協会活動報告

研修会開きました(ケアプラン部会:その4)

【ケアマネジメントを定着させるケアマネージャー】

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 明石先生による研修も終盤になりました。「ケアプランは利用者さんの要望をもとに、楽しく生きていただくために作っていることを意識して下さい。ADL(日常生活活動)ももちろん大事ですが、それだけではなく、自尊の欲求や自己実現の欲求もあり、そこがかなわないと生理的欲求が満たされないという人もいます。ケアマネージャーをやっていて、「あなたと出会えてよかった」と言われることもあるでしょうが、それは結果論であって、求めてはいけません。根拠のあるケアプランを作り、根拠に基づくチームを作り、ケアを実践し、それで生活の質が上がればそれが本当の喜びです。このように根拠に基づくものを浸透させていくのがケアマネージャーです」と前置きし、ケアマネジメントを定着させるケアマネージャーに求められるものとして、次の8項目を示しました。

 

(1)利用者お一人お一人の個別性の把握(アセスメントの活用・更新)

・・・「誕生日に好きな食べ物を提供する」などアセスメントを盛り込むこと。アセスメントがケアプランの根拠になるものであり、アセスメントをとったら満足、ではだめ。また家族関係などいろいろな事が変わっている場合もあり、更新をしていくこと。

(2)組織のケアの状態の把握(利用者本位はどこまで実践できているか)

・・・施設をただの箱にしてはいけない。「あなたを信じて入所したのに、現場は違う」ということのないように。

(3)職員へのケアプランの浸透(ケアマネジメントの実践→現場のケアマネを作らない)

・・・トップリーダーの方針を末端まで浸透させるのがマネージャーの役割。

(4)チーム・ワークによる個別ケアの統一化

・・・チームができるためには目標地点を明確にすることが条件。高校野球における「甲子園優勝」のように、目指すところをはっきりと示す。

(5)モニタリングとフィードバックの機能

・・・モニタリングを行い、かならずフィードバックをすること。現場に「やってみてどうだったか?」と聞きに行くことで現場もやっていけるし、フィードバックしないと「慣れているやり方、楽なやり方がやりやすい」とやらなくなってしまう。

(6)ケア会議の充実化

・・・生活の質の向上に重点を置いて行う。

(7)利用者の家族との話し合い、ケアプランの確認、モニタリングの報告

・・・ケアプランをちゃんと実践した結果がどうだったかを家族に示していないと、「おたくのケアではだめだ」と言われることもあり得る。家族に伝えるとともに、職員にも伝えることがケアマネの役割であり、そのことにより職員もやる気が出てくる。

(8)根拠に基づいたケアの実践の推進

・・・根拠に基づいたケアを実践することでケアワークの専門性も向上する。

 

【最後に】:『活き活きとした生活』を支える専門職として・・・

 講義あり、グループワークありと、内容盛りだくさんも終わりを迎えました。明石先生は受講者を見渡しながら「どうぞ皆さん、専門性を取り戻して下さい。発揮して下さい。そうすると利用者本位のケアは実現します。利用者本位を実現する条件は3つあります。1つめはこの専門性を発揮することです。2つめ、利用者本位はみなさんの根拠に基づく創意工夫によって実現します。3つめ、「利用者本位はどうやったら実現するか?」を考え続ければ実現します。できないこと探しはだめです。できること探しを続けて下さい。みなさんどうぞいいリーダーになりましょう」と呼びかけると、会場からは惜しみない拍手が贈られました。

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(おわり)

研修会開きました(ケアプラン部会:その3)

【ケアマネジメントとは】

 「ケアマネジメントとは、ケアを通して利用者さんが自らの生活・人生・生命を人間らしく、自分らしく生きることを実現するために行う、人事、サービス、コミュニケーション、リスク等における総合的、効果的なスキルです」と明石先生。車が坂道を上っている図を示しながら、「車を運転しているのは利用者さん、目標地点は人間の尊厳。しかし(上り坂なので)阻害され、自分の力で維持できなくなります。そこでケアマネジメントが必要になります。施設ケアマネージャーは『施設における利用者さんの、生活・人生・生活の質を高めるためにケアを運営・管理するプロフェッショナル(専門職)』です。みなさんがいないと成り立たないのです」と、ケアマネジメントを実践する上で施設ケアマネージャーの存在が不可欠であることを強調しました。

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 また、ケアマネジメントを行う中で、多くの施設ケアマネージャーが医療と福祉のはざまで悩みを抱えている事に触れ、「”看護と福祉とどちらが上か?”という話があるが、専門性が違うだけであって上とか下とかというものではありません。専門性が違うだけです。つまり、医療が支えるのは『生存』、そして福祉が支えるのは『生活』で、2つとも必要なのです」と、それぞれの専門性を活かした発想の転換を呼びかけました。そして「大好物のアンパンが食べたい」と訴える糖尿病のある利用者のケアマネジメントを例に挙げ、「『なんでアンパンなんか食べたの!』と叱られたのでは生活の質は高まりません。福祉の発想から『どうしたらアンパンを4分の1個食べられるだろうか?』と考え、そしてそれに基づくケアを行い、実際にアンパンが食べられたらその人の生活の質は上がります」と説明すると、受講者達は身を乗り出して聞き入っていました。

 

【ロールプレイで本来の施設ケア学ぶ】

 続いて受講者はあらかじめ分けられていた9つのグループごとにロールプレイを行いました。「脳梗塞による左片麻痺の入所利用者Aさん」という事例に基づき、Aさんとその子供、ケアマネージャー、そして施設職員の4人の役にそれぞれなりきった受講者達は、新たなケアプランを立てるための話し合いを行いました。ケアマネージャー役の受講者はAさん本人および子供の要望を聴き、施設職員とその要望を実現するためにはどのような事ができるかを協議。施設側としてAさんの要望を実現するためのケアプランを作成し、それをAさんらに伝え、Aさんらがその内容についてイエス・ノーの反応を示すという一連の流れを実践する中で、利用者が人間らしく、その人らしく生きることができるための聴き取りのポイントやプランの立て方、説明方法等について学んでいきました。

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「ケアプランは本来楽しいものです。利用者さんとわいわい話ながら、どうしたらその人が人間らしく、楽しく生きていけるか?それを考えながら作れば楽しいものなのです」との明石先生の言葉に、それまでの考えを改めるようにうなずく受講者の姿も見られました。

(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その2)

明石先生が代表を務められている”Healing
forest“では、相談活動、講師活動、施設づくりのコンサルタントなどを行っており、大分県はもちろん、宮崎県内各地でも幅広く活躍中で、数多くの実績を残されています。詳しくはHealing forest –癒しの森-“のブログ(http://blog.goo.ne.jp/sun-moon-stone-8011)をご参照下さい。県内で近日開催予定のセミナーなども紹介されています。

 

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(↑5月頃には「自らの人生のリーダーになる」というワークショップも開催予定だそうです)

 

 明石先生が自己紹介の中で「『ソーシャルワークとは何か?』と聞かれた時、説明できないとプロではありません。傾聴共感受容などは、やっているつもりでも説明できないといけません。それを人に教える時に福祉の現場では『見て覚えろ』などと言って教えていますが、言って(説明して)、やれないといけません」と会場を見渡しながら話すと、受講者は自らをふり返りながら聞き入っていました。

 

【施設におけるケアマネジメントの意義】

 「これまでの施設ケアは業務優先。効率化と合理化が進められ、安全第一、ADL第一趣致でした」と話し始めた明石先生。そのような状況だと、「ケアプランはADL機能向上が第一位になります。また、安全第一の事故ゼロプランになります。利用者が立ち上がると最寄りの職員(”座らせるプロ”)が駆けつけて座らせるなど、『いかに落ち着かせるか』というプランになります。そして『現場にケアマネがいる』という人がいて勝手なことを始めます。そうするとケアマネージャーは何のためにケアプランを立てているのかわからなくなります」と指摘しました。

 これに対して本来の施設ケアは(1)利用者のQOLの向上、(2)ノーマライゼーションの実践、(3)自己決定の支援、(4)根拠に基づいたケア・・・の4つを挙げ、この中で「(3)自己決定の支援」について、「あるグループホームで、おやつの時間に若い女子職員がお茶を入れていたのですが、そのホームにどんな飲み物があるか出してみると、コーヒーや紅茶、レモンティーなどが出てきました。それを利用者に見せて『何が飲みたいですか?』と聞いて、好きな飲み物を提供しました。つまり”選択肢を提供する”という技術を用いたのです。このように、限りなく自己決定を支援していくのが私達の仕事です」と事例を紹介しました。

 また、「(4)根拠に基づいてケア」に関しても施設の壁に放尿をされる利用者の事例を取り上げ、「会議を開いて『放尿をやめさせよう』と、鳥居の絵を貼ったり、カエルのぬいぐるみを置いたりしたけどだめでした。そこで『根拠に基づいて話し合おう』とやり方を変えたところ、夜に部屋のライトがその壁の部分に当たって白く浮き上がっていたことがわかったのです。その利用者は、そこがトイレだと思って放尿していたわけです」と説明すると、受講者は納得の表情で聞き入っていました。

 これらを踏まえ明石先生は、「ケアプランはいかに人間らしい、その人らしい生活や人生を送ってもらうことができるか?また、いかに利用者に喜んでもらうことができるか?笑顔が導き出せるか?が重要です」と述べ、「利用者が施設生活の中でいかに喜びを得ながら、活き活きと生活できるのか。そしていかに人間らしく、自分らしく生き続けるのか。そのことを具体的な支援として言語化したものを作り出すのが施設ケアマネージャーです」と断言。さらに「この言語化したものを作り出すのが施設ケアマネージャーの存在意義であり、それをスタッフみんなが実践してくれたことにより効果が出たとき喜びになるのです。書類が出来上がった時や、印鑑をまとめて押してもらった時が喜びではありません」と念を押しました。

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(つづく)

研修会開きました(ケアプラン部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会高齢者ケアプラン研究部会は125日、宮崎市の潤和会記念病院会議棟でリーダー研修会を開きました。施設におけるケアマネジメントの必要性について学ぼうと会員老健施設や特養などから46人が受講しました。

今回の研修会のテーマは「施設におけるケアマネジメントの必要性 ?施設生活における利用者さんのQOL向上のための取り組み?」。開会にあたり挨拶に立った同部会の原 貴子副委員長(相愛苑)は、「本日はたくさんの方に集まっていただいてありがとうございます。皆さんは各職場でリーダー的な立場として活躍されている方々と思いますが、リーダーとして現場で困っていることや、ケアマネジメントの展開方法など考えることも多いと思います。今日はグループワークもあり、長丁場の研修ですが、そういったところをしっかり学んで行きましょう」と挨拶しました。

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(↑原副委員長の挨拶で内容の濃い研修会はスタートしました)

講師には、明石(あかいし)二郎先生を大分からお招きしました。(社)大分県社会福祉士会の理事である明石先生は、高齢者福祉分野でソーシャルワーカーとして勤めた後、高校教員として5年間福祉教育の実践と児童、生徒の相談援助、スクールソーシャルワークを同県内で初めて実践されました。その後大分市の認知症ケア専門施設でソーシャルワーカーおよび副施設長として勤務。利用者本意のチームワークのある施設づくりを実践し、2年で作り上げられたそうです。現在はHealing
forest ?癒しの森?の代表として精力的に活動を展開中です。

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(明石先生が代表を務める”Healing forest ?癒しの森?”のブログ((http://blog.goo.ne.jp/sun-moon-stone-8011))には、『講師活動を展開。人間味ある語り口調と輝きある容姿が特徴的。気がるに使えるカウンセリング、短期療法のセラピー活動も行っている』との紹介文が載っていました。宮崎県内各地でも講演活動などをされていますのでご存じの方も多いと思います)

 配布された資料の冒頭に「あなたは、今何のためにケアプランを作成しているのでしょう。そして、ケアマネージャーとしての喜びは何でしょうか」と問題を提起している明石先生は、「今回の研修を、『本来の施設ケアマネジメントとはどういうところを目指すものなのか?』というものを確認していく時間にしていただければありがたいです」と切り出し、講義がスタートしました。

(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その8)

  研修の終わりに、宇土先生は会場を見渡し、若い老健職員の受講者が多いことを確認した上で、近年被害が急増しているインターネットトラブルに言及しました。

 ソーシャルゲーム(ネットのコミュニティー型会員サービス((SNS))上で提供されるオンラインゲーム)で子供が父親のスマートフォンで遊んで有料のアイテムを購入し、高額の請求が来たケースや、子供が母親のクレジットカードを利用して高額のゲームソフトを購入したケースなどを紹介し、「ネットでは未成年者取消権の行使が困難です。子供が『自分は大人だ』と偽った場合は取り消すことができません」と指摘。子供に安易にスマートフォンを持たせる前に、その危険性を知り、本当に子供に必要なものか検討することが親の責務だと訴えました。同様に、「子供はクレジットカードを『このカードがあればアイテムが手に入る』と、お金がかかるとは思わずに決済してしまいかねません。『カードはお金を払うこととつながっている』ということを理解さえておくとともに、必ず個人で管理し、そして利用明細を確認して下さい」と念を押しました。

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(↑「自衛することが何より大事!」若い職員も真剣に聞き入っていました)

 これに続いて、スマートフォン用のアプリには情報を盗み出す悪質なアプリがあることや、「サクラサイト商法(メールのやりとりにお金がかかる有料サイト運営業者に雇われたサクラ((ニセの客=おとり))が、被害者を様々な口説き文句でだまし、有料サイトに誘導した上でメールをやりとりさせ、お金を使わせる詐欺)」の被害が後を絶たないこと、そして口コミを装い、消費者を特定の商品やサービスに誘導する「ステルスマーケティング(ステマ)」や、事業者が報酬を払ってニセの口コミを書き込ませるなどといった口コミサイトのトラブルについて説明。さらに「婚活サイト」で知り合った男性から投資用マンションの購入を勧められ、大金を支払ったところ連絡が取れなくなって被害に気付いた若い女性の事例(研修会の前日に報道されました)など、最新の情報が紹介されると利用者は背筋を正して聞き入っていました。

 講演の終わりに「身近にいらっしゃる高齢者の方だけでなく、ご近所の方など『何か困ったことがあるのかな?』ということがあったら、宮崎県消費生活センターにお電話下さい。4月から5月くらいになると、県民の方から『梅をもらったのだが、梅酒の漬け方を教えて欲しい』という問い合わせがあっても、相談員がていねいに対応しています」としめくくると、会場からはお礼の拍手が響きました。

 

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(オリジナルキャラクターの”アリンコちゃん”のブレーカー着用で、ためになる情報盛りだくさんの講演をして下さった宇土先生、ありがとうございました。なお同センターによる出前講座は10人以上であれば県内どこでもOKとのこと。積極的な活用を宇土先生は呼びかけていました)

(終わり)

研修会開きました(支援相談員部会:その7)

【多重債務にご用心!】

《多重債務とは》

 「すでにある借金の返済に充てるために、他の金融業者から借り入れる行為を繰り返し、利息の支払いもかさんで借金が雪だるま式に増え続ける状態のこと(宮崎県多重債務者対策協議会作成パンフ『多重債務(借金問題)悩んでいませんか?』より抜粋)

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 宮崎県消費生活センターで啓発担当をされている宇土智子先生による研修は、多重債務問題に移りました。多重債務に関する同センターへの相談は減ってきたそうです。しかし、それは多重債務者が減ったのではなく、相談窓口が増えたことによるようです。多重債務の相談は、各市町村をはじめ、同センターおよびその支所(都城、延岡)、九州財政局宮崎財務事務所多重債務相談窓口、さらに弁護士会や司法書士会などの関係団体に窓口が設けられています。

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(↑県多重債務者対策協議会のパンフは赤をベースの衝撃的なデザインで注意を喚起しています)

 「多重債務の問題は、たいていの人は『人ごとかなと?』思うかもしれませんが、決してそうではありません」と注意を喚起した宇土先生。「多重債務に陥るきっかけは、”大きな事業をして失敗した”とか、そういうものではありません」と前置きし、多重債務宇に陥るきっかけとして

(1)失業などによる生活費の借り入れ

(2)知人の連帯保証人になったが、知人が返済しない

(3)ギャンブル等の遊行費のための借金を繰り返す

(4)計画性のないクレジットカードの利用

(5)悪質消費に遇い、その支払いのために借金する

・・・の5つを挙げました。

 そして、「就職して住宅ローンを払っていたところ、失業して支払えなくなった場合など、今までと収支が違って来ることがあったら、その時点で専門機関に相談を」と、早めの相談が重要であることを強調し、債務整理の方法には

(A)任意整理:弁護士が借主の代理人として貸主と交渉し、借金の減額をはかる。和解が成立したら計画に基づき分割で支払っていく

(B)特定調停:簡易裁判所に申し立て、調停委員の仲介で貸主と話し合って返済条件などを変更し、経済的立ち直りを目指す

(C)個人再生手続:弁護士等に依頼し、裁判所を通じて借金を減らし、減額後の債務を3年間で分割払いしていく

(D)自己破産:裁判所を通じて借金をなくす手続き。免責決定により債務を免れる。持ち家などの財産は失うが、借金はゼロになる

・・・の4つがあることを紹介し、「もし周りに悩んでいる人がいたらセンターに電話してください、また、クレジットカードを現金化したり、ヤミ金融から借りたりは絶対にしないで下さい」と述べ、同センターから様々な相談窓口や専門機関の紹介が可能であることを説明しました。

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(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その6)

【高齢者見守りのポイント】

「皆さんは老健施設にお勤めということで、ぜひ高齢者の見守りをお願いします」と切り出した宮崎県消費生活センターで啓発担当をされている宇土智子先生。同センターでは各地のサロンに出向いての消費者被害防止関連の出前講座もやっているものの、「出前講座に出てくる人は元気な方が多く、何かしら社会とのつながりもある方々なので大丈夫かな、と思うのですが、出て来られない人たちには情報が届かないので、皆さんに協力をいただければと思います」と、会場を見渡しながら協力を呼びかけました。

 そして県が作成した「地域の見守りで高齢者の消費者被害を防ぎましょう」というパンフレットを用いて高齢者の消費者トラブルの特徴について説明しました。

 

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研修会で配布されたパンフ『地域の見守りで高齢者の消費者被害を防ぎましょう』。見守り活動の流れや気づきのポイント、事例紹介や解決方法にQ&A・・・と詳しく、そしてわかりやすく書いてあります)

《高齢者の消費者トラブルの特徴》

(1)“孤独”を狙われる

 高齢者は日頃のコミュニケーション不足から、寂しさを抱えている人が多い。特に一人暮らしの場合は、普段の話し相手がいない分、優しい言葉で語りかけてくれる販売員のことを「親切な人だ」と感じ、家に招き入れてしまう。

(2)高齢者の”ほこり”が相談をはばむ

人に迷惑をかけないことを美徳とする高齢者は多い。たとえ被害にあったとしても、「だまされた自分が悪いんだ」と自らを責め、ほかの人に迷惑がかからないよう、誰にも相談せずにいたり、家族に知られたくないかとかくすケースが目立つ。

(3)“お金の不安”につけこまれる

老後を安心して暮らしたいと願う高齢者にとって、老後のお金の問題は大きな不安要素。収入に不安がある高齢者は、販売員の「必ずもうかる」といううたい文句を信じ、金融商品などの契約をしてします。

(4)“健康への不安”を利用される

多くの高齢者は何かしらの身体の不調を感じている。悪質業者はそうした高齢者が抱える健康不安につけこみ、「痛みが治る」「血圧が下がる」などといううたい文句で、高額な商品を購入させようとする。

(5)その他の特徴

○被害にあったことに気づかない:判断能力が低下し”あやしい”と気づくのが遅れる。特に販売員を信用している場合は、まさか”自分がだまされている”とは気づかないことも多い。

○複数の被害にあっている:悪質業者は「だましやすい人」だと判断すると、あの手この手で次々と契約を迫ってくる。高齢者の場合、周囲が気づかないうちに複数の被害にあっているケースが多いため、注意が必要。

○被害金額が高額:高齢者の被害金額はしばしば高額になる。実情はどうあれ悪質業者にとって高齢者は老後のための貯金を持っている「お金持ち」なので、言葉たくみに不当に高い商品を売りつける。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これらを踏まえて、高齢者が消費者トラブルに巻き込まれないための見守り活動の流れについて説明がありました。

《高齢者見守り活動の流れ》

(1)日頃から高齢者と交流をはかる

身近な高齢者と日頃からコミュニケーションをはかる。普段からあいさつを交わし、関係を密にしておくことで、高齢者のささいな変化に気づくことができる。また、信頼関係があれば、声をかけたときに高齢者もより相談がしやすくなる。

(2)高齢者の様子の変化に気づいたら

?高齢者に声をかける

?何があったのか、事実を確認する

→もしも認知症の症状があると思ったときは、地域包括支援センターに相談。また、成年後見制度の利用を検討する。

?消費者被害にあっていたら、宮崎県消費生活センターへの相談をすすめる

→窓口を訪問するときは家族や支援者が付き添うことも可能。もし相談を望まない場合には、家族や地域の人たちで高齢者を見守る。 

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 高齢者を見守る上での注意点として宇土先生は、「決して怒らないようにして下さい。”だまされた方も悪い”という考え方もありますが、だます方は仕事でだましています。考えていますし、巧妙化しています。たとえば昨年度から多くなってきた『送りつけ商法』は、健康食品などを代金引換で送ってくるのですが、それを断るとやり方をかえてきました。『損害賠償請求書』を送りつけて『払え』と言ってきたのです。それも無視していると、商品の中に現金書留封筒を入れて送りつけ、その後電話、さらには電報で『払え』と催促するようになりました。このように、何とかしてお金を取ろうとしてきます。ですから被害にあっている人を怒らないように、腹を立てないようにして下さい」と、高齢者の立場に配慮した冷静な対応が大事であることを指摘しました。

(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その5)

【キッパリと断る勇気を!】

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講義やDVDを通じて悪質商法の手口を紹介して下さった、宮崎県消費生活センターで啓発担当をされている宇土智子先生。「いろいろな研修会で『きっぱり断って下さい』と言うのですが、なかなか切れていないようです。しかし、後のトラブルを考えると、最初に断る大事です」と述べた上で、その断り方として、次の3つの言葉を示しました。

  (1)「お疲れ様です」

  (2)「興味ないんです」

  (3)「失礼します」

 「お疲れ様」は、相手も仕事で来ているので、「疲れているかな?」という気持ちも込めて、最初に言うのだそうです。

 「興味ないんです」に関して宇土先生は、「特に宮崎の人は断るときに『うちはいいです』いいますが、「いいです」は「OKです」という意味にとられるので言わないで下さい。『興味ないんです』とはっきり断って下さい」と注意を喚起しました。また、「『今手が離せません』や、『人が来ているから』などと言うと、また続けてくるので、『興味ない』ときっぱり言って下さい」と言い添えました。

 そして最後の「失礼します」については、「電話の場合、腹が立って受話器をガシャンと置きたい気持ちはわかりますが、切った後にすぐかかってきて脅されたケースもありますので、『失礼します』と言って静かに切って下さい」と注意を促しました。

 なお、法律で訪問販売の際には「自分はこのような用件で来ました」と言わなければならないと決められているそうです。また、一度断ったのに同じ内容で同じ業者が同じ人の所を訪ねるのは禁止されており(再勧誘の禁止)、そのような場合には「こないだも断った」と強く断ってほしいとのことでした。宇土先生は「高齢者もみなさんも、強い勇気を持って断って欲しいと思います」と、キッパリと断る勇気の重要性を強調しました。

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(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その4)

 続いて、近年テレビ通販やネット通販で利用が伸びている通信販売に関して説明がありました。

 「通信販売はクーリングオフができません」と前置きした上で、宇土先生は次のように注意点を挙げました。

 

【通信販売を利用する上での注意点】

 

(1)購入前に必ず代金の支払い方法や返品・交換できるかどうかなどを確認すること。業者には返品特約をきちんと書く義務がある。

(2)海外の通販サイトに関する相談が全国的に増えている。サイトに会社の名前や住所、電話番号などがあるかしっかり確認すること。メールアドレスだけが書いてあるようなサイトは利用をやめるべき。何かあったときにメールしても無視されるなど、連絡の取りようが無い、ということもあり得る。住所が書いてあっても、調べたら山の中だったというサイトももある。

(3)支払い方法が「個人口座に前払い」となっていたり、一見綺麗なサイトのようでも、よく見ると表現方法や、使用されている漢字がおかしいなど、日本語が変な場合は十分注意して確認すること。相手が外国だと取り返すのが難しくなる。

 

【悪質商法の手口】

 次はいよいよ高齢者を狙う悪質商法の手口について説明がありました。まず、「買え買え詐欺」について、ビデオを用いながらその手口と特徴が紹介されました。

《「買え買え詐欺」の手口と特徴》

◎ダイヤモンドや社債などのへの投資を勧めるもの。ここ数年相談件数が増えてきている詐欺。

◎被害金額が大きいのが特徴。平成24年度おけるその契約金額の平均は475万円で、最高は4500万円。そして実際に支払った金額(被害金額)は平均344万円で、最高は4500万円。

◎役者が何人も出てくる「劇場型勧誘」という手口でだますやり方がほとんど。「社債を出す」という会社、「社債を買い取りたい」という会社の人間が出てきて巧みにだまし取る。さらに「社債購入を勧誘する詐欺被害が拡大している。被害を取り戻すための救済ファンドができたので投資して欲しい」などと追い打ちをかけてだまし取られるという二重の被害に遭うパターンもある。

◎手口は同じだが、その時々で「ネタ」が変わる。2年前だと風力発電など環境関係の会社であったり、1年前だとシェールガス、メタンハイドレートなど、その時々に話題になっているものをネタとして持ってくる。一番近いものは東京オリンピックのSS席がらみのものがあった。

◎「高値で買う」と言っておいて、実際にそれが行われた例は全国で1件もない

 

・・・・・このように、「買え買え詐欺」が悪質で巧妙であることを踏まえ、宇土先生は「『買え買え詐欺』は高齢者を狙って来るので十分注意して下さい。また、『現金を郵便で送って欲しい』などと言って来ますが、現金の郵便では送れません」と注意を促し、さらに「高齢者と日頃から『そんなおいしい話はないよね』話をしておいて下さい。呼びかけをお願いします」と念を押しました。

この「買え買え詐欺」はじめ、「母さん助けて詐欺」、「還付金詐欺」などを「特殊詐欺」と警察では総称しているそうですが、その被害額は昨年度全国で360億円だったのに対し、今年度はすでに400億円を超えると言われています。宮崎県でも昨年末で2億円を超えました。なかなか減らない詐欺です。『自分には電話はかかって来ないだろう、パンフレットは送られてこないだろう』という人が結構いると思いますが、個人情報はどこで漏れているかわかりません。『自分にもかかってくるかも?送られてくるかも?』という心構えでいて下さい」と釘を刺すと、受講者はメモを取るなどして聞き入っていました。

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(「還付金詐欺への対策として、ATMの利用限度額を低く設定しておくのも一つの手です」と教わりました)

 

続いて、「悪質な訪問販売」、そして「点検商法」などについても、ビデオを交えながらその手口や対処法を学んでいきました。

(つづく)

研修会開きました(支援相談員部会:その3)

 「このような消費者トラブルに関する相談事例を見ていると、どんな小さなものでも『自分が巻き込まれたらいやだな』と思います。いろいろ考えなければならず、解決までの時間がかかるし、下手するとお金もかかってしまいます」と宇土先生。「だからトラブルになる前にこのような啓発を色々な所でやっています」と、宮崎県消費生活センターのもう一つの仕事である「啓発」について話し始めました。

 同センターでは、その認知度を上げるため、5年ほど前からオリジナルキャラクターの「アリンコちゃん」を使ってコマーシャルを行っています。この「アリンコちゃん」、若い人たちには段々浸透してきているものの、高齢者にはまだまだ知られていないとのことでした。

 

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(↑「こんなのアリ!?と思ったら・・・あきらめないでまず相談」と、アリンコちゃんがセンターの活用を呼びかけています)

 

【契約とは?】

 続いて契約の成立や、解除に関して学びました。「”アリンコちゃん”がテレビを買った」という想定で設定されたクイズを使って説明があり、次のような事を学びました。

(1)契約は口約束で成立する。購入の申し込みをし、店員が承諾した場合のように、双方の合意があればその時点で契約は簡単に成立する。契約書へのサインや商品の受け取り、代金の支払いなどにより成立するものではない。

(2)原則として一度契約したものは解除できない。一度成立した契約はどちらかの都合で解除することはできない。「一週間以内ならレシートを持って来たら返品・交換できる」などというのは、お店がサービスで行っているものなので、契約の際には十分気をつけること。ただし、未成年者取消権等の例外あり。

(3)訪問販売や電話勧誘販売のように、買い物をしようと思っていないのに、無理矢理契約の場に出されて冷静に検討しないで契約してしまった場合、つまり「不意打ち」のような契約については「もう一度考えてみましょう」という「クーリングオフ(”頭を冷やす”という意味の和製英語)」が設けられており、無条件で取り消すことができる。ただし、取引内容や適用対象、期間などについての決まり事がある。クーリングオフは必ず書面で行い、電話で断るのは絶対しない(「言った」、「言わない」、「担当者がもう辞めた」などのトラブルのもとになる)。

(つづく)

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