協会活動報告

研修会開きました(栄養給食部会:その3)

  この日(213日)の栄養・給食研究部会の研修会では、講演に先立ち平成26年度における同部会の活動計画が検討されました。事前に会員施設に対して行ったアンケートでは、来年度聞いてみたい講演や、施設間で交換したい情報(献立、行事食の工夫、個別対応など)の内容、調理スタッフの腰痛予防法、そして高齢者ソフト食を導入する上での勉強会の方法等が上がっていることが、同部会の船ケ山 塁副委員長から報告されました。

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(船ケ山副委員長による事業計画の説明)

 さらに、来年度はこれまでの講演形式による研修会だけではなく、新たに栄養・給食に関する施設等の見学や現場実習等も検討されていることが報告されると、参加者からは高い期待と関心が寄せられていました。

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 同部会は会員施設の栄養・給食スタッフに限らず、広く県民の保健、医療および福祉の増進に寄与することを目的に、様々な人を対象にした事業を展開していく方針とのことです。その詳細は今後ホームページ上で紹介・告知・参加募集をしていく予定ですのでお楽しみに。

(おわり)

研修会開きました(栄養給食部会:その2)

 栄養・給食研究部会の研修会(213日、於:ウェルシティー宮崎)、午後からは同部会の委員長である介護老人保健施設慶穣塾理事長の瀧井 修先生による講演「高齢者への薬の使い方」がありました。

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 講演ではまず、薬物療法における高齢者の特徴として、「多病多医多薬」、つまり多臓器にさまざまな疾患が発生し、多くの病院にかかり、多くの薬を種類・量ともに使うことから、重複投与や併用禁忌投与が生じやすい事を学びました。

 次に臓器の機能低下と薬物の吸収・排泄の変化について、「薬物動態を決定する重要因子は吸収と排泄」と前置きした瀧井先生は、高齢者の特徴として、(1)消化管からの吸収は、加齢による影響は比較的少ない、(2)腎臓の機能低下は大きい(腎臓の薬物排泄の指標であるクレアチン、クレアランスは高齢者になると3分の1に落ちる)、(3)肝臓は年齢による影響は少ない、(4)薬物に対する反応の変化として、加齢により過敏になるものや、感受性が低下するものなどがある・・・をあげたのに続き、(5)服薬効率、つまり「きちんとのんでもらえるか?」という”コンプライアンス”の問題に言及しました。「薬の種類や量が多くなると、服薬法が複雑になります。一方高齢者は視力や聴力が低下し、指示が読めなかったり、聞こえなかったりする上に、記憶力や理解力も低下します。さらに指先が不器用となって薬をこぼしてしまうこともありますので、老健では看護師が薬のセットから服薬までを管理しなければなりません」と老健施設における高齢者への薬の使用の難しさを指摘しました。

 このことを踏まえ、高齢者へ薬物を投与する際のポイントとして、(1)薬物の種類と量を少なくする、(2)少量から投与する、(3)他医から投与されている薬剤もすべてチェックする、(4)服薬法は単純・明快なものとする、(5)扱いやすく飲みやすい剤形とし、説明は大きな字で書く、(6)期待される効果と出現する可能性のある副作用をわかりやすく説明する、(7)血中濃度測定可能なものは目安として利用する・・・などをスライドに示して説明し、「高齢者の薬物療法は気をつけてやっていかなければなりません」と言い添えました。

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 これに続き、高血圧および糖尿病の薬物療法について、それぞれの分類や特徴を踏まえた説明がわかりやすく行われました。まず高血圧については、その病因分類を示した上で、薬物療法の開始時期を説明。そしてライフスタイルの適正化に関して、「体重過多の場合には減量」、「週に3回から5回の運動を続ける」、「塩化ナトリウム摂取量を1日あたり6グラム未満に抑える」、「充分なカリウム、カルシウム、マグネシウムを摂取するような食事を工夫する」など、食事療法と運動療法のポイントを示しました。

 また、糖尿病については、診断基準を示したのに続き、食事療法のポイントとして「個人個人のライフスタイルを尊重すること」と、個別対応の食事療法の必要性を強調。そのために「食事の嗜好や時間(食習慣)、そして身体活動量をよく聴き取って下さい」と呼びかけました。さらに考慮すべき事項として、現在の血糖値や血圧、血清脂質などのコントロール状況や肥満歴の有無、エネルギー消費量などを列挙した瀧井先生は、「食事療法も運動療法も、充分な動機付けとやる気、そして長期の継続(柔軟性)が大事です」と、受講者一人一人を見渡しながら語りかけました。

 講演終了後はティータイム。なごやかな雰囲気の中で瀧井先生は、受講者からの質問に身振り手振りを交えながら気さくに応じていました。また今回が栄養・給食部会の今年度最後の研修会であることから、この一年間の部会の活動を皆で振り返りました。楽しい中にも明日からの業務につながる、充実した一日となりました。

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(つづく)

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(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会:その1)

(公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は213日(木)、宮崎市のニューウェルシティー宮崎で研修会を開きました。22人が受講し、口腔ケアや高齢者への薬の使い方などについて学びました。

午前中は来年度の事業計画の検討会に続き、一般財団潤和リハビリテーション振興財団潤和会記念病院リハビリテーション歯科の清山美恵先生による講演「歯科医による口腔ケア」がありました。 

清山先生は2005年に九州大学歯学部を卒業後、同学部顎口腔外科や宮崎歯科福祉センターを経た後、同病院に勤務し、現在に至っています。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の学会認定士であり、摂食・嚥下のスペシャリストとして活躍中です。また、記念病院歯科診療室で月曜から土曜まで診療を行っておられ(土曜日は12時まで)、この日も「白衣を着たまま駆けつけようかと思いました」と言われるほどのご多忙の中を縫って来て下さいました。

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「私は他とはかなり違った歯科医師であり、診療内容も変わっています」と切り出した清山先生。同病院リハビリテーション歯科のホームページ(http://www.junwakai.com/center_info/info_top/info_14)には、「院内に平成23年4月1日にリハビリテーションを主の目的とした歯科が新設されました。常勤歯科医師1名、常勤衛生士2名でスタートし、入院患者様の口腔ケア、摂食・嚥下リハビリテーションに関わっていきます」と紹介されています。うまく「食べたり飲み込んだりする」ための指導を行う”摂食・嚥下リハビリテーション”や、そのための嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査などを実施。さらに脳血管疾患においても、「早期にリハビリテーションで介入することで昨日回復が早くなる」との観点から、発症後すぐの意識のない時からICUに入っての口腔ケアも行っているそうです。

講演では摂食・嚥下のメカニズムに始まり、誤嚥性(嚥下性)肺炎や窒息の危険性、摂食嚥下障害の種類の説明がありました。その中で、好きなものなら食べられるものの、嫌いなものだと摂食困難になる事があるという「嗜好による摂食障害」がスライドを用いて説明されると、日頃それぞれの職場で利用者の栄養管理に携わっている受講者は、自らの仕事を振り返りながら聞き入っていました。

続いて、摂食時の観察のポイント、摂食訓練のしかた、歯科治療や嚥下訓練により栄養状態が改善した事例が紹介され、受講者は「口から食べる」事の重要性を再認識していました。

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さらに、介護保険における経口移行加算や経口維持加算等、また口腔機能維持管理体制加算や口腔機能維持管理加算などの内容と算定基準、必要書類について、誰にでもできる誤嚥リスクの検査法を交えながら説明がありました。その中で日本における死亡原因について、平成24年に肺炎が脳血管疾患を抜いて第3位に上がった事を踏まえつつ、口腔ケアを実施することで肺炎を予防する効果があることを、実際のデータを示しながら説明が行われると、受講者はメモをとるなどして口腔ケアの重要性を再認識していました。

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講演も終盤になり、清山先生は虫歯ができる条件について、「時間」、「甘いもの」、「口腔内細菌」、そして「歯そのもの」の「4つが全部揃ったときに虫歯ができます。だからどれか1つをなくすことで虫歯を防ぐことができます」と説明。引き続き口腔ケアの具体的な方法や使用する道具、義歯(入れ歯)の洗浄方法などについて、スライドを用いて具体的に説明しました。そして、「キーワードは他職種の連携です。多くの職員がその専門性を活かすことで、利用者に多くの効果をもたらすことになりますし、結果的に施設職員も楽になります。私も皆さんと協力して、やれることがあれば対応できるようにしたいと思いますので、相談して下さい」と呼びかけると、受講者からは感謝の拍手が送られました。

(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その4)

【ケアマネジメントを定着させるケアマネージャー】

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 明石先生による研修も終盤になりました。「ケアプランは利用者さんの要望をもとに、楽しく生きていただくために作っていることを意識して下さい。ADL(日常生活活動)ももちろん大事ですが、それだけではなく、自尊の欲求や自己実現の欲求もあり、そこがかなわないと生理的欲求が満たされないという人もいます。ケアマネージャーをやっていて、「あなたと出会えてよかった」と言われることもあるでしょうが、それは結果論であって、求めてはいけません。根拠のあるケアプランを作り、根拠に基づくチームを作り、ケアを実践し、それで生活の質が上がればそれが本当の喜びです。このように根拠に基づくものを浸透させていくのがケアマネージャーです」と前置きし、ケアマネジメントを定着させるケアマネージャーに求められるものとして、次の8項目を示しました。

 

(1)利用者お一人お一人の個別性の把握(アセスメントの活用・更新)

・・・「誕生日に好きな食べ物を提供する」などアセスメントを盛り込むこと。アセスメントがケアプランの根拠になるものであり、アセスメントをとったら満足、ではだめ。また家族関係などいろいろな事が変わっている場合もあり、更新をしていくこと。

(2)組織のケアの状態の把握(利用者本位はどこまで実践できているか)

・・・施設をただの箱にしてはいけない。「あなたを信じて入所したのに、現場は違う」ということのないように。

(3)職員へのケアプランの浸透(ケアマネジメントの実践→現場のケアマネを作らない)

・・・トップリーダーの方針を末端まで浸透させるのがマネージャーの役割。

(4)チーム・ワークによる個別ケアの統一化

・・・チームができるためには目標地点を明確にすることが条件。高校野球における「甲子園優勝」のように、目指すところをはっきりと示す。

(5)モニタリングとフィードバックの機能

・・・モニタリングを行い、かならずフィードバックをすること。現場に「やってみてどうだったか?」と聞きに行くことで現場もやっていけるし、フィードバックしないと「慣れているやり方、楽なやり方がやりやすい」とやらなくなってしまう。

(6)ケア会議の充実化

・・・生活の質の向上に重点を置いて行う。

(7)利用者の家族との話し合い、ケアプランの確認、モニタリングの報告

・・・ケアプランをちゃんと実践した結果がどうだったかを家族に示していないと、「おたくのケアではだめだ」と言われることもあり得る。家族に伝えるとともに、職員にも伝えることがケアマネの役割であり、そのことにより職員もやる気が出てくる。

(8)根拠に基づいたケアの実践の推進

・・・根拠に基づいたケアを実践することでケアワークの専門性も向上する。

 

【最後に】:『活き活きとした生活』を支える専門職として・・・

 講義あり、グループワークありと、内容盛りだくさんも終わりを迎えました。明石先生は受講者を見渡しながら「どうぞ皆さん、専門性を取り戻して下さい。発揮して下さい。そうすると利用者本位のケアは実現します。利用者本位を実現する条件は3つあります。1つめはこの専門性を発揮することです。2つめ、利用者本位はみなさんの根拠に基づく創意工夫によって実現します。3つめ、「利用者本位はどうやったら実現するか?」を考え続ければ実現します。できないこと探しはだめです。できること探しを続けて下さい。みなさんどうぞいいリーダーになりましょう」と呼びかけると、会場からは惜しみない拍手が贈られました。

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(おわり)

研修会開きました(ケアプラン部会:その3)

【ケアマネジメントとは】

 「ケアマネジメントとは、ケアを通して利用者さんが自らの生活・人生・生命を人間らしく、自分らしく生きることを実現するために行う、人事、サービス、コミュニケーション、リスク等における総合的、効果的なスキルです」と明石先生。車が坂道を上っている図を示しながら、「車を運転しているのは利用者さん、目標地点は人間の尊厳。しかし(上り坂なので)阻害され、自分の力で維持できなくなります。そこでケアマネジメントが必要になります。施設ケアマネージャーは『施設における利用者さんの、生活・人生・生活の質を高めるためにケアを運営・管理するプロフェッショナル(専門職)』です。みなさんがいないと成り立たないのです」と、ケアマネジメントを実践する上で施設ケアマネージャーの存在が不可欠であることを強調しました。

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 また、ケアマネジメントを行う中で、多くの施設ケアマネージャーが医療と福祉のはざまで悩みを抱えている事に触れ、「”看護と福祉とどちらが上か?”という話があるが、専門性が違うだけであって上とか下とかというものではありません。専門性が違うだけです。つまり、医療が支えるのは『生存』、そして福祉が支えるのは『生活』で、2つとも必要なのです」と、それぞれの専門性を活かした発想の転換を呼びかけました。そして「大好物のアンパンが食べたい」と訴える糖尿病のある利用者のケアマネジメントを例に挙げ、「『なんでアンパンなんか食べたの!』と叱られたのでは生活の質は高まりません。福祉の発想から『どうしたらアンパンを4分の1個食べられるだろうか?』と考え、そしてそれに基づくケアを行い、実際にアンパンが食べられたらその人の生活の質は上がります」と説明すると、受講者達は身を乗り出して聞き入っていました。

 

【ロールプレイで本来の施設ケア学ぶ】

 続いて受講者はあらかじめ分けられていた9つのグループごとにロールプレイを行いました。「脳梗塞による左片麻痺の入所利用者Aさん」という事例に基づき、Aさんとその子供、ケアマネージャー、そして施設職員の4人の役にそれぞれなりきった受講者達は、新たなケアプランを立てるための話し合いを行いました。ケアマネージャー役の受講者はAさん本人および子供の要望を聴き、施設職員とその要望を実現するためにはどのような事ができるかを協議。施設側としてAさんの要望を実現するためのケアプランを作成し、それをAさんらに伝え、Aさんらがその内容についてイエス・ノーの反応を示すという一連の流れを実践する中で、利用者が人間らしく、その人らしく生きることができるための聴き取りのポイントやプランの立て方、説明方法等について学んでいきました。

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「ケアプランは本来楽しいものです。利用者さんとわいわい話ながら、どうしたらその人が人間らしく、楽しく生きていけるか?それを考えながら作れば楽しいものなのです」との明石先生の言葉に、それまでの考えを改めるようにうなずく受講者の姿も見られました。

(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その2)

明石先生が代表を務められている”Healing
forest“では、相談活動、講師活動、施設づくりのコンサルタントなどを行っており、大分県はもちろん、宮崎県内各地でも幅広く活躍中で、数多くの実績を残されています。詳しくはHealing forest –癒しの森-“のブログ(http://blog.goo.ne.jp/sun-moon-stone-8011)をご参照下さい。県内で近日開催予定のセミナーなども紹介されています。

 

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(↑5月頃には「自らの人生のリーダーになる」というワークショップも開催予定だそうです)

 

 明石先生が自己紹介の中で「『ソーシャルワークとは何か?』と聞かれた時、説明できないとプロではありません。傾聴共感受容などは、やっているつもりでも説明できないといけません。それを人に教える時に福祉の現場では『見て覚えろ』などと言って教えていますが、言って(説明して)、やれないといけません」と会場を見渡しながら話すと、受講者は自らをふり返りながら聞き入っていました。

 

【施設におけるケアマネジメントの意義】

 「これまでの施設ケアは業務優先。効率化と合理化が進められ、安全第一、ADL第一趣致でした」と話し始めた明石先生。そのような状況だと、「ケアプランはADL機能向上が第一位になります。また、安全第一の事故ゼロプランになります。利用者が立ち上がると最寄りの職員(”座らせるプロ”)が駆けつけて座らせるなど、『いかに落ち着かせるか』というプランになります。そして『現場にケアマネがいる』という人がいて勝手なことを始めます。そうするとケアマネージャーは何のためにケアプランを立てているのかわからなくなります」と指摘しました。

 これに対して本来の施設ケアは(1)利用者のQOLの向上、(2)ノーマライゼーションの実践、(3)自己決定の支援、(4)根拠に基づいたケア・・・の4つを挙げ、この中で「(3)自己決定の支援」について、「あるグループホームで、おやつの時間に若い女子職員がお茶を入れていたのですが、そのホームにどんな飲み物があるか出してみると、コーヒーや紅茶、レモンティーなどが出てきました。それを利用者に見せて『何が飲みたいですか?』と聞いて、好きな飲み物を提供しました。つまり”選択肢を提供する”という技術を用いたのです。このように、限りなく自己決定を支援していくのが私達の仕事です」と事例を紹介しました。

 また、「(4)根拠に基づいてケア」に関しても施設の壁に放尿をされる利用者の事例を取り上げ、「会議を開いて『放尿をやめさせよう』と、鳥居の絵を貼ったり、カエルのぬいぐるみを置いたりしたけどだめでした。そこで『根拠に基づいて話し合おう』とやり方を変えたところ、夜に部屋のライトがその壁の部分に当たって白く浮き上がっていたことがわかったのです。その利用者は、そこがトイレだと思って放尿していたわけです」と説明すると、受講者は納得の表情で聞き入っていました。

 これらを踏まえ明石先生は、「ケアプランはいかに人間らしい、その人らしい生活や人生を送ってもらうことができるか?また、いかに利用者に喜んでもらうことができるか?笑顔が導き出せるか?が重要です」と述べ、「利用者が施設生活の中でいかに喜びを得ながら、活き活きと生活できるのか。そしていかに人間らしく、自分らしく生き続けるのか。そのことを具体的な支援として言語化したものを作り出すのが施設ケアマネージャーです」と断言。さらに「この言語化したものを作り出すのが施設ケアマネージャーの存在意義であり、それをスタッフみんなが実践してくれたことにより効果が出たとき喜びになるのです。書類が出来上がった時や、印鑑をまとめて押してもらった時が喜びではありません」と念を押しました。

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(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会高齢者ケアプラン研究部会は125日、宮崎市の潤和会記念病院会議棟でリーダー研修会を開きました。施設におけるケアマネジメントの必要性について学ぼうと会員老健施設や特養などから46人が受講しました。

今回の研修会のテーマは「施設におけるケアマネジメントの必要性 ?施設生活における利用者さんのQOL向上のための取り組み?」。開会にあたり挨拶に立った同部会の原 貴子副委員長(相愛苑)は、「本日はたくさんの方に集まっていただいてありがとうございます。皆さんは各職場でリーダー的な立場として活躍されている方々と思いますが、リーダーとして現場で困っていることや、ケアマネジメントの展開方法など考えることも多いと思います。今日はグループワークもあり、長丁場の研修ですが、そういったところをしっかり学んで行きましょう」と挨拶しました。

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(↑原副委員長の挨拶で内容の濃い研修会はスタートしました)

講師には、明石(あかいし)二郎先生を大分からお招きしました。(社)大分県社会福祉士会の理事である明石先生は、高齢者福祉分野でソーシャルワーカーとして勤めた後、高校教員として5年間福祉教育の実践と児童、生徒の相談援助、スクールソーシャルワークを同県内で初めて実践されました。その後大分市の認知症ケア専門施設でソーシャルワーカーおよび副施設長として勤務。利用者本意のチームワークのある施設づくりを実践し、2年で作り上げられたそうです。現在はHealing
forest ?癒しの森?の代表として精力的に活動を展開中です。

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(明石先生が代表を務める”Healing forest ?癒しの森?”のブログ((http://blog.goo.ne.jp/sun-moon-stone-8011))には、『講師活動を展開。人間味ある語り口調と輝きある容姿が特徴的。気がるに使えるカウンセリング、短期療法のセラピー活動も行っている』との紹介文が載っていました。宮崎県内各地でも講演活動などをされていますのでご存じの方も多いと思います)

 配布された資料の冒頭に「あなたは、今何のためにケアプランを作成しているのでしょう。そして、ケアマネージャーとしての喜びは何でしょうか」と問題を提起している明石先生は、「今回の研修を、『本来の施設ケアマネジメントとはどういうところを目指すものなのか?』というものを確認していく時間にしていただければありがたいです」と切り出し、講義がスタートしました。

(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その8)

  研修の終わりに、宇土先生は会場を見渡し、若い老健職員の受講者が多いことを確認した上で、近年被害が急増しているインターネットトラブルに言及しました。

 ソーシャルゲーム(ネットのコミュニティー型会員サービス((SNS))上で提供されるオンラインゲーム)で子供が父親のスマートフォンで遊んで有料のアイテムを購入し、高額の請求が来たケースや、子供が母親のクレジットカードを利用して高額のゲームソフトを購入したケースなどを紹介し、「ネットでは未成年者取消権の行使が困難です。子供が『自分は大人だ』と偽った場合は取り消すことができません」と指摘。子供に安易にスマートフォンを持たせる前に、その危険性を知り、本当に子供に必要なものか検討することが親の責務だと訴えました。同様に、「子供はクレジットカードを『このカードがあればアイテムが手に入る』と、お金がかかるとは思わずに決済してしまいかねません。『カードはお金を払うこととつながっている』ということを理解さえておくとともに、必ず個人で管理し、そして利用明細を確認して下さい」と念を押しました。

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(↑「自衛することが何より大事!」若い職員も真剣に聞き入っていました)

 これに続いて、スマートフォン用のアプリには情報を盗み出す悪質なアプリがあることや、「サクラサイト商法(メールのやりとりにお金がかかる有料サイト運営業者に雇われたサクラ((ニセの客=おとり))が、被害者を様々な口説き文句でだまし、有料サイトに誘導した上でメールをやりとりさせ、お金を使わせる詐欺)」の被害が後を絶たないこと、そして口コミを装い、消費者を特定の商品やサービスに誘導する「ステルスマーケティング(ステマ)」や、事業者が報酬を払ってニセの口コミを書き込ませるなどといった口コミサイトのトラブルについて説明。さらに「婚活サイト」で知り合った男性から投資用マンションの購入を勧められ、大金を支払ったところ連絡が取れなくなって被害に気付いた若い女性の事例(研修会の前日に報道されました)など、最新の情報が紹介されると利用者は背筋を正して聞き入っていました。

 講演の終わりに「身近にいらっしゃる高齢者の方だけでなく、ご近所の方など『何か困ったことがあるのかな?』ということがあったら、宮崎県消費生活センターにお電話下さい。4月から5月くらいになると、県民の方から『梅をもらったのだが、梅酒の漬け方を教えて欲しい』という問い合わせがあっても、相談員がていねいに対応しています」としめくくると、会場からはお礼の拍手が響きました。

 

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(オリジナルキャラクターの”アリンコちゃん”のブレーカー着用で、ためになる情報盛りだくさんの講演をして下さった宇土先生、ありがとうございました。なお同センターによる出前講座は10人以上であれば県内どこでもOKとのこと。積極的な活用を宇土先生は呼びかけていました)

(終わり)

研修会開きました(支援相談員部会:その7)

【多重債務にご用心!】

《多重債務とは》

 「すでにある借金の返済に充てるために、他の金融業者から借り入れる行為を繰り返し、利息の支払いもかさんで借金が雪だるま式に増え続ける状態のこと(宮崎県多重債務者対策協議会作成パンフ『多重債務(借金問題)悩んでいませんか?』より抜粋)

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 宮崎県消費生活センターで啓発担当をされている宇土智子先生による研修は、多重債務問題に移りました。多重債務に関する同センターへの相談は減ってきたそうです。しかし、それは多重債務者が減ったのではなく、相談窓口が増えたことによるようです。多重債務の相談は、各市町村をはじめ、同センターおよびその支所(都城、延岡)、九州財政局宮崎財務事務所多重債務相談窓口、さらに弁護士会や司法書士会などの関係団体に窓口が設けられています。

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(↑県多重債務者対策協議会のパンフは赤をベースの衝撃的なデザインで注意を喚起しています)

 「多重債務の問題は、たいていの人は『人ごとかなと?』思うかもしれませんが、決してそうではありません」と注意を喚起した宇土先生。「多重債務に陥るきっかけは、”大きな事業をして失敗した”とか、そういうものではありません」と前置きし、多重債務宇に陥るきっかけとして

(1)失業などによる生活費の借り入れ

(2)知人の連帯保証人になったが、知人が返済しない

(3)ギャンブル等の遊行費のための借金を繰り返す

(4)計画性のないクレジットカードの利用

(5)悪質消費に遇い、その支払いのために借金する

・・・の5つを挙げました。

 そして、「就職して住宅ローンを払っていたところ、失業して支払えなくなった場合など、今までと収支が違って来ることがあったら、その時点で専門機関に相談を」と、早めの相談が重要であることを強調し、債務整理の方法には

(A)任意整理:弁護士が借主の代理人として貸主と交渉し、借金の減額をはかる。和解が成立したら計画に基づき分割で支払っていく

(B)特定調停:簡易裁判所に申し立て、調停委員の仲介で貸主と話し合って返済条件などを変更し、経済的立ち直りを目指す

(C)個人再生手続:弁護士等に依頼し、裁判所を通じて借金を減らし、減額後の債務を3年間で分割払いしていく

(D)自己破産:裁判所を通じて借金をなくす手続き。免責決定により債務を免れる。持ち家などの財産は失うが、借金はゼロになる

・・・の4つがあることを紹介し、「もし周りに悩んでいる人がいたらセンターに電話してください、また、クレジットカードを現金化したり、ヤミ金融から借りたりは絶対にしないで下さい」と述べ、同センターから様々な相談窓口や専門機関の紹介が可能であることを説明しました。

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(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その6)

【高齢者見守りのポイント】

「皆さんは老健施設にお勤めということで、ぜひ高齢者の見守りをお願いします」と切り出した宮崎県消費生活センターで啓発担当をされている宇土智子先生。同センターでは各地のサロンに出向いての消費者被害防止関連の出前講座もやっているものの、「出前講座に出てくる人は元気な方が多く、何かしら社会とのつながりもある方々なので大丈夫かな、と思うのですが、出て来られない人たちには情報が届かないので、皆さんに協力をいただければと思います」と、会場を見渡しながら協力を呼びかけました。

 そして県が作成した「地域の見守りで高齢者の消費者被害を防ぎましょう」というパンフレットを用いて高齢者の消費者トラブルの特徴について説明しました。

 

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研修会で配布されたパンフ『地域の見守りで高齢者の消費者被害を防ぎましょう』。見守り活動の流れや気づきのポイント、事例紹介や解決方法にQ&A・・・と詳しく、そしてわかりやすく書いてあります)

《高齢者の消費者トラブルの特徴》

(1)“孤独”を狙われる

 高齢者は日頃のコミュニケーション不足から、寂しさを抱えている人が多い。特に一人暮らしの場合は、普段の話し相手がいない分、優しい言葉で語りかけてくれる販売員のことを「親切な人だ」と感じ、家に招き入れてしまう。

(2)高齢者の”ほこり”が相談をはばむ

人に迷惑をかけないことを美徳とする高齢者は多い。たとえ被害にあったとしても、「だまされた自分が悪いんだ」と自らを責め、ほかの人に迷惑がかからないよう、誰にも相談せずにいたり、家族に知られたくないかとかくすケースが目立つ。

(3)“お金の不安”につけこまれる

老後を安心して暮らしたいと願う高齢者にとって、老後のお金の問題は大きな不安要素。収入に不安がある高齢者は、販売員の「必ずもうかる」といううたい文句を信じ、金融商品などの契約をしてします。

(4)“健康への不安”を利用される

多くの高齢者は何かしらの身体の不調を感じている。悪質業者はそうした高齢者が抱える健康不安につけこみ、「痛みが治る」「血圧が下がる」などといううたい文句で、高額な商品を購入させようとする。

(5)その他の特徴

○被害にあったことに気づかない:判断能力が低下し”あやしい”と気づくのが遅れる。特に販売員を信用している場合は、まさか”自分がだまされている”とは気づかないことも多い。

○複数の被害にあっている:悪質業者は「だましやすい人」だと判断すると、あの手この手で次々と契約を迫ってくる。高齢者の場合、周囲が気づかないうちに複数の被害にあっているケースが多いため、注意が必要。

○被害金額が高額:高齢者の被害金額はしばしば高額になる。実情はどうあれ悪質業者にとって高齢者は老後のための貯金を持っている「お金持ち」なので、言葉たくみに不当に高い商品を売りつける。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これらを踏まえて、高齢者が消費者トラブルに巻き込まれないための見守り活動の流れについて説明がありました。

《高齢者見守り活動の流れ》

(1)日頃から高齢者と交流をはかる

身近な高齢者と日頃からコミュニケーションをはかる。普段からあいさつを交わし、関係を密にしておくことで、高齢者のささいな変化に気づくことができる。また、信頼関係があれば、声をかけたときに高齢者もより相談がしやすくなる。

(2)高齢者の様子の変化に気づいたら

?高齢者に声をかける

?何があったのか、事実を確認する

→もしも認知症の症状があると思ったときは、地域包括支援センターに相談。また、成年後見制度の利用を検討する。

?消費者被害にあっていたら、宮崎県消費生活センターへの相談をすすめる

→窓口を訪問するときは家族や支援者が付き添うことも可能。もし相談を望まない場合には、家族や地域の人たちで高齢者を見守る。 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 高齢者を見守る上での注意点として宇土先生は、「決して怒らないようにして下さい。”だまされた方も悪い”という考え方もありますが、だます方は仕事でだましています。考えていますし、巧妙化しています。たとえば昨年度から多くなってきた『送りつけ商法』は、健康食品などを代金引換で送ってくるのですが、それを断るとやり方をかえてきました。『損害賠償請求書』を送りつけて『払え』と言ってきたのです。それも無視していると、商品の中に現金書留封筒を入れて送りつけ、その後電話、さらには電報で『払え』と催促するようになりました。このように、何とかしてお金を取ろうとしてきます。ですから被害にあっている人を怒らないように、腹を立てないようにして下さい」と、高齢者の立場に配慮した冷静な対応が大事であることを指摘しました。

(つづく)

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