先入観は厄介者

  420日の日本経済新聞、一面の「春秋」を読んで、少なからぬ衝撃を受けました。「ものを見るとき、人を見るとき、先入観ほど愛想のいい厄介者はいない」とあったのです。そして文はこう続きます。「これさえあれば見ずして見たような気になれるのだから」。

 この日の「春秋」は、東京で開かれている「セザンヌ展」がテーマでした。セザンヌは先入観や想像力を嫌い、「色はまるで自分たちが望んでいる通りに、気ままに折り合いをつけていく」というそのままの色を画布にのせ、作品にしていったのだそうです。作品を見ながら「春秋」の筆者は、「いかに自分の目が目の役目を果たしていないか」が身にしみたとのこと。つまり、筆者はそれまで、先入観をもってものや人を見てきた、しかしそれは真にその対象を見たということではなく、見ずして見たような気になっていた、つまり、自分の目が目の役目を果たしていなかったということでした。

 私たち老健施設で働く者にとっても、これはとても重要なことだと思いました。日々の業務の中で、「先入観という愛想のいい厄介者」は、私たちにとりついてはいないでしょうか?利用者と接する時に、相手を「見ずして見たような気」になってはいないでしょうか?もしそうだったらこれは大変です。利用者ひとりひとりに応じたケアができないことはおろか、重大な事象を引き起こす原因にもなりかねません。

 「目が目の役割を果たすこと」。利用者の心身の状態は一人ひとり異なりますし、同じ利用者であっても、その状態は常に同じではありません。さらに、私たちの仕事の一つ一つについても、「これはこういうものだから」という先入観を持って取り組めるものは、何一つありはしないと言えるのではないでしょうか。

 東京の国立新美術館まで行って、実際に「セザンヌ展」を観ることはできなくとも、セザンヌが作品に込めた思いをくんで、日々の業務に役立てたい、そう思った記事でした。

OZAKI

 「若者の代弁者」「カリスマ」「教祖」などと言われたロック歌手、尾崎豊が死亡したのが1992年の425日。そうです。ちょうど20年前の今日のことでした。享年26歳。あまりにも早すぎる死に、多くの人々が衝撃を受けました。ただし、その衝撃は最初若者が中心で、尾崎が言うところの「大人たち」には理解されず、雨の中で泣き、叫び、声をからして「15の夜」を歌う若者たちのその姿に衝撃を受けていた人たちも少なくなかったようです。その後、尾崎豊の人となりや、尾崎が歌に込めた思いなどが、様々な世代の人たちに知られ、受け入れられていきました。

 もしご存命であれば、46歳になっていた尾崎豊。介護保険の第2号被保険者です。「信じられぬ大人との争い」をしてきたと『卒業』の中で歌った彼は、果たして現代の若者にとって、「信じられる大人」となっていたでしょうか?『15の夜』で「100円玉で買えるぬくもり」と歌った「缶コーヒー」も、今では120円になりました。『17歳の地図』で「夢見がちな俺はセンチなため息」をついていた尾崎が『46歳の地図』を歌おうとすれば、相当な地図の塗り替えを余儀なくされ、「”口うるさい大人達のルーズな生活に縛られても”忘れなかった素敵な夢はどこに行ったんだろう」と、やはりため息をついていたでしょうか。「大人の代弁者」となって、中年の悲哀を若い世代に訴えていたでしょうか。

 今となってはそれを確かめる術もありません。しかし、尾崎豊は当時の若者、つまり今の中年層にたくさんの名曲を残してくれました。それらの歌は、この世代の人たちがいくつになっても、きっと心に残り続け、そして歌われていくでしょう。

 早いものであれから20年たってしまいました。今夜は久々に、尾崎の曲をじっくり聴いてみようかな、と思います。

リハビリに貧乏ゆすり?

  48日の日本経済新聞を広げて、驚きと興味の声を上げた方も少なくないのではないでしょうか?「貧乏ゆすりに意外な効能がある」という記事が載っていたのです。ガクガクと際限なく膝を揺すり続ける、あの貧乏ゆすり。「行儀が悪いからやめなさい!」と親から膝をピシャッと叩かれ、厳しく戒められた、あの貧乏ゆすり。その貧乏揺すりが健康に良いというのですから、そりゃあ驚きます。

 記事によると、貧乏ゆすりには次のような効果があるそうです。

 

(1)手足の冷えが改善される

・・・貧乏ゆすりを行うことで、ふくらはぎの筋肉が伸び縮みし、血液を心臓へ送り返すことで全身の血行がよくなる。女性に多いむくみの解消や、エコノミークラス症候群の予防にも役立つ。

(2)変形性股関節症の治療に役立つ

・・・軟骨を培養するときに外から刺激を与えると成長しやすいことから、貧乏揺すりをすることで、軟骨を再生する効果が期待できる。軟骨がすり減って炎症を起こし激痛を生じる変形股関節症の治療に活用できる。

 

 実験や実際の治療を通じて、これらの効果が確認されているそうですから、驚きの一方で、「なるほど」と納得させられます。しかも、この「貧乏ゆすり」、副作用はないとのこと。そしてこれらのメリットがありながらも、貧乏揺すりをするのに「お金がかからない」(そりゃあそうだ)ときたら、これは見過ごすわけにはいきません。

 リハビリテーションの実践を通じて高齢者の在宅復帰を目指し、地域社会での生活の継続をサポートする老健として、「貧乏ゆすり」を日々のリハビリに取り入れてみるのも一考の余地がありそうです。ただし、「貧乏ゆすり」なんて、名称がよくありませんよね。記事には「『健康ゆすり』と呼びたい」との専門家のコメントも紹介されていました。「さあ、みなさん!今から『健康ゆすり』を始めましょう。よーい、はじめー!!」という光景が老健で見られるようになるかもしれませんね。

九州大会日程変更しました(重要)

  「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」につきましては、先だって平成25530日および31日の開催を予定している旨告知しておりましたが、事情により、平成251114日(木)および同15日(金)に変更し、開催することとなりました。開催場所は宮崎観光ホテルのまま変更ありません。

 会員施設へは4月19日付文書(全老健宮支部24-1)にてご案内しております。詳しくはこちらをご参照いただきますようお願いいたします。

 

「”じゅんじゅん”のすすめ!」

 早いもので四月も半ばを過ぎました。多くの老健施設で新人職員を迎え、日々その指導、教育が行われていることと思います。慣れない、初めての職場環境で、ストレスが溜まっている新人もいるのではないでしょうか。

 そんな新人育成の心掛けとして、「”じゅんじゅん”のすすめ4箇条」なるものを提唱したいと思います。

 

「”じゅんじゅん”のすすめ 4箇条」

(その1:『恂恂に!』)

 ・・・まめやかに、真心をもって教えましょう。

(その2:『循循に!』)

 ・・・秩序正しく整然と、穏やかに教えましょう。

(その3:『順順に!』)

 ・・・順序を追って、教えましょう。

(その4:『諄諄に!』)

 ・・・ていねいに、繰り返し教えましょう。ただし、一字で「諄い」だと「くどい」となりますからご注意。

 

 いかがでしょうか。4つともすべて「じゅんじゅんに」と読みます。え?同音異義語をならべただけで、こじつけっぽい!?ご指摘ごもっともです。しかし、案外核心をついているかも(^o^)。ご参考いただければ(あわよくば実践いただければ)幸いです。じゅんじゅん。

 

※参考文献:『読めるようで読めない漢字2500』(一校舎漢字研究会)、『広辞苑』

こちらも必読「老健4月号」

 昨日は当協会発行の「老健みやざき 25号」発行のお知らせをいたしましたが、本日は公益社団法人全国老人保健施設協会発行の「老健 平成244月号(Vol.23 No.1)」を紹介します。

 同号では「進めよう口腔ケア」題して、口腔ケアの特集が組まれています。平成24年度の介護報酬改定で「口腔機能維持管理加算」が新設されたことを受け、口腔ケアを巡る背景や現状、そして今後の展望を踏まえ、全国24県の老健施設による口腔ケアの実践例などが紹介されています。その中で、口腔ケアは特定のスタッフによる関わりだけではなく、多職種による連携の重要性が説かれていますので、老健に勤務されている方は、職種を問わず是非なるご一読をお勧めいたします。

また、特集記事とは別に、日本歯科衛生士会の金澤紀子会長のインタビューも掲載されています。それを読むと、歯科衛生士の現状と課題、さらに口腔ケアにおける歯科衛生士の役割などが理解できる内容となっています。

 「老健みやざき 25号」の巻頭は、当協会が316日に開いた第9回研究大会の特集記事ですが、ひとえ歯科クリニックの宇都仁惠先生にお話しいただいた、口腔ケアに関する特別講演の概要が主な内容となっています。その講演会場でも、参加された方々の口腔ケアへの高い関心が寄せられていました。両者を併せてお読みくいただくことで、口腔ケアへの理解がより一層深まるのではないかと思います。

「老健みやざき」発行しました

 DSCN2015.JPG 

 当協会が年2回発行している広報誌、「老健みやざき 第25号」がこのほど出来上がりました。近日中に会員施設を始め、関係機関の皆様のもとにお届けする予定です。ご笑覧いただければ幸いです。

 今回の「老健みやざき」のトップ記事は、316日に当協会が開いた、第9回研究大会の特集。これに続き、協会各研究部会等による研修会報告、そして会員施設の各職種の皆様による「リレーコーナー」さらに、シルバーケア新富の栄養士、織田政子さんによる「人気のおすすめメニュー」と続きます。

 なお、「老健みやざき第25号」は、当ホームページからも閲覧・ダウンロードできるようにする予定です。どうぞお楽しみに。

ついてみマッセ!?

  ビリヤードが大流行したのは、四半世紀以上の前のことでした。各地にビリヤード場ができて、大勢の若者達で順番待ちの状態でした。各地で大会もありました。あのNHK教育テレビでも「ビリヤード教室」が毎週放送され、若者の間でも「昨日の”ビリヤード教室”みたね?」「うん、見た!あの技をさっそく今日ためしに行ってみようや!」などと好評でした。しかしその後、人気は下火となり、ビリヤード場も無くなっていきました。球を上から突いて強い回転を与える「マッセ」という大変高度なテクニックがあったのですが、素人がやると高価なビリヤード台を痛めるためどの店にも「マッセ禁止!!」という張り紙が貼ってあったのも懐かしい思い出です。

 ところが、です。今、高齢者の間でビリヤード人気が再燃してきているらしいのです。330日の宮崎日日新聞に「高齢者に人気 ビリヤード 快感味わおう」という記事が載っていました。認知症予防にも効果がある、というのです。

 記事では、東京の有料老人ホームで開かれているビリヤード教室で、熱心に玉を突く高齢者の様子が紹介されていました。車椅子に乗ったまま、肩の高さで突く人もいるとのこと。

 高齢者がビリヤードをすることの効果として、専門家のコメントが紹介されていました、それによると、

(1)介護予防の基本である「足腰」と「身体のバランス機能」を鍛えるのに最適・・・

これは、太ももやふくらはぎなどの「抗重力筋」が鍛えられるだけでなく、球を突くときのダイナミックな動きで、身体のバランス機能の強化にもつながる

(2)球の全体の配置に気を配りながら、どのように落としていくかを考える過程が、認知症の予防になる

ということでした。うーん、なるほどφ(..)メモメモ。

 ビリヤードの魅力といったら、やはり球をカコーンと突いて、それが別の球にカキーンと当たって転がって、そして穴(ポケット)にスポッと入る時の快感でしょう。それが意図したコース通りだったら、最高ですし、そうでなくてもあたかも狙って突いたかのように決めのポーズをとったりしたものです。

球を突くことで、杖を突かなくてもよいくらい身体機能が向上したら、キュー(球を突く棒)を背中にしょって、さっそうと歩く高齢者の姿を見かけるようになるかもしれません。おまけに認知症の予防になって、生き甲斐にもつながれば、その一石二鳥、いや三鳥になるかもしれませんね。老健のリハの一環としてビリヤード、略して老健リハビリ、いかがなものでしょうか(^o^)

 

「カーネーション」は終わらない

 NHK朝の連続テレビ小説「カーネーション」が大好評のうちに3月で完結しました。「カーネーション」効果で、ミシンの需要が高まったとの話も耳にします。毎週新聞に載る視聴率が常にトップクラスにあったのもうなずける、素晴らしい番組でした。44日の朝日新聞にはその脚本を書いた渡辺あやさんのインタビュー記事が掲載されていました。その中で「はっ!」と思わされる事を、渡辺さんは言っていたのです。

 記事は、「登場人物がたくさん死ぬ。悲惨な運命も容赦なく描かれる。それでも見ると励まされ、生きる力が湧いてくる。そんなドラマ」だった「カーネーション」を書いた渡辺さんと記者が、「人が不幸や不条理を乗り越える力はどこからくるのか?」を考える内容でした。

 その問いに対し、渡辺さんは「不幸や不条理に立ち向かうには、すごく地味なことをコツコツやっていくしかない」と答えていたのです。「あるところに大きな救いがあって、そこに自分も回収される、というのは絶対うさんくさいし、本物じゃない」と。

 「すごく地味なこと」として、渡辺さんは、「人の役に立つこと」を上げていました。「大人だって本当は、誰かの役に立ちたいと強く願っている」と前置きした渡辺さんが、それをやってどうなるのか?ということについて「人の力になりたい、という気持ちが満たされた時、人は自分自身の価値を見いだせる」と結んでいたのです。これを読んだときです。「はっ!」としたのは。

 私たち老健施設に勤める者の仕事こそ、「人の役に立つこと」であり、「人の力になること」ではないでしょうか。もちろん、主役は利用者様であり、その生活の質、人生の質の向上を主体的に考えて仕事に従事するのは当然です。しかし、その事を通じて私たち自身が、自分自身の価値を見出すことができるという、非常に恵まれた環境の中で、私たちは日々業務に当たっていると言えるのではないでしょうか。

 そう考えて、胸の鼓動が高まるのを自覚しながら記事を読む私を見透かしたかのように、最後の段落で渡辺さんは、お年寄りと自分たちとの関わりについて「お年寄りにしか与えられないものがいっぱいある。私たちもお年寄りに与え、一緒に生きることで、自分の中で育てられるものがある」と言及していました。

 これはもう、やるしかありません!老健施設で働けることに感謝しながら、利用者に与え、一緒に生きましょう。そしてそのことによって、自分自身の価値を見出し、育てていこうではありませんか!!「カーネーション」の番組は終了しましたが、私たち一人一人の胸の内に、渡辺さんの言葉を刻み、日々の業務に邁進しようではありませんか。いつの日かそれぞれの心の中がいっぱいの「カーネーション」で満たされるように。

最近の投稿

アーカイブ

カテゴリー

老健みやざきFacebook

TOPへ