教育講演は(1)認知症施策の背景・経緯・展望、(2)認知症機能障害VS認知症、(3)立方体模写テストの意味?(4)ADの記名障害、(5)ADの想起障害と逆行性健忘、(6)「もの忘れ」だけでは説明できない、(7)MCIと軽度ADの心理状態、(8)ADと高次脳機能障害、(9)右脳と左脳そしてAD・・・という内容で進められました。
これに先立ち、「認知症の方は道に迷う人が多い」という警察発表に関する最近の新聞記事を紹介。それによると2023年では2023年において約2万人の捜索願が出され、そのうち250人が未発見、また500人が遺体で発見されたという状況に触れ、「なぜ認知症の人は行方不明になるのでしょうか。いろんな理由があるかと思います」と切り出しました。そして、この原因のひとつとして、「今いる街並みに見覚えがなく、どこかわからず、行きたい場所へ行けない」という「街並失認」、そして「今いる場所は理解できるが、ここから行きたい場所に行けない」という「道順障害」からなる高次脳機能障害の1つ「地誌的見当識障害」というものがあることがわかっているとし、「このあたりのことも認知症と併せて考えていくと、もう少し理解が深まるのではないかと思います」と会場に語りかけました。
そして「(1)認知症施策の背景・経緯・展望」では、「痴呆」とよばれた時代において、認知症の概念や症状が離解されず、認知症の人は疎んじられ、適切なケアがなされないどころか、身体拘束や虐待の対象にもなっていた現状に鑑み、厚生省(現厚生労働省)が昭和61年に痴呆性老人対策本部を設置したのを皮切りに、さまざまな施策の拡充を図ってきた経緯を紹介。
しかしこれらは「あくまで進行した認知症の研究そして進行した認知症者の受け皿作りであり、現在も国民の多くは『進行した認知症が認知症』という認識が根強いです」と指摘しました。
(つづく)