(社)宮崎県老人保健施設協会(大野和男会長)は3月18日、宮崎市の宮崎観光ホテルで、第8回の研究大会を開催しました。県内40の会員施設から320人の参加があり、講演や研究発表を通じて、情報の交換や問題意識の共有をはかり、すべての高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現のために、一層の取り組みを強化していくことの重要性を再認識しました。
開催に当たっては、東北関東大震災の被害の甚大さに鑑み、開催を懸念する声もありましたが、当県においては、昨年の口蹄疫被害、そして今年の鳥インフルエンザに続き、新燃岳噴火と続いており、そのたびに全国の方々から励ましやご支援をいただいて来た経緯がありました。挨拶に立った大野会長は、「やめた方がいいのではないか、という意見もあったが、予定通りやるのが復興のためじゃないか、と開催させていただくことにしました。頑張ってやりましょう!」と呼びかけました。なお、この日、会場では震災の被害者を悼んで、黙祷がささげられました。
開会宣言に続き、福岡県の「大野城まどかぴあ」館長、林田スマさんに、『地域で支える、地域で生きる、共に輝くまちづくり』と銘打って記念講演をしていただきました。林田さんは、元RKB毎日放送のアナウンサーで、現在はフリーのアナウンサーとしてテレビやラジオへの出演や講演活動を行いながら、筑紫女学園大学の非常勤講師も勤めておられます。その、とても忙しいスケジュールの合間をぬって、宮崎まで講演に来て下さいました。
「言葉は消しゴムが使えません」と林田さん。自らの経験に触れながら、「言葉には温度差があり、人を冷たくもすれば、暖かくもする」。
また、柳田邦男さんが唱えられた「2.5人称の関係」を紹介。「全くの他人(三人称)では、相手の痛さに無関心。家族(二人称)では涙が出たり、うろたえたりしてどうにもならない。そこで、2.5人称の立場で、冷静さをもってきちんと対応でき、よかったときに、”よかったね”と言える関係が大事」と教えて下さいました。
さらに、利用者様との間だけでなく、職員間でも情緒の共有をすることが大事だと説明。「言葉はビタミンより効く。精神安定剤にもなれば、武器にもなる。大事なのは情緒の共有があるかどうかだ。思っているだけじゃなく、言葉をかけて欲しい」と、呼びかけ、参加者は何度もうなずいて耳を傾けていました。
私たちが何気なく発している言葉の重み、言葉の温度、言葉の裏表‥。それらを今一度考え直す、とても貴重な講演となりました。
続いて行われた研究発表では、32の演題が、4つの分科会で発表されました。〔看護・介護部門1〕、〔看護・介護部門2〕、〔在宅支援・支援相談・栄養/給食部門〕、〔リハビリテーション・看護・介護部門〕のそれぞれで、熱心な質疑応答が交わされました。
それぞれの職場で抱える問題や悩みを、スタッフが共同でどうやって解決していったか。ご利用者様が心身共に元気になっていただくために、どのような取り組み、工夫をしていったか、等々、いずれの発表も、他の老健施設でも参考になるもので、参加者からは、自らの施設の問題を踏まえた、現実的な質問も多く出され、実際的な情報交換が各会場で繰り広げられました。
最後に行われたレクレーション研究発表では、それぞれの施設で、日頃利用者様に感動と喜びを与えようと実践している事例について、5施設、総勢32人が実演を交えて紹介。参加者から高い関心が寄せられました。
日頃やそれぞれの施設での業務に追われ、他の老健のスタッフと交流する事が少ない現状の中で、この日の大会では、会場の内外で施設を超えた情報交換、交流が深まりました。今回大会テーマは、「地域ケアの中核をなす老健施設へ ?人と人を結ぶ?」。6時間という長丁場でしたが、その時間と空間を共にした320人。施設と施設、そして、人と人との結びつきが一層深まった大会となりました。