相手を生かす愛、相手をゆるす愛

 

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 「愛するとはね、相手を生かすことですよ」・・・。

 これは三浦綾子さんの小説、「ひつじが丘」に出てくる言葉です。主人公の広野奈緒実が、想いを寄せる杉原良一との結婚の許しを両親に願い出た際、母親の広野愛子が奈緒実に対し、このように述べています。

またこれに続いて、父親の広野耕作が「愛するとは、ゆるすことでもあるんだよ。一度や二度ゆるすことではないよ。ゆるしつづけることだ」とも諭しています。

  平成27年度の介護保険の報酬改定では、利用者の「活動」と「参加」に焦点が当てられ、そのためのリハビリテーションを提供していくことが重要視されています。介護を必要とする人が、住み慣れた自宅や地域社会で活動、参加していくこと、それは愛子の言う「相手を生かすこと」につながるのではないでしょうか。

 また今回の改定では認知症高齢者に配慮したリハビリテーションの促進も提唱されています。認知症の人にみられる不安や妄想、徘徊、興奮などの行動・心理症状(BPSD)はその人が発しているSOSのサインであり、これに対して「なんでそういうことをするのか!だめじゃないか!!」などといった理解不足や不適切なケアが症状を悪化させるばかりでなく、高齢者虐待につながりかねません。そうならないためには、症状が発生した要因や理由、目的などをその人ごとに考えていくことが大切ですが、その前提として耕作の言う「愛するとは、ゆるすこと」という考え方が重要なのではないかと思います。

「ひつじが丘」は昭和41年(1966年)12月に主婦の友社より刊行され、文庫本としては講談社文庫から昭和55年(1980年)915日に第1刷が発行された後、平成15年(2003年)428日に第58刷が出ていますから、それだけ多くの人々に愛読されているのではないかと思います。今回の改定が意図するところを深く掘り下げて考えるために、この作品をもう一度読み直してみたい・・・。そのように考える次第です。

横浜大会登録受付中

 平成2792日(水)から94日(金)にかけて、パシフィコ横浜で開催される「第26回全国介護老人保健施設大会 神奈川 in 横浜」(主催:公益社団法人全国老人保健施設協会)の事前登録(大会参加登録・演題登録・研修会・懇親会・宿泊等予約申し込み)は現在受付中です。

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 今回の大会テーマは「高齢者が輝く未来へ お洒落に!スマートな連携!」。登録・申し込みは同大会公式ホームページからのオンライン登録となっています。詳しくはこちら をご覧下さい。

 なお、登録締切は717日(金)の正午。同ホームページには「※締切日時になりますと受付サーバーは自動的に停止します」とありますので、ご注意下さい。

 締め切りまで2か月を切りました。「まだ大丈夫」と思っていたらいつのまにか締切を過ぎていた、ということのないよう、大会フェイスブックおよび大会チラシ(PDF形式)も併せてご覧いただき、早めの対応をお願いいたします。

ぶれないこと

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 北極星はすごいと思います。星の数ほど(!?)たくさんある星の中で、唯一ぶれずに北の空に浮かんでおり、この北極星を中心として、他のすべての星がぐるぐる回っています。

 ただし、この北極星も実際には微妙に動いて小さな円を描いているそうです。そして、そもそも実際に動いているのは地球なのですが、ともかく北極星のこの「ぶれなさ」は、見ならうべきものがあります。

 今年度介護報酬が改定され、各老健施設においても、その対応をはかっているところかと思いますが、地域の医療・福祉・保健の拠点として、そして利用者の在宅復帰、在宅支援施設として、ぶれることなくその役割を発揮していきたいものです。

この機会に、「介護老人保健施設の理念と役割」をおさらいしたいと思います。北極星のように「ぶれない老健」をめざす一助になればと思います。公益社団法人全国老人保健施設協会が毎月発行している協会機関紙、「老健」からそれを抜粋し、以下に記します。

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「介護老人保健施設の理念と役割」

 介護老人保健施設は、利用者の尊厳を守り、安全に配慮しながら、生活機能の維持・向上をめざし総合的に援助します。また、家族や地域の人びと・機関と協力し、安心して自立した在宅生活が続けられるよう支援します。

 

1.包括的ケアサービス施設

 利用者の意思を尊重し、望ましい在宅または施設生活が過ごせるようチームで支援します。そのため、利用者に応じた目標と支援計画を立て、必要な医療、看護や介護、リハビリテーションを提供します。

2.リハビリテーション施設

 体力や基本動作能力の獲得、活動や参加の促進、家庭環境の調整など生活機能向上を目的に、集中的な維持期リハビリテーションを行います。

3.在宅復帰施設

 脳卒中、廃用症候群、認知症等による個々の状態像に応じて、多職種からなるチームケアを行い、早期の在宅復帰に努めます。

4.在宅生活支援施設

 自立した在宅生活が継続できるよう、介護予防に努め、入所や通所・訪問リハビリテーションなどのサービスを提供するとともに、他サービス機関と連携して総合的に支援し、家族の介護負担の軽減に努めます。

5.地域に根ざした施設

 家族や地域住民と交流し情報提供を行い、さまざまなケアの相談に対応します。市町村自治体や各種事業者、保健・医療・福祉機関などと連携し、地域と一体になったケアを積極的に担います。また、評価・情報公開を積極的に行い、サービスの向上に努めます。

天に三日の晴無し

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「天に三日の晴無し」とは、「天気でさえも三日とは続きにくいのだから、人の身の上にも、よいことばかりが長く続くことはない」という意味のことわざです(『暮らしの中のことわざ辞典』、折井英治
編、集英社)。

 ところで、県内の日照不足が深刻です。411日の宮崎日日新聞によると、4月上旬(1日から10日)の県内は前線などの影響で天候不良が続いているそうです。3月下旬は晴天に恵まれ、日照時間は平年より多かったものの、43日ごろから南九州付近に前線が停滞。低気圧が通過したことで雨や曇りの日が続いたとのこと。これにより野菜の生育が遅れたり、大雨による道路のり面の崩壊や列車の運行への影響が出ているそうです。そして宮崎地方気象台によると、「本県を含む九州南部は向こう1か月、平年に比べて晴れの日が少ない見込み」と紹介されていました。

 「天に三日の晴なし」のことわざの示す通り、良いことばかりが続くわけではありません。それに加えて実際に生じている天候不良。老健施設に勤める者の一人として、利用者のリスク管理、体調管理に万全を期しながら、宮崎らしい青空が広がるのを待ちたいと思います。

郵政記念日

 

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 420日は郵政記念日。1871年のこの日、それまでの飛脚制度から郵便制度が始まったことを記念して設けられました。

ネット社会となった今は、メール(email)などですぐに意思のやりとりができますが、郵便の場合、手紙を出す方はまず手紙を書いて、あて名、住所を書いて、切手を貼って、ポストまで行って、ポストに投かんするわけです。それが文通相手に出す手紙だったり、はたまた想いを寄せる人への恋文だったりすると、「ああ、いつごろ届くだろうなあ?読んで喜んでくれるだろうか?あんな文面で良かったかなあ?返事は来るだろうか?返事にはどんな事が書いてあるだろうか?」などといったことを、数日間かけて考えたりしたわけです。

 「南の丘を はるばると
郵便馬車が やってくる・・・」で始まる、岡本敦郎さんが1951年(昭和26年)に歌って大ヒットした「あこがれの郵便馬車」という名曲があります。インターネットはもちろん、電話もあまり普及していなかったこの時代、通信の主役は郵便だったわけです。この曲の中で人々の想いを込めた手紙を運ぶのは馬車。しかも一日に一度、南の丘を越えて、レモンの花の咲く道を通り、そしてはるばる峠を越えてやって来るのを、村の若者が待っているのです。それも”パッカパッカ”という馬のひづめの軽い響きがやって来るのを、耳を澄ませて聞いているわけですから、若者達のワクワク、ソワソワはただならぬものがあったのだろうと察することができます。夢と愛にあふれたうれしい便りの数々を乗せて、今日もやって来る郵便馬車。その便りの一行一行、一文字一文字を何度も繰り返し読んで心が満たされた若者は、これまた一行一行、一文字一文字に心を込め、推敲(すいこう)を重ねて返事の便りをしたためることでしょう。そしてその便りを乗せた郵便馬車がパッカパッカと去って行くのを見送りつつ、またの便りがくるまでの数日間、首を長くして待つことでしょう。

 これが現代だと、スマホでメールを送ればすぐに相手に届き、そしてすぐに返事が戻って来ます。写真だってその場で撮ってすぐ送れるし、仕事での連絡や書類の受け渡しもできるし、テレビ会議もできて大変便利です。郵便馬車にはとても真似できない芸当です。しかし便利さゆえに様々な問題が生じてきているのも周知の通りですし、一文字一文字に込める言葉の重さも変わってきたのではないかと思ったりもします。

 郵便とメール。それぞれに一長一短があるのではないでしょうか。老健施設の利用者の皆様に、かつての郵便に関するあれこれを教えてもらいながら、考えてみる機会にしてみてはいかがでしょうか。「あこがれの郵便馬車」を聴きながら。

雲間のレール

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 「雲間のレール」と名付けたこの写真。昨年の86日の昼過ぎに撮影したものです。モコモコした2つの雲の間を、飛行機が通過したわけですが、それがちょうどレールのように見えたものですから、このように名付けました。

 「レール」と呼ぶからには、そこを走るのは列車。そしてこの突き抜けるような青空を走るのは、ブルートレインをおいて他にはありません。Wikipediaによると「客車を使用した寝台列車を指す愛称」であるブルートレイン、略して「ブルトレ」。かつて「ブルートレインブーム」も巻き起こり、全国の鉄道ファンに愛されました。寝台車の狭いベッドで、「ゴトンゴトン」というレールの継ぎ目の音(転動音)を聞きながら熟睡するのは少々大変で、寝相が悪くてベッドから落っこちる人もいました(経験者談)。だけど目的地に行くことだけが目的でなく、目的地に行くまでの道のりを楽めるのもブルートレインの醍醐味。ゆっくりと過ぎ去る風景を眺めたり、駅弁を楽しんだり、隣り合わせた人と会話に話がはずんだりして、ブルートレインの旅は楽しいものでした。

 しかし現在、全国あちこち(ただし宮崎を除く)に新幹線が整備され、各地の移動時間が大幅に短縮されてきました。そしてなんと共同通信によると、「青い塗装の寝台特急『ブルートレイン』が2015年度末までに全面廃止される方向で検討されている」とのこと。客車の老朽化や乗客の減少などにより、存続がむずかしくなったためだそうです。車中で宿泊する必要もないほどに交通手段が向上したのは喜ばしいことですが、その一方で、便利残念な思いをしている鉄道ファンも少なくないのではないかとも思います。

 それはさておき、「雲間のレール」が雲と雲とをつなぐ橋渡しをしているように、老健施設は病院と自宅、さらには地域社会とをつなぐ橋渡しをする中間施設。他職種がそれぞれの専門性を活かしながら共同してケアにあたり、自宅や地域社会へ復帰し、そこで生き生きとした生活ができるようサポートしきたい、そして老健は利用者の夢や希望や目標を乗せていつまでも走り続けるブルートレインでありたい・・・空を見上げながら、そのように考えた次第です。

生きることは避けられない

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 「死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ」と行ったのはイギリスの喜劇王、チャールズ・チャップリン。今から126年前、1889416日に誕生しました。日本では明治22年。51日に東京市が誕生した年です。

 不世出の喜劇役者であり、映画監督であるチャップリン。しかしその作品はいずれも抱腹絶倒するばかりではなく、涙や怒り、社会風刺などが庶民の目線から盛り込まれていて、そして何と言っても大きな感動を呼び起こす、素晴らしいものでした。

 映画界随一の完璧主義者と言われた彼は、わずか3分のシーンのために1年以上の歳月をかけたこともあるそうですが、それだけ映画にかける並々ならぬ思いがあったのだと想います。

 「死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ」・・・。このようなチャップリンが言ったこの言葉ですから重みがあります。彼もこの信念に基づき、数々の作品に魂を吹き込んでいったのではないでしょうか。

 アメリカの心理学者、エリクソンは老年期を「人生を完結する重要な時」として、その発達課題を「統合性」としました。これまで生きてきた歴史を振り返り、その良かったことも悪かったことも、自らの歩んだ道として受け入れ、自己を肯定的に統合することで、心の安定が得られるわけですが、それが得られないと絶望感に陥りかねません。

 老健施設で働く者の一人として、老年期を過ごす老健の利用者の話に耳を傾け、その生き様に尊敬をはらいながら、統合性が獲得できるようサポートしたい。そして利用者が生き生きと生活できるようケアをしていきたい・・・。チャップリンの言葉を反すうしながら、そのように考えた次第です。

看取りケア研修会申込締め切りました(看・介部会)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会看護・介護研究部会が59日(土)1400分から宮崎市のJAアズム別館202号室で開く高齢者施設での看取りケア」研修会(講師:認定特定非営利活動法人ホームホスピス宮崎(HHM)の市原美穂代表)の申し込みは、当初「416日まで」とご案内しておりましたが、定員に達したため締め切らせていただきました。

 受講を予定されていたにもかかわらず、やむを得ずお断りをさせていただいた方や、参加者数を絞らせていただいた施設の方々には、ご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。

 なおこの研修会の模様は、当ホームページでも連載形式にて報告する予定ですので申し添えます。

また、この研修会に関する問い合わせは介護老人保健施設サンフローラみやざき(担当:上村久美子、TEL0985-75-2020)までお願いいたします。

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リッチー古希

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 ”ざっ、ざっ、ざーっ、ざっ、ざっ、ざざーっ、ざっ、ざっ、ざーっ、ざっ、ざーっ”・・・という強烈なインパクトを持つイントロで始まるのは「スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)」。伝説のハードロックバンド、ディープ・パープルが1972年に出したアルバム「マシン・ヘッド」に収録されている名曲です。今から43年前のリリースでありながら、このイントロを聴くと魂を揺すぶられるような気持ちになります。

 このディープ・パープルのギタリストと言えば、泣く子も黙るリッチー・ブラックモア。その演奏法やステージパフォーマンスなどは今のロックシーンにも大きな影響を与えています。

 そしてこの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」は、かつて(今もそうかもしれません)のギター少年ならば必ず弾いた事があると言っても過言ではない”ロックギターの入門曲”的存在でした。「ヤング・ギター1月号増刊 初心者のためのロックギター奏法(昭和55115日発行、()新興楽譜出版社)」には、「ちょっと聴いただけでは割合地味な印象のソロなのですが、内容的にはロック・ギターのベーシックなテクニックがギッシリ詰まっているプレイで、その上4本指のフィンガリングを要求されるフレーズも多いのです。(中略)ギター・キッドにとって大変参考になる要素を多く含んでいる曲だと思います」と紹介されている通り、この曲のギターソロの部分にはロックギターの基本テクが多用されていることから、様々なギター教本で取り上げられていました。

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 しかしクレイジーケンバンドのギタリストである小野瀬雅生も「スモーク・オン・ザ・ウォーターを笑うものはスモーク・オン・ザ・ウォーターに泣く」という言葉を残している通り(ウィキペディア抜粋)、この曲を完全に弾きこなすのは容易なことではありません。同アルバム1曲目のハイウェイ・スター(Highway Star)よりはるかにテンポは遅いものの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の方が難易度が高いと言えます。

 このようにギターソロの部分を弾きこなすには、かなりの練習が必要な一方で、イントロの”ざっ、ざっ、ざーっ、ざっ、ざっ、ざざーっ”の部分は簡単で、しかもかっこいいことから、ロックギターを初めて手にした少年・少女達はこぞってこの曲にチャレンジしたものです。

「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」で、2003年は第55位、2011年の改訂版では第50位に今なお位置づけられるリッチー・ブラックモアは1945414日生まれ。今年でなんと古希を迎えました。そのあまりにも大きすぎる功績にあやかった者の一人として、この記念すべき日を心よりお祝いしたいと思います。

 一方、リッチー・ブラックモアが70歳ということは、彼が世に出した名曲の数々に酔いしれたロックファンも、彼と同じだけの年月を重ねてきたということでもあります。老健施設に勤める者の一人として、利用者の生活歴の中でその背景となるミュージックシーンを今一度掘り下げて見直してみたい、とそのように考える次第です。

山鳥川陽(さんちょうせんよう):美しき宮崎の自然

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 写真は国富町を流れる深年川。2月のある日の夕方に撮影したものです(写真をクリックすると大きな画像で見られます)。はるか西に高千穂の峰が雲間からの夕陽を受けてそびえ立ち、その夕陽は一方で、まっすぐな黄金の帯をS字にくねった川面に延ばし、染めていました。

 それだけでもうっとりするところに、なんと手前から水鳥たちが夕陽に向かって泳ぎ始めたではありませんか。まるで申し合わせたような絶妙のタイミング!!思わずシャッターを切った次第です。

川と山と夕陽と水鳥。この映画のワンシーンのような光景を「花鳥風月(かちょうふうげつ)」的に表現するなら「山鳥川陽(さんちょうせんよう)」といったところでしょうか。観光地でも何でも無い場所ですら、このような美しい景色を見せてくれる宮崎県の自然。その魅力には計り知れない底力があると感じざるを得ませんでした。

4月になり屋外活動をするには良い季節を迎えました。利用者の皆様と連れだって、この美しき宮崎の自然を満喫しに行っててみてはいかがでしょうか。

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