協会活動報告

研修会開きました(リハ部会:その7)

 続いて強化型老人保健施設の現状について学びました。平成24年度の改定以降、在宅強化型の要件を満たす施設は増加し、昨年6月の時点で全体の8.7パーセントにあたる174施設が強化型を算定(宮崎県内では5施設)。加算型(16.9パーセント)と合わせると全体の4分の1で、残りは通常型(従来型)にとどまっている現状に触れ、櫛橋先生は「強化型をやらないのか?やれないのか?老健で働いている職員が、「何のために仕事をしているのか?」と考えたなら、強化型をやるべきです。自分がやっている仕事に対する誇り、そして『地域のためにやっているのだ!』という答えが持てるように」と、強化型老人保健施設として利用者の在宅復帰に施設を上げて取り組んでいくことが、職員の士気の向上にもつながることに言及しました。

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 そして、強化型と加算型、通常型の老健を比較した場合、(1)いずれも入所者の要介護度に大きな差は見られない、(2)入所時にアセスメントを積極的に行い、利用者と退所時期についての相談を積極的に行う施設は、在宅復帰率が高い施設が多い、(3)リハビリテーション専門職を多く配置している施設は、在宅復帰率が高い施設が多い、(4)一人当たり居宅サービス費用が低い地域においては、在宅復帰率が低い施設が多い、(5)在宅強化型老健は、同一・関連法人で、訪問リハ等の訪問サービスを運営する施設が多い、在宅復帰率の高い施設は、ベッド稼働率が低い施設が多い・・・などの相違があることを踏まえ、「”在宅のインフラ”をしっかりしていないと家には帰せません。在宅関係を備えているところは復帰率が高くなっていますが、老健は在宅系のサービスを全部作るべきだと思います。その中で、デイサービスとデイケアは根本的に違うということを理解する必要があります。デイサービスはあくまでもレスパイト。デイケア(通所リハビリテーション)はそれではだめで、利用者の落ちていく機能を上げてからデイサービスに戻したり、必要に応じて入所させて短期集中リハビリテーションを行った上でデイサービスに帰してやる、といった具合にやらないといけません」と、施設サービスと在宅サービス両方を充実するとともに、それぞれの連携を強化させて、利用者の在宅復帰・在宅支援をしていく必要性を訴えました。

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その6)

 介護老人保健施設の現状については、次のようなことを学びました。

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(1)全国の老健は平成25年現在3994施設、利用者数は348千人

(2)要介護4および5の入所者割合は増加傾向にある

(3)平成22年度の退所者の状況を見ると、医療機関への入院が48.9パーセントと最も多く、家庭への復帰は23.8パーセントにとどまっている(※1

(4)退所後の行き先の推移をみると、平成199月の時点において、医療機関45.3パーセント、家庭31.0パーセントだったのに対し、平成229月では医療機関が48.9パーセントに増加する一方で、家庭への復帰が23.8パーセントと減少している(※2

(5)老健施設の在所日数の中央値は全体で358日。中央値が2年以上の施設は1割程度(※3

(6)定員に占める退所者の状況をみると、「退所した者の施設定員に占める割合が、一月あたり10パーセント未満」である施設が約7割を占めていた(※3

(7)定員に占める自宅復帰の状況をみると、「自宅へ退所した者の施設定員に占める割合が、一月あたり3パーセント未満」である施設が約8割を占めた(※3

(8)「退所者に占める自宅への退所者の割合」が30パーセント以上50パーセント未満の施設は全体の16パーセント、50パーセント以上の施設は8パーセントを占めた。一方、「自宅への退所者が0人」の施設は全体の19パーセントを占めた(※3

〈※1〉出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成22年度)

〈※2〉出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成19年度、平成22年度)

〈※3〉出典:「介護サービス情報公開制度」(平成21年度)より老人保健課調べ

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 以上を踏まえ、櫛橋先生は「問題は在宅復帰率」と断言。「在宅復帰率の格差が激しい。つまり在宅復帰に向けて一生懸命やっているところと、そうじゃないところがあるのが現状です。経営者が老健の存在意義をどう考えるかが問われており、『地域のための老健』という理念をもってやっていかなければなりません」と、施設を上げて入所者の在宅復帰を支援するために、トップの意識改革が必要だと訴えました。

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(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その5)

 続いて櫛橋先生は介護保険制度の現状と今後について説明。高齢者人口が増加する一方で、生産年齢人口が減少しており、2025年には75歳以上の高齢者が急増。高齢者の生活を2人余りでみなければならないという財政的な問題もさることながら、「それよりもっと問題なのが介護をする人がいないということ。介護の現場で働く人達がいないために100人入れる施設が80人しか受け入れられないという事になってしまいます。あふれた高齢者は入るところがなく『介護難民』として自宅で待機することで、共働きをしていた奥さんが働けなくなるという事態も起きてしまいます」と述べ、介護職の労働環境の整備と社会的地位の向上の重要性を強調しました。

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 また介護保険制度が施行された2000年と2012年を比較し、12年で65歳以上の被保険者が38パーセント、要介護者が144パーセント、要介護(要支援)認定の申請件数が94パーセントそれぞれ増加していることをスライドに提示。さらにサービス受給者数は全体で199パーセント増加し、そのうち特に居宅サービスは238パーセントと大きな伸びを示していることを指摘し、現在取り組みが進められている地域包括ケアシステムについて、「成功しないと介護保険は崩壊する」と警鐘を鳴らしました。

これに関してはさらに、

(1)要介護認定者数が平成254月現在564万人で、この13年で約2.59倍に増加。このうち軽度の認定者数の増加が大きく、また近年は増加のペースが再び拡大している

(2)75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には25パーセントを超える見込み。そして65歳以上高齢者のうち、認知症高齢者が増加することや、世帯主が65歳以上の世帯のうち、単独世帯や夫婦のみの世帯が増加する。首都圏を初めとする都市部では、今後急速に高齢化が進む

(3)現在約9兆円の介護費用は、2025年には約21兆円に増える

・・・などの見通しについて、詳細なデータを用いて説明があり、参加者は真剣な表情で聞き入っていました。

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その4)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会リハビリテーション研究部会が117日に開いた第2回研修会は、「講演2」に写りました。「老健施設の将来のあり方」と題し、介護老人保健施設ひむか苑の施設長で医師の櫛橋弘喜先生による講演がありました。櫛橋先生は全国老人保健施設協会(全老健)の宮崎県支部長や同施設管理運営委員会安全推進部長の部会長を務め、また同人材対策特別委員会人材確保部会の部会院としても活躍中です。この日も激務の合間を縫って講演に駆けつけて下さいました。

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 講演ではまず、昭和60124日の社会保険制度審議会の中で「重介護を要する老人には、医療面と福祉のサービスが一体として提供されることが不可欠で、両施設を統合し、それぞれの長所を持ち寄った中間施設を検討する必要がある」との意見が出された事を受けて取り組みが始まり、同62年にモデル施設指定(7施設)、同63年に誕生を迎えた老人保健施設の、誕生から現在に至るまでの歴史をたどりました。

 そして老健施設の役割として、(1)包括的ケアサービス施設、(2)リハビリテーション施設、(3)在宅復帰施設、(4)在宅支援施設、(5)地域に根ざした施設、(6)契約によるサービス提供・・・の6点を提示した上で、「これらの事は、現在強く言われていますが、実は老健が誕生した投書から言われていたことです」と強調。さらに「介護老人保健施設とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設」という老健施設の定義(介護保険法第8条第27項)、さらに「介護保健施設は、(中略)入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」という基本方針(介護老人保健施設の人員、施設並びに運営に関する基準、平成11331日厚生省令第40号)をスライドに提示。「老健施設は在宅復帰、在宅療養支援をするための地域拠点となる施設。そしてリハビリテーションを提供する機能維持・改善を担う施設です。スライドにも示す通り、厚生労働省もそういう目で老健を見ています。しかしそれをやっていなければ老健ではありません」と断言。老健施設がその本来の役割、そして機能に「原点回帰(」する必要性を訴えました。

(※)

 櫛橋先生は全老健発行の「『老健』平成2611月号、Vol.25 No.8」の「現場からのオピニオン 介護現場のいま」の中で、「回復期リハビリ施設としての老健 原点への回帰」と題し、「在宅強化型老健施設をめざすということは老健施設の原点に帰ることに他ならない」と述べておられます(40ページから41ページにかけて)。ぜひご参照下さい。

(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その3)

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 続いて黒木さんは「老健施設の往復型利用による在宅生活の継続」というスライドを示しました。これは第105回社会保障審議会介護給付費分科会(平成2687日)の資料からの抜粋で。訪問リハや通所リハ、短期入所などを利用しながら要介護者の在宅生活を支援し、その生活機能が低下した際に老健に入所。リハビリで生活機能を向上させて再び在宅復帰する、という往復を繰り返す「復帰型」としての老健の機能を説明したもので、2004年に高齢者リハビリテーション研究会がその重要性を指摘していたものです。

 これを踏まえて同分科会からの資料として「老健施設の在宅支援の結果としての看取り」というスライドが示されました。これは上述の通り、復帰型としての老健の機能を果たしながら高齢者の在宅生活を長年支援していくうち、加齢などにより徐々に生活機能が低下し、最終的には看取りケアに至るということを図示したものです。これを踏まえた上で黒木さんは「在宅から老健に入所して、機能を回復して在宅に戻る、ということ繰り返す中で、『前回在宅復帰した時よりも、今回は具体的にこれだけ生活機能が低下している』という事を、セラピストの皆さんに根拠を示して本人や家族に明確にして欲しいと思います」と、看取りまで見据えた老健の往復型利用を通じて、高齢者を最期まで支援するためには、リハ専門職による利用者の正確な評価と適切なアドバイスが重要だと訴えました。

 また、「日本理学療法士協会、日本作業療法士会、日本言語聴覚士協会のいずれの団体も、その倫理規定の中で他の関連職種との協力の重要性を明記しています。老健施設のキーマンとして、是非とも協力をしてほしいと思います」と訴えました。

そして90歳台後半で、家族から看取りの同意までもらっていた利用者が、「平行棒では立てないが、トイレでは立てる」というセラピストの判断に基づきケアを実践した結果、介助を受けながらトイレでの排泄ができるようになった自施設での事例を紹介し、講義を締めくくった黒木さん。それぞれの施設における自らの役割の重要性を再認識した参加者からは感謝の拍手がおくられました。

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(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その2)

 つづいて、黒木勝久さんの講演は、在宅強化型老健であるサンヒルきよたけの取り組み状況に移りました。以前は従来型老健だった同施設。「リスクを冒すよりは長く満床で入所してもらった方がベッドコントロールがしやすくセーフティー」と、在宅復帰に向けて積極的ではなかったとのこと。しかし24年度の改定で基本報酬が下がり、必要に駆られて平成241月から在宅復帰に取り組み始めたそうです。それから半年後の同年7月に在宅支援加算型老健、それからさらに1年かけて平成257月に強化型を算定できるようになりました。しかしベッド回転率が落ちたため同年8月、9月は一旦加算型となったものの、10月から現在に至るまで、ずっと強化型での算定を続けているとのことでした。

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 かつては10パーセント台だった同施設の在宅復帰率は、平成2612月時点で53.8パーセントにまで上昇。ベッドの回転率は10.8パーセントで、利用率も96パーセントを維持しているそうです。

 また入所の内訳としては自宅からの入所が増加。さらに相談指導員が営業に駆け回ったことにより、協力病院以外の医療機関からの入所も増えてきました。一方、かつては病院への入院が多かった退所先内訳ですが、現在は半数以上が自宅。入院が減った理由として関し黒木さんは「在宅復帰率を高めるため、看護・介護が中心となって利用者の異常の早期発見に努めているから」と胸を張りました。

 そして入所後、早期かつ集中的にリハビリを行うことにより利用者の在宅復帰を目指す短期集中リハビリテーション。平成22年度までは400件台だったのが、同24年度以降は2000件以上と、5倍以上に増加している事がスライドに示されると、参加したセラピスト達は、リハビリテーションを通じて利用者の在宅復帰を目指す老健施設の使命の重要性を再確認していました。

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(つづく)

研修会開きました(リハ部会:その1)

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 (公社)宮崎県老人保健施設協会リハビリテーション研究部会は127日、宮崎市の宮日会館で研修会を開き、在宅復帰・在宅療養支援、そして生活期リハビリテーションの拠点として、老健施設は今後いかにあるべきかについて研鑽を深めました。

 この日は会員施設などからリハビリスタッフや支援相談員、介護職員など60人の参加がありました。開会にあたり同部会の中村豪志委員長が「来年度は介護保険報酬が改定される中、今日の研修が皆さんの明日からの仕事に役立てばいいと思います」と挨拶しました。

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(↑中村委員長)

 はじめに「在宅復帰の取り組み」と題し、サンヒルきよたけの支援相談員で、協会在宅支援研究部会の委員長も務める黒木勝久さんが講演を行いました。サンヒルきよたけで管理部部長および支援相談室室長を務める黒木さんは、社会福祉士、介護支援専門員、そして全国老人保健施設協会(全老健)リスクマネジャーなど様々な資格の所有者です。

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(↑行使の黒木勝久さん)

 黒木さんは施設の概要(平成75月開設した単独型の老健施設で、入所80床、通所定員40名。居宅介護支援事業所、訪問リハビリテーション、グループホーム3ユニット併設)を紹介した上で、全老健のケアマネジメント方式「R4システム」を同施設が平成2210月から2年間かけて導入した経緯を話しました。

 同施設では専任の施設ケアマネージャーを配置しないかわり、利用者に担当職員を位置づけ、看護・介護職と兼任施設ケアマネージャーが合同でプランを作成する方法を採用。そしてR4システムを活用するために、館内Wi-Fiおよびターミナルサービス(TS)を導入。さらにタブレット端末11台とR4システム編集端末20台も導入するとともに、複数の端末から同時に書き込みができるようにし、多職種がケアプランに触れることができるようにしたそうです(それ以前は誰かがプランを開いていると、他の職員は書き込みができないなど、効率が悪かったとのこと)。

 このように述べた上で、「R4システムは私達の施設が在宅復帰に取り組むに当たって必要不可欠なツールです。ただし、『R4システムを導入すれば在宅復帰率が上がるか?』という質問をよく受けますが、かならずしもそうとは限りません。情報を入力すると自然に在宅復帰のプランができるというような『魔法のプラン』ではありません。自分たち合ったものを作ることが大事で、何でもソフトに付けて万能を求めると使い勝手が悪くなります」と注意を促しました。

(つづく)

アンケート調査にご協力下さい(在宅支援部会)

(公社)宮崎県老人保健施設協会在宅支援研究部会は前年度に引き続き、「『入退所の状況』に関するアンケート」を実施します。

 このアンケートは同部会が県内44の会員施設を対象に、入退所の動向について調査、分析をするために実施するものです。得られた結果は研修会等を通じて情報提供していく予定ですが、施設名や各施設の状況について公表することはありません。

 既に各会員施設には依頼文書をお送りしておりますが、詳しくはこちらをご覧いただき、ご協力下さいますようお願い申し上げます。

 また、入力用データ(エクセルファイル)に入力してご回答いただける方は、協会ホームページの「書式ダウンロード」から「在宅支援研究部会アンケート用紙(平成26年度)」をクリックしてダウンロードした上でご活用下さい。

 なお、このアンケート調査に関するお問い合わせはサンヒルきよたけ(担当:黒木、TEL0985-84-0333)までお願いいたします。

研修会開きます(栄養・給食部会)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は218日(水)10時から、宮崎市のニューウェルシティ宮崎で研修会を開きます(15時まで)。

 この研修会では午前中、平成27年度の事業計画検討会や情報交換を行った後、午後からは「食事と医療」と題し、宮崎江南病院副院長の松尾剛志先生に講演をしていただきます。

 この研修会はどなたでも受講可能です。参加費として会員老健施設の方は1500円が必要ですが、それ以外の方は無料です。

 詳しくはこちらをご覧の上、介護老人保健施設ひむか苑(担当:松浦、TEL0985-48-1360)までお申し込み下さい。多数の参加をお待ちしております。

リハ研修会は17日

(公社)宮崎県老人保健施設協会リハビリテーション研究部会の第2回研修会は117日(土)14時から、宮崎市の宮日会館10階大会議室で開催されます。

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この研修会ではまず「在宅復帰の取り組み」と題し、介護老人保健施設サンヒルきよたけの黒木勝久支援相談員が講演を行います。続いて介護老人保健施設ひむか苑の櫛橋弘喜施設長による講演「これからの老健のあり方」があります。

 受講を予定されている方は、道中くれぐれも気をつけてお越し下さい。また、この研修会の模様は、後日協会ホームページで紹介する予定ですのでお楽しみに。なお、会場には駐車場はございませんので、周辺のパーキングをご利用くださいますようお願いいたします。

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