協会活動報告

サルコペニア学びました(栄・給部会研修、その1)

 (社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は712日、宮崎市のひむか苑で研修会を開きました。県内の会員施設などから30人が参加し、リハビリテーション栄養の大切さを学びました

 今回の研修会に取り上げたのは「サルコペニア」。高齢者の自立を妨げる大きな要因とされ、栄養障害が原因の一つとされるこのサルコペニアについて、正しい知識を身につけようと、ネスレ日本株式会社九州支店の木元太一郎さん(下の写真)を鹿児島から招き、講演をしていただきました。

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 サルコペニアとは、狭義には「加齢に伴う筋肉量の低下」、広義には「すべての原因による筋肉量と筋力の低下」を言うとのこと。しかし、日本ではあまりその名は知られて折らず、ネットで検索したヒット件数で比べると、「高齢化」が約1,440万件、「認知症」が約268万件、「骨粗鬆症」が約617千件なのに対し、「サルコペニア」は約19千件しかヒットしないそうです。

 ところが、「四肢や体幹のサルコペニアは寝たきりを引き起こし、嚥下筋や呼吸筋もそれぞれの障害を引き起こすリスクがある」との説明に、参加者は驚きの表情を見せていました。それだけでなく、65歳以上の高齢者の3人に1人、つまり約850万人がサルコペニアと推定されているのだそうです。このサルコペニアへの対応として、筋トレや早期離床、疾患管理に加え、木元さんは「適切な栄養管理が大事」と強調されました。

これを踏まえ木元さんは、「高齢者はたんぱく質摂取量が減少している」、「ロイシン摂取により筋たんぱく質の合成が促進される」、「脂質・糖質からのエネルギー(Non Protein Calorie)が十分な場合は、たんぱく質が体たんぱく質が合成に使われるが、十分でないと、たんぱく質がエネルギー源に使われる上、代謝産物が腎糸球体のろ過機能に負担をかける」「ビタミンDの摂取により、転倒、骨折が減少する」など、具体的な栄養管理の方向性を示されました。

講演のおさらいとして木元さんは、

(1)サルコペニアとは、加齢に伴う筋力・筋肉量減少である

(2)サルコペニアの予防・改善には体動と栄養が必要である

(3)高齢者の体組成の特徴は、筋肉が減って脂肪が増える傾向がある

という3点を強調されました。

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 参加者はメモをとるなどして、熱心に聞き入っていました。高齢者の自立を栄養面から支援する、リハビリテーション栄養の大切さを学ぶ貴重な機会となりました。(つづく)

九州大会日程変更しました(重要)

  「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」につきましては、先だって平成25530日および31日の開催を予定している旨告知しておりましたが、事情により、平成251114日(木)および同15日(金)に変更し、開催することとなりました。開催場所は宮崎観光ホテルのまま変更ありません。

 会員施設へは4月19日付文書(全老健宮支部24-1)にてご案内しております。詳しくはこちらをご参照いただきますようお願いいたします。

 

こちらも必読「老健4月号」

 昨日は当協会発行の「老健みやざき 25号」発行のお知らせをいたしましたが、本日は公益社団法人全国老人保健施設協会発行の「老健 平成244月号(Vol.23 No.1)」を紹介します。

 同号では「進めよう口腔ケア」題して、口腔ケアの特集が組まれています。平成24年度の介護報酬改定で「口腔機能維持管理加算」が新設されたことを受け、口腔ケアを巡る背景や現状、そして今後の展望を踏まえ、全国24県の老健施設による口腔ケアの実践例などが紹介されています。その中で、口腔ケアは特定のスタッフによる関わりだけではなく、多職種による連携の重要性が説かれていますので、老健に勤務されている方は、職種を問わず是非なるご一読をお勧めいたします。

また、特集記事とは別に、日本歯科衛生士会の金澤紀子会長のインタビューも掲載されています。それを読むと、歯科衛生士の現状と課題、さらに口腔ケアにおける歯科衛生士の役割などが理解できる内容となっています。

 「老健みやざき 25号」の巻頭は、当協会が316日に開いた第9回研究大会の特集記事ですが、ひとえ歯科クリニックの宇都仁惠先生にお話しいただいた、口腔ケアに関する特別講演の概要が主な内容となっています。その講演会場でも、参加された方々の口腔ケアへの高い関心が寄せられていました。両者を併せてお読みくいただくことで、口腔ケアへの理解がより一層深まるのではないかと思います。

「老健みやざき」発行しました

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 当協会が年2回発行している広報誌、「老健みやざき 第25号」がこのほど出来上がりました。近日中に会員施設を始め、関係機関の皆様のもとにお届けする予定です。ご笑覧いただければ幸いです。

 今回の「老健みやざき」のトップ記事は、316日に当協会が開いた、第9回研究大会の特集。これに続き、協会各研究部会等による研修会報告、そして会員施設の各職種の皆様による「リレーコーナー」さらに、シルバーケア新富の栄養士、織田政子さんによる「人気のおすすめメニュー」と続きます。

 なお、「老健みやざき第25号」は、当ホームページからも閲覧・ダウンロードできるようにする予定です。どうぞお楽しみに。

研究大会開催しました(レク研究発表)

  6時間にわたる研究大会の最後を飾ったのは、「レクリエーション研究発表」。これは、それぞれの老健施設で行われる各種イベントの際、利用者やご家族、さらには地域住民に喜んでもらおうと、役職員が日常業務にまさるとも劣らない情熱を注いで取り組んでいるアトラクションを披露し、そのノウハウを伝授しようというものです。分科会に散っていた参加者も再び一堂に会し、会場の熱気は最高潮に達しました。

 この日発表を行ったのは、青島シルバー苑、ことぶき苑、春草苑、シルバーケア野崎、そして慶穣塾の5施設。踊りあり、太鼓あり、パフォーマンスあり。どの発表も視覚、聴覚、そして「感動覚」をすこぶる刺激するもので、参加者は写真やビデオを撮るなど、熱心に見学していました。

 「利用者の心を元気にしたいんです!」と、ある施設の代表者がマイクを握りしめて言われていました。この言葉からもわかる通り、どの施設も利用者のQOLを向上させようと、レクリエーションへの取り組みは真剣そのもの。日々多忙な業務の合間を縫っての練習は、さぞかし大変であったろうと察する一方で、同時に各施設におけるスタッフの連携の良さもひしひしと伝わってきました。

 

IMG_1998.JPG春草苑の「万歳三唱クラブ」による発表。さまざまなフォーメーションで繰り広げる「バンザーイ」は、喜びを何百倍にも増幅させる迫力でした!

 

 

 かくして40施設から310人が参加して開かれた第9回社団法人宮崎県老人保健施設協会研究大会は盛会の裡に幕を閉じました。各運営スタッフとも、それぞれの所属施設で業務をこなしながらの準備でしたので、いたらぬ点も多々あったかとお詫び申し上げます。

 先日もお知らせしましたが、来年(平成25年)は、「第14回九州地区介護老人保健施設大会inみやざき」が、530日(木)と31日(金)の2日間、が宮崎観光ホテル(宮崎市)で開催されます。県内だけでなく、九州各県から約1,000人の老健役職員を招いての大会を成功に導こうと、すでに準備を始めているところです。今回の研究大会での反省点を踏まえ、よりより大会にしていきたいと考えておりますので、今後とも協会へのご理解、ご協力方お願いたします。

研究大会開催しました(研究発表)

  特別講演に続いて行われたのは、各会員施設の職員による研究発表です。各々の職場で生じた様々な問題や疑問に、各専門職種が連携して解決への糸口を探求し、試行錯誤を繰り返しながら問題を打開していった一連の過程をまとめ上げて発表された演題数はなんと39!これは今までの大会の中で最多となるもので、いずれの老健施設でも、利用者お一人おひとりを思いやり、より良いケアを提供しようと、日々邁進していることの表れだと言えるのではないでしょうか。

 研究発表は8つの分科会が4つの会場に分かれて行われました。第2分科会の「看護・介護」の部では、トトロみのる園の看護職、波越明美さんが、「入所者の急変時対応を見直して」と題し、急変時の対応の流れと施設間の連絡システムを見直した結果、状態把握と早期対応の向上や、業務の効率化などにつながった事例を報告しました。

 第3分科会の「リハビリテーション」の部では、ひむか苑の作業療法士、廣瀬裕佳さんが、「塗り絵を通して見えてくる認知症高齢者の心理」と題し、治療的作業活動としての「塗り絵」を導入し、色彩心理の観点から観察、評価を行った結果、利用者が無意識に選択する色を通して、完成までの心理的傾向が推測できたことに加え、その色によるセラピー効果も導き出せたことを報告しました。

 第4分科会の「介護」、「栄養」の部では、サンフローラみやざきの介護福祉士、井上和幸さんが、「もう一度母さんの声が聞きたい」と題し、経管注入食の利用者が、経口摂取へ移行したことをきっかけに、本人の表情に変化が現れただけでなく、家族もケアに積極的に関わることで、あらたな生きがいを見出すようになった事例を発表しました。

 第8分科会の「支援相談」「事務」「介護支援専門員」の部では、しあわせの里の支援相談員、笠原章寛さんにより、「施設のイメージと評価」と題し、通所リハビリテーション利用者獲得の一環として、居宅介護支援事業所のケアマネージャーから聞き取り調査を実施し、その結果をもとに自分たちの仕事を見直し、各職種における対策の立案、実行を行ったところ、居宅ケアマネとの関係が深まり、新規利用者を紹介してもらえるようになるなどの成果が現れた取り組みが報告されました。

 いずれの分科会でも会場からは熱心な質問や意見が相次ぎました。それぞれの老健施設や職種が抱える悩みや問題を共有するとともに、優れた取り組み事例からその解決策を学ぶ貴重な機会となりました。

研究大会開催しました〔特別講演その3〕

 宇都先生は最後に食介護・食支援アンケートの結果および、それから見えてきたことについて話してくださいました。このアンケートは、宇都先生が今年の1月中旬から2月中旬にかけて、県内の43会員老健施設、そして個人病院などに対して実施されたもので、実に926人にものぼる回答があったものを集計、分析し、まとめられたものです。ただでさえご多忙な宇都先生、その合間を縫っての作業はさぞかし大変であっただろうと、頭が下がる思いです。

「食介護が必要な対象者はいるか?」の問いに対し、87%の人が「かなりいる」または「いる」と回答した一方で、食事介助の困難点が「よくある」または「ある」と答えた人は63%もいたとのことでした。

食事場面の問題点を職種ごとに尋ねたところ、どの職種も「むせる」、「なかなか飲み込まない」「口に溜めてしまう」などの回答が半数以上あったそうです。とりわけ「むせる」ことに関しては、摂食嚥下機能低下の問題点、さらに食事場面の不安点について尋ねた結果でも過半数がこれを取り上げており、食事介助のむずかしさが浮き彫りなっていることが指摘されました。

今回のアンケートから宇都先生は、(1)どの職種も現場では食事場面での問題点には気づいている、(2)ヘルパー、介護福祉士は現場で食介護・食支援に悩みを抱えながらの毎日である、(3)同じ施設、職種で抱えている悩みはほとんど同じである、(4)その悩みを解決する手段は「他の職種に相談する」であった、(5)食事介助の問題点があり、かつケアプランを立てている職種はケアマネージャーとSTだけであった・・・との結果を示されました。

またこの結果を踏まえ、宇都先生は〔1〕現場からの問題点を集積する必要がある、〔2〕各々が持っているノウハウを集積しておく必要がある、〔3〕ネットワークで繋げる必要がある、〔4〕インシデントを蓄積しておく必要がある、〔5〕嚥下状態を正しく診断・評価する人材が必要である・・・との見解を受講者に説かれました。

限られた時間の中でしたが、盛りだくさんの内容で、学ぶことの多い講演会でした。宇都先生は平成1211月に宮崎摂食・嚥下障害臨床研究会を立ち上げ、歯科医師、リハ医師、脳外科医師、看護師、歯科衛生士、管理栄養士、STPTOTなど90人が会員登録。基礎知識の理解や臨床技術の習得、さらに科学的基礎研究の啓発などを通じて、宮崎県の摂食嚥下障害の臨床の向上を図るために活動中です。現在、施設における標準的なサービスが提供できるよう、相談方法の確立を目指している宇都先生、お忙しい中、貴重な講演をしていただき、本当にありがとうございました。

研究大会開催しました〔特別講演その2〕

  次に、口腔内細菌と、誤嚥性肺炎については、夜間に気付かない間に、唾液や逆流した胃内容物を少量ずつ誤嚥する「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」の説明がありました。これは、口腔細菌を含む口腔や咽頭の分泌物や食物を誤嚥することにより引き起こされる、誤嚥性肺炎(老人性肺炎)を引き起こす可能性が高いという指摘がありました。

 これに対し、口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎を予防する効果があるとのことでした(特に終末期は重要なのだそうです)。

 続いて、在宅で最期まで口から食べる事への取り組みについては、まず胃ろうを自己抜去した翌日から100%経口摂取に移行した要介護高齢者症例が紹介されました。この方は、誤嚥性肺炎を繰り返すため、胃ろうを増設し、また認知症のため、経管注入中は拘束され、ベッド上での生活を送られていたのだそうです。在宅に移って拘束をはずしたところ、2週間後に胃ろうのボタン型バンパーを自分で抜き取ったため、翌日から経口摂取することになったとのことでした。宇都先生はそのために、主治医や歯科衛生士、訪問看護師、訪問リハビリ、ヘルパー、そして家族と、「人間が食べられなくなる、老いていくプロセスをどう受け止めていくか?」ということについて真剣に話し合い、口から食事をするために、評価を行い、食事を工夫し、嚥下訓練を行ったそうです。

 その結果、その方は食事を自分で食べるようになったばかりでなく、自分で歩けるようになったり、家族とピクニックを楽しむまでになったそうです。誤嚥性肺炎も減ったとのっことで、その模様が写真や動画で紹介されると、またまた会場からは驚きの声が上がりました。嚥下リハビリの目的は、「誤嚥しないことではなく、QOLを維持しながら誤嚥性肺炎の発症を防ぎ、生命予後を高めること」との説明に、受講者はうなずいたり、メモを取るなどして、真剣に聞き入っていました。

 この、最期まで口から食べることへの取り組みを紹介した上で、宇都先生は細菌、要介護高齢者の胃ろうの是非について、胃ろうを作ってきた医師の間で論争が起こっていることに言及されました。これは、(1)人工栄養法を導入しない選択肢を示す、(2)本人の益にならないと判断できるときは導入しない、(3)人生の完結に有益なときの導入は妥当・・・等を内容とした指針案を、厚生労働省が昨年124日、初めて公表して以来、マスコミなどでもしばしば取り上げられている問題です。その現状を踏まえ、宇都先生は、「尊厳を守り、最期まで口から食事が取れるよう、継続的な支援が必要。そのために、医療や介護に関わる人が職域を超えて連携し、家族や地域住民とも協力できる在宅医療の構築をめざして取り組んでいる」と、口腔ケアに対する熱い思いを力説。受講者の胸を打っていました。(続く)

研究大会開催しました〔特別講演その1〕

IMG_1822.JPG   続いて、「『最期まで口から食べる楽しみ』を支える ?多職種との連携を通じて?」と題し、ひとえ歯科クリニック院長の宇都仁惠先生の特別講演がありました。宇都先生は鹿児島大学歯学部を卒業、九州大学歯学部病院第一補綴(ほてい)科に入局された後、雁ノ巣病院歯科、産業医科大学歯学科口腔外科などを経て宮崎に帰郷され、2000年に宮崎市保健所健康増進課に勤務されました。その中で予防の大事さを再認識、2002年、再び福岡市のおがた小児歯科医院(障害者歯科では日本の草分け的存在です)に勤務された後、2003年にひとえ歯科クリニックを開業、現在に至っておられます。口腔ケアの重要性が叫ばれる中、その第一人者である宇都先生のお話が聞かれるとあって、会場は満席になりました。

 「食べるということは命にもつながる大切な行為です」と切り出した宇都先生。講演のタイトルを「最後まで・・・」ではなく「最期まで・・・」とされていることからも、その思いを伺い知ることができました。

 講演は(1)口腔ケア指導の成果と口腔ケアの実際、(2)口腔内細菌と誤嚥性(ごえんせい)肺炎、(3)在宅で最期まで口から食べる事への取り組み、(4)食介護・食支援アンケートの結果から・・・の4つの内容について行われました。

 まず、口腔ケアの成果と口腔ケアの実際については、潤和会記念病院にて宇都先生が歯科衛生士と共に、月1回、1病棟ごとに指導介入した事例が紹介されました。病棟職員を対象に基本的口腔ケアマニュアルを作成し、指導した結果、「うまく口を開けてくれない」、「方法や道具が分からない」という悩みが減った一方で、ほとんどの職員が「歯科専門職が必要」と答えたとのことでした。

 また、位相差顕微鏡を使って、実際に口腔内を撮影した映像が紹介されました。口腔内でうごめく細菌のあまりの多さに、受講者からは驚きの声が漏れていました。しかし、口腔ケアを行うことで要介護患者の総細菌数、そしてその中でも桿菌の数が有意に低下したことが説明され、口腔ケアの必要性を実感することができました。(続く)

 

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