協会活動報告

研究発表の手法学びました(ケアプラン部会:その4)

 問題意識(疑問)が明確になったら、次に行うのが「研究課題の明確化」。「日中の傾眠や夜間不眠がある。この利用者の生活リズムが調整できないか」という事例の場合、「なぜ傾眠や不眠になっているのか?」、「傾眠や夜間不眠の時、職員はどんな対応をとってきたのか?」、「どんな対応をとった時には夜よく眠ったのだろう?」、「生活リズムを調整する方法はなにかないか?」など、疑問を突き詰めてくるといろいろな切り口が出てくるので、それを吟味して、問題意識(疑問)の焦点をしぼっていくとのこと。

 そして、「その問題意識(疑問)を経験者や先輩に尋ねたり、文献を調べるなどして考えつくすべての方法で解いてみます」と小野先生。「研究という取り組みはとてもエネルギーがいります。しかし、既になされている研究などでその疑問が解けるなら、それを積極的に使っていけばいいわけです。経験者や先輩に尋ねたり、文献を調べた上で、『それでもうちの施設には合わない、実態に合わない』など、疑問の答が見つからない場合は研究に着手していきます」と続けました。

 なお、文献を調べて検討する目的には(1)研究課題のアイデアを得たり、問題の焦点を絞り込む時の参考にする、(2)先行研究ではすでにどれくらいの知識が集積されているかを確認して、自己の研究課題の意義を明らかにする時の参考にする、(3)先行研究からその課題に取り組むための研究方法についての示唆を得る、(4)他者の研究結果と照らし合わせ、研究結果の解釈を深める・・・の4つがあるとのことでした。

 次のステップは「研究課題の吟味」。その内容は次の通り。

〇研究する価値があるかどうか→実践の向上に役立つか?

〇研究が可能なテーマであるか→観察や測定が可能か?

〇期限内に結果が出せるか→テーマの絞り込み、研究の限界を見通し、次の研究につなげる。

〇費用や設備、物品に問題はないか

〇研究対象や協力者の了解が得られるか→倫理的配慮

 この中で?の「倫理的配慮」については、「今はとても大切になっています」として「研究対象者の権利」として、「危害を加えられない権利」、「全面的な情報開示を受ける権利」、「自己決定の権利」、「プライバシー及び匿名性、秘密が保護される権利」を挙げ、「施設において倫理的配慮の承認が必要です。不備がある場合には研究できないし、発表もできません」と注意を促しました。

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(つづく)

研究発表の手法学びました(ケアプラン部会:その3)

 研究の種類には、一人に対して行ってみて良い結果が得られたものを、他の人にもやってみて良い結果が現れるかどうかを調べていく「介入(実験)研究」、質問紙(アンケート)での調査や面接調査、グループインタビューなどを通じて調べていく「調査研究」、そして特殊と考える事例、あるいは意図を持って試みた事例を詳細に記述説明した上で、その事例の根拠を説明する「事例研究」など、様々な研究方法があり、「得たい結果に基づいて、方法を使い分けることが必要」とのことでした。

 このうち、事例研究について小野美奈子先生は、「実際に経験した事例から、その背景にある普遍的法則を推論するために行われる研究で、その対象が経験していることは何であるかを明らかにすることが大事です。同じような言葉に『事例報告』がありますが、これは事例の経過を振り返り、『こんな事例がこのようになった』と、事実を述べていくもの。これに対して事例研究は研究テーマを設定し、『この事例は一体何だろうか?』と、それに対して生じている現象の意味を調べ、意図的に記述し、研究としての計画的で継続的な方法を用いて報告されるものです」と事例報告との違いを説明しました。

 また、研究対象となる事例については、(1)いまだに文献に報告されていないが、特殊と考えられる珍しい事例、(2)従来から言われている理論を肯定すると考えられる事例、(3)従来から言われている理論を否定すると考えられる事例、(4)新しい看護・介護技術や開発した看護用具の経験事例、(5)実態調査や分析的研究を計画する上で、適切な調査項目を決めるための情報源として選んだ事例・・・などがあるとのこと。これらを踏まえ、研究のプロセスを、「日中の傾眠や夜間不眠がある。この利用者の生活リズムが調整できないか」という事例を用いて学んでいきました。

 研究のプロセスは「1.問題の発見から研究目的の明確化」に始まり、「2.研究計画の立案から実施」を行い、そして「3.抄録、論文の作成」という流れ、まず「1.問題の発見から研究目的の明確化」については、「その後の研究遂行を大きく左右する重要な部分です」とし、「”日中の傾眠や夜間不眠がある。この利用者の生活リズムが調整できないか?”、『どうしたら多職種と協働できるだろうか?”など、『よりよい実践したい!』と思うところから問題意識が生み出されます。問題意識を明確化することが大切で、強い問題意識があれば、後の研究は進んでいきます」とした上で、「問題意識がなく、『1年に1回、何か研究を出さないといけない』だと良い研究は生まれません。”やらされ研究”になってはいませんか?」と会場に問いかけました。

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(つづく)

研究発表の手法学びました(ケアプラン部会:その2)

次に研究の目的については(1)自分の疑問を解決する(自分のため)、(2)研究で得られた成果を実践の向上にいかす(自分の施設のため)、(3)介護、ケアマネジメントの方法論を発展させる(社会の人々のため)・・・の3つがあるとのこと。そして「老人保健施設も、特別養護老人ホームも研究発表大会がありますね。色々な施設が集まって、それぞれが見いだした研究結果を発表する場を設けるのは、皆さんが看護や介護などの実践の向上につながることが最終目的です。そしてそれが社会の人々のためにもなりますから、そこを目指してやっているということを確認し、自信を持って研究に取り組んで欲しいと思います。自分でつかんだものを他者に広げるために、発表会の場で研究を報告していくのはとても大切です」と研究の重要性を強調しました。

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(※)今年度は以下の日程で老健関係の研究発表大会が開催されます。いずれの大会も演題登録はこれからですので、各会員施設の皆様におかれましては、現在既に研究を進めている方もおられるかと思いますが、より多くの研究発表につながるよう、今から取り組まれた上で、その研究の成果をそれぞれの大会の場でご報告下さいますようお願いいたします。

老健関係の今年度の研究発表大会の予定】

16回九州ブロック介護老人保健施設大会in大分(平成27716日から17日、別府市ビーコンプラザ他)http://oita-roken.com/oshirase_kyushu-taikai.html

 

26回全国介護老人保健施設大会神奈川in横浜(平成2792日から94日、パシフィコ横浜)http://www.roken2015-kanagawa.jp/

 

◎第12回公益社団法人宮崎県老人保健施設協会研究大会(平成27117日、宮崎観光ホテル)

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 続いて、「専門職はなぜ研究をしなければならないか?」ということについて、研究を行い、結果を他者に示すことにより、(1)仕事の成果を見せる、(2)仕事の根拠を見せる、(3)行った仕事の価値を明らかにする、(4)根拠に基づく仕事の見直しと改善ができる、(5)専門職としての社会的な価値を示すことができる・・・の5つがあることを学びました。

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(つづく)

研究発表の手法学びました(ケアプラン部会:その1)

(公社)宮崎県老人保健施設協会高齢者ケアプラン研究部会は平成27131日(土)、宮崎市のJA  AZM別館研修会を開きました。58人が受講し、事例研究発表のまとめ方を学びました。

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 今回の研修会には、会員老健施設からの参加者28人に対し、特養やグループホーム、デイサービス関係者など、老健以外からの参加が23人あり、様々な施設においてそれぞれ問題を抱え、それを解決しようと日々試行錯誤を繰り返し、それを研究・発表につなげようとしている事が伺えました。開会にあたり、同部会の原貴子副委員長は「高齢者ケアプラン研究部会では、ケアプランに特化した研修会を例年は開いています。今回各施設のリーダー的な役割をされている方達を対象に研修会を開くに当たり、それぞれの現場で問題解決や事例研究に取り組まれ、『研究発表のやり方を学びたい』という声もありましたので、今年はいつもと趣向を変えた内容を企画しました。今日の研修が皆さんにとって有意義なものになる事を期待しています」と挨拶しました。

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(↑挨拶に立った原 貴子副委員長)

講師には宮崎県立看護大学看護研究・研修センター長で地域看護学教授の小野美奈子先生をお招きしました。小野先生は「私も特別養護老人ホームや老健施設の皆さんと高齢者の支援をどうしていけばいいのかということについて一緒に学習させていただきてきました。その中で自分たちの事例を見直したり、介護や看護、ケアマネジメントの評価をしていくことによって、ケアが良くなっていったという経験もしてきました。今日は皆さんと一緒に学習できることを楽しみにしています」と挨拶し、講演が始まりました。

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(↑宮崎県立看護大学の小野美奈子先生)

「『研究』というとハードルが高いと思われがちですが、研究とは『実践の中で、疑問に感じたことから問題(課題)を焦点化して、科学的な方法を用いて探求すること』です。皆さんも”なぜケアがうまくいかなかったのか?”、”なぜうまくいったのか?””あの人でうまくいったが、他の人でもこのケアでいいのか?”などといった疑問が仕事をしている間にわいているのではなないかと思います。それを解き明かすのが研究です」と、小野先生は、「研究」が特別なことでなく、その題材は日々の仕事の中にあり、そこから研究につながることを示しました。

また、「科学的な方法」に関しては、「例えば『今日の私の話でみなさんの疑問が解けただろうか?』というとき、アンケートをとります。”わかりましたか?”、”満足しましたか?”などと尋ねて、50人いたとしてその中で45人が”わかった”にまるをつけたら『私の話は良かった』と思います。しかし、15人しか”わかった”と答えず、35人が”あまりわからなかった”だったら『失敗だった』と思います。このように割合を出すのも科学的な方法の一つで、主観的でなく客観的に誰が見ても”そうだ”と判断できるような方法で探求していくことが研究です」とのことでした。

(つづく)

認知症者権利擁護研修会開きます(看・介部会)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会看護・介護研究部会は37日(土)1330分から、宮崎市のJAアズム別館302号室で「認知症の方の権利擁護」研修会を開きます(1530分まで)。

 この研修会では講師に「特別養護老人ホームしらふじ」の浜砂貴美子施設長を招き、認知症高齢者のケアに関わる中で、専門職として基本となる尊厳のあり方や、高齢者虐待などについて学んでいきます。

 参加費として老健職員は一人500円が必要ですが、それ以外の方は無料で受講できます。詳しくはこちらをご覧の上、介護老人保健施設サンフローラみやざき(担当:上村久美子、TEL0985-75-2020)までお申し込み下さい。なお、申し込み締め切りは224日(火)となっています。多数の参加をお待ちしております。

研修会開きました(リハ部会:その10)

 櫛橋弘喜先生の講演、最期に「2025年の介護老人保健施設」というテーマで話がありました。これからの介護老人保健施設は(1)在宅ケア支援施設(在宅限界への挑戦)、(2)地域支援(24時間対応相談・訪問・入所)、(3)生活機能向上を目指した短期期間の入所、(4)在宅生活支援のための緊急入所、(5)質の高いリハビリ提供、(6)(入所・訪問・通所・相談)・・・の6項目をスライドに示した上で、(2)地域支援に関し、「24時間対応。これができるかどうかが大事です。他の施設では在宅ケア支援の中核的施設になれません。できるのは老健だけです」と述べ、「在宅支援型老人保健施設」として機能を発揮することの必要性を説きました。

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 一方、現状の問題として(?)夜間や休日などの身体状況の変化への不安に対し、医療や介護の内容に関係なく一体的に相談できる窓口がなく、在宅で療養されている要介護者や家族の不安を解消する必要がある、(?)平日の昼間でも、医療や介護の内容により相談窓口がバラバラで利用者にわかりづらいため、在宅療養時における悩み等の相談窓口を明確にする必要がある・・・の2点を挙げました。

 これらを踏まえ、櫛橋先生は「『在宅総合ケア支援センター』というものを老健に設けてみてはどうかと思います。これは医療、介護の不安に対応する相談機能をはじめ、福祉用具・住宅改修などのテクノエイド、訪問・通所・入所の直接サービス、適切なサービスへのトリアージ、そして住民への啓発・研修などの地域支援などを一体的に行う24時間対応のワンストップサービスです」と述べ、スクリーンに「在宅総合ケア支援センター(Total
Care Assistance Station
T-CAS)」の文字を浮かび上がらせると参加者は高い関心を示しました。

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 そして「老健の有する専門性や施設などを活用し、地域包括ケアシステムが目指す『住民が住み慣れた地域で、安全かつ安心して暮らし続けることができる』ようになる環境をするため、老健にT-CASの設置を」と提唱し、講演を締めくくると、会場からは感謝の拍手がおくられました。

 来年度の介護報酬改定を目前に控え、また来るべき2025年に向けての舵取りが進む中で、在宅復帰支援、および在宅生活支援をより一層推し進め、地域包括ケアの拠点として介護老人保健施設がその機能を発揮していくために、一人一人がどう考え、どう行動すればよいか・・・。参加した60人にとって、学びの多い研修会となりました。

(終わり)

研修会開きました(リハ部会:その9)

 110回社会保障審議会介護給付費分科会(平成261015日)で出された平成27年度介護報酬改定に向けた基本的な視点として、次の3つを学びました

〈第1の視点〉地域包括ケアシステムの構築に向けた、在宅中等度者や認知症高齢者への対応の更なる強化。

〈第2の視点〉介護人材確保対策の推進

〈第3の視点〉サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築

 

 続いて櫛橋弘喜先生は「地域包括ケアの拠点となるため 強化型老健を目指して」というスライドを示し、「従来型老健の流れというのは『特養待ち』。在宅や病院から入所すると、行くのは特別養護老人ホームで長期入所となり、通所リハはレスパイト。また長期入所の結果としての看取り、という流れです」と説明。それに対して在宅強化型老健の利用者は、入所はもとより、訪問リハや短期入所、通所リハ、在宅サービスなどとの連携を密にしながら在宅生活を支援し、それらをリピートしていきながら看取りも行う、という流れを学びました。またその中でインフォーマルサービスや地域住民などとの関係も重要とのことでした。

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 この事を踏まえて、老健が地域包括ケアの拠点になるためには「1.自施設へのアプローチ、2.在宅復帰機能の強化、3.在宅支援機能の強化、4.医療機関との連携、5.居宅介護支援事業所との連携、6.かかりつけ医や他のサービスとの連携、7.地域住民との連携・・・の7つのアプローチが必要」とし、それぞれについての説明がありました。

【アプローチ1.:自施設へのアプローチ】

〇施設機能強化・・・(1)地域包括ケアの拠点に向けた施設理念の再考と施設長や理事長の使命感、(2)理念を支える経営基盤、(3)職員の理解、知識、技術の向上、(4)職員配置、システムの見直し、(5)職員の連携

【アプローチ2.:在宅復帰機能の強化】

(1)在宅復帰に向けた流れ(パスの作成)、(2)在宅イメージの共有(ホームエバー)、(3)外泊支援と家族へのアプローチ、(4)入所前、退所前、退所後訪問の充実、(5)居宅介護支援事業所との連携(担当者会議)、(6)在宅サービスの理解と連携、(7)テクニカルエイドサービスの強化

【アプローチ3.:在宅支援機能の強化】

(1)通所リハビリテーションの充実、(2)短期療養介護充実、(3)訪問リハビリテーションの充実、(4)看取り機能の充実

【アプローチ4.:医療機関との連携】

(1)医療機関への啓発・営業、(2)退院前カンファレンスへの積極的参加、(3)医療機関主催の連携会議等への積極的参加、(4)地域連携診療計画管理料合同会議への参加

【アプローチ5.:居宅介護支援事業所との連携】

(1)居宅介護支援事業所への啓発・営業、(2)居宅への説明会の開催、(3)担当者会議への出席、(4)担当者会議の施設内環境の提供、(5)通所リハ、訪問リハとの連携強化

【アプローチ6.:かかりつけ医や他のサービスとの連携】

(1)退所後の情報提供、(2)老健在宅サービスの啓発、(3)担当者会議の案内、(4)通所リハ、訪問リハとの連携強化

【アプローチ7.】地域住民との連携

(1)健康教室、セミナー等の連携強化、(2)ボランティア受け入れ、(3)地域の介護予防教室等への支援

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その8)

リハビリテーション研究部会が117日に開いた第2回研修会の「講演2」。「老健施設の将来のあり方」と題した、介護老人保健施設ひむか苑の施設長で医師の櫛橋弘喜先生による講演は、「老健の潮流」の内容に入りました。

スライドには「退所時関連加算の変化」を提示。平成24年度の改定で設けられた、入所前に入所者の自宅等を訪問し、退所を念頭においた施設サービス計画などを策定する入所前後訪問指導加算や、在宅強化型基本サービス費などに触れながら、「国は在宅復帰に本腰を入れてやりだしたのですが、それに気づいていない経営者が多い」と指摘。また、できる限り住み慣れた地域や故郷での在宅生活が続けられる事を目指す地域包括ケアシステムにについて、「これをやらなければ介護保険は崩壊します」と警鐘を鳴らした上で、「介護保険施設類型の再編では、施設の類型よりも機能が重視されるようになります。リハビリテーションが重点配備されていない『介護保健施設』は、『ケアが組み合わされた集合住宅』と位置づけられ、医療・看護・介護サービスは外部事業者からの外付けとなります」と、老健の本来の機能であるリハビリテーションを通じた在宅復帰支援、在宅生活支援を発揮していくことが、地域包括ケアシステムの成否、そして介護老人保健施設の存立意義を握っていると強調しました。

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 そして「サービスの質の評価に基づいた介護報酬体系が構築されます。『保護型介護』から脱却し、『自立支援型介護』、『予防型介護』という視点に立って『ケアの標準化』をはからなければなりません。その中でリハビリは『どれだけの目標を持ってやったか?』が問われます。目標をきちっと持って計画し、それに取り組んだかどうか?それをやっていないとだめです」と参加者に訴えました。

 さらに、入所、短期入所、通所、訪問のそれぞれにおいて新設あるいは見直された、主な加算項目を示しながら「2025年の地域包括ケアの時代において期待される期待される介護保険施設の方向へ、介護老人保健施設の報酬は舵(かじ)は切られました。賽(さい)は振られました。老健の機能はきちっと評価されます。そして『やっていないところは切り捨てる』と国は言っています」と声を大にしました。

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その7)

 続いて強化型老人保健施設の現状について学びました。平成24年度の改定以降、在宅強化型の要件を満たす施設は増加し、昨年6月の時点で全体の8.7パーセントにあたる174施設が強化型を算定(宮崎県内では5施設)。加算型(16.9パーセント)と合わせると全体の4分の1で、残りは通常型(従来型)にとどまっている現状に触れ、櫛橋先生は「強化型をやらないのか?やれないのか?老健で働いている職員が、「何のために仕事をしているのか?」と考えたなら、強化型をやるべきです。自分がやっている仕事に対する誇り、そして『地域のためにやっているのだ!』という答えが持てるように」と、強化型老人保健施設として利用者の在宅復帰に施設を上げて取り組んでいくことが、職員の士気の向上にもつながることに言及しました。

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 そして、強化型と加算型、通常型の老健を比較した場合、(1)いずれも入所者の要介護度に大きな差は見られない、(2)入所時にアセスメントを積極的に行い、利用者と退所時期についての相談を積極的に行う施設は、在宅復帰率が高い施設が多い、(3)リハビリテーション専門職を多く配置している施設は、在宅復帰率が高い施設が多い、(4)一人当たり居宅サービス費用が低い地域においては、在宅復帰率が低い施設が多い、(5)在宅強化型老健は、同一・関連法人で、訪問リハ等の訪問サービスを運営する施設が多い、在宅復帰率の高い施設は、ベッド稼働率が低い施設が多い・・・などの相違があることを踏まえ、「”在宅のインフラ”をしっかりしていないと家には帰せません。在宅関係を備えているところは復帰率が高くなっていますが、老健は在宅系のサービスを全部作るべきだと思います。その中で、デイサービスとデイケアは根本的に違うということを理解する必要があります。デイサービスはあくまでもレスパイト。デイケア(通所リハビリテーション)はそれではだめで、利用者の落ちていく機能を上げてからデイサービスに戻したり、必要に応じて入所させて短期集中リハビリテーションを行った上でデイサービスに帰してやる、といった具合にやらないといけません」と、施設サービスと在宅サービス両方を充実するとともに、それぞれの連携を強化させて、利用者の在宅復帰・在宅支援をしていく必要性を訴えました。

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その6)

 介護老人保健施設の現状については、次のようなことを学びました。

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(1)全国の老健は平成25年現在3994施設、利用者数は348千人

(2)要介護4および5の入所者割合は増加傾向にある

(3)平成22年度の退所者の状況を見ると、医療機関への入院が48.9パーセントと最も多く、家庭への復帰は23.8パーセントにとどまっている(※1

(4)退所後の行き先の推移をみると、平成199月の時点において、医療機関45.3パーセント、家庭31.0パーセントだったのに対し、平成229月では医療機関が48.9パーセントに増加する一方で、家庭への復帰が23.8パーセントと減少している(※2

(5)老健施設の在所日数の中央値は全体で358日。中央値が2年以上の施設は1割程度(※3

(6)定員に占める退所者の状況をみると、「退所した者の施設定員に占める割合が、一月あたり10パーセント未満」である施設が約7割を占めていた(※3

(7)定員に占める自宅復帰の状況をみると、「自宅へ退所した者の施設定員に占める割合が、一月あたり3パーセント未満」である施設が約8割を占めた(※3

(8)「退所者に占める自宅への退所者の割合」が30パーセント以上50パーセント未満の施設は全体の16パーセント、50パーセント以上の施設は8パーセントを占めた。一方、「自宅への退所者が0人」の施設は全体の19パーセントを占めた(※3

〈※1〉出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成22年度)

〈※2〉出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成19年度、平成22年度)

〈※3〉出典:「介護サービス情報公開制度」(平成21年度)より老人保健課調べ

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 以上を踏まえ、櫛橋先生は「問題は在宅復帰率」と断言。「在宅復帰率の格差が激しい。つまり在宅復帰に向けて一生懸命やっているところと、そうじゃないところがあるのが現状です。経営者が老健の存在意義をどう考えるかが問われており、『地域のための老健』という理念をもってやっていかなければなりません」と、施設を上げて入所者の在宅復帰を支援するために、トップの意識改革が必要だと訴えました。

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(つづく)

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