(社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は11月8日西都市の西都市民会館で高齢者栄養教室を開きました。講義や実習を通じて、食事摂取に関する高齢者の能力の変化や、それを補う高齢者ソフト食について理解を深めました。
今回の教室は西都・児湯地区の4老健施設(菜花園、シルバーケア新富、なでしこ園、並木の里)のほか、同地区の関連施設が対象。管理栄養士をはじめ、調理に関わる職員、看護師、介護支援専門員、さらには利用者のご家族など、36人が参加しました。
教室ではまず、高齢者ソフト食について、潤和会記念病院の管理栄養士、納富祥子さんが、スライドを用いて講義を行いました。高齢者は嚥下(飲み込み)が悪くなり、食道に行くべき食べ物が、気管を経て肺に達し、肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす危険性があること。また、加齢に伴い、味覚やかむ力が衰え、唾液の分泌量も減少。食事が楽しくなくなるだけでなく、低栄養、脱水、窒息などの危険性が高まることなどの問題点が説明されると、参加者は真剣な表情で聞き入っていました。
これに対して、高齢者ソフト食は、(1)しっかりとした形がある、(2)適正なサイズで口にとりこみやすい、(3)適正な硬さでかみやすい、(4)まとまりやすい、食塊(食べ物のかたまり)形成がしやすい、(5)適正なすべりをもち、移送しやすい、(6)適正なスピードで飲み込みやすい・・・などのメリットがあり、それらの問題が解決できるとし、導入までの流れや、主食やおかずなど、それぞれにおけるソフト食の種類、特徴などが紹介されました。
「気さくな話し方でわかりやすい」と好評だった納富さんの講義。
続いて、調理実習。この日取り組んだソフト食は、巻き寿司、あおさのみそ汁、鶏の唐揚げ、そしてなすのずんだ和えの4品目。まず、作り方を習った後、さっそく調理実習室に移動。4グループに分かれて、調理を行いました。巻き寿司は、米を炊く直前にゼラチンパウダーを入れてかき混ぜること、唐揚げの衣は、まず小麦粉、次に溶き卵の順番で別々につけること、なすは皮をむいて、繊維に直角に切ることなど、参加者は資料を確認し合いながら作業を進めていきました。
「簡単!家でもできそう!」と評判でした。
↑↓巻きずし。ゼラチンごはんは冷やすとまとまり、調理しやすくなります。
↑なすのずんだ和え。なすは繊維に直角に切るのがポイント!
↑すごくやわらか!鶏の唐揚げ。
そしていよいよ試食会。見た目の色や形は普通の食事と変わらないのに、実際に口にしてみると、講義で学んだ通り、適度な硬さやまとまりやすさ、そして口からのどに運ぶ際のなめらかさに、参加者は驚いたり、納得したり。それぞれ感想を出し合いながら、有意義なひとときを過ごしました。
参加者からは、「本を見たり、話を聞くだけではわからなかった部分が、実際作ってみることで理解できた」、「初めてソフト食を作ってみたが、手軽にできたのでびっくりした」、「とてもおいしく、感動した」などの意見が寄せられたほか、それぞれの施設や家庭でも作ってみようという声も多く聞かれ、今後につながる楽しく、おいしい教室となりました。
和気あいあいの中にも、メモをとるなど熱心に行われた試食会。