協会活動報告

文武両道

3月もあとわずかという頃、宮崎県にとって嬉しいニュースが宮崎日日新聞に続きました。

 まずは24日(火)。中学軟式野球全日本春季大会で門川中が初優勝!しかも全試合、計5試合35イニングを無失点で全国の頂点に立つというのは史上初の快挙とのこと!!特に決勝戦は4回にあげた貴重な1点を守りきっての勝利。プレッシャーのかかる中、鉄壁の守備力を発揮できたのは、やはり日頃からの練習とチームワークが生んだたまものだと思います。今後の更なる活躍を期待せずにはいられません。

 感動の余韻が冷め止まぬ翌日25日(水)。今度は宮崎市出身で東京都在住の漫画家、東村アキコさんが「マンガ大賞2015」を受賞!!これは全国の書店員やマンガファンなどが昨年1年間で最も薦めたい作品を投票で選ぶもので、主人公が本県などを舞台に努力を重ね、漫画家へと羽ばたいていく「かくかくしかじか」がこれまた全国の頂点に立ちました。これまた快挙です!!同賞受賞作の中には、映画化されたものもあるとのことで、もし「かくかくしかじか」が自然豊かな宮崎県をロケ地として撮影、そして上演されるようになったら、これはもう観るしかない!!と、今からワクワクしているところです。

 そしてまたその興奮が冷め止まぬ27日(金)。ボクシングの全国高校選抜大会でのビッグニュースが掲載されていました。出場した日章学園の選手がなんとなんと3階級でチャンピオンの座に輝きました!!1大会で3人というのは、県勢初の快挙とのこと。また全部で5階級に出場した同校、他の2選手も3位と、全員入賞という高い総合力が示され、夏の高校総体団体戦で「20年ぶりの日本一にも期待が高まる」という記事にも、諸手を挙げて共感してしまいました。

 そんなこんなで文武の両方で朗報に湧いた3月下旬の宮崎県。南国の太陽もその栄誉を祝するとともに、今後各方面での活躍にエールを送ってくれているようです。

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  私も県民の一人として応援し、そして更なる歴史的快挙を、利用者の皆様と共に見届けたい、そう思った嬉しいニュースでした。

H27事業計画・収支予算書アップしました

 「情報公開」のページに当協会の平成27年度事業計画および収支予算書(PDF形式)を下記の通りをアップしました。こちらからアクセスしてご覧ください。

 

 

(1)平成27年度事業計画:ファイル名「H27Zigyoukeikaku.pdf」、ファイルサイズ:123KB

(2)平成27年度収支予算書:ファイル名「H27Syuusiyosannsyo.pdf」、ファイルサイズ:60KB


以 上

アンケート結果報告アップしました(在宅支援部会)

 「平成26年度在宅復帰等に関するアンケート集計結果報告」を下記の通りアップしました。

 このアンケートは330日付け当協会ホームページブログでも紹介した通り、県内会員老人保健施設(44施設)対象に実施したもので、各施設における平成261月から12月にかけての(1)退所先の状況、(2)延べ人数、(3)入所者数、(4)要介護度別の人数、(5)71看護体制医療機関からの入所人数」をなどについて調査、集計、回答を依頼したものを、同部会でとりまとめたものです。

 こちらから閲覧・ダウンロードしていただき、ご活用下さりますようお願いいたします。

 

 

(1)アップロードした内容:「平成26年度在宅復帰等に関するアンケート集計結果報告」

(2)ファイル名、サイズ:H26Zaitakusienbukaianke-tosyuukeikekka.pdf6.08MB

(3)閲覧・ダウンロード:当協会ホームページ「協会情報公開(http://www.miyazaki-roken.jp/joho/index.html)」からお進みいただくか、直接こちらから閲覧・ダウンロードして下さい。

(4)掲載した内容は、去る320日、宮崎市中央公民館中研修室で開いた研修会で配布した資料に一部手直しを加えたものですが、調査結果およびその元となるデータについては、一切加除修正をしておりませんので申し添えます。

(5)このアンケート集計結果報告に関するお問い合わせ等は介護老人保健施設サンヒルきよたけ、支援相談員黒木勝久(電話:0985-84-0333)までお願いいたします。

アンケート結果報告しました(在宅支援部会)

(公社)宮崎県老人保健施設協会在宅支援研究部会は320日、宮崎市中央公民館中研修室で研修会を開き、アンケート調査の結果報告を行いました。会員老健施設などから48人が参加しました。

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このアンケートは県内に44ある介護老人保健施設を対象に実施し、平成2310月分から継続調査しているもの。今回は各施設における平成261月から12月にかけての(1)退所先の状況、(2)延べ人数、(3)入所者数、(4)要介護度別の人数・・・という従来までの項目に、新たに(5)71看護体制医療機関からの入所人数」を追加した5項目について調査、集計、回答を依頼したもの(調査期間:平成27121日から228日にかけて)。43施設(97.7%)から回答があり、うち有効回答は40施設(90.9%)でした。

この日の研修会では、各施設からの回答をもとに同部会で集計、分析した結果を、サンヒルきよたけの支援相談員で、同部会の黒木勝久副委員長が報告しました。

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調査の概要および県内会員施設における加算算定達成状況を踏まえ、

 

〇要件達成施設数と在宅復帰率

〇加算算定施設数とベッド回転率/利用率/平均要介護度    

〇重度者要件(予測値)の推移

〇要件達成施設数と入院退所率

〇利用率とベッド回転率

〇入院退所率と在宅復帰率

〇介護保険施設への退所割合と平均要介護度

〇平均要介護度と死亡退所率

〇退所先別の各月平均

〇在宅復帰率と加算算定施設数/強化型算定施設数

〇在宅復帰要件と退所別人数

 

などの各項目について、スライドを用いて説明がありました。

また全国調査と比較した課題として、(1)在宅復帰に取り組んでいる施設は、短期入所・通所リハビリ・訪問リハビリの利用が多い、(2)在宅復帰に取り組んでいる施設は、セラピストの配置が厚い、(3)在宅復帰に取り組む施設は、軽度者が多いとは限らない・・・などを示しました。

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まとめとして黒木副委員長は、(a)量的調査を用いることで、県内施設の動向を明らかにし、理論検証に役立った、(b)調査結果の活用を考える必要がある、(c)成功事例の収集を含めた質的調査の導入が求められるが、調査協力の負担と当部会の分析能力が課題・・・の3点を挙げました。

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参加者は、それぞれの施設における取り組み状況を振り返りながら、この日の報告内容を自施設での今後の事業展開に活用しようと、真剣に聞き入っていました。005IMG_9953.JPG

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その10)

浜砂貴美子先生は認知症の症状として記憶障害や見当識障害、実行機能、そして理解力・判断力の障害などの「中核症状」と、不安・焦燥やうつ状態、幻覚・妄想、徘徊、興奮・暴力、不潔行為などの「行動・心理症状(BPSDBehavioral and
Psychological Symptoms of Dementia
)」があり、中核症状は「程度の差はあるものの認知症の人には誰にでも出現します」と説明。一方、行動・心理症状は「出現する人と、出現しない人がいます」述べ、その背景にはその人の性格や素質に加え、その人を取り巻く環境や心理状態があることを指摘しました。

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 そして、

(1)認知症の人に対するケアが不適切だと、行動・心理症状がひどくなる

(2)(1)が介護者の負担感や不安感、不快感、そしていらつきや不満、ストレスを増強させる

(3)(2)が引き金となって不適切なケアに拍車がかかる

(4)(3)によって認知症者の中核症状、行動・心理症状がさらにひどくなる

(5)再び(1)に戻り、(2)(3)(4)(1)(2)(3)(4)・・・と繰り返される

 という内容の「認知症の人と介護者間に起こる悪循環」というスライドを示しながら、認知症を正しく理解してケアにあたらなければ、認知症の人と介護者双方にとって悪影響が及び続けることを指摘。その上で「悪循環を断ち切るのは認知症の人ではなく介護者側です」と受講者に訴えかけました。

 そして「行動・心理症状は利用者本人のSOSのサインです。困っている人、辛い思いをしてる人は利用者本人です」として、その対応として(a)表面に出現している現象だけに気を取られ、そのことを封じ込めようとすると、ますます混乱状態に陥らせる、(b)行動・心理症状には必ず原因がある。その原因を探し、取り除くあるいは緩和させる関わり方が重要、(c)行動・心理症状の緩和の手がかりをさがし、ていねいに分析し、ケアに結びつける・・・という3つのポイントをあげました。また行動・心理症状の発生要因はひとりひとり異なることから、各々の症状について、発生の時間や頻度、状況、その場にいた人などを把握、分析したり、過去とどのようなつながりがあるか、一連の流れとしてみるとともに、それぞれの発生要因の目的や原因、理由などを、利用者ごとに考えていくことが大切だと指摘しました。

 最後に虐待をしない基本的考え方として、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.なぜそのような行動を起こすのか、理由や原因を徹底的に探り、その原因を取り除くケアを行う。必ず本人なりの理由がある

2.人間の基本的日常生活である「食べる」「排泄する」「起きる」「清潔にする」「活動をする」を、その人に合った方法でケアを徹底する

3.身(心)体拘束廃止が最終目的ではない。その人に適したより良いケアの始まり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 の3つをスライドに示し、「虐待や身体拘束は『人権侵害』です。身(心)体拘束するのも『わたし』、そして身(心)体拘束ゼロをめざすのも『わたし』です」と、「虐待ゼロを目指すケア」を老健や特養、グループホームなどで生活する利用者に提供するためには、関わる者の価値観が問われることを強調して講演を締めくくった浜砂先生に、受講者からは感謝の拍手がおくられました。

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(終わり)

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その9)

 このように、高齢者虐待や不適切なケアの防止策について学習したのに続き、社会福祉法人凌雲堂特別養護老人ホームしらふじの施設長、浜砂貴美子先生は、虐待を受けやすい高齢者の特徴として、次の6点などがあることをスライドに示しました。

 

【虐待を受けやすい高齢者の特徴】

1.認知症による言動の混乱がある(周辺症状が顕著) 

2.自傷他害の恐れがある

3.身体的自立度が低い

4.排泄介助の困難

5.治療器具を使っている

6.性格  ・・・等

 

 そしてこの中で特に認知症高齢者が虐待を受けやすい点について言及。認知症とは「一度獲得した知的機能全般が、脳の病気などによって障害され、日常生活に支障をきたしている状態。認知症は通常、慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、理解、計算、学習、言語、判断などの多数の高次脳機能の障害からなる症候群」ということをおさらいした上で、浜砂先生は自施設で実際に取り組んだ事例を紹介しました。

不安や混乱を来していた認知症の利用者に対し、認知症のためのアセスメントツール「D-4シート」を活用して不安や混乱、気分の変化の様子、そしてスタッフの関わり方とその時のケア内容などを記録、分析。これに基づきケアのあり方を見直し、落ち着かないときは「私はここにいますよ」と声掛けをしたり、落ち着いている時でも一言二言の何気ない会話をこまめに行うといった「先取りケア」を実践した結果、その利用者が安心して穏やかに過ごせるようになったことが紹介されると、受講者は高い関心を示しながら聞き入っていました。

そんな受講者を見渡しながら浜砂先生は、「今の事例は全ての人に通用する者ではありません。その人その人をよく観察し、正しく評価した上でその人に合ったケアの質を高めていかなければなりません」と、個別ケアの質が大事だと訴えました。

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(つづく)

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その8)

「高齢者虐待や不適切なケアには背景となる要因が必ずあります」と語調を強めた浜砂貴美子先生。その要因を捉えるポイントとして、(1)組織運営は健全か?(2)負担・ストレスや組織風土の問題はないか?(3)チームアプローチは機能しているか?(4)倫理観を持ち、コンプライアンス(法令遵守)を考えているか?・・・の4点を示しました。そしてこれらが直接的に虐待を生み出さなくとも、放置されることでその温床となることや、背景要因は相互に関連していることが多いことなどを指摘しました。

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これを踏まえて、高齢者虐待や不適切なケアの防止策として、「1.組織運営の健全化」、「2.負担やストレス、組織風土の改善」、「3.チームアプローチの充実」、「4.倫理観とコンプライアンスを高める教育の充実」、「5.ケアの質の向上」の5つを挙げ、それぞれについて次のように説明しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.組織運営の健全化】

〇《「理念とその共有」の問題への対策》

・介護の理念や組織運営の方針を明確にする

・理念や方針を職員間で共有する

・理念や方針実現への具体的な指針を提示する

〇《「組織体制」の問題の対策》

・職責、職種による責任・役割を明確にする

・必要な組織を設置する

・職員教育の体制を整える

〇《「運営姿勢」の問題への対策》

・第三者の目を入れ、開かれた組織にする

・利用者、家族との情報共有に努める

・業務の目的や構造、具体的な流れを見直してみる

2.負担やストレス、組織風土の改善】

〇《「負担の多さ」の問題への対策》

・柔軟な人員配置をする

・効率優先や一斉介助、流れ作業を見直し、個別ケアを推進する

・最も負担の高まる夜勤時に特段の配慮を行う

〇《「ストレス」の問題への対策》

・職員のストレスを把握する

・上司や先輩が積極的に声をかけ、悩みを聞く

〇《「組織風土」の問題への対策》

・組織的な対策に一つずつ丁寧に取り組んで行く

・取り組みの過程を職員間で共有する

・負担の多さやストレスへの対策を十分に図る

3.チームアプローチの充実】

《「役割や仕事の範囲」の問題への対策》

・関係する職員がどの様な役割をもつべきかを明確にする

・リーダーの役割を明確にする

・チームとして動く範囲を確認する

《「職員間の連携」の問題への対策》

・情報を共有するための仕組みや手順を明確に定める

・チームで意思決定の仕組みや手順を明確に定める

・より良いケアを提供するためには、立場をこえて協力することが必要不可欠であることを確認する

4.倫理観とコンプライアンスを高める教育の実施】

《「非利用者本位」の問題への対策》

・介護サービスにおける「利用者本位」という大原則をもう一度確認する

・実際に提供しているケアの内容や方法が「利用者本位」に基づいているものであるかチェックする

《「意識不足」の問題への対策》

・基本的な職業倫理、専門性の関する学習を徹底する

・目指すべき介護の理念をつくり共有する

《「待・身体拘束に関する知識」の問題への対策》

・関連する法律や規定の内容を知識として学ぶ

・身体拘束を行わないケアや虐待を未然に防ぐ方法を具体的に学ぶ。覚えるよりも考える学習

5.ケアの質の向上】

《「認知症ケア」への問題への対策》

・認知症という病気やその心理について正確に理解する

・認知症に伴う行動心理症状には、本人なりの理由があるという姿勢で原因を探っていく

《「アセスメントと個別ケア」の問題への対策》

・利用者の心身の状態を丁寧にアセスメントすることがスタート

・アセスメントに基づいて個別のケアに応じたケアを検討する

《「ケアの質を高める教育」の問題への対策》

・認知症ケアに関する知識を共有する

・アセスメントとその活用方法を具体的に学ぶ(OJTの方法を工夫し、実践の中で学ぶ)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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(つづく)

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その7)

 平成113月に定められた厚生省(現厚生労働省)令における身体拘束禁止規定は、平成184月に制定の高齢者虐待防止法となり、養護者による高齢者虐待、そして養介護施設従業員等による高齢者虐待が禁止され、発見した場合の市町村への通報が義務づけられました。浜砂貴美子先生は高齢者虐待の内容として「身体的虐待」、「介護・世話の放棄・放任」、「心理的虐待」、「性的虐待」、「経済的虐待」があることを説明しました。

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 その中で、「介護の現場で、利用者に対してついつい命令口調で話したり、子供扱いをしたり、無視や気がつかないふりをしたりしますが、これらは心理的虐待です。これは特に認知症の人にとって認知症を悪化させる要因になります。ここからPTSDが出て来ます」と日々の利用者に対する言動が、知らず知らずのうちに不適切なケア、そして虐待につながりかねない危険性をはらんでいる事を指摘しました。

 そして、「不適切なケア」を底辺部、「顕在化した虐待」を頂点部とし、その中間部が意図的虐待と非意図的虐待が混在する「グレーゾーン」で構成される正三角形となっている「『不適切なケア』を底辺とする『高齢者虐待』の概念図」をスライドに示し、「グレーゾーンの内容は施設によって違ってくるはずです。例えばセンサーマットなどはグレーゾーンに入るもので、ナースコール代わりに使っている利用者もいるし、『いやだ』と思ってマットを飛び越えて転んでしまう人もいます。本人のために必要かどうかというアセスメントが不可欠で、本人の意向に沿わないケアが常態化し、当たり前になってそれをずっと続けていると虐待になってしまいます。『自分だったらこのケアをされたらどうだろうか?』と考える事で、不適切なケアや虐待に近い行為は減っていくと思います」とし、受講者にそれぞれのケアの現場を振り返るよう促しました。

 これらを踏まえて浜砂先生は、高齢者虐待や不適切なケアの背景となる要因を捉えるポイントとして、(1)組織運営は健全か?(2)負担・ストレスや組織風土の問題はないか?(3)チームアプローチは機能しているか?(4)倫理観を持ち、コンプライアンス(法令遵守)を考えているか?(5)ケアの質は保たれているか?・・・の5つを挙げました。そしてこれらが、(a)直接的に虐待を生み出さなくとも、放置されることでその温床となり、虐待の発生を助長する、(b)「不適切なケア」の背景要因としても捉えられる、(c)背景要因は相互に関連していることが多い・・・とし、高齢者虐待や不適切なケアを防止するにはどうするべきか?という説明を始めました。

(つづく)

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その6)

 「もしみなさんが認知症のため判断力がなくなったり、低減したりして、自分の利益を自分で守れなくなってしまったら、みなさんの人権や生命、そして財産はだれが守ってくれるのでしょうか?」と受講者に問いかけた社会福祉法人凌雲堂特別養護老人ホームしらふじの施設長、浜砂貴美子先生。そのために権利擁護の仕組みがあるとして説明をはじめました。

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 権利擁護とは「認知症高齢者や知的障害・精神障害により、自分の利益を自分の力で守れなくなってしまった人のために、人権をはじめとした様々な権利を保護したり、本人に代わってその財産を適切に管理したりすること。つまり個人がひとりの人として尊厳をもって生きていくことを生活上の重要な場面で支援すること」。そして支援するための仕組みとして(1)日常生活自立支援事業、(2)成年後見制度、(3)虐待防止事業・・・の3つがあることを学びました。

 このうち虐待防止事業については、「高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律(平成184月)」を示し、「虐待防止は法律です。努力目標ではありません。また養介護施設従事者による高齢者虐待に係る通報が定められていますが、これは従事者などによる虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、市町村に通報しなければなりません。『通報した方がいい』ではありません」と述べ、同法が高齢者の生命を守るだけでなく、個人として尊重や幸福追求権の保障をも視野に入れた人権救済や保護を目指していることを強調しました。

 続いて、老健や特養、グループホーム等の施設を対象に平成11年規定された身体拘束禁止について、対象となる11項目(※)を示した後、「魔の3ロック」として縛ったり押し込めたりする”フィジカルロック”、薬でおとなしくさせる”ドラッグロック”、強い口調で心身の動きを封じる”スピーチロック”を上げ、それらが認知症を悪化させることを指摘し、施設の運営規定に身体拘束廃止を明記するとともに、それを実践することの重要性を訴えました。

【※身体拘束の対象となる11項目】

(1)徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひもなどでしばる

(2)転落しないようにベッドに体幹や四肢をひも等でしばる

(3)自分で降りられないように、ベッドを柵(サークル)などで囲む

(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように四肢をひもなどでしばる

(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋などをつける

(6)車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がらないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける

(7)立ち上がる能力のある人の立ち上がるを妨げるような椅子を使用する

(8)脱衣やおむつ外しを制限するためにつなぎ服を着せる

(9)他人への迷惑行為を防ぐためにベッドなどに体幹や四肢をひもでしばる

(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に飲ませる

(11)自分の意思で開けることができない部屋に隔離する

(つづく)

認知症の方の権利擁護学びました(看護・介護部会:その5)

「認知力が低下してくると、判断力も低下します。自分がどうすればいいか、声をかけてもらわないとわからなくなってしまいます。それなのに、『どうせわからないのだから』と、声をかけずに車椅子に乗せてご飯やお風呂に連れて行ったりしていては、利用者は自己選択ができません。自己選択ができるような支援をするために、本人に尋ねて下さい。例えば食事の場合、『ごはんに行きましょう』ではなく、『行きますか?』と聞いて、『はい』ならそういう意思決定がなされたということです。『いや』だったら、『なぜ今はいやなのか?調子が悪いのか?後で食べたいのか?何か理由があるのか?どこで、だれと、何を食べたいか?』というように、『いや』という意思表示に対して私たちが考えて、そしてまた問いかけることが重要です。10人利用者がいれば、10人ともその決定のしかたは違います。だから、一人一人声のかけ方も、確認していく過程も違います。それが現場で自己選択、自己決定を支援するということであり、このことが人権を尊重するということです」と、利用者の自己選択・自己決定が不可欠で、そのために利用者に尋ねることが重要であることを説明した浜砂貴美子先生。これにつづき、受講者に個人ワークの時間を与えました。

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(↑自らの利用者への接し方を振り返った個人ワーク)

この個人ワークは、利用者が日常生活の中で選択できることがいくつあるかを考え、日々のケアを提供しているとき、自己選択できる声掛けをしているかどうかを振り返ろうというもの。受講者は食事や排泄、入浴、そして更衣、整容などといった生活の各場面で、利用者に声掛けし、尋ねているか、自らの言動を省みながら、真剣に取り組んでいました。そしてその結果を浜砂先生が尋ねる中で、受講者からは、「今まで利用者への尋ね方が足りなかった」、「意思決定を支援するための情報収集が十分でなかった」などの声が聞かれました。

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(↑個人ワークを通じ、利用者に尋ね、意思決定を支援することの重要性を学びました)

 このような受講者の声を受けて、浜砂先生は「具体的には尊厳とは個人の尊重です。『私は私である』というのが個人の尊重です。利用者が自分の意見をちゃんと言って、自分で選んで自分で決める。それを支援するためには情報が必要です」と、利用者の尊厳のために、声をかけ、尋ねることの重要性を改めて訴えました。

 続いて研修会は、利用者の人権、そして権利擁護に移り、具体的な人権の種類、そして権利擁護を支援する仕組み、関連する法律などについて学んでいきました。

(つづく)

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