なりちゅう

 「なりちゅう」と言ってもネズミの一種ではありません。中学校の愛称でもありません(これは実際にあるかもしれませんけど・・・)。「今後の成り行きが注目されます」で締めくくる新聞やテレビのニュース原稿を「なりちゅうもの」「なりちゅう記事」「なりちゅうネタ」などと言います。もっとも、その報道機関が、そのニュースについて、その後を本当に注目していくかどうかは定かではありませんが・・・。

 しかし、これは正真正銘の「なりちゅう」です。ついに日本が貿易やサービスの自由化を図る環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けて、関係国との協議に入ることになりました。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの9カ国で交渉中の自由貿易協定(FTA)で、これらの国の間では、色々なもの貿易が、関税なしで、自由にできるようになるのだそうです。

 このTPP参加については賛否両論の立場から、与党内でも激論が交わされています。特に農業を基幹産業とする宮崎県においては、少なからぬ影響が出るものと報じられています。また、農業だけでなく、医療分野をはじめ、私たちの暮らしを取り巻く多くのことについて変化がもたらされるのではないか、とも。

 良い影響、良くない影響、色々あると思いますが、これは本当に「なりちゅう」です。宮崎が、そして日本がどう変わって行くのか?今後の成り行きが注目されます。

 そして、今の日本を築き上げてきた人達──もちろん、今老健を利用されている方達も含まれます──が、これから変わりゆくであろう日本や郷土の姿を見て、どう感じられるか?それについても「なりちゅう」です。温故知新。時には「こうしたらいいんじゃないか?」と助言や知恵を頂きながら、次の世代の人達にとって、暮らしやすい日本、そして宮崎になっていくとよいと思います。

1が6つ並ぶ日

 今日は20111111日。なんと16つも並ぶというすごい日です。これにちなんで、きっといろんなイベントも催されることだと思います。さらに、本日の午前と午後、2度訪れる、20111111111111秒となると、112個も並んでしまいます。その瞬間、ぴょんとジャンプして、「オレ、その瞬間、地球におらんかったっつよ」と古典的なギャグを披露する人もいたりするのではないでしょうか。

1111日は毎年来ますが、次に15つ以上並ぶのはいつか?と思ったら、2111年、11日。続いて2111111日、2111111日ときて、21111111日になると、17つ並びますが、なんと百年先の話。それを思うと、いかに今日という日が奇跡的(?)な日か、と考えさせられてしまいます。

「一の今日は、二の明日にまさる」とは、フランクリンの言葉だそうです(『リーダーシップ名言集』、鎌田 勝、三笠書房)。今日やるべきことを明日に延ばすな、要するに、Don’t put off till tomorrow what you can do today.ということです。1がずらーりと並んだこの記念すべき日に、つまり、「二の明日」になるその前に、この言葉の重さを噛みしめながら過ごしたいと思います。

おっと、大事なことを失念していました。今日、1111日は介護の日「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」という気持ちをこの日に掛け合わせているのだそうですが、個人的には金八先生の「いいですかぁー、みなさん。人という字はぁ、ひと(1)とひと(1)とがぁ支え合って生きているんです」という、あれを連想してしまいます。先述の通り、毎年やってきます。老健に勤める者の一人として、日頃の介護のあり方を振り返り、新たな気持ちで第一歩を踏み出すための日にしたいと思います。

栄養教室開きました(栄養給食部会)

 (社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は118日西都市の西都市民会館で高齢者栄養教室を開きました。講義や実習を通じて、食事摂取に関する高齢者の能力の変化や、それを補う高齢者ソフト食について理解を深めました。

 今回の教室は西都・児湯地区の4老健施設(菜花園、シルバーケア新富、なでしこ園、並木の里)のほか、同地区の関連施設が対象。管理栄養士をはじめ、調理に関わる職員、看護師、介護支援専門員、さらには利用者のご家族など、36人が参加しました。

 

IMG_1537.JPG 教室ではまず、高齢者ソフト食について、潤和会記念病院の管理栄養士、納富祥子さんが、スライドを用いて講義を行いました。高齢者は嚥下(飲み込み)が悪くなり、食道に行くべき食べ物が、気管を経て肺に達し、肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす危険性があること。また、加齢に伴い、味覚やかむ力が衰え、唾液の分泌量も減少。食事が楽しくなくなるだけでなく、低栄養、脱水、窒息などの危険性が高まることなどの問題点が説明されると、参加者は真剣な表情で聞き入っていました。

 これに対して、高齢者ソフト食は、(1)しっかりとした形がある、(2)適正なサイズで口にとりこみやすい、(3)適正な硬さでかみやすい、(4)まとまりやすい、食塊(食べ物のかたまり)形成がしやすい、(5)適正なすべりをもち、移送しやすい、(6)適正なスピードで飲み込みやすい・・・などのメリットがあり、それらの問題が解決できるとし、導入までの流れや、主食やおかずなど、それぞれにおけるソフト食の種類、特徴などが紹介されました。

 

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「気さくな話し方でわかりやすい」と好評だった納富さんの講義。

 

 

 続いて、調理実習。この日取り組んだソフト食は、巻き寿司、あおさのみそ汁、鶏の唐揚げ、そしてなすのずんだ和えの4品目。まず、作り方を習った後、さっそく調理実習室に移動。4グループに分かれて、調理を行いました。巻き寿司は、米を炊く直前にゼラチンパウダーを入れてかき混ぜること、唐揚げの衣は、まず小麦粉、次に溶き卵の順番で別々につけること、なすは皮をむいて、繊維に直角に切ることなど、参加者は資料を確認し合いながら作業を進めていきました。

 

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  「簡単!家でもできそう!」と評判でした。

 

 

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↑↓巻きずし。ゼラチンごはんは冷やすとまとまり、調理しやすくなります。

 

 

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IMG_1588.JPG ↑なすのずんだ和え。なすは繊維に直角に切るのがポイント!

 

  

 

IMG_1592.JPG   ↑すごくやわらか!鶏の唐揚げ。

   

 そしていよいよ試食会。見た目の色や形は普通の食事と変わらないのに、実際に口にしてみると、講義で学んだ通り、適度な硬さやまとまりやすさ、そして口からのどに運ぶ際のなめらかさに、参加者は驚いたり、納得したり。それぞれ感想を出し合いながら、有意義なひとときを過ごしました。

 参加者からは、「本を見たり、話を聞くだけではわからなかった部分が、実際作ってみることで理解できた」、「初めてソフト食を作ってみたが、手軽にできたのでびっくりした」、「とてもおいしく、感動した」などの意見が寄せられたほか、それぞれの施設や家庭でも作ってみようという声も多く聞かれ、今後につながる楽しく、おいしい教室となりました。

 

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和気あいあいの中にも、メモをとるなど熱心に行われた試食会。

老後をロボットに託すのか? 否!

  112日の朝日新聞に、「トヨタ発 介護・医療ロボ」という記事があったのを読まれた方も多いかと思います。体の不自由な人や高齢者の自立歩行をたすけたり、ベッドから人を持ち上げて、トイレに移動させたりするロボットを、2013年以降に実用化するのだそうです。同日付の各紙に同じ記事が載っていましたので、それだけ皆の関心も高いことがうかがえます。

 価格は未定とのことですが、これが実用化されれば、私たち老健に務める者の仕事は減るのでしょうか?あるいは、私たちの仕事そのものが、ロボットに取って代わられるのでしょうか?食事介助ロボット、入浴介助ロボット、排泄介助ロボット・・・。日本人の老後はロボットが見ることになるのでしょうか?そうではないと思います。

 「やさしい言葉は、たとえ簡単な言葉でも、ずっとずっと心にこだまする」とは、マザー・テレサの言葉です(『いい言葉は、いい人生をつくる』、斎藤茂太、成美文庫より)。そしてその言葉とは、機械が発するものではなく、生身の人間が、心を込めて語りかけることで、相手の心の中で共鳴し、残響し続けるものなのではないでしょうか。

 未来。ある一人暮らしの男の部屋。彼に限らず、人々の身の回りの世話は全てロボットがやってくれる時代。いつもの朝と同じように、身体を起こし、顔を洗い、髭を剃り、着替えをし、朝食を食べさせ、歯を磨く。全ての動作をロボットが「機械的」に話しかけながら淡々とこなしていく。彼が死んでいるとも気付かずに・・・。そのような内容のショート・ショートを、星新一さんが書かれていました(タイトルは忘れてしました。ずーっと前の作品です)。

 そんな未来を、そんな老後を望む人は果たしてどのくらいいるでしょうか。重要なのは、ロボットをいかに有効に使うか、ということです。ロボットを活用することで、人間の負担や疲労、そして危険を軽減する一方で、人間は心を込めた介護に専念する。それにより、人間は人間らしく、心豊かな生活を送ることができるのではないでしょうか。そういう時代が到来したとき、今以上に介護の本質が問われるようになるのではないか、と思ったニュースでした。

研修会を開きました(ケアプラン研究部会)

 ()宮崎県老人保健施設協会高齢者ケアプラン研究部会は115日(土)、宮崎市花山手の宮崎市民文化ホール会議室で、リーダー研修会を開きました。今回は熊本から「()地域ケアプラン研究所・海(かい)」の大石逸子代表を講師に招き、施設ケアプランの効果的活用について学びました。会員施設等から57人が受講しました。

 大石先生は医療法人萬生会西合志病院副院長兼総婦長を経て独立。同研究所を開設されました。現在、熊本県および宮崎県の介護支援専門員現任教育教師や日本総合研究所講師、熊本看護専門学校講師なども務め、さらに九州各県で市町村介護給付適正化事業に関わったり、NPO法人理事、第三者評価委員もこなされるなど、八面六臂の活躍中です。この日はそんな激務の合間を割いて駆けつけて下さいました。

 

 

 

IMG_1501.JPG  エネルギッシュに語る大石先生。 時間がいくらあっても足りないくらいのためになるお話でした。

 

 「老健が老健の役割を果たさなくなくなっている。介護保険前は自宅にちゃんと帰していたが、介護保険が始まったと同時に、老健全体が特養化しだした。『老健って何なの?』と問われる時代がもうそろそろ来る。私は介護保険が始まるずーっと前から老人と関わってきた。寝かせっきりの時代もあった。それじゃあいけない、と平成元年あたりから言い出して、平成2年から家に帰そう、と取り組み始めた。そうすると、帰れない人はいない。これは現場で何十年やってきて確信したことだ。『うちの施設は帰れない人が多いんです。家族が受け入れられないんです。行くところがないんです』と言ってる施設が、要らない施設になる。これは間違いないことだ」──。開口一番、老健がその本質的使命である、在宅復帰機能を果たしていない現状を切り出した大石先生の話に、受講者の背筋がピンと伸びました。

 

IMG_1506.JPG 一言も聞き漏らすまい、と熱心に聞き入る受講者の皆さん。

 

 利用者の意欲を高める支援方法や、多種チームとの連携の重要性、「生活支援」の視点と施設ケアプランのあり方、さらにそれらのために必要となる能力などについて、スライドを用いて講義が行われた他、グループワークも交えながら研修が進められました。

 講義の中で、大石先生は「ケアプランで人を教育し、組織を育成できる」と強調されていました。ケアスタッフを教育していくには、(1)理念、方針、考え方、現状を直接示す、(2)ケアに関連した学習ができる環境をつくる、(3)患者が療養しやすい環境をつくる努力をする、(4)スタッフが教える、尋ねられる環境をつくる・・・の4つを、また、組織を育成するためには、(1)指示命令系統をはっきりさせる、(2)確実に指示、決定事項が伝わるようにする、(3)管理者を育てる・・・の3つを示されました。

 一方、利用者や家族との関係において、「ケアプランは契約!3ヶ月の目標を立てておきながら、3ヶ月後それを果たせていなかったら契約違反。『訴える』という人が出てきてもおかしくない」と指摘。ケアプランの重要性を改めて思い知らされました。

 グループワークでは、参加者自身やそれぞれの職場について、その強みや弱み、機会、諸環境などについて各自が分析した後、意見を交換し合いました。

 

 

 

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グループワークでは、各自がそれぞれの現状を踏まえ、意見を交わしました。

 

 研修の終わりに、「強みをいかに機会に変えきるか、それがこれからの皆さんや、皆さんの職場が生き生きする方法論だ。そうするとケアプランも生き生きする。自分たちで自分たちの職場を悪循環から良い循環に変えていくしかない。今回の研修を、自分や職場の強みと弱みを考え、どういうケアマネージャになりたいか、どういうケアプランを作りたいか、を考える機会にして欲しい」と締めくくられた大石先生。限られた時間の中で、本当に内容の濃い研修会となりました。

秋入梅(あきついり:秋黴雨)

  先週に引き続き、またもや週末は雨でした。県内各地で様々なイベントが催されたのですが、内容変更を余儀なくされたところもあったようです。テレビのニュースで「天候の良いこの時期を選んで開いたのですが・・・」と主催者が残念がっていたのが放送され、聞いている方も残念な気持ちになりました。それにしてもすっきりしない天気が続きました。秋の長雨。また、その季節に入ることを「秋入梅(あきついり)」といいます(「広辞苑」)

 「雨の降る日は天気が悪い」とは、当然すぎるほど当然のことをわざわざ事新しく言うことわざです(「暮らしの中のことわざ辞典」、集英社)。まさにこういう場合にこれを言われてしまうと、駄目を押されたようで滅入ってしまいます。シトシトピッチャン、シトピッチャンな気分です(「子連れ狼」の主題歌)。

 週が明けて、久々にお日様を拝むことができました。宮崎はやっぱりこれでなくっちゃあ!気分を入れ替えて、スキッと行きましょう!果たして次なる週末の空模様はどうなりますやら・・・。

沈没船みつかる!

 「海狼伝」は白石一郎さんが書かれた海洋冒険時代小説の最高傑作。昭和62年、直木賞受賞作品です。

 時は戦国時代末期織。対馬の漁村で小舟を操り、海女を漁場まで送る「後押し」をしながら暮らしていた、18歳の笛太郎少年。あだなは「大将」。船と海への強い憧れを持つ──。

 そんな笛太郎が海賊の一味となり、やがて海のウルフとなって成長し、遙かなる海へと旅だっていく様を描いたスケールの大きい一冊です。この作品のすごいところは、海や船に関する描写の緻密さ。それも和船、ジャンク(中国船)、そして南蛮船という、それぞれ特徴のある船の構造やその操舵法などを、あたかもその時代に行ってきて、実物を目の当たりにしながらペンを走らせたんじゃないか!?と思うほどのリアルさで書き表しています。

 また、海賊といいながら、正義感に溢れる笛太郎。海中に溺れ行く敵を、何の迷いも無く自船に救い上げてやるなど、少しも悪者っぽくありません。むしろ正義の味方。天正の笛太郎を、平成で言うなら「ワンピース」のルフィー、はたまた「パイレーツオブカリビアン」のキャプテンジャックスパロー。昭和で言うならキャプテンハーロックのような存在と言えるでしょう。ぜひご一読あれ。

 そんな笛太郎も、きっと仰天して、愛船「黄金丸」の船べりから落っこちそうになるようなニュースが、1025日の宮崎日日新聞に載っていました。鎌倉時代に来襲した元寇の沈没船といられる船体が、長崎県松浦市の鷹島沖で見つかったのだそうです。しかも、船の構造が分かる状態での発見は国内で初めてとのことで、元寇の実態解明につながる、重要な手がかりになりそうだ、とも。そしてそして、これが本当に元寇のものであるならば、笛太郎が希望という名の帆に順風を一杯に受け、船を走らせていた時代から、さらに300年も前の船ということになります。しかも、場所も同じ。つまり、黄金丸が波かき分けて進む海原の底、はるか深く暗い所で、この元寇沈没船はひっそりと深い眠りについていたということになります。

 現代からさかのぼると、実に700年以上昔の船です。これはもうロマンです。著者の白石一郎さんは、「海狼伝」を書くにあたり、資料集めや現地調査に膨大な時間を割いたのだそうです。しかし、笛太郎の活躍と成長を、海底から見上げていた元寇船がいたことは、果たしてご存知だったでしょうか。残念ながら2004920日、黄泉路への航海に旅立たれた白石さん。ひょっとして今頃、「まさか、それは本当か!?」あるいは「やっぱりあったか!」などと言いながら、舵取りを誰かに任せ、再び原稿用紙に向かわれているんじゃないのかなあ、などと想像してしまったビックリニュースでした。

文化の日

  今日は文化の日。県内各地でも、それにちなんだ催しが、色々と開かれているかと思います。もっとも、老健に勤める皆様におかれましては、祭日とは関係なく、仕事に励まれている方も多いかと思います。

 はて、「文化」とは何ぞなもし?と思って広辞苑で調べてみると、「(1)文徳で民を教化すること。(2)世の中が開けて生活が便利になること。文明開化。(3)(culture) 人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、文明と区別する。⇔自然」・・・とあります。ここで気になるのが「文化」と「文明」の違いです。

 これも広辞苑をひいてみました。「(1)文教が進んで人知の明らかなこと。「―の世」(2)(civilization) 都市化。():生産手段の発達によって生活水準が上がり、人権尊重と機会均等などの原則が認められている社会、すなわち近代社会の状態。⇔蒙昧・野蛮。():宗教・道徳・学芸などの精神的所産としての狭義の文化に対し、人間の技術的・物質的所産」・・・とあります。つまり、精神的なものが文化、物質的なものが文明ですか、ふーむ。

 そこまで調べて思い出したのが、ウン十年前、英単語の参考書(「試験に出る英単語」だったと思うのですが、定かではありません)に”文化(culture)”と”文明(civilization)”の違いについて、だいたい次のような内容のことが記されていました(たぶん。間違っていたらゴメンナサイ)。

         「文化は文明を破壊する(ことがある)」

 英単語の参考書ですから、単語と意味さえ覚えればいいのですが、何だか哲学的な響きがして、私にはこの1文が長い間ずーっと気になっていました。

 しかし、その言わんとするところが、わかったような気がしたのが、宮崎駿監督の代表作品とも言える「天空の城ラピュタ」です。「空を飛びたい。重力にあらがい、天空を支配して、世界を掌中に収めたい」という人間の欲望が飛行石を生み出し、そしてその欲望ゆえにラピュタは滅んでしまったのでした。ラストで飛行石の巨大な結晶が、人間の欲望の呪縛から解き放たれ、空高く、というか無限に広がる宇宙空間へ向けて、上昇し続けていくのですが、そのシーンをみて、「”文化が文明を破壊する”って、こういうことなのかなあ」と悟ったのでした。

 「文化の日」はあっても、「文明の日」はありません。物質が巷に溢れる世の中ですが、大事なのは人の精神、心だということを忘れてはいけません。携帯を家に忘れて出てきてしまって、一日中携帯が気になってしょうがなく、落ち着かずに過ごしたことはないでしょうか。人が物を支配することはあっても、物が人に支配されるようになってはいけません。そのことを「文化の日」に再確認しなさい、と設けられた祭日なのかなあ、と考えてしまった113日です。ちなみに大安。ハッピーなことがあるといいですね。

御御御付

  「御御御付」と書いて「おみおつけ」と読みます。「味噌汁」をていねいに表現した言葉です。このように、同じ漢字が3回連続する名詞はめったにないです。ついでながら、この「めったにない」を博多弁で言うと「なかなかなか」となります。

 さて、宮崎ではこの「御御御付」、つまり味噌汁を、高齢者が「味噌おつゆ」と言われるのをよく耳にします。よい響きですね。広辞苑をひくと、「汁(しる)」は、(1)物体からしみ出る液。または搾り取った液。 (2)調理用の液。出し汁。煮汁。つゆ。(3)吸物。しるもの。特に、味噌汁。(4)汁講(シルコウ)の略。(5)他人の働きによって得る利益。「うまい―を吸う」──とあります。(2)(3)はよしとして、特に(5)のように、食べ物の域をこぼれ出した意味合いもあります。

 一方、「つゆ(これも「汁」、および「液」と書きます)」をひくと、(1)液汁。しる。水気。(2)吸物のしる。(3)煮汁(ニジル)(4)つけ汁──とあり、食に関する意味合いが強いように感じます。したがって、「味噌汁(みそしる)」よりも、「味噌おつゆ」と言った方が、ちょっとだけ味わいがあるような気がしてしまうのは、私だけでしょうか。

 それはそうと、昔は味噌(そして醤油)を自分の家で作っているところがけっこうありました。倉庫や小屋などの暗いところで、少し大きなビンやかめや桶で作って保存していました。家々によって麦だったり米だったり、あわせだったりと様々。家の数だけ味噌の味があったようなものです。料理の時に味噌が無いと、お隣から分けてもらって作った味噌汁を食べることがたまにありました。そうすると、いつもとは違った味がして不思議な気持ちになった記憶があります。

 今や味噌は買う時代です。しかも、ダシ入りのものも出回るようになって、便利な世の中になりました。その一方で、お隣に味噌や醤油を借りに行く光景もあまり見かけなくなったように思います。家々で違っていた、昔ながらの「味噌おつゆ」の味、今はどうなっているのでしょう。お隣の食卓に上がり込むのもはばかられる世の中になりました。そういえば、「おすそわけ」なんてのも、あんまりやらなくなってしまいましたね。レンジで「チン」する音が、何だか乾いて聞こえる今日この頃です。

研修会を開きました(在宅支援部会)

  (社)宮崎県老人保健施設協会在宅支援研究部会は1029日、宮崎市清武町の生活遊裕館で研修会を開きました。テーマは『デンマークの福祉制度と介護サービスの実際』。

 講師にはデンマークからベンツ・ラワーセンさん、いつみ・ラワーセンさんご夫妻にお越しいただきました。ベンツ・ラワーセンさんは、障害児の福祉に関するデンマークの国家資格「ペタゴー」を持ち、オトゴップガーデンの施設長の他、障害者の在宅自立支援訪問チーム長も兼任されています。いつみ・ラワーセンさんは、かつて介護老人保健施設サンヒルきよたけ(宮崎市清武町)で介護福祉士として勤務されており、その縁あって、今回の研修会が実現しました。会員施設等から63人が参加し、会場は熱気に包まれました。 

 2006年の調査で「世界で一番幸福な国」となったデンマーク(これに対して日本は何と90位!)。その介護と福祉の実際について、実例を交えながら、わかりやすくお話ししていただきました。

 「世界一幸福な国」であるために、デンマークの社会サービスは「平等」ではなく「公平」の考え方を取り入れている、ということでした。これは、全員に差別無く同じサービスを提供する「形式的平等」ではなく、一定のレベルの生活の質に対し、不足しているところを必要な分だけを提供してやることで、皆の生活の質が一定のレベルから落ちないように支え合おうとする、「実質的平等」を目指そうというものだそうです。そして、そこが日本の考え方とは異なるのだと強調されていました。IMG_1450.JPG

 いつみ・ラワーセンさん。「平等ではなく公平」の説明に、一同納得。

 

 そのために、所得税は45%?67%、消費税は25%と、デンマークの税率は日本のそれよりかなり高くなっていますが、それが国民の義務であり、国民はそれを果たすことで、国民の権利である生活の保障が約束されている、という国と国民との信頼関係ができているとのことでした。

 また、デンマークの高齢者福祉生活と住まいの変遷について触れられました。従来の「プライエム」という介護提供型の施設では「高齢者は介護を受ける人」と考えられていたのが、1987年に高齢者・障害者住宅法が成立してからは、プライエムの建築は禁止。「プライエボーリ」などの高齢者住宅がこれに取って代わり、高齢者は「自立して生きる人」として、自立支援型の介護観のもと、残っている能力を活かし、自己決定を尊重した、生き生きとした人生継続できるようになったとの説明に、参加者達はうなずいたり、メモを取ったりして聞き入っていました。

 

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ベンツ・ラワーセンさん。デンマークと日本の考え方の違いを解説して下さいました。

 

 なお、日本で言うところの母子手帳には「あなたの子供は、あなたの子供ではない」と書いてあるのだそうです。これは、子供は両親だけの所有物ではなく、国の将来を担う「国家の財産」と位置づけられています。そのため、幼稚園から大学まで学費は無料とのこと。そのほか、「世界一幸福な国」を裏付ける様々な充実した福祉制度などの話題がてんこ盛りで、驚きと感動の連続。あっという間の2時間でした。

 

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熱心な質問が相次ぎ、時間をオーバーしても会場の熱気は冷めませんでした。

 

 いつみ・ラワーセンさんの里帰りの機会に合わせて開かれた研修会とはいえ、遠く離れたデンマークの福祉と介護の現状について、生の情報を拝聴することができた貴重な研修会となりました。

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