協会活動報告

「食べられる口」学びました(リハ部会研修会:その2)

001BQ8V8264 関連施設であるメディケア盛年館の入所では、訪問歯科や歯科受診にて平成25年から7月から28年5月までで216名の方が治療を実施されています。また地域ケア会議に参加させていただく中で思うことは、プラン前のアセスメントは大切だと感じます。摂食嚥下機能の目安になる基本リストとして、

(1)半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか?

(2)お茶や汁物等でむせることがありますか?

(3)口の渇きが気になりますか?002BQ8V8269

 つまり、かみにくい=咀嚼機能の問い、むせ=嚥下(飲み込み)機能の問い、口の渇き=口が渇くと口腔内の細菌叢が変わる為、肺炎や上気道感染リスクを問う、ものになりますので、しっかり聞き分け判断することが大事になります。003BQ8V8268

 摂食嚥下機能障害がもたらすものとして、低栄養や脱水、誤嚥や窒息、転倒や閉じこもり、気道感染(誤嚥性肺炎)がありますので、口の中を観察して評価し情報を共有することがリスク低減につながるものと考えます。

 口腔細菌が関与する全身の病気として誤嚥性肺炎がありますが、平成23年には死因の第3位になりました。誤嚥性肺炎は口の中の細菌が肺や気管に入って起きることで1年中いつでも起こり再発を繰り返します。反対に考えると口の中飲み込む菌を減らすと肺炎になりにくいということになります。なぜ、口の中の細菌が肺に入るのかということですが、004BQ8V8262

(1)通常食道へ行くべき食べ物が誤って気管へ入ってしまう。

(2)細菌を含んだ唾液が誤って肺に入ってしまう。

(3)胃液から食道への逆流に伴って入る

ということで、姿勢が大事になってきます。誤嚥性肺炎になると、元気がなかったり発熱や咳、痰、呼吸状態の悪化などみられます。高齢者になると訴えが少なく自覚症状がでにくいので日頃の観察や気づきは大切です。誤嚥性肺炎防止姿勢角度は30度と言われ、頭部挙上などタオル等で調整し、顎を引き軽くうなずく程度に調整していただくといいと思います。005BQ8V8281

 歯科清掃用具としてブラシや低刺激オーラルケア用品等、吸引器使用の口腔清掃の様子、舌苔清掃用具、口腔清掃時の装備、音波電動ブラシの取り組みなどの紹介や実際に商品に触れたり口腔内改善例を示しながら紹介いただきました。

 ひとくち30回とは噛む回数のことで、

(1)よく噛むと唾液が増える

(2)肥満予防・認知症予防

(3)脳の血流も良くなる

といわれています。普段私たちは口を閉めていますが、歯は当たっていません。1日3回の食事1時間としても上と下の歯が当たっている時間というのは約9分程、唾液を飲み込む時間とを合わせると1日約18.5分間しか当たっていないとの事。よく噛むというのは、強く噛む事ではなく噛む回数を増やす事です。口腔内改善や肥満、認知症などの予防や改善に、意識して噛む習慣をつけていきましょう。007BQ8V8289

 8020運動というのを知っていますか。8020運動とは、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。食べることは命を支える大切なことです。20本以上あればほとんどの食べ物を嚙み砕き味を楽しむことができます。自分の歯は何本あるか知っていますか?日頃から自分の体を知ることは大事です。私たちは食べ物を舌に乗せただけでは味を味わうことはできません、噛むことで味わうことができますので、今残っている歯を残していただき、できるだけ最後まで自分の口から食べられるようにしていただけたらと思います。006BQ8V8276

 自分の事(口)を知る観点からも鏡やペーパーの位置など、自分で見やすく利用し易いように利用者様の目線でみる環境づくりも大切なことだと思います。物品管理も工夫し気付きや感染防止の点からも環境づくりを行いましょう。大切なことは口の中の観察から、確実な口腔清掃を徹底することです。食べることは命を支える大切な事であり、すべては口から始まります。口から食事を摂って、噛んで飲み込みます。そこから健康につながることに波及していきます。008BQ8V8261

 何かを変える事や変わることはすごく大変だと思います。変わることで利用者様が気持ちよく過ごすことができるのであれば、変わる必要があるのではないでしょうか?と多職種との連携や理解、継続と取り組むことが口腔内の改善につながります。と、口腔ケアの大切さや多職種での連携のあり方など学びました。009BQ8V8287 010BQ8V8254

(つづく)

「食べられる口」学びました(リハ部会研修会:その1)

 2月18日(土)にリハビリテーション研究部会第2回研修会が開催されました。「食べられる口を目指して」と題し、和田病院の歯科衛生士、河野佳織先生とメディケア盛年館の管理栄養士、小林真喜子先生を講師として42名程が参加されました。

 001BQ8V8240歯科衛生士の河野佳織先生からは口腔ケアや誤嚥性肺炎予防について講義され、口腔ケア用品を実際に触りながら進めていきました。まず口の中をしっかり観察していますか?という所から、奥までしっかりかみ合わせができているのか、義歯の有無、ぐらつきの有無などしっかり観察し、アセスメントしそこから必要な物品を選択し、早期に介入することが大切になります。002BQ8V8241

 口の中には700~800種類の細菌・真菌が存在し、歯を磨かないでいると虫歯や口臭、歯周病など合併症が起こります。必要な常在菌もいますので口腔ケアと細菌バランスを整える事が重要になります。口の中の細菌や細菌のかたまり(歯垢)をスライドで示し磨くことの大切さを感じました。歯周病の進行についても説明され、歯ぐきがはれたり出血、痛み、排膿、歯のぐらつきそして抜け落ちたりするということになりますので、しっかり歯と歯ぐきの間を磨くことが重要になってきます。003BQ8V8246

 口腔ケアはなぜ必要なのでしょう?それは、口の中の細菌を減らし歯周病や全身の病気や予防に役立てると言われています。歯周病菌は歯と歯ぐきの境目に深い溝がありますのでその中で増え血小板の中へと入り血管を介し全身へと巡ることになります。そして臓器や体の組織に影響することで、糖尿病や心臓病、脳梗塞のリスクを高めるということが言われています。では、どんな手入れが必要なのでしょうか?ということで、基本的な事ですが(1)歯磨き、(2)うがい、(3)義歯の手入れが大事になります。

 (1)歯磨き方法ですが、実際にテーブル上に用意された、取っ手が細くヘッドが小さい、曲げることができる、毛先が長めなどの歯ブラシに触れ紹介をいただきました。歯ブラシは消耗品ですのでこしが無くなったり、汚れがついたり、弱っているブラシがあれば交換して下さい。交換時期を過ぎた歯ブラシは歯面や歯間の磨きが不十分で、歯と歯ぐきを傷つける事になります。005BQ8V8252

 次に(2)うがいですが、うがいができる人はうがいをしましょう。健康成人で1日約1~1.5ℓの唾液がでますが、年を重ねるごとに唾液分泌は少なくなります。また夜間帯から朝にかけては唾液の分泌が減るので、口の中の細菌が増えることになります。うがいをすることで口中の細菌を減らし乾燥防止にもなりますのでうがいをお願いします。寝ている間に増えた細菌を除去する為にまず起きたらうがい。細菌を飲み込まない為食前にうがい、就寝前には細菌が増えるのを抑えるためにうがいをしましょう。

 うがいは、唇や頬っぺた、舌など口に関係するものすべての器官を使いますので、口腔内に関する機能低下を防ぐことができます。

 (3)義歯の手入れですが、義歯は柔らかい樹脂でできています。歯磨き粉などは研磨剤が入っていますので、傷がつき細菌が増えるなど影響しますから流水で洗い流したり夜間帯は外して洗浄剤使用し除菌対応をするなどして下さい。義歯も長く使用しているとかみ合わせの部分がすり減ってきたり、ばねを使用している義歯などは部品がゆるくなったりします。義歯を入れなかった場合の弊害としても結果しっかりと噛むことができなくなりますので、歯科受診をしっかりしましょう。004BQ8V8227

 義歯安定剤の正しい使用についてですが、「装着」は⑴義歯の水分をふきとる⑵安定剤1㎝を3ヶ所塗布⑶上顎義歯口内装着後指で1分間固定⑷下顎義歯口内装着上下噛んで1分間固定。 「取り外し」は⑴下顎義歯外し上顎義歯外す⑵流水で洗い流し⑶夜間は洗浄剤使用で除菌。 「義歯ケース」は⑴次亜塩素ナトリウム(ハイター)に浸け除菌。となります。

(つづく)

「失敗学に学ぶ」研修会開きました(看護・介護部会:その2)

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この病院内の失敗につながる「11種類の原因」を踏まえ、「役に立つ報告書」の書き方を学びました。「真の原因が明確になっており、ドンピシャリな改善が提案されているもの」が役に立つ報告書であるとして、実際に起こった事故およびこれに対して提出された「役に立たない報告書」をもとに、失敗の原因を11種類の中のどれに該当するかを検討しながら、Before→After形式で報告書の「リフォーム」を受講者同士によるワークも交えながら進められました。004IMG_0514005IMG_0498

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【例:「夕薬を2日分服用させた場合」】

〔Before〕

(×原因)Aナース:配薬車から○氏の配薬ケースを引き出し、定期の夕薬2包(ホッチキスで留めている)の△△日分を取り、臨時薬1包をホッチキスで留めた。この時△△日・△□日を一緒に取ってしまったことに気づかなかった・・・・・・・・

(×対策)与薬する時に、日付、時間を1包ずつ確認する。

〔After〕

(○原因)1日分とったつもりが、2日分取ってしまった。うっかりミス。

(○対策)うっかりしてても、2日分取ることができない仕組み

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 「確認不足だった」では真の原因分析にはなっておらず、「以後注意する、しっかり確認する」などといった精神論は有効な対策とはいえず失敗や事故は繰り返されることを念頭に置き、リフォームされた「役に立つ報告書」が示されると、受講者は身を乗り出して見入っていました。004IMG_0438

 続いて三好先生は野尻中央病院における取り組みを紹介しました。「原因追及≠責任追及」、「報告書≠始末書」という考えのもと、「報告書は病院の宝」として“計画(Plan)”、“実施・実行(Do)”、“点検・評価(Check)”、“処置・改善(Act)”からなる「PDCAサイクル」を繰り返し再発防止・未然防止に取り組んでいるとのこと。また報告書の提出件数が多かった職員や、顕著な改善を行った部署を対象にした「ご褒美制度」を設けたり、想定しうる失敗のからくりや罠を伝えるために「失敗想定手順書」を作成したりしているそうです。006IMG_0505

 最後に野尻中央病院に他病院から転職してきた職員が受けた院内レポート(抜粋)が紹介されました。「前の病院では同じ失敗を繰り返しては怒られ、反省し落ち込むばかりだったが、野尻中央病院では失敗すると先輩たちが一生懸命話を聞いてくれ、一緒になって真の原因を探し、対策を考えてくれる。人を責めることなく改善に力を貸してくれる、そんな風土にものすごく助けられる。(医療版失敗学に基づき)真の原因を解明し、再発防止だけではなく未然防止にも活用する、それをみんなで情報共有するという活動が重要であることを知った」といった内容のレポートがスライドに示されると、受講者はうなずきながら聞き入っていました。005IMG_0516

 三好先生の講義は軽快な語り口でありながら熱意あふれるパワフルなもので、大変わかりやすく有意義なものでした。医療版失敗学を初めて学ぶ受講者も多く、講義終了時には会場からは感謝の拍手がおくられました。007IMG_0527

(おわり)

「失敗学に学ぶ」研修会開きました(看護・介護部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会看護・介護研究部会は2月18日、宮崎市のJAアズム別館で研修会を開きました。「医療版失敗学」を通じたリスクマネジメントを学ぼうと70人が受講しました。001IMG_0465

 今回の研修会テーマは「医療版失敗学の導入事例から学ぶ医療安全」。講師は野尻中央病院の経営統括部長、三好彰範先生。三好先生は平成23年、「医療版失敗学研究会」に第一期生として入会。以来「医療版失敗学」で各施設における諸問題の解決策を提供するべく、多くの執筆や年間20回以上の講演活動を数多くこなされています。この日はそんなご多忙の中を縫って講師を引き受けて下さいました。002IMG_0450

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《「医療版失敗学」とは》

 「失敗学」は福島原子力発電所事故調査委員会に就任された、東京大学の畑村洋太郎名誉教授が唱えた考え方。そして「医療版失敗学」は畑村先生の研究室を卒業し、「失敗学」を学んだ同大学の濱口哲也特任教授が提唱。2015年「医療版失敗学研究会」を設立し全国の施設から医療従事者が参加し年6回参加施設の実例を研究し、解決策と知識を構造化。再発防止だけでなく、未然防止策も打てるツールと期待されています。

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003IMG_0525 講義はこの失敗学のエッセンス「「言い訳」大歓迎、「真の原因を見つけろ」、「フィクョン考えろ」・・・の3つについて事例を交えながら解説がありました。その中で三好先生は野尻中央病院で2011年9月から翌年3月までに提出された報告書(事故件数403件)を分類した結果「病院内の失敗はたった11種類の原因から生じます」として(1)情報ミス、(2)不適切状態の放置、(3)教育不良、(4)不適任業務、(5)緊急多重業務、(6)過信、(7)変更点不管理、(8)自工程不完結、(9)手順の形骸化、(10)真のヒューマンエラー、(11)患者側原因・・・の11項目を示しました。004IMG_0438

(つづく)

間もなく発行!「老健みやざき35号」

 当協会の広報誌「老健みやざき 第33号」を間もなく発行します。老健みやざき第35号表紙(加工)

 今回の巻頭企画は当協会が昨年11月に開いた「第13回公益社団法人宮崎県老人保健施設協会研究大会」特集。県内会員施設から300人が参加し、「地域の『ひなた』になろう ~老健に求められているものとは~」のテーマのもと繰り広げられた研究大会の模様をレポートしました。

 また、平成28年度における当協会各部会の活動報告なども紹介しています。

 「老健みやざき 第35号」は宮崎県内の会員施設や、県内外の各関係機関に送付するほか、当ホームページからも閲覧、ダウンロードできるようアップする予定です。お楽しみに。

総務委員会開きました

 平成28年度第5回総務委員会を2月13日、宮崎市の介護老人保健施設ひむか苑で開催しました。001DSCN3753(s)

 この日の委員会では、(1)各委員会活動、(2)宮崎県委託事業、(3)第13回(公社)宮崎県老人保健施設研究大会、(4)平成29年度事業計画・予算・・・などについて協議、検討を行いました。

 平成29年度も協会事務局を中心とし、高齢者等の保健、医療および福祉の増進に寄与すべく、諸機関のご支援もいただきながら各部会が連携を密にして各事業を展開していくことを確認しました。002DSCN3752(s)

 皆様方におかれましては、今後も協会へのご理解、ご協力方賜りますようお願い申し上げます。

キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その3)

 最後の講義は「生活リハビリ~在宅復帰に向けての支援方法~」。講師は介護老人保健施設サンヒルきよたけの支援相談員、春田 泰志さんにお願いしました。001IMG_0244

 生活リハビリテーションとは「『施設や自宅での生活で、利用者がしたいこと、できることを見つけ出し、生活動作として毎日繰り返すこと』で利用者の日常生活活動の自立と身体機能向上に結びつけていく方法」であることを踏まえ、訓練中にできていることを普段の生活でも同じようにでき、日常生活において提供するケアが利用者の自立につながり、在宅復帰が果たせるようにすることが重要とのこと。そのためにも「『できる力』を奪ってはいけない」として(1)その人のできる可能性を信じ、やりすぎた介助をしない、(2)業務に追われケアが作業化しないよう、ちょっと一呼吸入れる、(3)「してあげている」という気持ちにならないよう、主役を入れかえて考える・・・ことなどを学びました。002IMG_0200

 日常生活全般が生活リハビリであり、利用者が残された人生で自分がやりたいことを少しでも実現させるために、春田さんは「介護福祉士はその人にとっての自立に必要なアイテムを見つけ出すプロフェッショナル。利用者の生活状況、心理面、家族との関わりを配慮しながら利用者に沿ったケアを提供する」ことの重要性をスライドに提示。「利用者の活動・参加を促すとともに、その後ねぎらいと賞賛を毎日繰り返すことで生活の意欲と行為に結びつけていると意識して関わることが大切」と言い添えました。003IMG_0252

 さらに他職種が協働してアプローチする事も不可欠で、目標達成のために職種間の価値観を知り、役割の明確化、情報の共有化をはかることが利用者の自己実現を果たすことにつながるとのことでした。

 これらを踏まえ、在宅復帰に向けた生活リハビリテーションを展開するために「ゴールをイメージして接しましょう」として(a)自宅での暮らし(したいことなど)を共有し、施設での日常生活場面でその目標を共感、共有する、(b)利用者が願う暮らし方を捉え、介護スタッフが気持ちを支える・・・の2つのポイントを示した春田さん。実際にサンヒルきよたけで行っている生活リハビリテーションの取り組みを写真や動画を交えながら紹介すると、受講者は身を乗り出して見入っていました。004IMG_0264 005IMG_0261 006IMG_0263

 グループワークも取り入れ、受講者同士の情報交換や問題意識の共有も行いながら進められた講義は、老健施設の使命である在宅復帰機能の重要性を再確認するとともに、そのための基軸となる生活リハビリテーションの意義や内容、具体的な実践方法を学ぶことができ、大変有意義なものとなりました。007IMG_0256

(おわり)

キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その2)

 基礎研修の午後からはまず「基本的動作から学ぶ移乗動作~身体機能・動作のしくみを活用したトランスファー~」がありました。講師は介護老人保健施設慶穣塾の介護福祉士、椎葉 梓さんに努めていただきました。001IMG_0194

 講義ではまず基本的動作とは何か、という定義にはじまり、具体的に生活で必要な動作の内容、そしてそれらの動作ができるようになる過程を踏まえ、「発達の過程を知って利用することで正常動作(安定した動作)を身につけることができる」として「ボディメカニクス(※)」について学んでいきました。003IMG_0202 002IMG_0199

《(※)ボディメカニクス:運動機能である骨・関節・筋肉・神経等を使い、力学的原理を活用した介護技術のことで、介護する側にとって無理のない姿勢で介助すること》

 このボディメカニクスのしくみには(1)支持基底面・重心を活用する、(2)対象を小さくまとめる、(3)てこの原理を利用する、(4)対象にできるだけ近づく、(5)大きな筋肉を使う、(6)水平に移動する(重心移動の活用)、(7)身体をねじらない、(8)押す力よりも引く力を利用する・・・の8つのポイントがあるとのこと。それぞれについて詳しい説明がありました。そしてそれを踏まえ、正常な動作およびただしい介助とはどういうものか、事例を見ながら確認しました。一方、ボディメカニクスや正常な動作がわかっていないと危険な介助になると注意を促し、実演や実習を通じて正しい移乗介助の方法を学びました。005IMG_0237 004IMG_0221

 移乗介助で大切なこととして、(a)利用者を知る(身体・認知機能がどれほどのレベルか)、(b)目線を合わせ声掛けをしっかり行う、(c)目的をはっきり伝える(今から何をするのか)、(d)正常動作・ボディメカニクスを活用する、(e)利用者の残存機能を活用する、(f)後先のことを考え環境を整えておく(次に何を行うのか考え準備をしておく)・・・の6つがあることを念頭に置きつつ、スライディングシートなど福祉用具も活用しながら、様々なケースに応じた介助方法を具体的に学ぶことができ、実践的な講義となりました。006003IMG_0239

(つづく)

キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その1)

 当協会が県の地域医療介護総合確保基金にかかる介護人材確保推進事業として、宮崎県の委託を受けて昨年度から実施している「平成28年度キャリアアップ研修」。8日の「中堅者研修」、午後からの」「管理者研修」に続き9日は「基礎研修」午前・午後を通じて行われました。37人が受講しました。

001CIMG2219 午前中はまず「接遇・傾聴から見る働きやすい職場作り」と題し、介護老人保健施設おびの里の宮田 啓吾さんが講義を行いました。(1)介護現場での接遇・傾聴の必要性を理解する、(2)働きやすいとは何かを共有しあい共感できる仲間を作る、(3)働きやすい職場とは何かを考えるきっかけを作る・・・の3つを研修のねらいとし、学んでいきました。

 「人に近づく」を意味する「接」、そして「もてなす」を表す「遇」からなる「接遇」は「おもてなしの心を持って相手に接する」という意味。介護の現場において接遇は利用者や家族との距離を縮め、安心や信頼を得るための大切なツールであり、ひとりひとりの満足度に直接つながる重要なものとして、接遇のポイントである「挨拶」、「言葉づかい」、「聞く姿勢」、「お辞儀」、「身だしなみ」の5項目について説明がありました。002CIMG2223

 そして介護現場で重視される傾聴の目的やルール、ホスピタリティとおもてなしの関係などについて解説があり、まとめとして(1)利用者に対しても、職員に対しても思いやる心が大事、(2)職場においては言えない環境ではなく言える環境を作ることが大事、(3)働きやすい職場を作れるのはみなさんの力次第・・・の3項目を提示した上、で宮田さんがおびの里での接遇改善目標である「いつでも、どこでも誰にでも笑顔で挨拶。お名前も添えて」、「身だしなみチェックが、仕事のスタート」、「『です』『ます』の言葉づかいで、丁寧に」・・・を紹介すると、受講者は明日からの業務の中で実践しようと真剣に耳を傾けていました。

 続いての講義は「認知症を考える~その人に寄り添うケア~」。講師は介護老人保健施設みずほの山田 美邦さん。(1)認知症という病気について、(2)認知症の「人」について、(3)現在取り組まれている認知症ケア・・・という3つのテーマに沿って講義が進められました。

 003CIMG2229認知症の定義にはじまり中核症状と周辺症状の関係を説明する中で脳の障害で生じ、必ず見られる中核症状に対し、中核症状を基盤に心身のストレスが加わることで引き起こされる周辺症状は、周囲の支援で良くなったりひどくなったりするとのこと。不安や焦燥、混乱などを抱える認知症の人に対し、介護者が不安や不満、いらつき、負担などを感じながら不適切な対応をすると、周辺症状は悪化の一途をたどる悪循環に陥ることから、周辺症状に対する適切な対応が重要であることを学びました。

 そして介護者は(1)傾聴する、(2)共感する、(3)受容する、(4)触れる、(5)ペースをあわせる、(6)五感を使ったコミュニケーション・・・の5項目を気にかけ、満足、安心、やりがい、落ち着きなどをもって適切な対応をすることで、認知症の人は安心感、充足感、満足感などが得られストレスが解消。徐々に周辺症状が減っていき。それを目の当たりにすることで介護者のやりがいにもつながるとのことでした。

 続いてみずほで実践している認知症ケアの実際について、事例を交えながら紹介がありました。利用者個人に合わせたケアを6ヶ月間取り組む中で、不穏や昼夜逆転、幻視・幻聴がなくなり、意思疎通がはかれるようになるとともに、歩行能力の向上や箸を使用した常食の自力摂取も可能になるなどの目まぐるしい成果が現れ、本人や家族から大変喜ばれたことが紹介されると、受講者は高い関心を払って聞き入っていました。004CIMG2227

(つづく)

キャリアアップ研修(管理者)開きました(県委託事業:その2)

 管理者研修の後半は「介護施設における防犯対策」。講師は元宮崎県警本部特別機動警察隊長の山路 英敏先生です。001IMG_0160

 近年の施設や公共の場における残酷な事件を紹介しつつ、「管理者は社会情勢をよく見て欲しい」と呼びかるとともに、「暴漢への対策は訓練しかありません」と適切な防犯用品を備えるだけではなく、その正しい使用法や冷静で的確な対応を職員全員がとれるよう、定期の防犯訓練の必要性を強調しました。002IMG_0185 003IMG_0172 004IMG_0182 005IMG_0186

(↑防犯用品の紹介と実演も行われました)

 この事も含め、「施設管理者・責任者としての危機管理方策」としてまず「前兆事案」に対しては(1)社会情勢への関心、(2)早期の体制確立と教養の徹底、(3)最悪の事案への予測の3項目を、そして「訴訟を念頭に置いた証拠収集」については(a)現場対応は複数で、(b)証拠の収集と記録化、(c)組織的対応が原則・・・の3項目のポイントを具体的に学びました。

 この中で「(b)証拠の収集と記録化」については、「職員にはノート一冊をあてがい、電話や訪問があった場合にはボールペンで日付、氏名、内容等を書いて下さい。その際すき間無く、後から途中に書き入れたりできないように記録することが大事で、それにより裁判の際有効な証拠となります」とのことでした。

 また適用可能な犯罪の形態として威力業務妨害罪、脅迫罪、暴行罪、強要罪、恐喝罪、不退去罪などがあり、それぞれの内容について解説がありました。

006IMG_0190 最後に山路先生は「『警察安全相談』という言葉を覚えて帰って下さい。もし相談事があれば、近くの交番や駐在所で警察安全相談を活用して下さい」と施設の危機管理の一環として身近な相談窓口である「警察安全相談」を積極的に利用するよう呼びかけました。

(管理者研修レポートおわり:基礎研修レポートにつづく)

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