協会活動報告

研修会開きました(リハ部会:その2)


  やはり、具体的に指示してあげることは大切だと思います。「お辞儀をしてくださいね」「頭をこちらに向けてくださいね」「足を手前に引いてくださいね」などの誘導指示のほうが具体的でどうすれば良いのか解りやすいものと思います。介護される側は自分で力を入れますので筋力等身体の維持になりますし、自分でできるという自信にもつながります。介助者は余計な負担が減り腰痛予防等につながります。まさしくお互いにプラスな関係です。

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また、依存する立場の気持ちについてですが、心理面で介護される側は引け目を感じるわけであります。つまり「借り」ができるということになります。借りが多ければ介助者の言うがままにならざるをえない事態が生じやすくなるのではないでしょうか。つまり弱者と強者の関係になり易いことに注意をして下さい。

そしてこういう場面もよくみられている事ですが、オムツ交換がはやいとか食事介助がはやいということで、素晴らしい人材だと尊重されることがあるようです。介護技術とははたしてそうなのでしょうか?と言わずも分かっている事です。スピードではありません。家庭でもできるオムツ交換や食事の介助をするのに国家資格は要らないんです。

このような話を聞いていて久しぶりに思いだした言葉がありました。「介護力士士」「過介護福祉士」。これはベッドから車椅子での移乗で例えるならば、力士のごとく投げ飛ばすように車椅子にえいっと力任せに移乗させたり、本人様のできる事もすべてを全介助でしてあげることが美徳と考えているという方の例えを揶揄した言い方だそうです。

さて、話をもどしてみますが、介護される方の動作獲得の為にはどうすればよいのかという事ですが、毎日ケアされている方々の協力がなければレベルは上がらない。その為にはやはりケア提供での意識が大切である。つまり毎日のケアの統一が重要であると熱弁されていました。ケアをされる側も今日は脇の下に手を入れられて介助された、しかし他の人は腰をもって介助していたなど介助される方はとまどいもあると思います。だからこそ毎日介助してくれている方々に動作を知ってもらって日々の生活動作の中で細かくケア統一ができ、自立支援を促していく介護技術は何かと意識できればと思います。

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(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その1)

 リハビリテーション研究部会は315日、宮崎市の宮崎リハビリテーション学院で「起居動作・移乗動作介助方法に関する研修会」を開きました。今年度から介護職員等を対象に、介護動作に関する勉強会を取り入れようと、開いた研修会には56名が参加しました。その模様を連載していきます。

 

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【テーマ1「起居動作の介助方法」講師 濱砂好治さん 介護老人保健施設菜花園理学療法士】

 

介護・看護の連携、実践の中から、その人の機能を活かせる様な介護技術を知る必要があり大事ではないかと思います。まず利用者様が何ができて何ができないかを理解、確認する事が必要であるという事です。

そこでまず移動動作とは何かという事になるのですが移動動作とは定義として「ある点から他の点へと、距離の長短にかかわらず、空間で水平、順重力方向、抗重力方向に身体の重心の位置を変化させること」をいいます。つまり重心が動けば移動動作であるという事です。ではこの移動動作には5つの基本があります。

つまり?力学的側面、?神経生理学的側面、?運動学的側面、?介護学的側面、?心理学的側面・・・です。

力学的側面では支持基底面、重心の高さ、重心線の移動と平衡、ベクトル、物を持ち上げる力・動かす力、てこの原理が関係してきます。ふむふむ、なるほどです。物体が不安定ならば動かし易い、動き易いという事を利用すれば、効率の良い動きや介助ができる事になりますので、人間の身体の動きを知る事、つまり生理的な動きに添って動かす事がいかに重要なものかがわかってきます。

神経生理学的側面では眼・頭頚部のコントロールは重要で、体幹への動きに影響がでてきます。運動学的側面では押す動作と引く動作の違い、安定した状態の移動動作、回転動作のコントロールが挙げられます。物体の重心の動きや、肩甲帯や骨盤帯を上手くコントロールするにはどうすればよいのか、例えば立てる要素のある方は立つ方向に誘導してあげるという事、本人様に押してもらう事で重心も前方に移り立ち易くなる。背臥位の際では広い支持基底面を持つ骨盤帯や肩甲帯は浮かす事、つまり上肢を伸ばしてみたり下肢を重ねたりと支持基底面を狭くして、丸い状態をつくる事で不安定にさせる事がポイントです。

介護学的側面や心理学的側面では、できない部分のみを介助し、口頭指示ははっきりと具体的にすること。そして安全であること、恐怖心を抱かせない介助が大切です。

この介助を最小限にして、口頭指示をはっきり具体的にするという部分ですが、みなさん必ず思いあたる部分だと思います。介助される側ができることまで介助していませんか?例えば移乗動作として重心の誘導さえしてあげれば、自分で立てる方に対して全介助で行っている介助者・・・たしかにみたことあります。「はい起きましょう」「はい立ちましょう」「イチ・ニ・サン」と言っている介助者・・・たしかにいます。

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(つづく)

第11回研究大会参加費減額のお知らせ(重要)

  会員施設の皆様、日頃より当協会活動のご理解とご支援をいただき、誠にありがとうございます。

11回公益社団法人宮崎県老人保健施設協会研究大会の参加受付は328日(金)までとなっております。なお、会員施設の皆様には先頃文書にてお知らせしました通り、参加費用を、本大会に限り減額することにいたしました。恐れ入りますが、既にお申込いただいたご施設についても、送付済みの申込用紙をお使いの上、再度お申込いただきますようよろしくお願いいたします。

また、既にご入金を頂いたご施設には、返金処理等について、当協会よりご連絡いたします。多くの方々のご参加をいただきますことを、心よりお願い申しあげます。ご不明な点がございましたら、ご遠慮なく事務局までご一報下さい。

参加申込締め切り:328日(金)

【参加費変更額の内容】

 (1)レクリエーション研究発表までの参加費

 (旧)4,000円  (新)2,000

 (2)研究発表(分科会)までの参加費

 (旧)3,000円  (新)1,000

 (3)レクリエーション研究発表のみ参加費

 (旧)1,000円  (新) 500

【問い合わせ先】

 公社)宮崎県老人保健施設協会事務局 

 TEL 0985?47?3941

 FAX 0985?47?3967

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その17)

【母を看取り感じている事】

看護介護研究部会主催のターミナルケア研修会。講師にお招きした東京都中央区にある聖路加国際病院の緩和ケア科部長、林章敏先生(都城市出身)が、最後に示したスライドには「母を看取り感じていること」というタイトルが打ってありました。「実は昨年の1212日に母を亡くしまして、それからまだ間もないわけですが・・・」と林先生は話し始めました。

「それでも思い出が生きてるなあ、と思ったりしています。母の表情や、母の仕草、母の語り、母がしてくれた事。そして母にしてあげられた事や母がやり残した事を引き継ぐことなど・・・。色々なことがあって、亡くなったという実感がなかったりもします」と述べた上で、「しかし、『やってあげられた事』というのはすごく大事じゃないか、と思います。私は隔週で宮崎に帰っています。実家の親の世話というか話し相手になるぐらいしかできていないのですが、その中でも『やってあがられてるな』という感覚はあります。十分じゃなくても、自分の中で無理なく継続できるような形でやっていけることが大事だと思っています。そんな中でやれて良かったなと思っています」と説得力のある説明に、受講者は聞き入っていました。

最後に受講者に「伝えたいメッセージ」として、「続けることです。『どうしたら続けられるか?』ということが大事です。無理なく続けることです。くたびれてしまったらやりたくてもやれなくなりますし、みなさんのお世話になりたいと思っている人たちも、お世話になれなくなってしまいます。ですから、いろんな意味で自分を守りながら、継続ができるようにしてください。そしてそれを利用者やご家族に提供できるようにするにはどうしたらいいか?を考えながらやっていっていただければ、それが一番だと思います」と呼びかけた林先生に、会場から感謝の拍手が鳴り響きました。

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(おわり)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その16)

【身近な人を亡くした人に接する時に大切なこと】

そして、大切な人を看取った後、残された家族に対してどのように接するか?林先生は「『誰でもあることだから』などとわかったつもりの事を伝えるよりは、「辛いですね」と正直な気持ち、さらに思いやりの気持ちを持って接して下さい」と、次の4点をスライドに示しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)かくさない

・・・相手を理解できたふりをせずに正直に接する

(2)えらぶらない

・・・アドバイスや指示をしない。興味本意の質問をしない

(3)なぐさめない

・・・わかったつもりで発する言葉は相手を傷つけることがある

(4)いっしょにいる

・・・ありのままで、そばにいる。相手の言葉の背景を多様な視点から理解するように努める

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【宮沢賢治に教わる:『こわがらなくてもいい』】

林先生はターミナルケアに関わっていく中で、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」のすばらしさを改めて再認識したそうです。その「特にすごい」という箇所は「南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい」という一節とのこと。「『また痛みがくるの?』、『苦しくなるの?』、『誰もいなくなるの?』、『死ぬの?』、『死んだ後ってどうなるの?』など、色々な思いで過ごされる患者さんに『こわがらなくてもいいですからね。大丈夫ですからね』と言えるでしょうか。これはとても大きなことです」と受講者に問いかけました。

「『怖い』というのは感情です。認知症のあるなしにも関係なくみんなが持っています。その方に対して『こわがらなくていいですよ』と言えるためには痛みの事から家族の事など色々なことを含めて対処していく必要があります。その上で初めて『こわがらなくていいですからね。ちゃんとしますからね』と言えると思います。私自身もそう言えるようになっていきたいと思います」と、柔らかな口調の中にも強い意志を言い表す林先生に、受講者は胸を打たれていました。

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(つづく)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その15)

【せん妄について】

 次にせん妄について、「一過性の意識障害です。回復可能であることを家族にも説明して下さい」と前置きし、環境の調整および家族への説明に関して、次のように説明しました。

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※せん妄は周囲を認識する意識の清明度が低下し、記憶力、見当識障害、言語能力の障害などの認知機能障害が起こる状態。通常数時間から数日の間に発現し、日内変動が大きい。

《環境調整》(米国精神医学界ガイドラインより)

○照明の調整(昼夜のめりはり、夜間の薄明かり)

○日付・時間の手がかり(カレンダー、時計を置く)

○眼鏡、補聴器の使用

○親しみやすい県境を整える

 ・・・家族の面会、自宅で使用していたものを置く。

○オリエンテーション繰り返しつける

 ・・・場所、日付や時間、起きている状況について患者自身が思い出せるように手助けする。

 

《家族への説明》

○認知症とは異なり、身体疾患や、薬剤が原因であること、原因が除去されれば回復可能であることを説明する。

○原疾患の進行による場合は、せん妄が病状進行のサインであることを説明し、家族の辛さを理解し、声かけを行う。家族が実行できる患者のケアなどを一緒に探す。

○つじつまが合わない言動は、無理に修正しようとせず、話を合わせたり、話題を変えたりする方法を推奨する。

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 このせん妄関して林先生は「自分が見ず知らずの所にぽんと置かれたようになって怖いんですよね。周りの人も覚えていず、自分のことを気遣ってくれるかどうかもわからないわけです。ですから『怖がっておられるんだな』と思って接してあげてください」と、相手を気遣った対応の必要性を説きました。

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(つづく)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その14)

【死が近づいてきたとき・・・亡くなる過程を心に置いて】

実際にターミナルケアを行った事例を、写真を交えて説明した林先生が次に示したスライドは「死が近づいてきたとき」というタイトル。そして、「死亡前一週間以内」と「死亡前48時間」の2枚で、それぞれ次のような内容でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〔死が近づいてきたとき〕

《死亡前一週間以内》

○トイレに行けなくなる

○水分が飲めなくなる

○発語が減ってくる

○見かけが急速に弱ってくる

○眼の勢いが無くなってくる(注視能力の低下)

○原因の特定しにくい意識障害・傾眠傾向が出現してくる

 

《死亡48時間以内》

○一日中反応が少なくなってくる

○脈拍の緊張が弱くなり、確認が難しくなる

○血圧が低下する

○手足が冷たくなってくる

○手足にチアノーゼが認められる

○冷や汗が出現する

○額の相が変わる(顔色が変わる)

○唾液や分泌物が咽頭や喉頭に貯留し、呼気時にゴロゴロと不快な音が出現する(死前喘鳴)

○身の置き所がないかのように、手足や顔などをバタバタさせるようになる。

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 看取りの経験が無い受講者も多く、神妙な雰囲気が漂う会場を見渡しながら、林先生は穏やかな口調で次のように語りかけました。

「これらの変化は確かに状態が悪化してきたことのサインであって、これらを何とかしなければならないものではありません。変化が出てくると『何とか対処して良くしなければならない』と思うかもしれません。けれどもこれは、『人が状態が悪くなって亡くなる過程』です。決して『何とかしなければ』と焦って何とかしなければならないものではありません。『こういう過程を経て人は亡くなっていくんだな』ということを皆さんは心においてほしいと思います。」

死が近づいてきたサインを冷静に観察・確認し、最期まで愛情を持ち、親身になってケアをやり遂げることの大切さを、受講者は心に深く刻み込んでいました。

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(つづく)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その13)

【亡くなられる二日前・・・実例から学ぶ】

スピリチュアルケアは難しいことではない。利用者の日常を大切にし、笑顔と親切をもって接することが大事であることを学んだ受講者に、林先生は一枚の写真をスライドに映し出しました。それは一人の高齢の女性がベッド上で三味線を抱えているもの。ただし、一人で抱えているのではなく、よく見るとスタッフらしき人の手が”天神”(三味線の頭の部分)を支えていました。

「これは亡くなられる二日前の写真です」という説明に一同驚愕。なぜなら彼女は実に穏やかな笑顔を満面にたたえていたからです。かつて芸子さんだった彼女の「三味線が弾きたい」という希望を叶えようと、三味線を習っているスタッフが家まで取りに帰ったそうです。そして自分で持つ力すら残されていない彼女に、スタッフが力を貸して三味線を構えてもらったところを撮影した一枚とのこと。「自分で三味線を支えることができなくても、希望が叶えて差し上げたときに見せてくれたのがこの笑顔です」という説明を聞きながら、受講者は食い入るようにこの写真を見入っていました。

 次の写真は、がんの多発性の骨転移があって痛みが激しく、骨折もあり身体も自由に動かせない状態の女性。人生を悲観し、「早くいきたい!」と何度も繰り返されていたそうです。そこで林先生はボランティアで病院に来ていたメークの人に、彼女にメークをしてもらうように依頼。最初は気乗りしなかったものの、実際にメークをしてもらうことで笑顔を取り戻し、これをきっかけにボランティアが来るのを楽しみに待つようになり、自分の身だしなみも気にするようになるなど、生きる価値、生きる希望を見いだしていったそうです。写真は美しくメークしてほほえむ彼女を中心に、林先生、ボランティアスタッフ、医療スタッフなどが取り囲んでいる、暖かい雰囲気あふれる一枚でした。

 これらの写真はいずれもご本人の承諾を得て撮影し、公開したものだと断った上で、林先生はこの日の研修会で用い、説明をされました。それまでの林先生の講義の内容、そしてこれまでターミナルケアへ取り組まれてきたご尽力のほどが端的に伝わる貴重な写真でした。

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(つづく)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その12)

QOLの構成要件に含まれる要素】

スピリチュアルケアにおいて、支えになる対応を一通り説明したのに続き、林先生は「QOLの構成要件に含まれる心理・社会・スピリチュアルな要素」として次の11項目をスライドに示しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 (1)意味や役割を感じられること

 (2)希望を持って生きること

 (3)他者の負担にならない

 (4)家族との良好な関係

 (5)自立していること

 (6)人として尊重されること

 (7)人生を全うしたと感じられること

 (8)信仰に支えられていること

 (9)死を意識しないで過ごすこと

 (10)自尊心を保つこと

 (11)他者に感謝し心の準備ができること

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その上で、「このようなことを感じることができると、『日々の中で人として生きている』ということが感じられると言われています」との説明がありました。

 

【患者自身からみた気持ち】

 「けれども、そんな難しいことばかりではないこともわかっています」と林先生は、患者さん89人に「辛かったときに、どんなことが一番支えになりましたか?」直接インタビューして調べてまとめた「患者自身からみて有用だと評価されたスピリチュアルケア”全ての精神的苦悩に関すること”」というスライドを示して説明しました。

それによると、これまで説明してきた「関心をもっている事が伝わる」、「患者の意思が一番尊重される」ということよりも、「気持ちをわかって一緒に考えてくれる」や「朗らかで親切である」、そして「病気以外のことも良く聞いてくれる」という事の方が比率が高く、これらの事の方が「支えになりました」とのこと。

つまり「難しく哲学的で”スピリチュアル”ということよりも『一緒になって考えてくれて、朗らかで、親切に何でも聞いてくれること』そして皆さんの笑顔に救われているということが示されています。皆さんも利用者の日常のことを大事にしてあげてほしいと思います」と解説し、日頃からの親身になった対応の重要性を強調しました。

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(つづく)

ターミナルケア学びました(看護介護部会:その11)

【時に支えになる対応】

 患者が「何もできることがなくなり、生きる意味がない」と思っている時、林先生は「ここにいるだけでも、存在するだけでも意味があるんですよ。自分の力で、これまでは何かをして、何かを生み出し、何かを伝えてきたと思いますけど、何もしなくても『伝わる』ことってすごくあるんですよ」と伝えることがあるそうです。「何もできなくなってご迷惑かけているんじゃないですか?」と家族から言われる事があるそうですが、「患者さんや利用者さんなど、その人の所に行くと”ほっとする”という人がいます。その人のところにいくだけで気持ちが優しくなれる、という人がいますよね」と受講者に考えてもらいつつ、「人は何かをしたり、話したりということに意味を置きがちですが、私は『そこにいるだけでも意味がある』ということをご家族に伝えることで、『ああ、そうなんだな』と思っていただける場合があります」と説明。その人の存在そのものが持つ意味の重さに気づき、それを大事にしながら接していくことの重要性を説きました。

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 「いろんな人の世話になるのが辛い」と思われる方に対しては、「今は私達がお世話をしていますが、いずれ私たちも世話を受けなければならないのですよ」と、世代を超えた支え合いを継承していることを伝えるそうです。またその際、「これまで、いろいろ人の世話をしてきたでしょう。今度は、自分がしてもらっていいんじゃないですか?」と言いながら、「『申し訳ない』じゃなく、『ありがとう』って言うと楽になりますよ」と、世話を受け容れる援助をし、あわせて自然に感謝できるような普段の暖かなケアを提供するなどして、依存による自己価値観の低下を辛く感じる人に対応しているとのことでした。

 また、「人に迷惑をかけている」「家族や親戚が遠くからわざわざ来てもらって申し訳ない」などと思う人への対応法について、まず「『迷惑』と『大変さ』を混合される場合があります」と指摘。その上で「確かに、お世話って楽じゃないかもしれません。だけどいやいややっているのではなく、大切な人だから自分がしたいと思ってやっているのだと思いますよ。迷惑じゃなくて、少しばかりの苦労だと思います。そして家族にとってみれば『十分やってあげられた』と思えるようにすることも大切なんですよ」と伝えるのだそうです。さらに「『悔いのない看取りはない』と言われますが」と断った上で、「家族が『あれもやってあげられなかった、これもやってあげられなかった』となると後悔が残りますよ。ですから『大変だったけどあれだけのことをやってあげられたな』と思えることで立ち直っていけることもありますよ」と伝える場合もあると紹介していただきました。

(つづく)

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