協会活動報告

全体会議開きました(事務長会)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会事務長会は626日、宮崎市のニューウェルシティー宮崎で全体会議を開きました。県内会員施設から36人が参加しました。

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 会議の中で同事務長会の川崎豊彦委員長は「宮崎県内の老健は44施設。他の県と比べると少ないと思いますが、施設間で積極的に情報交換をしていきましょう。職員が良い環境で働けるようにすることができるのは皆さんだと思います。本日も様々な情報や資料を準備していますので、それぞれの施設に持ち帰って有効活用して下さい」と施設間における連携の強化を呼びかけました。

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(↑川崎委員長)

 会議では新体制報告と執行部および正副ブロック長の紹介や平成26年度の事業計画に続き、実地指導(平成24年度、25年度)の報告および事務長会実地指導検証委員会による検証報告が、資料に基づき行われました。

 さらに、今年度2回予定開催を予定している事務長会主催のセミナーの内容について協議が行われました。事務長会ではこのセミナーをはじめ、各ブロックでの会議や行政機関との意見交換、全体会議などを通じ、県内会員老健施設の資質の向上や、広く県民の医療および福祉の増進に寄与していく事を申し合わせ、閉会となりました。

 

※この日の全体会で使用された資料の一部を、明日付けの「ブログ」および「お知らせ」にアップロードします。

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その12)

 看護・介護研究部会主催の褥瘡対策研修会。閉会にあたり、同部会の上村久美子委員長は「どの施設においても褥瘡は避けては通れない問題です。正しい理解と最新の知識をもって勉強していかなくてはなりません。本日の研修会で学んだことを持ち帰り、みなさんの施設での勉強会などで活かしていただきたいと思います」と挨拶しました。

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(↑上村委員長)

 このようにして非常に有意義な研修会は終了しました。しかし、閉会とともに津守先生に詰め寄り質問する参加者達で、たちまち行列ができました。

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 それぞれの職場で抱える褥瘡に関する悩みや疑問を相談する参加者ひとりひとりに、津守先生は資料を片付ける手を休め、それまで通りわかりやすく答えていました。ご多忙にもかかわらず、参加者の立場に立って、懇切丁寧に指導して下さった津守先生。本当にありがとうございました。

(終わり)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その11)

古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生による褥瘡治療研修会。講義が終わり、質疑応答に移りました。参加者からは日々の業務の中で抱える褥瘡治療に関する様々な疑問や悩み、相談が相次ぎました。

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これらひとつひとつの質問に対し、津守先生は丁寧にわかりやすく答えていました。日頃から患者や家族の立場に立ち、親身になった診察、治療を行っている津守先生の優しい人柄が垣間見えました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その10)

【34.褥瘡治療の実際(5)

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 このようにラップ療法を用いた治療成果を紹介してきた津守先生。しかし、「今までいい所だけしか話してきていませんが、気をつけないことはいっぱいあります」と切り出し、「ラップ療法の主なトラブル」というスライドを示して話始めました。

 「ラップ療法に限らず、被覆材により密封して浸出液が中にたまって起こしやすいのがやはり細菌感染です。じめじめと湿った環境では細菌や真菌などの微生物が増えやすくなります」と感染のコントロールは重要性を強調。「誤ったラップ療法」として、中等度熱傷に患者にラップを貼付し、数日間洗浄せずに放置した結果、発熱、ショック症状、全身の潮紅を来した事例を紹介しつつ、「ラップ療法自体が悪いのではなく、ラップ療法への理解なしに治療を行うと、こういうことになる恐れがあります」と念を押しました。たまった浸出液によりじめじめした環境の中でブドウ球菌が増え、菌体外毒素により全身が真っ赤になった写真を、参加者は真剣な表情で見入っていました。「褥瘡や熱傷の、特に病初期には、密封させる被覆材やラップを貼りっぱなしにしないこと!」と大きく書いたスライドを示しながら、「最初の時期(炎症期)は感染も起こり、ばい菌もつきやすくて浸出液も多く、そういう時期はラップ療法はやりにくく、それが理解できない方の場合、貼りっぱなしにしたり、『きずをぬらすとばい菌がつく』と処置しないでいたりすることもあるので、ラップ療法はしない方がいいのではないかと思います。またラップ療法をする場合でも、とにかくキズの処置はこまめに観察をしながらやらないといけません」強調しました。

 また、ラップ療法をしている時は貼付部に白癬やカンジダがつきやすいとのこと。これもやはり浸出液のコントロールがうまくできていないことによるもので、その場合はフィルム使用をやめておむつのみにし、乾燥させると軽快してくるとのことでした。「浸出液のコントロールという点でフィルムを使うか使わないかというのを分けてもらうといいと思います」と判断基準を示しました。

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 研修会も終わりに近づき、津守先生は「褥瘡ケアのポイント」として次の4項目をスライドに示しました。

 

(1)何はともあれ徐圧

(2)局所を洗う、入浴は清潔を保ち循環をよくする

(3)消毒は必要ない

(4)栄養は、抵抗力・治癒力の源

 

 最後に「治せる褥瘡と治せない褥瘡がある」として、「現実問題として、私たちのいる病院では初期の褥瘡をみて、ある程度良くなったら皆さん達の勤める老健施設などにお願いしていくので、その方がその後どうなるかというのは正直あまり知りません。褥瘡が治って元気になった方もいれば、全身状態が悪化して褥瘡が治る前にお亡くなりになる方もおられるなど、色々な患者さんがいます。長く寝たきりの状態で動かない方はずっと治らないままで経過している方もおられると思います。そのような方は褥瘡を『治す』というのは難しいのではないかと思います。そういう場合はやはりマンパワーの問題や栄養面など、やれる範囲の中でどうするか、ということを考えていくと『キズが悪くならなければいい』、『生きて行く上でキズがその方に悪さをしなければいいのではないか』という考えもあるのではないかと思います」と、「褥瘡が治らないからだめだ」というのではなく、「褥瘡の状態が悪化せず、利用者の負担にならなければ”よし”」とする考え、つまり「キズと共存していく」という考え方を呈示して講義を締めくくった津守先生に、会場からはわれんばかりの拍手が送られました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その9)

【34.褥瘡治療の実際(4)

 

 「深い褥瘡の急性期には、炎症を落ち着かせる治療が必要です」と古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生。デブリードマンで死んだ組織を切除し、壊死組織の洗浄、抗菌剤の外用などの処置を行い、「ある程度肉が出てくるような感じになってきたら、いわゆる『ラップ療法』をやってみるといいと思います」。同病院で穴あきポリエチレンを紙おむつに貼ったものを使用して治療している様子をスライドに示しました。浸出液が穴を通っておむつに吸収されている写真を見せながら、「最初の頃のラップ療法は、サランラップだけを当てていましたが、それだと浸出液がその周りからあふれ出てきて汚かったわけです。それに対し、穴あきポリエチレンを用いることで、浸出液のコントロールができるようになっていますので、こういう方法がいいのではないかと思います」と説明しました。そして「しつこく言いますが、こうやって治療している間、大事なのはキズをちゃんと洗うこと、そして徐圧・体位交換きちんとすることです」と繰り返しました。非常に大きくて深い褥瘡が治っていく実例を見ながら、参加者は津守先生の話を食い入るように聞いていました。

 また、交換のポイントについては、「浸出液をコントロールすることが大事ですから、1回の入念な処置を11回するよりも、そこそこでもいいから綺麗にして、こまめに交換することで浸出液をためない方がキズはきれいになります」として、通常のおむつ交換時を利用することを提唱しました。

 その後ビデオや写真を使って様々な症例における治療(殿部の深い褥瘡の治療経過、黄色期から赤色期の処置、下腿の感染を伴う褥瘡の治療経過、赤色期になってからの処置、多発した褥瘡の治療、糖尿病性潰瘍に対する治療、湯たんぽやけどなど)の実際について紹介がありました。このうち、かかとにできた糖尿病性潰瘍のため、踵骨まで腐骨化した症例では、生理用ナプキンを利用した治療法が紹介され、「生理用ナプキンは逆戻りしないのが一番のメリットでサラサラしています。大きなかかとのキズですが、洗って生理用ナプキンを直接当てていくうちにきれいになってきました」と述べつつ、「これもちゃんとした被覆材の理解、そしてちゃんとしたやり方をするのであれば、こういう方法もあると思います」と注意を促しました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その8)

【33.褥瘡治療の実際(3)

 

 「昔はラップ療法について、”最初から最後までラップだけでいい”と書いているものもあったのですが、実際は壊死組織があるときは早く除去する方が炎症が落ち着いて早く肉芽が形成されます」と、壊死組織を除去するデブリードマン(科学的・外科的)を行っている様子がスライドで紹介され、次いで外用剤、そして被覆材とスライドは続きました。津守先生の話によると、「(創傷治癒の障害を取り除き、治癒環境を整える)ウンド・ベッド・プリパレーションの概念などを考えて治療すると、外用療法というのはあまり役に立っていないような気がします。どちらからというと現在主流になっているのは被覆材で、キズを覆うものを上手に使って治っていく環境を整えていくという考え方になっています」とのこと。また、ラップだけを用いるのではなく、穴あきのフィルムやおむつなどを上手に組み合わせていく方が「実際によく治っている印象があるし、簡便で綺麗な治療法だと思います」と、浸出液の量や、症状に応じた被覆材を選択することが大事だと指摘しました。なお、紙おむつや整理用ナプキンは「”出てきた浸出液を吸い取らせ、下の方にためない”という意味では被覆材と同じ原理で、それらの開発には非常に力が入っており、日本の製品は高機能ですから、それらのものを上手に使っていくといいと思っています」とのことでした(ただし医療用品ではないので、医療用としては「モイスキンパット」や「エスアイエイド」などが認められているとのこと)。

 浸出液の量の違いによる被覆材の選択方法について、「ナカノ式褥瘡評価基準表(適切なOpWT基剤の選択)」をスライドに示しながら「浸出液の量があまりに多いとフィルムではむれたりかぶれたりしますから、直接おむつを当てる方がキズにとってはいいようです」「浸出液が減って来るにしたがって穴あきポリおむつ、フィルムおむつ・ラップなどを選んでいきます。そして浸出液があまりない時にはフィルムだけで構いません」等と説明。続いて「褥瘡ができたのではないか!?というときにどうするか?」という説明が次のように行われました。

 

(1)まずは徐圧!!

(2)ポリウレタンフィルムやラップで保護、観察・・・どうなっていくかわからない場合は観察を、「キズが深くなっていくのではないか?」というときには医師に相談し、治療。

(3)何もしないでおむつのみあてて観察

(4)とにかく治ってくるか、悪くなるかの観察を

 

 「しつこく言っていますがとにかく徐圧です。そしてこれからどうなっていくかわからない場合はフィルムを貼るなどして観察を行い、『キズが深くなっていくのではないか?これは悪いのではないか?』というときには医師に相談をしてください。とにかく目を離さずに観察をして下さい」と強調しました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その7)

【32.褥瘡治療の実際(2)

 褥瘡の深さは初診時に決定しているものの、それを正確に判断するのはむずかしく、急性期の創傷被覆材の使用は慎重を期することや、局所療法をいろいろ変えても褥瘡の程度を浅くすませることはできないことなどの説明があった後、「褥瘡の発症初期に大事なことは、それ以上深くならないように徐圧をすることができるかどうか、ということに尽きます」と津守先生。褥瘡発症時の対応として、継続的な徐圧が非常に重要であることを強調しました。

 「どういう褥瘡の治療をやるかというと、色々な方法があります」と、スライドに次のような治療法を例示しました。

 

(例1)ガーゼ→(デブリードマン)→ゲーベンクリーム→ユーパスタ→フィブラストスプレー

(例2)フィルム→(デブリードマン)→ハイドロサイト→デュオアクティブ

(例3)フィルム→(デブリードマン)→おむつ→穴あきポリエチレンおむつ

(例4)フィルム→(デブリードマン)→手術による閉創

(例5)最初から最後までイソジン消毒、あてガーゼ

 

 その上で津守先生は「どの治療でないとけないのか、ではなく、どの治療法を選択するか、です。いずれにしても徐圧など管理ががきちんとできていればキズは必ず治ります。キズが治るのを妨げるような治療さえしなければ、どのような局所治療を行っても、生きている限りキズは必ず治ります」と栄養状態、全身状態、徐圧などの管理を適切に行うとともに、「やってはいけないこと」をやらなければ、褥瘡は必ず治るとのことでした。

 この「やってはいけないこと」の一つとして、「ガーゼを創内に入れるのはやめましょう」として、ガーゼは異物であり、それを褥瘡のポケットに詰め込むことによりポケットの壁が圧迫を受け、阻血壊死に至ることや、炎症をきたし、滲出液も増えて感染を惹起するなどしてポケットが難治化することなどを、実際にその治療を行った事例を交えながら説明すると、参加者は褥瘡を正しく理解し、適切な管理と対応をすることが何よりも重要であると再確認していました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その6)

【31.褥瘡治療の実際(1)

 

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 古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生による研修会は、褥瘡の治療に入りました。まず「褥瘡ケアのポイント」として、次の4点が示されました。

 

(1)何はともあれ徐圧 

(2)局所を洗う。入浴は清潔を保ち循環を良くする

(3)消毒は必要ない

(4)栄養は抵抗力・治癒力の源

 

 この中の徐圧に関し、「体位変換は体圧分散のかなめです」と述べた上で、2時間ごとの30度側臥位を基本とし、頭側挙上は30度以上あげないようにすることや、できるだけ2人で実施すること、さらに経管栄養時の椅坐位の際も十分注意することなどといった説明がありました。「経験栄養の時に褥瘡を作る方は多いです。ベッドをギャッジアップする時に『背抜き』をしたり、まっすぐ起こすのではなく少し側臥位ぎみに起こしてやることで意外と早く治ります」と写真で実例を示しながら解説が行われました。

 これに加え、車いす上での座らせ方(シーティング)や、近年、高性能のものが次々と開発されている徐圧・摩擦とずれの防止のための体圧分散寝具(エアマット)およびそのチェック方法などの紹介もありました。ただし「道具を使えばいい、というものではありません」と津守先生。道具を過信せず、自ら必ずチェックして正しく用い、褥瘡を治癒に導いていくことの重要性を学びました。

 次に「褥瘡がどのような経過をとるか、ということを理解して欲しいと思います」と前置きし、「褥瘡は必ず同じ道筋を通っていきます」と断言。実際に仙骨部の褥瘡を初診時から3ヶ月半後までたどった経過をスライドに示すとともに、先に説明した炎症期壊死・滲出期肉芽形成・増殖期上皮形成・成熟期、という経過をおさらいしながら、「薬を塗るなど何かの治療をしたら、この3ヶ月半の経過が1週間や2週間で治るということはありません」ときっぱり。そして「私たちはこのキズ(褥瘡)はこういう経過をとっていくというのが見えます。一方あまり経験がない人は『何かをすれば早く治るのではないか?ひどくならないのではないか?』と思いがちです」と述べた上で、「とにかく『一回できた褥瘡は取り返しが付かない』と思ってください」と会場を見渡しながら訴えると、参加者はそのことを肝に銘じながら聞き入っていました。

(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その5)

 【2-1.創傷治癒に対する理解(2)

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 このように一過性の原因による急性のキズと、恒常的に続く慢性のキズという違いはあるものの、「そこに施す処置はみな同じです」と津守先生。その手当について次の4つをスライドに示しました。

 

(1)洗う(クリーン)

(2)適切な処置を施す(トリート)

(3)キズを覆う(プロテクト)

(4)経過観察(フォローアップ)

 

 さらに「キズの上手な治し方」として次の4項目を示しました。

 

(?)まずは洗ってきれいにしましょう

(?)水を怖がらなくてもよい。水道の水は充分きれい

(?)消毒剤による消毒は必要ない

(?)最近のばんそうこうや貼り薬(被覆材)は上手に使うとひっつかないため痛みが早くとれ、治りも早い(湿潤療法のじょうずな利用)

 

 この中で「(?)水をこわがらなくてもよい」、「(?)消毒剤による消毒は必要ない」に関して、「自分たちがケガをしたとき、みなさんどのように治療していますか?」と津守先生。「『水はだめ』、『お風呂に入ってはいけない』と思っている人はいますか?」と参加者に問いかけました。

 これに対し、会場から手は上がりませんでしたが、「皮膚科医として高齢者の治療に当たる事が多いわけですが、『キズを水につけては絶対だめ!』と思っている高齢者が非常に多いです。また、『消毒液で消毒しないといけない』、『キズにはクスリをつけて、ガーゼをつけるもの』と思っている高齢者も多いというのが現状です」と述べ、「消毒してキズが治らないわけではありませんが、消毒しなくてもばい菌はつきません。”より良く治す”と観点いうことで考えると、水で綺麗に洗い、汚いものを洗い落としてあげる事が大切だということを伝えていって欲しいと思います」と訴えました。

 「キズは洗いましょう!」というスライドを用い、その方法を具体的に次のように説明しました。

 

◎大量の水で充分に洗い流す事が基本。温浴、シャワー浴は効果的!(大量の食塩水、水道水でOK

◎壊死組織などを落としたいときは洗い落とす。せっけんも有効。きれいな肉芽組織面では傷つけないようやさしく扱う。洗いすぎない

◎画一的に考えず、創の状態に応じた洗い方を身につけましょう

 

 「”キズに水をつけるとばい菌が入る”と思っている人に『水道水は飲み水として飲んでいますよね。飲んでいるものにばい菌はないでしょう』と説明し、その時には納得されるのですが、家に帰ると絶対に洗わない人もいて、1週間後の再診時、術後のままだったという方もいます」と経験談を紹介する津守先生。参加者は正しいキズの理解、そして正しい治療法の習得にとどまらず、それを利用者に説明し、理解を得ていくことがいかに重要であるかを再確認しました。

 また研修会では、「創傷治癒の障害となるものを取り除き、治癒環境を整えること」として最近言われるようになった「ウンド・ベッド・プリパレーション(Wound bed preparation)」を学びました。これは「キズは必ず治っていく、治す力がある。それを邪魔するようなものがあると治りにくくなるから、その治りにくくなるものを取り除いて創傷治癒を邪魔しないようにしましょう」というもの。その具体的な障害となるものの臨床的な観察項目として、その頭文字をとった「TIME」というものがあることを学びました。

 

〈TIME:臨床的な観察項目〉

○組織─壊死または異常 (Tissue, non-viable or deficient

○感染または炎症    (Infection or inflammation

○水分のアンバランス  (Moisture imbalance

○創縁─上皮化の停滞  (Edge of 
wound-non-advancing or undermined

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その4)

【2-1.創傷治癒に対する理解(1)】

 「褥瘡とは体の皮膚が無くなっていく皮膚欠損、いわゆる『キズ』です」と津守先生。その定義や種類、治り方や治し方について説明を進めていきました。

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 「皮膚は外敵から守ったり、水分や体温を調節する大切な器官の一つです。その皮膚の組織が壊れ、機能障害をきたしているのが『キズ』です。ですから、『キズ』ができると、体は皮膚を戻そうと一生懸命働きます」とスライドを示しながら述べた上で、「『キズを治す』というのは何かの治療をして治しているわけではありません。治る能力があるから治るのであって、キズの治療をしているから治るというわけではありません。ですから、治す力を上手に使って治るのを邪魔しない、治す力を上手に引き出してやることが大事です」と言い添えました。

 キズの種類について、次のようなものがあることを、写真を紹介しながら説明がありました。

 

(1)外傷などの外因によるもの・・・擦過傷(すりきず)、裂挫傷(裂けきず)、熱傷(やけど)、低温熱傷(湯たんぽやけど)、褥瘡(とこずれ)

(2)血管の病気によるもの・・・動脈硬化症による壊疽、下腿潰瘍(うっ滞性潰瘍)、糖尿病性水疱・潰瘍

(3)自己免疫性疾患・・・膠原病による潰瘍(血管炎、(2)も重複)、水疱性類天疱瘡(水疱症)

 

 「結局色々な原因でキズは起こってくるわけです。しかし、強調して言いたいのは『”皮膚の欠損”ということで考えると、キズというものは”皮膚がなくなっている”という状態に違いはない』ということです。ですからキズの治療は皆同じです」と、皮膚欠損という観点からすれば、擦り傷ややけどと褥瘡は同じであるとした上で、「違うのは原因が一過性のものか、それとも続くのか、ということです」と述べ、スライドを用いて次のようにその相違を説明しました。

 

《擦り傷、やけどなど(急性創傷)》

・・・原因は一過性

《床ずれ(慢性創傷)》

・・・原因、誘因が恒常的に続くもの(取り除けない)

・・・秩序立った創傷治癒機転の阻害・破綻が起こった状態

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(つづく)

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