10段変速

 かつて・・・40年近く前でしょうか、少年達の自転車の憧れと言えば「5段変速」。松山千春だって歌ってました。変速器はサドルから前にまっすぐ延びるフレームについていて、自動車のギアチェンジみたいに”ガシャガシャ”とやるのがすっごく格好良かったです。しかし、片手運転になるためか、はたまた技術の進歩か、今はハンドルの所にスマートについてますし、車だってオートマが主流になりました。

そうそう、オートマと言ってよいのかどうか、「パーフェクトチェンジ(PC)」を謳った5段変速自転車がありました。これはコントローラーがハンドルについていて、それを操作するとモーターが”ウィーン”と作動して、1速から5速までを「完璧に」チェンジするという画期的な電動変速装置を備えていました。ハンダース(あごいさむさんがいました)が宣伝し、購入すると彼らのプリントされた特性Tシャツがもらえました。ただし、この「パーフェクトチェンジ」、電池が切れたら役に立ちません。変速するには一旦自転車を降りて、ドライバでネジを回さなくてはならないという始末でした。

同様に当時の少年にとって羨望の的だった「フラッシャー」(いわゆる方向指示器で、左右に光がピカピカピカと走って曲がる方向を示してました)、そしてフォグランプ(霧の中でも安全に走れるように、黄色のランプが電池で光って綺麗でした)なども、最初は面白がって使っていましたが、電池が切れたら役立たず。そのうち取り外されてしまったりするものもありました。あわれ。

 その頃、少年達には手も届かなければ足も届かない自転車がありました。それは「10段変速」です。これは凄かった。スポーツ仕様の細いフレーム、細くて大きなタイヤ。そしてそしてドロップハンドル!ちょーかっこよかったです。10段変速を操るレバーはハンドルからペダルに下りるフレームの左右についていました。大学生のお兄さん達が颯爽と乗りこなしていましたが、買い物にはちょっと不向きだったようです。

 そんなこんなと引っ張って来ましたが、ここからが本論です。「人生は、10段変速の自転車のようなもの。誰もが、自分がもっているものの大半は使っていない」という言葉があります。アメリカの漫画家、チャールズ・シュルツという人の言葉です(「生きる力がわいてくる名言・座右の銘1500」、著者:インパクト、ナガオカ文庫)。

 私たちが勤める老健施設は、介護を必要とする高齢者の在宅復帰をサポートする中間施設。そのためには利用者様ひとりひとりについて、できること、できないこと、介助したり自助具を用いればできることなどを正しく評価した上で、必要なところは介助を行い、自力でできることはご自分で行ってもらう、すなわち「リハビリテーション介護」をむねとする施設です。したがって、利用者様が持っている能力を最大限に発揮してもらえるように、全職種、全スタッフが情報を共有し、チームケアを展開していくことが肝要です。自転車よろしく、?段あれば、10段全部を有効かつ適切に使ってもらう、ということが大事なのです。

 それはそうと、現在の自転車事情は随分変わりました。画期的なのは電動アシスト機能。そのすごさは、一目瞭然ならぬ「一乗り瞭然」。坂道なんかグングンです。あと、三人乗り自転車も登場しました。そして10段変速は小学生用自転車にもついてるこの時代、24段変速なんてのもあるから、これって全部使いこなせるのだろうか?と思ってしまいます。

同じように、人間一人一人の価値観や人生観も、複雑多岐になってきたのではないでしょうか。老健の利用者様一人一人が、もっているものをフルに発揮できるようにしなくてはならない、そう思った言葉でした。

「活かされる」場所

 「『活かされる』場所」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。高級割烹店にドーンと構えられた水槽、その中を悠々と泳ぐ鯛にヒラメに伊勢海老・・・。それもたしかにいいですね。一度は行ってみたいものですね。しかし今回はそういう話ではありません。「”『行かされる』場所”から”『活かされる』場所”へ」という話題です。

 去る1012日、西都市総合福祉センターで行われた同市の介護支援専門員連絡会の全体研修会でのこと。講師は櫻井俊司先生。特別養護老人ホームシルバースターうなまの里で生活相談員と介護支援専門員を兼務されているほか、県の介護支援専門員協会の日向・東臼杵担当理事で、介護支援専門員資質向上事業検討委員会の委員長も務め、各地で研修や講演をするなど活躍中です。介護支援専門員の実務者研修、未経験者更新研修を受講された方なら、多くの方がお世話になっているはずです。

 その桜井先生が「デイサービスセンターは、そこを利用されている方にとって、家族などから”『行かされて』いる場所”なのかもしれません。しかし私たちは、その人が”『活かされて』いる場所”にしなければなりません」と言われたのです。はっとした瞬間でした。

 この話に触れる前、桜井先生が紹介したのはマザーテレサの言葉。「この世の最大の不幸は、貧しさでも病気でもありません。自分が誰からも必要とされていないと感じることです。そして今日の世界における最悪の病は、そういう人に対する愛が足りないということです」・・・。つまり、「自分が誰かから必要とされていること」が、その人を活かすことだと思いました。そのような通所サービスをお一人お一人に提供しなければならない、そしてその内容は百人いれば百通りあるのだ、と。

 補足するように桜井先生は「寝たきりの入所の女性でも、その息子さんが面接に来て、耳元で『お母さん、また来るね』と話しかけ、元気になって帰られる。それは彼女が”必要とされている”ということ」とも言われました。これはつまり「”『生かされる』場所”から”『活かされる』場所”へ」と言えます。

 「生活」という言葉を何気なく使っていますが、この「活」という字の持つ深み、そして重みを再認識させられました。さっそく明日からの仕事に役立てたいと感じた、有意義な講演会でした。

「老健みやざき」アップしました!

 かねてよりお知らせしていましたが、当協会の広報誌
「老健みやざき 第26号」 PDFファイルをアップしました。そのまま見るなり、ダウンロードして楽しむなり、自由にご利用して下さい。
「老健みやざき 第26号」
へのページはこちらからどうぞ。

 なお、今回号の巻頭に掲載しました、隔号企画(予定)の「老健ルポルター寿」。来年度も県内いずこかの会員施設を、広報部会委員のメンバーで訪問、取材したいと考えておりますが、現在のところ訪問先がまだ決まっておりません。「是非うちに来て!!」という施設がありましたら、ご連絡方お願いいたします。

ファイト!ケアマネ試験

  もうすぐですね!!ケアマネ試験。1028日に迫りました。受験を予定されている皆様におかれましては、準備のほどはいかがなものでしょうか?

正しくは「介護支援専門員実務研修受講試験」と称されるこの試験。昨年度は非常に難しかったとの声も聞かれましたが、今年度は介護保険法の改正もあったし、いったいどうなるでしょうか。もう既に問題は作られ、印刷も済んで、この日本のどこかにあるわけです。「ああ、事前に見られるものなら、ちょこーっとだけでもいいから見られないもんだろうか?」と思いたくなる心情はよーく理解できます。だけどそれを実際にやってしまっては犯罪になります。絶対ダメ!そんな事せずに、最後の追い込みをかけましょう!

先述の通り、「介護支援専門員実務研修受講試験」ですから、「ケアマネ試験受かったら、もうその日からケアマネヽ(^^)ノ」ではありません。合格者には、年が明けて行われる「介護支援専門員実務研修」を受ける権利が与えられる、というものです。この「実務研修」がなーかなか大変なんですわ。前期と後期があって、いずれも朝から夕方までぎーっしりのカリキュラム。おまけに前期と後期の間に実際に誰かのケアプランを作成すべく、自宅訪問して情報収集、問題点を抽出して短期・長期の目標を立てて・・・という作業があります。

でも今はそんなことを考えていてもしょうがありません。とにかく合格目指して頑張るのみですね。受験皆様のご健闘を心より祈っております。会場の宮崎大学木花キャンパスへは時間に余裕をもってお出かけください。ファイト!!

問題そのものよりも…

How you think about a problem is more important than
the problem itself — so always think positively.

 

「重要なのは、問題そのものより、問題についてどう考えているかである。だから、常に前向きに考えることだ」

 

 これはプロテスタントの伝道師Norman
Vincent Peale
(ノーマン・ヴィンセント・ピール)の言葉です(『世界のトップリーダー英語名言集』、デイビッド・セイン/佐藤淳子、Jリサーチ出版より)。

 私たちが働く老健施設においても、様々な問題が起こります。その問題自体が問題なのではなく、その問題をどのようにとらえ、考えていくか?それが大事だということです。この言葉を反すうしながら、思い出したことがありましたのでご紹介します。

 それは、当協会ケアプラン研究部会が去る91日に開いたリーダー研修会でのこと。講師の明石(あかいし)二郎先生[(社)大分県社会福祉士会理事、Healing forest ~癒しの森~代表]がこんな内容の話を紹介されたのです。

 

 「糖尿病を患っている女性のご利用者がいました。アンパンが大好きで、ご主人が『妻にアンパンを食べさせたい』と相談すると、『ありえません!』と一喝!味気ない食事の毎日で、その方は意欲も力もなくなっていきました。見かねたご主人はこっそり妻にアンパンを食べさせていた。そしてその現場を職員が発見!施設長も連れてきて『医療的指導』として厳しく叱ったのです」・・・。

 

・・・そりゃあそうだ。糖尿病の方にアンパンなんぞ隠れて食べさせたら大変だ!と思ったのですが、明石先生はこう続けました。

 

 「しかし、福祉の視点に医療を取り入れて考えると『どうやったらアンパンを四分の一切れ食べられるか?』という発想になります。つまり、アンパンを四分の一切れ食べたときに、医療的な視点からどういうことになるのかをフォローしながら、四分の一切れアンパンを食べて喜びが得られ、その人が意欲的に生き生きと生活できるよう、発送を転換することがケアマネージャーには求められてくるのです」・・・。

 

・・・なるほどなあ、これが「問題についてどう考えているか」ということなのではないかなあ、と思いました。常に前向きに、利用者様の視点になって考えることが大事だなあ、と思いました。”ハウシンクアバウト,ア,プロブレム”ですね。

鳴るか!?介護負担軽減の福音

 少々前になりますが、826日付の宮崎日日新聞。「福祉従事者の労災後絶たず」という記事が載っていました。全国はもちろん、県内でも高齢者介護施設などで働く社会福祉従事者の労働災害が後を絶たないという内容です。

 厚生労働省によると、社会福祉従事者の労災の発生頻度は全産業従事者の2.5倍にもなるとのこと。また宮崎労働局によると、県内の老人介護施設、保育施設、障害者などで働く人約25,700人で、昨年休業4日以上となった事故は51件発生しているのだそうです。そのおもな内容はぎっくり腰や骨折など。このような状況を受け、県内4つの労働基準監督署では、社会福祉施設への指導強化に着手した、と記事にはありました。この2.5倍という数値、確かに看過できるものではありません。さらに「今後も高齢化が進むのに伴って介護労働者が増え、労災の増加が懸念される」と将来の見通しについての関係者のコメントが紹介されていました。

 月が替わった913日の同紙。「最期まで自分らしく ?デンマークの高齢者介護視察記?」と銘打った連載記事の中で、デンマークでは「法律で高齢者抱え上げることが禁じられている」とありました。これは介護者の身体的負担を減らそうというもので、同国では電動の介護リフトの使用が徹底しているのだそうです。そればかりか、「リフトを使わずに腰を痛めても労災は認められない」とのこと。少なからぬ驚きをもってこの記事を読みました。

 さかのぼって730日の日本経済新聞の一面トップ記事。「介護ロボ保険対象に」と5段見出しの立った記事では、2015年から介護・福祉に役立つ先端機器(介護ロボット)への公的保険の適用を拡大するという、政府の方針が示されていました。これによれば、介護される人が使用するものに加え、介助者の負担を軽減する機器も候補になっているとこと。これにより介護従事者の人材不足の緩和に役立てる狙いがあるのだそうです。

 介護を巡る我が国や本県の現状、そして高齢者福祉の先進地として知られるデンマークにおける介護の取り組みを鑑みながら、この「介護ロボ保険対象に」の記事のように、私たち老健施設に勤める者にとって、そして何よりも利用者様本人にとって、福音がたくさん鳴り響くといいと思いながら、3つの記事を並べ、読み直してみたのでありました。

研修会開きました(支援相談部会:その4)

櫛橋弘樹先生講演「医療依存度の高い高齢者への対応」骨子}

 

 

【医療依存度の高い要介護高齢者の受け入れ課題】

(1)日中・夜間の職員配置

(2)施設間連携の状況

(3)現場の業務負担

(4)介護職が実施することを検討すべきケア内容

(5)看護師・介護職の連携

 

(1)日中・夜間の職員配置について】

〇日中・夜間の看護職員一人あたりの入所者数を、新規入所者を基本的に受け入れている施設とそうでない施設とで比較すると、IVHによる栄養管理、気管切開(カニューレ有り・無し)経管栄養(経鼻)において受け入れている施設のほうが看護職員一人当たりの入所者数は少ない。

〇夜間においては特にIVHによる栄養管理、経管栄養(経鼻)、酸素療法で看護職員一人当たりの入所者数は少ない。

※医療依存度の高い要介護高齢者へ対応するためには、看護師の日中・夜間の職員数の増員、特に夜間配置の強化が求められる。

(2)施設缶連携の状況】

 夜間に病院や診療所と連携している施設ほど、医療的ケアの必要な新規の入所者を受け入れている。

 今後医療依存度の高い要介護高齢者の受け入れを拡大する課題として、医師の指導・管理、連絡体制の強化が求められる。

(3)現場の業務負担感】

 時間帯によって課題が生じやすいケア内容としては気管切開(カニューレ有り)、喀痰吸引、その他人工呼吸があげられる。

 今後受け入れ拡大にあたっての課題:業務量増加に伴う看護師の不足、医師の指導・管理、連絡体制の強化。

 

(4)介護職が実施することを検討すべきケア内容】

〇介護職の業務を拡大すべきケア内容:「経管栄養」、「人工肛門」、「喀痰吸引」準備や片付けといったケアの一部。

《介護職の業務拡大の検討》

※看護師不足は医療的ケアの受け入れ制限につながっている。

※看護師の大幅な増員は困難であり、今後介護職の業務範囲の拡大は必須。

〇医療的ケアのうち、準備や片付けを介護職が実施することで、看護師の業務負担の軽減になり、他の医療的ケアに専念できる。

※日常的にケア提供や観察が必要である点からも、入所者に近い存在の介護職が医療的ケアに関わることが臨まれる。

 

(5)看護師・介護職の連携:看護師と介護職の連携促進に向けた取り組み】

 食事介助や口腔ケア、疾病管理といったケアの領域において、看護師と介護職とでケア提供上の問題に対する認識の違いが大きい。看護師と介護職とでそれぞれのケア目標を共有するほか、業務手順など、ケア提供方法を共有することが重要。

DSCN2245.JPG

(終わり)

研修会開きました(支援相談部会:その3)

櫛橋弘樹先生講演「医療依存度の高い高齢者への対応」骨子}

 

 

【介護老人保健施設において新規入所者の受け入れを制限している理由】

○気管切開、その他人工呼吸、IVHによる栄養管理・・・看護師や医師の不足・不在なため、緊急時対応の体制が不十分なため。

○酸素療法、末梢輸血・・・人員の問題のほか経営上の問題から。

○経管栄養(経鼻)、喀痰吸引・・・ケアのための時間確保が不十分なため。

気管切開、IVHによる栄養管理経管栄養(経鼻)において、受け入れている施設は看護職員一人あたりの入所者数は少ない。

※酸素療法、IVHによる栄養管理、経管栄養(経鼻)において、夜間の看護職員一人あたりの入所者数は少ない。

 

【時間帯によって生じる課題の内容】

〇気管切開(カニューレ有り):夜間看護師が夜勤をしていない日があり、併設医療機関から看護師を呼ばなければならず、すぐに吸引ができない。夜間看護師が少ない。客痰吸引が必要な利用者が重なると、現在の人員配置では対応できない。

〇喀痰吸引:看護師がいない時間帯がある。対象者が多くなると、夜間1人ナースでは対応できず、ナースは介護職同様の仕事分担もある。食後痰がからみ、誤嚥によりむせ込む。

〇その他人工呼吸:看護、介護職の配置数が少なくなるため、1人の上に対応していると、他への対応や、他の方への影響等あり対応困難を生じる可能性が高くなる。夜間は看護・介護の人員が少なくなる。

 

【受け入れ拡大上の問題】

○看護師が担当している業務量が増えるため、現行の人員体制では対応できなくなる。

○医師の指導・管理、連絡体制を強化する必要がある。

○施設設備を変更する必要が生じる。

 

【介護職の業務が拡大した場合の今後の受け入れ方針】

※介護職の業務拡大により受け入れ数の増加が見込まれるケアのうち、

〇現在受け入れている施設がさらに受け入れ増加:経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻)、人工肛門、リハビリテーション

〇現在受け入れを制限しているが、業務拡大によって受け入れる:バルーンカテーテル、人工肛門、インスリン投与

酸素療法、経管栄養、喀痰吸引等の医療的ケアにおいて、50%以上の看護・介護職員が緊急時・異常時の早期発見、早期対応について負担を感じている。

 

【新規に受け入れ困難なケア内容】

〇その他人工呼吸、IVHによる栄養管理、気管切開(カニューレ有り・無し)、経管栄養(経鼻)、酸素療法、抹消輸血、疼痛管理、喀痰吸引

50%以上の施設が看護師や医師の不足・不在、緊急時対応の体制が不十分なため受け入れを制限。(続く)

研修会開きました(支援相談部会:その2)

{櫛橋弘樹先生講演「医療依存度の高い高齢者への対応」骨子}

 

 

《2.平成24年度介護報酬改定の概要》

 

24年度の介護報酬改定】

 24年度の介護報酬改定は「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分化・連携などへの対応が求められ、以下の基本的な視点に基づき、各サービスの報酬・基準についての見直しが求められた。

(1)地域包括ケアシステムの基盤強化

(2)医療と介護の役割分担・連携強化

(3)認知症にふさわしいサービスの提供

 

【地域包括ケアシステムの基盤強化】

 介護サービスの充実・強化を図るとともに、介護保険制度の持続可能性の観点から、給付の重点化や介護予防・重度化予防について取り組み、地域包括ケアシステムの基盤強化を図ることが必要である。

 高齢者が住み慣れた地域で生活し続けることを可能にするため、

(1)高齢者の自立支援に重点を置いた在宅・居住系サービス

(2)要介護度が高い高齢者や医療ニーズの高い高齢者に対応した在宅・居住系サービスを提供する。

 

【認知症にふさわしいサービスの提供】

 認知症の人が可能な限り住み慣れて地域で生活を続けていくため、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設において必要な見直しを行う。

 

【施設系は役割・機能が明確化】

○施設サービスについては、それぞれの役割・機能がより明確化となる。

○例えば特養は、重度者の終の棲み家として、ユニット化や看取りの機能を強化するための中間施設として、リハビリ機能が拡充。

○介護療養病床は2017年末の廃止に向けて、介護療養型老健施設などへの転換が促進される。一方、有料老人ホームに関しては規制強化が進む。

 

【介護老人保健施設の退所者の現状:介護老人保健施設、介護療養型医療施設と比較して】

○介護老人福祉施設の退所者の主な退所先:医療機関28.9%、死亡63.7%(うち施設内での死亡29.7%、入院先での死亡34.0%

○介護療養型医療施設の主な退所先:医療機関34.7%、死亡33.0%(うち施設内での死亡25.7%、入院先での死亡7.3%

○介護老人保健施設の主な退所先:医療機関48.9%、家庭23.8%、介護老人福祉施設9.3%、死亡6.0%(うち施設内での死亡5.1%、入院先での死亡0.9%

※出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成22年度)

 

【介護保険施設からの退所後の行き先の推移(平成199月と平成229月との比較)】

介護老人福祉施設:医療機関が31.5&から28.9%に減少。

○介護老人保健施設:医療機関が45.3%から48.9%に、死亡が3.8%から6.0%にそれぞれ増加、一方家庭復帰が31.0%から23.8%に減少。

※出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成19年度、平成22年度)

 

【介護老人保健施設の主な改訂内容】

1.介護老人保健施設の在宅復帰支援機能の強化

2.短期集中リハビリテーション実施加算の見直し

3.地域連携パスの評価

4.認知症行動・心理症状への対応強化

5.肺炎等への対応の強化

6.ターミナルケアの評価の見直し

※介護老人保健施設は在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点となる施設。リハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設。

【介護老人保健施設の在所日数】

平成22年度老人保健健康増進等事業「医療施設と介護施設の利用者に関する横断調査」によると、介護老人保健施設1,036施設に入所していた29,276人の入所者の在所日数の中央値は全体で358日。また、在所日数の中央値が2年以上である施設は1割程度。

【退所の状況】

「介護サービス情報公開制度」(平成21年度)より老人保健課調べによると、

○介護老人保健施設から退所した者の施設定員に占める割合は、一月あたり10%未満である施設が約7割。

○介護老人保健施設から自宅へ退所した者の施設定員に占める割合は、一月あたり3%未満である施設が約8割。

退所者に占める自宅への退所者の割合が30%以上50%未満の施設は全体の16%、また50%以上の施設は8%。一方、自宅への退所者が0人であった施設は、全体の19%。

 

【介護療養病床の扱いについて】

 平成23年度までに老人保健施設等へ転換することとしていたが、転換が進んでいない現状を踏まえ、先の通常国会において成立した介護保険法等の一部改正法により、以下の措置が講じられた。

1.これまでの政策方針を維持しつつ、現在存在する介護療養病床については、6年間転換期限を延長する。

2.平成24年度以降、介護療養病床の新設は認めないこととする。

3.なお、引き続き、介護療養病床から老人保健施設等への転換を円滑に進めるための必要な追加低支援策を講じる(平成24年度介護報酬改定における対応を検討)。(続く)

研修会開きました(支援相談部会:その1)

 (社)宮崎県老人保健施設協会支援相談研究部会は928日、宮崎市の宮崎観光ホテルで全体研修会を開きました。会員老健施設職員等75人が受講しました。

 講師は潤和会記念病院の医師で、101日からはひむか苑の施設長も兼務されている櫛橋弘樹先生。「医療依存度の高い高齢者への対応」と題しての講演は、2時間弱という限られた枠ではもったいないくらいの盛りだくさんの内容!講演の骨子を4回に分けて連載します。

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《1.介護保険を取りまく状況について》

 

(1)75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には25%を超える見込み

(2)65歳以上高齢者のうち、認知症高齢者が増加していく。

(3)世帯主が65歳以上の世帯のうち、単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していく。

 

【地域包括ケア研究会報告書(平成223月)】

〔地域包括ケアを支えるサービス提供体制の在り方〕

 地域住民は住宅の種別(従来の施設、有料老人ホーム、グループホーム、高齢者住宅、自宅)にかかわらず、おおむね30分以内(日常生活域)に生活上の安全・安心・健康を確保するための多様なサービス(注)を24時間365日利用しながら、病院等に依存せずに住み慣れた地域での生活を恵贈することが可能になっている。

(注)居場所の提供、権利擁護関連の支援、生活支援サービス、家事援助サービス、身体介護、ターミナルを含めた訪問診療・看護・リハビリテーションなどのサービスが個々人のニーズに応じて切れ目なく総合的かつ効率的に提供される。

 

〔良質なケアを効率的に提供するための人材の役割分担〕

 2025年には、地域包括ケアを支える人材間の役割分担と協働が図られ、人材の専門能力の一層の向上と生産性・効率性向上が図られている。また、医療や介護の専門職のほか、高齢者本人や住民によるボランティアといった自助や互助を担う者など、様々な人々が連携しつつ参画している。

 

【地域包括ケアシステム】

〔地域包括ケア5つの視点による取り組み〕

 地域包括ケアを実践するためには、次の5つの視点での取り組みが包括的(利用者のニーズに応じた(1)から(5)の適切な組み合わせによるサービス提供)、継続的(入院、退院、在宅復帰を通じて切れ目無いサービス提供)に行われることが必須。

(1)医療との連携強化(医療)

24時間対応の在宅医療、訪問看護やリハビリテーションの充実強化

(2)介護サービスの充実強化(介護)

・特養などの介護拠点の緊急整備(平成21年度補正予算:3年間で16万人分確保)

24時間対応の在宅サービスの強化

(3)予防の推進(予防)

・できる限り要介護状態とならないための予防の取り組みや自立支援型の介護の推進

(4)見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスの確保や権利擁護など(生活支援)

・一人暮らし、高齢夫婦のみ世帯の増加、認知症の増加を踏まえ、様々な生活支援(見守り、配食などの生活支援や財産管理などの権利擁護サービス)サービスを推進。

(5)住まい(住まい)

・高齢者専用賃貸住宅と生活支援拠点の一体的整備

・持ち家のバリアフリー化の推進

→安心・安全な生活を保障していこう!

 

【税と社会保障の一体改革における方向性について】

〔個別分野における改革の方向性(1)

“医療・介護 ・・・全世代への配慮と長期的な維持可能性・・・”

→診療報酬・介護報酬改定

→基盤整備のための一括的な法整備

○医療・介護サービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化

・医師確保、介護職員等の人材確保と資質の向上

・病院・病床の機能分化・機能強化、専門職間の協働と役割分担の見直し

・在宅医療・介護体制の強化、地域包括ケアシステムの確立

・サービス付き高齢者住宅等の居住系サービスの充実等による特養待機者の解消

・精神保健医療の改革、認知症対策の強化、介護予防・重度か予防への重点化

○保険者機能の強化を通じた医療・介護保険制度のセーフティネット機能の強化、給付の重点化

・働き方にかかわらずセーフティネットを提供するため、非正規労働者への被用者保険の適用拡大

・市町村国保財政の広域化と低所得者対策の強化

・高度医療や高額かつ長期にわたる医療への対応と重点化

・保険者機能の強化、高齢者医療費・介護費に係る高齢世代と現役世代の公平な負担

○予防の推進、制度運営に当たっての効率化

・生活習慣病の予防、介護予防・重症化予防、ICTの利用推進、後発医療品の更なる仕様促進

 

(医療・介護サービスの需要と供給((1日辺り利用者数等&必要ベッド数))の見込み)21:50

 

【医療依存度の高い高齢者の増加】

 2025年サービスの必要量は介護施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設)169万人/日、居住系(特定施設、グループホーム)47万人/日、在宅介護408万人/日

2007年度の2倍】

 高齢化、急性期病院等の在院日数の適正化等を背景に、医療依存度の高い要介護者数が介護現場に増加。(続く)

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