行う者を更正させるための治療を受けさせる」に注目してください。「ハラスメントを行っている人も、ひょっとしたら何らかの病気かもしれない。従ってその人を更正させるための治療も受けさせなければならない」ということです。ここは重要です。

 

【職場におけるハラスメントと法】

 職場におけるハラスメントに関する法律を見てみましょう。刑事責任について犯罪が正立する類型として名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪などがあります。一方、民事責任については不法行為、安全配慮義務違反などがあります。

民事責任のうち不法行為は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」というものです。「福岡Q企画出版社セクシャル・ハラスメント事件」や、「川崎市水道局いじめ自殺事件」などの判例があります。不法行為では安全配慮義務違反構成の場合とは異なり、加害者個人の責任が認められ得ます。また、会社の業務上の方針に従ってなされた、いわゆる組織的過失に当たるような場合でも、原則として免責されません。「見て見ぬふりをする」のも荷担です。直接的に関わっていなくても荷担になります。さらに、会社に使用者責任が認められた場合にも、当該加害者への求償がなされ得ます。

次に、安全配慮義務については、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等(心身含む)の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。さらに「対象者の安全衛生を左右できる立場にある者(:指揮命令権、労働条件設定権限など安全衛生管理の権限と可能性を持つ者=直接的な契約関係はなくて良い)が、予見可能、回避可能な災害疾病について、その防止のために可能な物的・人的手段を尽くす義務」とあります。ですから傍観は許されません。

この安全配慮義務違反に関する判例としては、「電通事件」の判例があります(最小判平成12324日労判77913頁)。これによると、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである」とあります。

このように、ハラスメント対策の懈怠(けだい:なまけ、おこたること)、特に現に行われているハラスメントの放置は、使用者の安全配慮義務違反と解されるようになってきています。

最近の特徴的な裁判例として「地公災基金愛知県支部長(A市役所職員・うつ病自殺)事件」があります(名古屋高判平成22521日労判1013102頁【上告】)。これによると、当時の配置部署の業務自体にかかる心理的負荷へ加え、上司自身は担当部署の業務に詳しく、部下への注意・指導の内容もおおむね正当だったものの、人前で大声を出して高圧的、攻撃的に非難・叱咤する、部下への個性や能力へ配慮しない点で「パワーハラスメントに当たる」と明言されています。このように、パワーハラスメントが法的概念として司法上採用され得ることや、その態様などとともに「部下の個性や能力への配慮」の欠如が判断要素となり得ることがうかがわれます。

(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その11)

【ハラスメントの対処方法(1)事実関係の迅速かつ正確な確認

ハラスメントの対処方法を資料に示しています。まず「事実関係の迅速かつ正確な確認」ですが、これには10項目あります。

(1)事情聴取の対象

 相談者、行為者双方からの事情聴取が必須です。双方の主張に不一致があったり、事実確認が不十分である場合には第三者から聴取することも必要です。

(2)誰が聴取するか

人事部の担当者や専門の委員会など、中立・公平な立場の人が行うことです。また承諾を得て録音したり、複数の人がそこで確認することが必要です。一対一だと後になって「そうじゃなかった」という問題も発生しかねません。聴取日や聴取者、対象者などを書面に記録することが適切な対応につながります。

(3)聴取対象者の発言を誘導しない

聴取する側が決めつけて、「○○ということじゃなかったのか?」だとか、「○○だったんだろう?」などという言い方をすると、記憶を歪めてしまう恐れがあります。

(4)聴取対象者の話をそのまま記録する

これは話をどこまで信用すべきかの重要な材料となります。

(5)過度な同情、否定(疑い)、反論は禁物

最初から「そんな奴は許せないね」などと言って同情し、安心感を与えておきながら、あとから聞いたらそうじゃなかった、誤解だったと否定されると、「裏切られた」という不信感につながります。冷静に事実関係を確認することが大事です。

(6)言い分が異なる場合

どちらの証言の内容がより具体的か、内容に変遷はないか、整合性はあるか・・・などで判断せざるを得ません。「そこまでするか?」と思われるかもしれませんが、場合によっては外部の専門家に依頼することも考える必要があるかもしれません。

(7)関係者の処分とフォロー

行為者に対しては必要な懲戒もしくはその他の措置を講じるとともに、関係改善に向けての援助も必要です。さらに、さらに暫定的に部署や職場の異動といった配置転換や自宅待機なども考えなければなりません。

その一方で、被害者の不利益を回復させることも必要です。

(8)情報管理

まず「うわさや中傷はここで止める」という二次被害の防止です。そして対処方法やプライバシー保護のための規定を整備することです。窓口担当者の研修も大事です。

(9)相談者・協力者に対して

 「相談者や協力者の不利益になるような取り扱いは一切しません」など、必要な措置を講じていることを広報・啓発することでプライバシーの保護に努めることも必要です。

(10)損害賠償等の要求を受けた場合

損害賠償などの要求を受けるかもしれませんから、そういう時にどうするか?ということも考えておかなければなりません。事実が判明している場合は一定の責任を負いますから、被害者と話し合うことになります。一方、確認不明の場合は要求に応じることはできず、押し問答になりかねませんから、そうなったら第三者機関を通じた解決の道を探ることになります。

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(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その10)

【職場の「ハラスメント」の特徴】

 職場のハラスメントには、共通して次のような10個の要素があります。

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 これらの共通要素を行為態様から類型化すると次の5つになります。

《第1型「仕事上の意思疎通に対する攻撃」》

(1)上司はあなたの意見を述べる機会を制限してかかる

(2)あなたは絶えず干渉される

(3)同僚や仕事の協力者が、あなたの意見を述べる機会を制限してかかる

(4)あなたの仕事が絶えず非難される

(5)あなたの私生活が絶えず非難される

(6)電話で脅される

(7)言葉で脅される

(8)脅し文句をしたためた文書が送りつけられる

(9)顔色や仕草でもってつきあいを避けられる

(10)当てこすりを通じてつきあいを避けられる

 

《第2型「職場における人間関係形成に対する攻撃」》

(1)人びとがもはやあなたと言葉を交わさなくなる

(2)あなたは誰とも言葉を交わさなくなる、人とのつき合いができないようになる

(3)隔離された職場に配置される

(4)同僚たちがあなたと言葉を交わすことが上司から禁止される

(5)あなたがいないかのように扱われる

 

《第3型「信用名誉に対する攻撃」》

(1)人々が陰であなたの悪口を言う

(2)根も葉もない噂が流される

(3)あなたが物笑いの種にされる

(4)精神を病んでいるかのように扱われる

(5)精神鑑定診断を強制的に受けさせられる

(6)障害のあることを嘲笑される

(7)人々があなたの仕草、歩き方、声を真似してあなたを笑いものにする

(8)あなたの政治信条や宗教上の身上を笑いものにする

(9)あなたの私生活を笑いものにする

(10)あなたの国籍を笑いものにする

(11)あなたの自尊心を傷つけるような仕草を強いる

(12)あなたの努力が正しく評価されず、悪いさげすんだ判断が下される

(13)あなたの決定に対し絶えず疑いの目を向けられる

(14)あなたをさげすむような名前で呼ぶ

(15)性的あてこすりを受ける

 

《第4型「仕事の遂行に対する攻撃」》

(1)あなたは何ら特別な仕事が与えられない

(2)上司に仕事を取り上げられた、新しい仕事ももらえない

(3)無意味な仕事が与えられる

(4)あなたの能力以下の仕事を与えられる

(5)絶えず新しい不慣れな仕事が与えられる

(6)自尊心を傷つけるような仕事が与えられる

(7)あなたの信用失墜を図って、能力以上の仕事が与えられる

(8)一般的な損害に対して、あなたに金銭的負担を負わせる

(9)あなたの家庭や職場に損害を与える

 

《第5型「健康への直接攻撃」》

(1)あなたは体力的に骨の折れる仕事を強いられる

(2)身体的暴力が加えられるという恐怖心を起こさせる

(3)ちょっとした暴力を行使してあなたをおびえさせる

(4)身体に虐待を加える

(5)あからさまな性的嫌がらせをする

(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その9)

【ハラスメントの対処方法:いかに発見し対処するか】

《認識・・・変化を見つけ出す》

 

 ハラスメントにどう対処すればいいでしょうか。まず、当事者、個人に対して職場でどんな攻撃がなされるか、それを皆さん察知してほしいと思います。

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 当事者、個人に対する攻撃は上の通りで、このような変化があると、「ちょっとハラスメントの問題が出ている」ということになります。

 

 次に、職業上の脅しは下の通りです。

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これらはその人を評価できる立場にある人や、異動する権限を持っている人によるものです。

 

【職場の「ハラスメント」のプロセス】

 資料に「1個の悪性化した癌細胞が急速に広がり生きている組織を破壊する」と書いていますが、これが「ハラスメントをそのままにしておくと大変なことになる」ということを意味しています。ですから「早期の段階で『治癒』が必要」と書いています。

 ハラスメントのプロセスは(1)不和、(2)攻撃的行為、(3)管理者層が「加担」する、(4)被害者に対する「烙印」、(5)組織からの「排除」・・・というステップをたどります。

 ステップ(1)の「不和」は、潜在的な職場いじめの段階です。従業員間で仕事上の意思疎通などで意見の衝突が生じている段階です。

 ステップ(2)の「攻撃的行為」は、従業員間で攻撃的な加害行為が発生する段階です。攻撃には意思疎通に対するものや人間関係形成に対するもの、信用名誉に対するもの、仕事の遂行に対するもの、そして健康に対するものなどがあります。

 ステップ(3)の「管理者層が『加担する』」の段階では、管理者層が加担するだけでなく、被害を「見て見ぬふりをする」、つまり放置するという問題も出てきます。

 ステップ(4)の「被害者に対する『烙印』」では、被害者は「気難しい人、精神疾患にかかっている人」といった烙印が押され、精神的に追い込まれる流れができてきます。

 ステップ(5)の「組織からの『排除』」では、被害者は自主退職あるいは無断欠勤を理由に解雇され、心的外傷後ストレス症(PTSD)に陥り、職場の秩序は乱れ、会社の信用や名誉は落ちていくことになります。

 ですから「癌細胞は早いうちに治癒することが必要」というわけです。

(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その8)

【ハラスメントの要因】

一般的にハラスメントの要因とされるのは経営と労働環境です。具体的には(1)経営が惰性的でスタッフのレベルが高い事業場、(2)広範な競争概念を導入した経営方法、(3)慢性的な人材不足と過重な動労負担、(4)職務内容が不明確だったり、仕事のやり方がうまく組織化されていない、(5)過度の階級性:指示系統が複雑、(6)不十分な指示と情報不足・・・などがあげられますが、これらは非生産的な職場です。一生懸命頑張っても成果が上がりにくいといえます。

また、立場や地位の違いによる問題、つまり力の濫用があります。ハラスメントの問題が最初に生じた現場は、実は学校です。いわゆる「アカデミック・ハラスメント」であり、アメリカの大学で、教授と学生という立場の違いから生じたものです。学校にはこれに加えて幹部教員と一般教員、先輩教員と後輩教員、教員と講師、教員と実習生、部活の顧問と部員、PTA役員と新任教員などといった立場の違いがあります。本来その力の違いを正しく上手にコントロールするとより良いものになっていくものですが、そこ「濫用」が入ってくると問題が出てきます。

 職場においては雇用者と被雇用者という雇用の関係がありますし、人事考課の考課者と被考課者という関係があります。事務職と現業職という関係、正社員と臨時職、パート、アルバイト、嘱託などという関係もあります。学歴の違いもありますが、これは採用の時に一定の基準を上回っているから経営者や人事担当者が採用したものですから、「高卒だからだめだ、○○大学ではだめなんだよね」などというのはおかしな話です。

 病院や老健施設においても、医師と看護師、医師と患者、看護師と患者、医師・看護師と介護職・一般職員、介護者と被介護者などといった立場や地位の違いがハラスメントの要因になりかねません。

皇帝ナポレオンは「人間を動かす2つのコテがある。それは恐怖と利益である」と言ったそうですが、ハラスメントの諸問題の根本的な原因はここにあると思います。「俺の言うことを聞けばほうびをやる」と。しかしナポレオンは成功したでしょうか?最後は島流しにあいました。

「私はこの2つに『尊敬』を加えたい。『リーダーは、利益と尊敬と、少しの恐怖で組織を動かしていくべきで、その潤滑油が『笑い(ユーモア)』だ」と言ったのは元プロ野球監督の野村克也さんです。「少しの恐怖」とは叱咤激励と適切な指導ということだと思います。そうやって組織を動かしていく上での潤滑油が笑い、ユーモア、これも必要です。また「利益」とは正しい評価と言えます。皆さんもこのことを覚えておいてください。

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(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その7)

【ハラスメントが生活の質と社会的負担に及ぼす影響:家族と社会的ネットワークに対して】

 ハラスメントが家族と社会的ネットワークに及ぼす影響には次のようなものがあります。

 ○集会の回避

 ○体調不良と病気の訴え

 ○社会参加を放棄

 ○家族と疎遠

 ○他の仕事に適正を得ることが困難

 ○父親、配偶者、息子/娘としての役割と責任の放棄

 ○家族問題に耐えられなくなる

 ○交友関係の希薄化

 ○収入の喪失

 ○共同作業を放棄

 ○婚姻問題と離婚

 ○医療費の増加

 ○怒りを爆発

 ○暴力

 ○子供の学業成績が低下

 私は家庭裁判所でも仕事をしていますが、時折離婚の問題や、離婚後の紛争調整などをする中で話を聞いてみると、一方が・・・特に男性が多いのですが・・・、うつ病の人がおられて、「ご主人がうつ病で、ずっと耐えてきて、子供にも『お父さんは病気だから』と耐えさせてきたけど、私も辛い、自由が欲しい」と奥様が離婚を決意したという事もあります。

 また、子供が進学の時に「お父さん、どうしようか?」と聞いてもそれに集中できない。家族が本当に必要な時、本当に意見が必要な時にそれができない、そんな問題があります。

 このようにハラスメントは職場だけでなく、個人的にも様々な影響を及ぼします。大変辛いものです。

 

【ハラスメントが生活の質と社会的負担に及ぼす影響:事業主に及ぼしうる影響(損失)】

 ハラスメントは事業主にも影響を及ぼします。まず退職金が増えます。中には「うちは3年以内に辞める者が多いから退職金は払いませんよ」という人もいますが、それはおかしな話です。また企業イメージが悪化します。辞めた理由が業務に起因していて、その人が労災請求したり、また民事的に請求すると企業の名前が出てくる場合もあります。訴訟費用も発生します。

 また優秀な人材が本来の仕事ができない状態になると、他の施設よりサービスが低下し、競争力も下がります。仕事に適さない人材が増加すれば、一部の人に過重な負担がかかるという悪循環に陥ります。そうすると従業員の転職率が増加につながってしまいます。

 ハラスメントの状態が続くと、「それを見るのが忍びない」と有能な人も辞めていきます。生産性は低下し、意欲や満足度、創造力も低下します。配置換えや新人の採用を何度も行うとその費用や時間も必要になります。

 

【ハラスメントが生活の質と社会的負担に及ぼす影響:社会的負担に及ぼす影響】

 社会全体を見ますと、早期退職給付や能力障害、失業による高負担などにより、福祉の負担が増大することから、社会全体が被害を受けることになります。国がメンタルヘルス対策を進めていく理由の一つに、少子高齢化が進んで、労働人口が減っていく中で、いろいろな労働問題や職場の問題で職場を離れていく人たちが増えると、労働人口がさらに減り、そのために国全体が停滞しかねないという恐れがあるからです。それでやらなくちゃならないということで国をあげて取り組んでいるわけです。しかしなかなか難しい問題です。

IMG_8934.JPG(つづく)

ハラスメント研修会開きました(看護介護部会:その6)


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【ハラスメント健康に及ぼす影響:うつ病】

精神的、心理的ハラスメントは、うつ病、不安障害、適応障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、健康に様々な影響を及ぼします。この中でまずうつ病について話します。

うつ病は職場でもっとも多い、こころの病の代表格です。これは抑うつ状態を繰り返す病気で、自殺の背景にうつ病が多いと考えられていて、特に20代から30代の死亡原因の第一位が自殺だと言われています。

うつ病に見られる自覚症状には(1)睡眠障害(本当は眠たいのに眠れない、朝早く目が覚めてしまう)、(2)食欲低下(食べたいと思わない、何を食べてもおいしくない、砂をかむようだ)、(3)作業能力の低下(頭の回転が落ちる、作業に時間がかかる、ミスが多くなる)、(4)意欲低下(何をするのもおっっくう、集中困難、決断ができない)、(5)社会的関心の低下(人に会いたくない、新聞やテレビを見る気にならない)、(6)抑うつ状態(気分が沈む、生きている実感がない、自分一人が取り残されている感じ、生きているのがつらい、生きていても仕方がない感じ)、(7)異性に関心が持てなくなった、(8)自殺念慮(死ねば楽になるだろうと思う、死にたいと思う)・・・などがあります。

次に他覚症状としては、?顕著な体重減少(1か月で5から10kg)、?土気色の顔色、表情の豊かさの減少、目つきの力の欠如、?単調で力のない話し方・・・などがあります。

いつもと違う状態や、自覚症状が2週間以上続く場合は要注意です。専門医の受診や産業保健スタッフ等への相談の目安となります。

うつ病を例えるならば、「人が生きていくために必要としている”命のエネルギー”が欠乏している状態」です。したがって、うつ病の治療は、「命のエネルギー」をうまくためることです。その治療の第一はまず休養・休業です。職場から離れる期間は3か月程度が目安です。第二には抗うつ薬を飲むこと、そして第三には心理療法および環境調整です。

 

【ハラスメント健康に及ぼす影響:不安障害/パニック障害】

パニック障害は、動悸や息苦しさ、震え、吐き気、目まいなど、パニック発作を主症状とするものです。また「死んでしまう」などの恐怖感に襲われることもあります。これらは救急車で搬送されても、病院到着時に症状が消えてしまいます。さらに、予期不安(またなるかもしれない不安)や広場不安(逃げ場のない場所、大勢集まる場所等での発作への不安と恐怖)なども起きます。

このようなパニック障害は、医療機関の適切な指導や治療が受けられない場合も多いため、慢性化しやすく、うつ病へとなりやすいので注意が必要です。

 

【ハラスメント健康に及ぼす影響:不安障害/強迫性障害】

強迫性障害の症状には、こだわり(頭では”ばからしい”と思いながらやってしまう)、強迫観念・強迫行為,不潔恐怖(トイレに行った後にばい菌で汚染されていると感じ、何度も手を洗ってしまう:洗浄強迫)、確認強迫(鍵を何度も確認する)、儀式(何か行動する時に、決まった順番にしないと気が済まない)、などがあります。

強迫性障害の治療には抗うつ薬(SSRI)や、認知行動療法などがあります。日常生活に支障をきたす場合は根気よく治療することが必要です。

(つづく)

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